【米国株】ユナイテッド・テクノロジーズ(United Technologies:UTX)の銘柄分析

米国株

今回はユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。略称はUTCになります。

事業区分が多岐に渡る、所謂コングロマリットです。元々はユナイテッド・エアクラフト・アンド・トランスポートという会社で、現ボーイングとも一つの会社だったのですが、反トラスト法で解体されました。

【米国株】ボーイング(Boeing:BA)の銘柄分析

事業ポートフォリオ的には三菱重工業に近いでしょうか。最近は選択と集中で事業再編しており、ヘリコプター大手シコルスキーをロッキード・マーティンに売却しました。

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ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

事業は主に4セグメントに分かれています。4セグメントとも3年に渡って売上がほとんど横ばいです。

(出典:ユナイテッド・テクノロジーズ アニュアルレポート)

  • Otis:オーチス・エレベータ・カンパニーによるエレベーター事業になります。全体の2割を稼ぐ部門で、当然の世界トップシェアです。保守点検まで含めてのビジネスなので、利益率は他より高く、20%に迫ります(大抵の製造業にとって保守サポートは利益の源泉になります)。
  • UTC Climate, Controls & Security:ビルの空調、換気、防火システムやセキュリティ事業で、全体で3割近くを占めています。
  • Pratt & Whitney:プラット・アンド・ホイットニーは航空機や宇宙ロケット用のエンジンに関する事業になります。割合としては26%ほどで、他より利益率での貢献は低めです。エンジンビジネスですが、元々はプリンタがインクで回収するビジネスモデルと同じく、大赤字で販売し、補給品で利益を確保していました。近年は保守サポート込の包括契約でロックインするモデルらしいです→参考
  • UTC Aerospace Systems:航空宇宙システムは、商業航空のフライトバッグシステムや、サイバーセキュリティなどになります。

以下はUTCのビジネスを俯瞰したグラフになります。

軍事関連企業としても知られる同社ですが、割合としては12%に過ぎません。ロッキード・マーティンで見たように、主力のシコルスキー(ヘリコプター事業)を手放したためです。残りほとんどが工業機械(50%)及び航空宇宙産業(38%)ですね。とはいえ、航空機のエンジンや宇宙産業を有するUTCは、米国の軍事政策的にも絶対に潰せないはずです。

国ごとに見ると、米国が4割弱を占め、それ以外は海外売上となります。やや海外比重の状況で、ドル高が決算に悪影響を与えることになります。

(出典:ユナイテッド・テクノロジーズ アニュアルレポート)

面白いのがアフターマーケットが46%あるということで、安定した保守サポートサービスが売上を担うと同時に、顧客をロックインして将来の事業安定性を生み出していることも分かります。

個人ビジネスでも同じですが、真に必要なのはストック収入です。必死になって自転車漕いでフロー収入が入っても、漕ぐ足を止めればすぐに収入は途絶えてしまいます。特にUTCのように最先端技術を扱う企業においては、R&D投資の差(質と量)がそのまま競争優位の差につながります。UTCはこの安定性を担保に、目先ではない利益を追う投資が可能になるはずです。

競合

製品が多くて競合分析は非常に難しいです。ユナイテッド・テクノロジーズの持つ事業はほぼシェア1位か2位を確保しており、競合も国を代表する大企業ばかりです。

エレベーターではシンドラーやティッセンクルップ、航空機エンジンではGEとロールス・ロイスの3強です。

市場

持っている製品の範囲が広すぎて市場分析も難しいですね。ただ、ユナイテッド・テクノロジーズは典型的な資本財銘柄であり、景気変動に敏感です。

一応説明を入れると、設備投資は景気拡大局面で需要が増加する傾向にあります。これから景気が良くなって商品がたくさん売れると思ったら、生産量を増やそうとしますよね。生産を増やすために必要なのは、商品を作るための機械や設備を用意すること、つまりUTCなどから購入します。

だから機械受注統計は先行性が高く、景気動向指数においても先行指標として採用されているのです。これは逆に景気悪化が見込まれる場合も同じような動きをするため、資本財は景気敏感株と言われます。

リスク要素

資本財について

過去を見るとやや市場平均をアンダーパフォームします。ボーイング記事を見てください。

【米国株】ボーイング(Boeing:BA)の銘柄分析

資本財関連企業について、ちゃんと中身を見るとよく分かるのですが、価格競争や技術開発競争が激しいんですね。市場変化のスピードが早いというのは必ずしもいいことばかりではなく、市場トップシェアであっても数年で追い落とされてしまう可能性を秘めているということでもあります。

また、生活必需品などと違ってブランド価値というマージンの源泉があまりなく、利益率に明らかな差が出てしまっています。ここらへんも長期保有にイマイチ向かない理由でしょう。

成長の根拠

下のPLを見ての通り、業績はまーったくの横ばいです。

オーチスとビルシステム事業はアジア市場での後退(中国-9%、中東-28%)を米国、EUで補っている状況ですし、宇宙航空事業はR&D割合が増加して商業アフターマーケットの利益を相殺しています。

今後も一定の売上と利益率は保っていくと思われますが、代わりに劇的な成長もなさそうなのが何とも。競合ひしめく市場ですので、価格競争も激しいです。

ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)の財務分析

PL

見事に横ばいですねw

日本のコングロマリットよりも利益率やROEが一桁高いのは、流石米国企業です。

冒頭に日本で言えば三菱重工業に近いポートフォリオと書きましたが、あちらは売上4兆円、利益3000億(利益率7.5%)、ROE3.6%なので、各種指標はUTCのほうが上です。

BS

バランスシートもずっと横ばい状態です。良くも悪くも安定した企業なんですね。

CF

キャッシュフローもほぼ横ばい。最新年度で一気に悪化していますが、大量に借金して自社株買いしたためです。たぶん。

(出典:ユナイテッド・テクノロジーズ アニュアルレポート)

まあでも、全体的に見てこれだけ安定していれば何の問題もありませんね。

株主還元指標

総還元性向でも約55%、配当性向は35%前後と、あまり直接的な株主還元は多くない結果になっています。

直近配当利回り:2.16%

ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

やはり上がり気味のチャートです。

  • 最高値:123.50ドル(2015年)
  • 最安値:37.4ドル(2009年)

リーマン前の高値80ドル近辺は意識されている水準で、16年の下落のサポートラインになっています。あとはそろそろ高値更新に3度目の挑戦になりますので、超えれば抵抗帯がなくなります。3トップっぽい形なので短期だと悩む局面(4回目なら突っ込む)です。

今後の値動き予測

5年チャート

12~13年は好調ですが、それ以降はヨコヨコです。方向感なく、100ドルを中心に80~120でジグザグと上下していますね。

それぞれ上下ラインはそれなりに強い抵抗があるので、どちらかに当たると出来高も大きくなります。買うとしても、見えている80ドルが最低ラインでしょうか。

1年チャート

最後で上抜けしましたが、それまで面白みのないチャートを描いていました(トランプ影響がほとんど見えない!)。

ユナイテッド・テクノロジーズ(UTX)の投資戦略

まとめ

  • ユナイテッド・テクノロジーズはエレベーター、ビルシステム、航空機エンジン、宇宙システムの4セグメントで世界的な機械のコングロマリット。
  • アフターマーケットが半数を占め、顧客ロックインによって継続した収入が見込めるビジネスモデルになっている。
  • 売上は横ばい、利益も横ばいで、動きが少ない。
  • チャートはそこまで勢いを感じないものの、高値圏にある。

回答

ある意味こんな面白みのない会社もないのではないでしょうか。10年もの間、全く凹凸がないとは思いませんでしたw

お金を稼ぐなら集中投資一択ですが、長期の資産運用(守りの投資)なら分散を考えて、こうした資本財セクターも満遍なくポートフォリオに加えて良いとは思います。

あまり増やしすぎると市場平均を買えって話になるので、せいぜい1~2社。その選択肢には確実に入る企業だという印象を受けました。

とはいえ、買うとしたら最低でも80ドルくらいまで待たないと手が出せません。高いと買いにくいのは、単純に配当再投資の収益率が落ちることと、リスクリワードが適切に設定出来ず出口戦略も立てられないことが理由です。

ひとまず様子見でウォッチリストにぶち込んでおきましょう。


最近はちょっと短いかなと思ったり、過去記事の引用が多いなと思ったりで、どうでもいい小話を挟むことが増えてきましたw

せっかくブログ記事ですから、なるべくオリジナリティがほしいところですね。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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