【米国株】ブラックロック(BlackRock:BLK)の銘柄分析

米国株

今回はブラックロック(BLK)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

投資家に大人気のETF「iシェアーズシリーズ」をはじめ、インデックスファンドを運用するお馴染みの会社です。

その運用総額はなんと7.8兆ドル(約824兆円)で、日本のGDPを上回る規模になっています。

動画

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ブラックロック(BLK)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

まずは事業について見ていきましょう。IRから情報を抜いてきます。

売上は145億ドルです。単純計算で、7.8兆ドルの運用資産に0.2%の手数料をかけると約145億ドルになりますね。

注目すべきは利益率で、40%超えという高水準です。

主力のiシェアーズS&P 500 Index(IVV)は経費率0.04%ですから、ほとんどマージンはないレベルのはずですが、これだけの利益が乗ってきます(IVVはブラックロックのファンド全体の10%近くを占めています)。良いビジネスですねえ。

ブラックロックは手数料が低い指数連動型ファンドを主力にしていますが、アクティブ投信も3割近く残っています。

ここは1%以上の手数料が取れますので、今も重要な収入源になっていることは間違いないでしょう。

さらに、現状構成や収益の内訳データからも多くのことが読み取れます。

  • ブラックロックの顧客は6割が個人だが、割合としては小さいリテールビジネスの収益力が高いこと
  • アクティブファンドは3割弱だが、収益の半分近くを担っていること
  • 株式が52%、債券(Fixed income)が31%あること
  • 投資先のメインは米国(67%)ですが、ヨーロッパやアジアでも一定割合を構成していること

直近決算

2020年3Q決算ハイライトから、コロナ影響なんかも見ておきましょう。といっても、現在ダウ平均絶好調のため、1Qの凹みからは完全回復しています。

後ほど見るように、景気変動の影響を受けやすいのは間違いありません。コロナ第一波の20年1Qは株価も大幅に落ちましたが、あっという間に持ち直した形です。

競合

ブラックロックのiシェアーズETFシリーズは、ETF運用残高で世界の4割近い市場シェアを占めていて、債券ETFに至っては5割を超える、最大手資産運用会社です。

ブラックロックが最大手で、バンガードトラスト、ステート・ストリートが続きます。この3社でシェアは7割近くを占めており、地位は盤石です。

3社とも低コストのパッシブファンドで成長してきた会社です。逆にアクティブファンドのフィデリティ、アリアンツなども運用額は増えていますが、伸びは緩やかです。

成長率で言えばバンガードも凄いことになってますが、バンガードよりさらに一回り大きく、海外展開も早いです。

(出典:野村資本市場研究所)

最新データだとこんな感じですね。バンガードが伸びて上位2社というイメージかもしれません。

(出典:Willis Towers Watson)

米国の年金基金でもほとんどパッシブファンドで運用されていますから、資産総額はこれから一層開いていくことが予想されます。

規模の経済の優位性

資産運用業界というのは、たくさんのお金が集まるほど規模の経済が働きます。コストの半分が人件費で、これはファンドを運営する上で必要な固定費用です。

契約が増えるほど一契約あたりのコストが低下し、0.04%という驚異的な低コストを生み出すことが出来ます。

また、預かり資産の多さは当然ながらファンドの安定に繋がります。

ユーザーにとって、途中でファンドを乗り換えることほど無駄なことはありません。解約時点で一旦現金化されるため税金が発生するか、多くの場合途中解約する(せざるを得ない)のは不景気時なので損が出ます。乗り換えめんどくさいですしね。

向こう30年40年の運用を見据えて、大きくて安定したファンドにお金を預けたいと考えるのは自然なことです。

なので、新規ファンドが低コストを引っさげても、この寡占市場構造を破ることは出来ないでしょう。

そもそも同じコスト競争の土台に立てないし、立ったとしてもなおファンドの資産規模の安定感が違います。

市場

投資市場は拡大傾向にあり、その中でもパッシブ系インデックスファンド、ETFの伸び率は突出しています。今や米国市場の出来高で4割を占めています。

上で見たように新規参入障壁は厚く、ETF市場の資金流入傾向はブラックロックの立場を一層強めることになります。

(出典:野村資本市場研究所)

アクティブファンドも伸びているのですが、それ以上にパッシブファンドの伸びが凄まじいということです。15年で10倍以上ですからね。

(出典:PwC)

資産運用業界全体としては、コスト競争が原因で、過去10年で利益率が25%近く縮小したそうです。

また、近年は年金基金の運用学が巨大化しており、年々存在感を増しています(他も伸びてますが)

(出典:PwC)

人類の平均寿命は2050年に90歳を超える予測が立てられています。100歳以上も珍しくなくなるでしょう。これまでのように60歳でリタイアしてから40年もあるということです。

うーん、もっと長いこと働くことになりそうですね……。

(出典:内閣府)

40年というのは長いです。そして時間は資産価値にも大きな影響を与えることを忘れてはいけません。

各国はインフレ目標をおよそ2%前後としているのですが、2%のインフレが続くと約36年で資産価値が半減します。もしインフレ率が7%なら約11年で半減です。

老後の生活で最も恐ろしいのはインフレの脅威で、株式はインフレによる資産減少を回避出来る資産です。

そう考えると、これから資産運用は誰にとっても必須科目となっているでしょう。つまりブラックロックのお客さんが増え続けるということです。

リスク要素

今後100年の株式市場リターン

リスクというものではありませんが、今後の株式リターンは過去より下がる可能性は高いと見ています。

株の期待リターンは4~5%くらいで見といたほうがいいと思う

過去200年近くで平均リターンは、インフレ調整後で約6.8%でした。しかし、近年の先進国ではもう成長率が安定していて、株のリスクも小さくなっています。

リターンの源泉を長期国債の金利+リスクプレミアムとして考えると、将来の期待リターンはせいぜい3%台で考えておいたほうがいいかも、ということです。

とはいえ、多少リターンが下がったとしても株式投資の優位性は揺るぎませんし、インデックス投資も優位を保ち続けるでしょう。ブラックロックの人気に水を差すことにはなりません。

経費率値下げ競争

詳しくはこちらの記事でも触れています。

インデックスファンド(ETF)は経費率0%まで値下げ出来るのか

経費率0%となる場合を考えたのですが、現状既にコストが0.04%まで下がっていて、ここまでくると最早あってないようなものです。

ここから0.01%を削ってわずかに上がるパフォーマンスよりも、ブラックロックの圧倒的な出来高と実績を優先するのが普通じゃないでしょうか。

運用総額の大きさ、資産流入の継続による安心感など、ファンドの運用継続性も重要なファクターになります。

景気後退時に株価は落ちる

思いっきり景気敏感株なので仕方ないところ。

後ほどチャートを見ますが、リーマン・ショック前の高値が250ドルくらいで、直後の2009年に88ドルまで1/3近く急落しています。

ブラックロック(BLK)の財務分析

PL

米国株式市場の好調を受けて売上が成長しています。利益率40%は優良業界のトップにポジショニングしているからこその水準です。

この水準を達成出来ているのは、たばこ業界のフィリップ・モリスでしょうか。

【シーゲル銘柄】フィリップ・モリス(Philip Moris:PM)の銘柄分析

例えばグーグルは21%、アップルが24%、アマゾンは5%程度です。こちらは研究開発費が莫大なので単純比較は出来ませんが、優れたビジネスモデルを有していることは分かるかと思います。

BS

自己資本比率が20%前後と低いですが、金融業界だとだいたいこの水準になりますね。

私達が預けたお金が金融機関の資産に計上されるためで、個人年金契約や個別の勘定資産が含まれているとあります。

自己資本比率の規制(BIS規制:国際業務なら8%以上)にブラックロックは当てはまるんですかね。10%は割っていないので、常に満たしていますが。

まあ投資運用業の圧倒的トップですから、安全性に問題はないでしょう。

CF

キャッシュフローはとても余裕があります。なにせ投資CFがほとんどないので、資金繰りに困ることはまずないでしょう。

ご覧の通り、営業CFとFCFがくっつくレベルで推移しています。

株主還元指標

一株当たり配当(DPS)は09年に据え置いた以外概ね右肩上がりで推移しています。総還元性向も毎年ほぼ100%で、投資家還元は十分です。

配当余力も50%近くあるので、長らく安定した配当は期待出来そうです。残念ながら株高によって利回りは低めに出ています。

直近配当利回り:2.08%

ブラックロック(BLK)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

ブラックロック(BLK)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

過去、リーマン・ショックで1/3近くに下落しました。

ただその後すぐ復帰して、リーマン・ショック直前の高値250ドルの壁を超えたのが13年頃。次に370ドルあたりで踊り場を作りましたが、トランプ相場に入ってそれも突破しました。

  • 最高値:715ドル(2020年)
  • 最安値(リーマン・ショック後):88.91ドル(2009年4月)

その後節目の500ドル前後で若干もたついたものの、結局止まらず。コロナショックで550→350ドルに大幅下落していますが、すぐ復帰して700ドルを超えました。

次はどこが抵抗帯になるのかな、というところ。

なお、ここ15年くらいをS&P500(赤色)と比較すると、以下のようにパフォーマンスで上回っています。

ただ、リーマンショック後の10年間で比較すると、S&P500に劣後しています。

また、株価の振れ幅はS&P500より大きくなっているので、下落時のマイナスは注意が必要です(以下はリーマンショック時の比較)

今後の値動き予測

5年チャート

20年コロナショック前までは550ドルを上値として押さえられていましたが、戻りの勢いで突破してしまい、ラインが見当たらないチャートを描いています。

今後は下限が550ドル、上限は750~800ドルあたりで止まるでしょうか。あまりきれいなチャートではないので、節目のラインや米国株価動向の影響が重要になると思います。

1年チャート

上放れした後、好調が継続しています。700ドルを瞬間的に超えたものの、節目として意識されていると思うので、このラインで高止まりする可能性はあります。

上値が押さえられ、下値が切り上がっていく構図だと三角保ち合いというチャートで、溜まったエネルギーは上に抜けていきやすいです。

ブラックロック(BLK)の投資戦略

まとめます。

  • ブラックロックは運用業界でトップシェア、預かり資産総額は日本のGDPを超える7.8兆ドルの巨大グループである。
  • iシェアーズ(IVVなど)に代表される低コストパッシブファンドを武器に市場を席巻。バンガード、ステート・ストリートと寡占市場を形成し、ブラックロックの利益率は40%を超える。
  • コロナショック後に550ドルの強いラインを突破し、現在は700ドルまで来ている。株高のため利回りは2%程度にとどまる。

回答

ビジネスモデルが非常に優れていて、業界でも圧倒的なポジションにいます。

これから自己責任で自ら資産運用をしていく時代になることを考えると、株式市場が成長する限りブラックロックも成長することが期待できます。

ブラックロックは今後も大安定銘柄に違いないでしょう。

 

こうなると投資可否判断のポイントは、S&P500と比較した優位性があるかどうかです。

現在の株高はどちらも同じですが、リーマンショック時など下落時のマイナス幅はブラックロックのほうが大きかったです。

これからの景気サイクルを考えると、景気敏感株ゆえの不安定さはありそうですが、長期で見て五分五分クラスのパフォーマンスを出してきたこともあります。好みの領域かなとも思いました。

あえて言えば、株高で投資益回りが低くなること、下落したところから算出するとS&P500を上回ることから、ちょっとこの株価だと手を出しにくい(あるいは買うなら安定性の高いS&P500にする)かなあという感じでした。

利益率は市場平均を倍以上上回っているので、これが過小評価されたタイミングで買いたいですね。


動画版再掲

 

S&P500より個人的にはVTIのほうがおすすめ。バンガードのETFですけど。

【VTI】バンガード・トータル・ストック・マーケットETFは超おすすめの米国ETF!

 

スタンダード・アンド・プアーズ(SPGI)も過去に分析しました。

【連続増配】スタンダード&プアーズ グローバル・レーティング(S&P Global Ratings:SPGI)の銘柄分析【米国株】

 

VISA(V)は利益率60%でした。

【米国株】ビザ(Visa:V)の銘柄分析【利益率60%超】

 

これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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