運用資産総額世界2位のバンガード・トラストは優良ETFの宝庫ですね。当ブログでもそれぞれ記事を書いていますが、今回は一度まとめてみようかな的な記事です。
動画も一緒に作りました。
目次(クリックで飛びます)
バンガードのETFはなにがすごいのか
バンガードグループは、ブラックロックと並ぶ世界最大級の投資信託会社です。
こちらのほうが新しいですかね。なんと日本のGDPすら上回る、6兆ドルを超える資産総額を運用しています。
ブラックロック(BLK)の記事で書きましたが、ブラックロックが最大手で、バンガードトラスト、ステート・ストリートが続きます。この3社でシェアは7割近くを占めており、地位は盤石です。
3社とも低コストのパッシブファンドで成長してきた会社です。
米国の年金基金でもほとんどパッシブファンドで運用されていますから、資産総額はこれから一層開いていくことが予想されます。
バンガードのETFはなぜ安いのか
バンガードのETFはとにかく安いです。どれくらいかと言えば、こんな感じ。
パッシブファンドの運用においてコストは最重要です。市場は予測出来ないですが、コストはコントロール可能だからですね。
どうしてバンガードが他より安く提供出来るのかと言うと、以下の2点です。
バンガード社の株主構造
実は、以下のようにバンガードのETF内にバンガードが含まれており、ファンドを保有する投資家だけがバンガードの株主となっているのです。
これにより、自社の利益を外部に払う必要がなく、経費削減に回せるのです。
※一般的な投信会社における外部の株主への配当原資は、投資家が払う信託報酬です。この余計な費用がかかりません。
規模の経済(合同運用)
特許取得した運用方法で、通常は1つのETFに1つのポートフォリオであるところ、バンガードは複数のETFで1つのポートフォリオを組みます。下の図のような感じですね。
管理するべきポートフォリオ数が減り、構成銘柄上位の被っている企業の売買回数が減ることがメリットです。
補足:バンガードETFの出来高がトップじゃない理由
じゃあバンガードのETFは出来高もすごいのかというと、意外と他のETFより低かったりしますね。
これはバンガードが不人気とかではなく、バンガードETFはオプション市場の流動性が低いためです。
あまり気にしなくてよいです。
補足:資産運用業界の構造
資産運用業界というのは、たくさんのお金が集まるほど規模の経済が働きます。
コストの半分が人件費で、これはファンドを運営する上で必要な固定費用ですが、流入が増えていくことで按分されて安くなっていきます。
つまり、ファンドへの流入(純資産額の増加)があればあるだけ安定する構造です。
先程見たように、バンガードは資産流入がここ数年トップをキープしていますので、安定性にゆらぎはないでしょう。
ETF市場の資金流入傾向は加速していて、今や米国市場の出来高で4割を占めています。
補足:投資信託、ETFの信託保全制度
投資信託では投資家の資産と運用会社の資産は別々で管理されることが法律で義務付けられています。これを信託保全と言います。
このため、万が一投資信託を発行している企業が倒産しても、投資家の資産も一緒にゼロになるということはありません。これは海外ETFでも同様です。
バンガードのおすすめETF4選
VT
これ一本でポートフォリオが完成する、世界分散の代表的ETF。記事はこちら。
- ティッカー:VT
- ベンチマーク:FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス
- 基準価格:104.33ドル
- 信託報酬:年率0.08%
- 設定日: 2008/06/24
- ETF純資産総額:130.62億(米ドル)
- 月間出来高:2842万株
- 構成株式銘柄数:8,682銘柄
- 分配:四半期毎(利回り2.31%程度)
VTのポイント
- 信託報酬0.08%と圧倒的なローコストで、全世界の98%をカバーする世界分散投資の王道ETF
- 世界分散インデックスはすべて同じだが、時価総額比のため米国の構成比率が55%近いことに注意
- 主要構成銘柄はGAFAMはじめITと金融セクターを中心にバランス良く配分
- 個人投資家人気も非常に高く、Fund of the Yearでは10年連続トップ10キープ
これ一本で資産運用が完結する点から、私は一番おすすめできるETFだと思っています。
同じジャンルのETFと比べても、銘柄数の多さや信託報酬の安さが際立っていますね。
VTI
米国株式市場の99.5%を網羅するETF。記事はこちら。
- ティッカー:VTI
- ベンチマーク:CRSP USトータル・マーケット・インデックス
- 基準価格:220.37ドル
- 信託報酬:年0.03%
- 設定日: 2001/05/24
- ETF純資産総額:119,334百万(米ドル)
- 月間出来高:26,982万株
- 構成株式銘柄数:3579銘柄
- 分配:四半期ごと(直近利回りで年1.66%程度)
VTIのポイント
- 米国市場の99.5%をカバーするETF
- 米国市場の高いリターンをそのまま享受できるため、期待リターンが非常に高い
- 構成銘柄トップはやはりGAFAMで、ITセクターが20%以上を占める
- 信託報酬0.03%というほぼゼロみたいな低コストを実現
米国市場は長期で見て日本など他国より高いリターンを叩き出し続けてきた市場です。資産運用を考える上で絶対外せないでしょう。
同じ米国市場への投資といえばS&P500連動のVOOもありますが、私はVTIをよりおすすめしています。
両者の違いは銘柄数だけです(VOOの構成銘柄はすべてVTIに含まれています)が、過去リターンではわずかにVTIが勝っています。
財務優良企業を集めているS&P500のほうがリターン高くなりそうですが、小型株効果と銘柄組み換えタイミングでの高値買いで差が生じているようですね。
VWO
新興国株をまとめたETF。記事はこちら。
- ティッカー:VWO
- ベンチマーク: FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ中国A株トランジション・インデックス
- 基準価格:52.98ドル
- 信託報酬:年率0.10%
- 設定日: 2005/03/04
- ETF純資産総額:8,663,941百万(米ドル)
- 月間出来高:17,066万株
- 構成株式銘柄数:5,222銘柄
- 分配:四半期ごと(年平均利回りは2.5%程度)
VWOのポイント
- 一本で世界中の新興国株式へ投資できるETF
- 中国が4割超えてトップ、かつアジアが全体の7割を占めている構成
- 中国テンセントやアリババをはじめ、テクノロジー株が多め
- 信託報酬や出来高は新興国株式ETFとして文句ないレベル
長らく40ドルを中心として、30ドル台はお買い得、45ドルで折り返しの壁というのが何年も続いていましたが、最近は上抜けてしまいました。
米国株高やコロナ対策での異次元量的緩和政策を考えると、新興国株は次に上がる可能性が高い市場とも言えるでしょう。
VYM
人気の高配当株を取り揃えたETF。記事はこちら。
- ティッカー:VYM
- ベンチマーク: FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス
- 基準価格:107.33ドル
- 信託報酬:年率0.06%
- 設定日: 2006/11/10
- ETF純資産総額: 21,936百万(米ドル)
- 月間出来高:4,433万株
- 構成株式銘柄数:396銘柄
- 分配:四半期ごと(直近利回り3.49%程度)
VYMのポイント
- VYMは大企業、金融系の株が多い点が特徴で、やや景気変動の影響を受けやすい
- 過去利回りは2.5%~4%くらいで、市場平均より高い利回りを実現
- HDVとはいろいろ構成銘柄の違いなどあるものの、どちらも優良ETFと言える
高配当株ということで、インカムゲインのチャリンチャリン期待で買う人も多いハズ。
そもそも配当再投資の優位性についてシーゲル先生の赤本でも説明されている通りで、高配当ETFを一種のスマートベータと考える人もいます。
いずれにしても長期に渡って安定的な配当をしてくれる優良株ばかり集まっているので、ポートフォリオに組み込みを検討して良いと思います。
インデックスファンドについて
言い方がいろいろあるのですが、インデックスファンド=eMAXIS Slimとかの投資信託ことだと思ってください。
インデックスファンドとETFの違い
インデックスファンドとETFの違いは以下の通りです。
主なポイントとしては以下2点になりますが、正直そんなに変わらないというのが実情です。
コスト
インデックスファンドは若干信託報酬が高いものの初期投資は無料(ノーロード)です。ETFは初期投資(購入費用)が発生する反面、信託報酬は格安のものが多いです。
世界分散、特に新興国のインデックスファンドは以前は高コストと言われていましたが、かなり下がりましたね。
米国株の購入手数料も劇的に下がったとはいえ、コスト面でのETFの強みはほぼなくなったと言えます。
細かいことを挙げるなら、ETFは約定価格差分だけ得をするケースがあります。これはETFが株式同様リアルタイムで取引出来ることに対して、インデックスファンドはその日の取引価格が固定される関係で、市場価格と差が出るためです(ブラインド方式)。
逆に分配金なしのインデックスファンドであれば、分配金に対する課税が繰り延べ出来ますので、税制上有利になります。利確時まで課税が先延ばしになる点はプラスです。
ただこれもちゃんと計算すると、思ったほどの差にはならないことがわかります(もともとの信託報酬の差を覆すには、数十年かかる計算)
再投資
自動で再投資出来るインデックスファンドはもちろん、米国株も定期買いつけサービスが出てきているので、この点もあまり差はないですね。
唯一、分配金再投資のDRIP制度がない部分はETFのマイナスです。
なおちょうどこの記事更新しているときに、マネックス証券で配当再投資&定期買いつけサービスを開始する予定とプレスリリースありました。
要するに
運用期間当面のコスト優位のETFを取るか、再投資の自動化で手間いらずのインデックスファンドを取るか、という違いです。
好みの差だったり、世界大手ファンドの運営母体という安心感をどう考えるかかなと。
補足:為替リスクについて
為替リスクはどうなんだと思う人がいるかもしれませんが、別に円建てで買おうがドル建てで買おうが変わりません。
ETFや投資信託の価格は、保有資産を取引通貨に一時的に換算した数字だということです。
例えば世界市場が20%成長し、同時に10%円安が進んだ場合、こんな感じで同じ計算結果になります。
- 日本の投資信託を買っていたら、保有資産価値が1.2倍になりますが、保有資産を買うための円の価値が0.9倍になっているので、1.08倍になります。
- 米国のETFを買っていたら、保有資産価値は投資対象が同じなのでやはり1.2倍になりますが、保有資産の価値を計算するために円に換算すると、円安で0.9倍になるので、1.08倍になります。
米国など世界株に投資している資産に対する為替リスクはありますが、それは円建てでもドル建てでも同じことがわかると思います。
動画もよろしくです。
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資産運用会社自体が超がつく優良株です。バンガードは上場していませんが、ライバルのブラックロック(BLK)は上場しています。
だいたいのETF記事まとめ。
最初にスタートするならつみたてNISAからでいいと思います。
ではでは。