【米国株】アイ・ビー・エム(IBM)の銘柄分析【高配当銘柄】

米国株

今回はIBM(IBM)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。バフェット銘柄としても非常に有名ですが、シーゲル銘柄としては典型的な「成長の罠」であるとされています。

長らく停滞していましたが、ここにきてようやく復活の目処が立った印象がありますね……。

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IBM(IBM)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう……ということで色々と書きますが、資産の大多数をIBMに投入しているブロガーの方がいらっしゃいましたので、投資を検討する上で絶対参考になると思います。

IBM 2016年第4四半期(4Q)の決算発表!確実に復活しつつある

事業内訳

IBMは結構抜本的に事業構成を変えている会社です。1960年代はメインフレーム「system/360」を筆頭に長らくハード屋をやっていましたが、PCを捨てプリンタを捨てxサーバーを捨て半導体を捨て、今やデジタルサービスビジネスが中心です。GEと並んで、こうした選択と集中が上手いという印象があります。

下は16年度4Q決算データから引用していますが、ハード/ソフト/サービスという括りではなく少しわかりにくくなっています。

(出典:IBM IR情報)

IBMは戦略的分野として今後成長を牽引するであろう5つの分野に注力していて、それらが既存ビジネスの中で対応しているために、決算データも複数にまたがっています。

5つの分野とは、アナリティクス、クラウド、モバイル、セキュリティ、ソーシャルです。現時点で、戦略的分野の売上が全体の41%を占めるまで成長してきました。

(出典:IBM IR情報)

クラウド、モバイルの成長が特に高い傾向を示しています。

(出典:IBM IR情報)

ただ、この5分野のうち、IBMの真価が発揮できるのはクラウドとアナリティクスだと思うんですよね。ソーシャルやモバイルは出遅れ感があり、IBMの付加価値は見出しにくいです。

15年アニュアルレポートでは、これら5分野で13億円の投資をしたことを明かしています。

(出典:IBM IR情報)

逆に、既存事業はほとんど全て収益低下傾向で、これが売上減少の原因、増収増益転換のボトルネックになっています。

ちなみに、地域別売上では米国35%程度、残り海外が65%と典型的なグローバル企業です。

IBM決算書から

という前提を踏まえて、決算書を読んでみましょう。

Cognitive Solutions

(出典:IBM IR情報)

Cognitiveは認知、認識という意味ですが、アナリティクス(AI:Watson)、セキュリティ、クラウドサービスなどが該当します。プラットフォームビジネスであり、今後も規模拡大に向けて投資継続するということです。

Global Business Services

(出典:IBM IR情報)

クラウド、モバイル、コンサルティングといった、海外サービス事業ですね。ERPのようなこれまで稼ぎ頭だった分野は収益低下しており、全体で4%の減少となっています。

Technology Services & Cloud Platforms

(出典:IBM IR情報)

IaaSやSaaSをはじめとした、IBM主力事業となりつつあるクラウドサービスはここに集結しています。

Systems

(出典:IBM IR情報)

一部クラウド収益も入っているのですが、7割くらいはハードウェア(既存ビジネス)の収益ですね。Power Systemsはサーバの名称です。YoYでマイナス12%と、下落傾向が続いています。この枯渇を補うべく、新規事業への進出に舵を切ったというわけですね。

競合

既存ビジネスは切り捨てる方向に進んでいますので、今後は「クラウド」や「AI」といった戦略的分野の競合について考える必要があります。

クラウドサービス

クラウド市場ではアマゾンのAWSが圧倒的なリーダーで、マイクロソフト、IBM、グーグルの二番手グループがその後を追っています。

これら4社の中でIBMの強みと言えば、やっぱりハード屋出身であるということです。ソフト屋がハードビジネスに参入することが簡単ではないように(グーグルでもグーグルグラス等で失敗している)、信頼性や一貫したトータルソリューションという点で他社を上回っていると思います。

ということでIaaSにおいては強みを発揮できそうで、今後市場成長を牽引するSaaSではどうかなと思ったのですが、SaaSのトップがIBMみたいですね。今後はWatsonをはじめとしたAI、データアナリティクスが勝敗を分けると思います。

(出典:IHS)

AIはなんでもやれる代わりにマネタイズ戦略が重要になってきます。汎用ソリューションかカスタマイズか(プラットフォームなら前者しかあり得ないがSI含めたトータルソリューションを有するIBMなら後者も可能では?)、BtoB、BtoCどちらを軸に攻めていくのか。クラウドとAI(ビッグデータ)は相乗効果が高いビジネスモデルが期待できます。

3分で分かる、IT系テーマの全体像まとめ キーワード、俯瞰図、ロードマップ等

以前ビッグデータの活用について記事を書きましたので、合わせてどうぞ。

ビッグデータについて 統計学があればビッグデータは不要なのか

クラウドについて細かい情報は以下の記事をご参照ください。

3分で分かる、クラウドサービス(後編) 今後の展望、市場規模、AWS

競合のアマゾン、マイクロソフト、オラクルの個別銘柄記事はこちらから。

【米国株】アマゾン(Amazon:AMZN)の銘柄分析
【米国株】マイクロソフト(Microsoft:MSFT)の銘柄分析
【米国株】オラクル(Oracle:ORCL)の銘柄分析

AI

こちらも競合はグーグルやアマゾン、アップルなどですね。

日本ではメガバンクのコールセンター自動運用にIBMのWatsonが使われているとニュースになっていますが、以前書いた記事の通り、AIの本格普及期は18~20年以降になります。

3分で分かる、AI・ディープラーニングの将来性 ロードマップ、市場規模とか

ここ数年減少が続いている売上や利益の反転タイミングは、こうした新技術、新事業のロードマップを見ていると2018年以降になると考えられます。

市場

前述のため割愛。

リスク要素

デジタルサービスビジネスの競争激化

AWSやAzureといった強力なライバルひしめくクラウド事業は、ますます競争激化していくと思われます。

Watsonは今のところブランドとしても優位に見えますが、この市場は数か月先も分からない業界なので、注意が必要です。予測しにくいということ自体がリスクですね。

高配当企業のビジネス変革

ビジネスモデルの移行途上の中、ビジネス環境は競争が激化しています。IBM単体で見れば十分お金持ちの会社なのですが、新規事業へ投資の源泉となる「金のなる木」が既存産業にない点が痛手です。

加えて、後ほど見るように、IBMは投資家還元性向が非常に高く、成熟企業らしい高配当&高還元を実現しています。それは非常に嬉しいのですが、ビジネスモデル転換期にはマイナスの影響があるのではという懸念があります。無配で突き進むグーグルやフェイスブックが大型買収しているのに対して、IBMの買収案件は小さいものが多くなっているとか。

しかしながら、選択と集中はIBMの得意技なので、上手く盛り返せるようにも思います。過去からの信頼を積み重ねて優良顧客とパイプがあったりと、古くからある大企業はバランスシートに出て来ない価値が大きいんですよね。

IBM(IBM)の財務分析

PL

売上、利益ともに縮小傾向ですが、これは選択と集中の結果なので仕方ありません。これで19四半期連続の減収ですが、それは旧ビジネスの減少分であって戦略的分野は増収増益が続いていますので、どこかで反転することになると思われます。問題はいつ反転するか、ということですね。

自社株買いを度々行いますので、利益成長がなくともEPSはほとんど右肩上がりです。

営業利益率は20%弱ですが、ROEは10年平均でも75%と異常な数字になっています。

しかしまあ縮退している企業がこんなROEを出せるわけもなく、からくりがあります(単に投資家還元意識が強いのか、高ROEを維持したいのか、正確な意図は分かりませんが)。

これは覚えておいたほうがいいのですが、IBMの高ROEの要因は主に財務レバレッジを効かせた自社株買いですね。そもそも、

ROE(Return On Equity:自己資本) = 当期純利益 ÷ 自己資本

あるいは、ROE = EPS ÷ BPS

であることを思い出してください。

チャート型バリュー投資家が見るべき経営指標について

要するに、ROEを上げるだけなら借金をして自社株買いを行い、発行済株式数を減らせばいいわけですよ(そしたら自己資本が減りますね)。IBMの財務レバレッジは平均と比較してずっと高くなっています。

そして、自社株買いを続けた結果、2000年から現在までで発行済株式数は脅威の「半減」ということになりました。

BS

上で見たように自社株を借金で買ってROEを上げているため、固定費が増加して自己資本比率が非常に低いバランスシートです。財務健全性は低めの評価がつきます。

CF

キャッシュ余剰、キャッシュの推移は非常に安定的で、フリーキャッシュフローに余力があります。

株主還元指標

株主還元は自社株買い含めて100%を超えており、また継続的に増配しています。上で見た通り、自社株買いが圧倒的に多いです(配当2割、自社株買い8割)。自社株買いの一部を配当に回せばまだまだ連続増配の余力十分、しかもこれから戦略的分野が収益を上げてくる段階に入りますから、当面は安泰だと思います(自社株買いは続きそうですけども)。

投資家還元は配当だけではないので、自社株買いも含めた総還元性向で見るべきですね。

IBM(IBM)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

IBM(IBM)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

コメントに困る微妙な株価推移ですね~。00~10年まで、70ドル~140ドルのレンジに捕まり続けていましたが、11年にようやく抜けて以降、調子よく200ドルを突破しました。

  • 最高値:215.9ドル(13年3月)
  • 最安値:32.5ドル(97年)

ということで、70~140、140~210という2つのレンジを想定しておくべきでしょうね。140は節目の数字として強力な抵抗帯になっています(直近も一発で弾き返しました)。

今後の値動き予測

5年チャート

毎期の売上減少に伴って調子を落としている時期です。直近決算では戦略的分野への投資が実りはじめたことを伺わせる内容が多く、あとは業績がついてくれば再反転となりそうです。

1年チャート

今年は調子いいです。140~210レンジの間にほとんどポイントがなく、上限である210にタッチするまで上昇しそうです(N字のチャートが形成)。

IBM(IBM)の投資戦略

まとめます。

  • 戦略的分野としてアナリティクス、クラウド、モバイル、セキュリティ、ソーシャルの5分野に集中投資。事業変革の最中であり、徐々に売上の柱になりつつある
  • 既存ビジネスがブレーキとなり、売上自体は19期連続減少
  • デジタルサービスビジネスは競争の激しい市場で、先行きは不透明
  • 高いROEは財務レバレッジを効かせた自社株買いの結果であり、総還元性向は高いがその分自己資本比率等の安全性指標は低い
  • チャートには2つのレンジがあり、140ドル付近が重要な節目に見える

回答

やや高い株価と、高めの配当利回り(3%)、既存ビジネスの縮退、新規ビジネスの競争激化と、難しい投資判断が求められる会社です。どちらにせよ、現在価格はリスクリワードに対して「買えなくはないけど、やや割高」な印象です。

140ドルを中心点(大きく見て、70ドル~210ドルのレンジ)にしても、業績悪化時でも増配が維持されれば高い利回りが期待出来ますし、170~180ドルが初期投資でも損益分岐点切り下げてリスクリワードが釣り合います。まあ、配当再投資銘柄は購入タイミングばかり絞っても仕方ないですけどね。

とりあえずもう少し様子見にしておきます。140ドル付近まで落ちたら本格的に出動を考えたい。今の水準なら他の株やETF、インデックスファンドもあることですしね。

色々言われていますが、IBMの永久保有銘柄としての適格は十分だと思います。ハードウェアの会社から転身してきたように、新規ビジネスへと事業軸を上手く乗り換える経営手腕に期待します。


書くところなくて飛ばしましたけど、IBMはレイオフ(解雇)企業でもあります。かつてコンピュータ事業を整理する中で6万人ものレイオフを実行しています。

華やかな事業ポートフォリオを有し、その期待値の高さとのギャップからEPS成長率で勝るXOMに対して投資収益では大きく劣っていたIBMですが、インデックスファンドの優位性が浸透したことや、IBMの長期不振が重なったことから、今後は期待値が逆転する、ということがあるかもしれません。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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