【米国株】アメリカン・エキスプレス(American Express:AXP)の銘柄分析

米国株

今回はアメリカン・エキスプレス(AXP)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。バフェットのコア銘柄の一つとして有名だと思います。

アメックスのほうが有名だと思うので、以下アメックスに統一します。決済インフラ企業としてはビザ(V)で詳しく書いたので、そちらをご参照ください。

【米国株】ビザ(Visa:V)の銘柄分析【利益率60%超】
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アメックス(AXP)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

アメックスは富裕層向けの国際ブランドで、かの有名なゴールドカードに代表される、「所有していることがブランドになる」というステイタスシンボルを価値としています。ちなみにブラックカードに至っては招待制で申し込みは不可、年会費35万円だそう。

ただ、こうした背景から、ビザやマスターカードのように日常生活でポイントがついて便利という使い道にはなりません。使えるお店もそれほど多くありませんしね。

アメックスはトラベラーズチェック等のサービス事業も展開していますので、空港ラウンジを無料で使えるとか、空港から自宅まで無料の宅配サービスが使えるとか、ステータス以外の実利は、旅行空港でのサービスがメインになります。

富裕層向けビジネスは効率の良いビジネス

私も起業を考えて色々と勉強したり話を聞いたりしていますが、やはりターゲットを富裕層に特化したビジネスというのは(個人のビジネスとしても)効率が良いと考える今日この頃。

だってこれですよ。ちょっと前に流行ったピケティの理論(r>g)を持ち出すまでもなく、富裕層というのはますますお金持ちになっているのですから。

参考世界の富裕層上位8人の資産、下位50%と同額

参考世界の1%の富裕層の資産、残りの全人類99%の資産を上回る

流石に数十億の資産がある相手と行かずとも、資産数千万以上のニューリッチ層としても客単価が非常に高く、付加価値のある製品、サービスを提供出来る顧客になります。さらに独自のネットワークを持っていて、気に入ってもらえらば周辺顧客も取り込める絶好のターゲットです(言うは易く行うは難し、ですがw)。

そして、それを裏付けるように、アメックスの一枚あたりカード利用単価はビザやマスターカードを上回ります。以下のデータでPayments Volume/Cardsで一枚あたり単価を出すと、4倍近い差があることが分かります(考え方、合ってますよね……?笑)。

  • ビザ:2,274ドル(約25万円くらい)
  • マスターカード:2,134ドル(約23万くらい)
  • アメックス:8,711ドル(約90万くらい)

(出典:ビザ)

会員制ビジネスモデルという強み

ビザやマスターカードとの違いがもう一つあり、それがビジネスモデルの違いになります。

何度か話題にしたのですが、ビザもマスターカードもカードの発行(イシュア)はせず、金融機関が発行します。対して、アメックスは自らカード発行を行いますので、カード決済の代金を支払う必要がある=貸し倒れリスクを有しているという点が異なっています。

とはいえ、悪い点ばかりでもありません。まずイシュアが受け取る金利収入が入りますし、最終消費者に接点を持つことで様々な付加サービスを展開することも可能です。富裕層の購買情報が手に入るというのはビジネス展開に大いに好影響があるものと推測します。

会員制ビジネスというものは、顧客囲い込みの強力なビジネスモデルです。コストコの会員制クラブ、アマゾンのアマゾンプライム、楽天をはじめとした各社のポイントサービス、みんな自社サービス経済圏で回遊させ、依存させることで安定した収益を上げるのです。特にコストコは、仕入れ値の90%近い価格で販売しており、利益をほぼ年会費で上げている会社です(そのうち記事にします)。

決算から

また前置きが長くなりました。決算を見ていきます。

直近の売上成長率は右肩下がりのマイナスで、あんまり調子良くないっぽいですね。

(出典:アメリカン・エキスプレスIR)

項目別に見ましょう。

(出典:アメリカン・エキスプレスIR)

  • Discount revenue:売上の50%を占めるカード手数料収入です。売上の8%近くを占めていたコストコとの独占契約終了によって規模減が発生しており、今後顧客引き止めが出来るかが鍵になります(余談ですが、コストコも利用者に富裕層が多いデータがあります)。
  • Net card fees:これがカードの年会費収入ですね。世界4位とはいえシェアは1%程度なので案外少ないです。とはいえ、この部分はほぼそのまま利益になるので、利益率への貢献度が大きいセグメントです。
  • Other fees and commissions:その他の収入・コミッション全般で、消費者向けのトラベラーズチェック、保険サービスあたりが対象です。延滞料なんかも含まれるらしいですね。
  • Interest income:これはローン金利収入です。ローン事業という金融業を展開している点もビザやマスターカードと異なります。リーマンショック級の金融危機が来ない限り、ローンビジネスは安定したストック収入に寄与します。

ついでに費用も見てみましょう。最多を占めるCard Member Rewardsはトラベラーズサービスの費用ですね。あとは、以下のように広告マーケティング費用が大きくなっている点がポイントだと思います。

(出典:アメリカン・エキスプレスIR)

ビザやマスターカードもしょっちゅうTVCMを耳にしますが、アメックスにとっての広告はブランドイメージのために必要なものです。

例えば、ロレックスみたいな高級時計の広告が普通のビジネス誌に載っている理由をご存知でしょうか。あの広告は雑誌の読者に買ってもらおうとしているわけではなく、ロレックスは高級時計なんだよというイメージを一般の人にも認知させることで、既にロレックスを保有している人の利益を上げるために打っているのです。ブランド戦略というのは奥が深いですよね。

地域別売上高は米国が75%以上を占めているようです。

あと報告セグメントとしては以下のものがありますので、一応追記(四季報はこっちですし、アニュアルレポートにも報告セグメントとして記載があります)。

  • U.S. Consumer Services (USCS):米国の一般消費者向けサービスで、全体の37.7%を占めます。クレジットカード決済以外にも、トラベラーズチェック等の周辺サービスも含まれます。
  • International Consumer and Network Services (ICNS):国際ネットワークサービスは全体の17.2%。
  • Global Commercial Services (GCS):国際商業サービスは全体の30.6%。
  • Global Merchant Services (GMS):マーチャントサービスは全体の14.8%。

競合

競合は5大国際ブランドで、特にダイナースは同じ富裕層向けで競合する企業です。

ビザとマスターカードについては記事を書いていますので、合わせて読んでもらえるとうれしいです!

【米国株】ビザ(Visa:V)の銘柄分析【利益率60%超】
【米国株】マスターカード(Master Card:MA)の銘柄分析

シェアとしてはビザ+マスターカードで8割以上を占めており、アメックスは2%以下しかありません。金融機関と提携しているビザやマスターカードと、ブランド維持のために自社だけで発行するアメックスとでは、カード発行枚数も桁が違いますしね。

ただし、売上高としては、金融業や旅行業を持っているアメックスの方が倍以上大きくなっています。

市場

これはビザに記載しているので、そちらのリンクを貼っておきます。

【米国株】ビザ(Visa:V)の銘柄分析【利益率60%超】

まだ現金社会の日本を含め、世界中でクレジットカード決済が主流になっていく、という話を書いています。

リスク要素

金融危機の貸し倒れリスク

ビジネスモデル的に貸し倒れリスクが発生し、実際にリーマンショック後は数多くの貸し倒れが発生しています。下のPLで過去10年売上を見てもらえれば分かる通り、09年に大きな凹みが見られます。

コストコ独占契約終了による顧客流出の懸念

全体の8%を占めていたコストコとの提携解消で、顧客流出が懸念されています。このニュースを受けて、15年から株価が大幅に下落しています。

参考コストコ、アメックスとの独占契約解消―買い物客への影響は?

また、ビザやマスターカードのほうが利用出来るお店が圧倒的に多くなっており、今のところターゲットが競合しないように住み分け出来ているとはいえ、今後もステータス頼りで大丈夫かという不安もあります(貧乏人の視点ですかねw)。

アメックス(AXP)の財務分析

PL

14年から減少傾向だったり、リーマンショック影響は流石に大きかったりなど、売上データを見ているといくつか分かることがあります。

ビザやマスターカードには及ばないものの、それはビジネスモデルの違いですので、単純に20%は優良企業ではあります。

とはいえ、PERについてはビザやマスターカードと数倍の差が開いており、投資家の中でアメックスのビジネスモデルは評価されていないと判断出来ますね。

BS

流動資産がほぼゼロなんですが、これ間違いかな……。IRでは15%強程度はありました。

ローンとカードの売掛金が固定資産計上で大半を占めていますね。流動資産はほぼ預り金(1年以内ならば流動資産扱い、定期預金等で1年以上だと固定資産扱いです)です。

(出典:アメリカン・エキスプレスIR)

自己資本比率そんなに高くないですね。10%台前半で推移しています。まあ預り金があるので、どうしても低く出てしまいます。アメックスのバランスシートは銀行業として考えたほうがいいんでしょうね(有名な話ですが、銀行はバーゼル合意に基づいた自己資本規制(国内ルール4%、国際ルール8%)があります)。

CF

キャッシュフローは素晴らしいです。結局は決済サービスなので、多くの投資を必要としていません。

イシュア事業には多少リスクもあれど、顧客を囲い込んでいるメリットもあり、これでキャッシュフローにこれだけの余剰があれば十分だと思われます。

株主還元指標

あまり配当還元する企業ではありませんが、自社株買いは積極的で、総還元性向は100%前後で推移しています。やっぱりこれはバフェットの意向なんでしょうか。

DPS成長は途切れ途切れで、連続増配銘柄ではありませんね。

直近配当利回り:1.53%

アメックス(AXP)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

アメックス(AXP)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

山谷が多いチャートになっています。リーマンショックの影響で2008~2009年頃に大幅下落、15年にはコストコ提携解消となってまた大幅下落です。

  • 最高値:96.24ドル(2014年)
  • 最安値:9.71ドル(2009年)

悪材料出尽くしていますが、まだリカバリ出来るモデル構築に成功したとは言い切れないので、この最高値を更新するのは先の話じゃないかと。

今後の値動き予測

5年チャート

コメントし辛いチャート模様ですが、コストコ影響で下落した15年と比べて、17年からは少し持ち直しています。どちらにせよ、事業の不透明性を考えると割安とは言い難い水準だと思います。

1年チャート

結構上がってきました。

結局株は需給で上下するので、今上がっている理由を考えても仕方ないのですが……コスト構造の整理や利益率の改善取り組みが評価されたのでしょうか?

アメックス(AXP)の投資戦略

まとめましょう。

  • 5大国際ブランドの一つで、富裕層をターゲットとした決済インフラ及び旅行等周辺サービスを展開している。
  • ビザやマスターカードと違って自らカードを発行するため貸し倒れリスクがある。一方でマージンは増加し、富裕層の購買情報を入手することも可能といったメリットも多い。
  • コストコとの独占契約解消で顧客流出の打撃を受けている状況。
  • 事業の不透明性を考えると、株価は割高水準に思う。

回答

やや不調な印象だったので安く仕込めるかと思って調べましたが、思ったより株価は高かったですね。問題はアメックスがここから巻き返せるかどうかです。

世の流れはエコシステム社会(ITならAPIエコノミー)であり、可能な限り汎用化してオープン化した方がシェア確保→利益も確保出来る状況です。アップル対グーグル然り、インテル対クアルコム然り、垂直統合モデルにはそれなりの良さがありますが、ネットワーク効果が働く決済ビジネスにおいてはどうでしょうか。

3分で分かる、API経済圏(APIエコノミー)の誕生とインパクト

金融機関にオープンなビザやマスターカードに対して、クローズドな代わりにブランド価値を有するアメックスがどこまで囲い込み出来るかという点が、購入検討のポイントだと思います。

色々検討しましたが、私は生き残るとは思っています。決済ビジネス自体がとても美味しい事業ですし、ターゲット層と周辺事業(トラベラーズ等)も含めて差別化していますしね。とはいえ、今の株価水準は不調の割に高すぎますし、利回りも安いので、当面は手を出したくありません。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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