【米国株】ボーイング(Boeing:BA)の銘柄分析

米国株

今回はボーイング(BA)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

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ボーイング(BA)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

世界一の航空機メーカーです。大型旅客機ボーイング787の他、軍用機や宇宙船、ミサイル等の設計、開発を行っています。

(出典:ボーイングHP)

こうした事業区分のため、政治的な色合いにも左右されやすいことや、資本財のため景気循環株であることが特徴になります。

一応、ボーイングの機体を雑に分類すると以下のようになります。

  • B787:ドリームライナー(長距離用の中型機)
  • B777:長距離用の大型機
  • B767:中距離用の中型機
  • B747:ジャンボジェット
  • B737:短距離用の小型機

決算書から

(出典:ボーイング アニュアルレポート)

事業内訳としては、主に以下の4セグメントになります(Defense, Space & Securityがそれぞれ分かれている格好です)。

  • Commercial Airplanes:主力の民間航空機事業で、全体の7割近くを占めています。
  • Boeing Military Aircraft:国内外の軍事事業がここに含まれます。構成比13%というのはどうでしょう、思ったほど多くはないと感じるでしょうか(ロッキード・マーティンのようなほぼ純粋な軍事企業と違って航空機メーカーですしね)。年々下降線を辿っておりますが、このうち64%が米国国防総省ですので、トランプになって状況変わる可能性も高いです。
  • Network & Space Systems:宇宙産業であるロケットの製造や衛星システムの構築の他、防衛システムや通信監視などがこのセグメント。また、民間衛星と軍事衛星両方を含むようです。割合としては10%程度ですが、それでも売上高は約70億ドルと規模が違いますね。
  • Global Services & Support:航空機のメンテナンスやエンジニアサポート、パイロットトレーニングといった事業になります。高収益事業部であり、年々拡大傾向にあります。

一方で営業利益を見ると売上高ほどの差がありません。というか、民間航空機事業の利益率が5%と低すぎるのです。逆に軍事事業とサービス事業は10%でそれなりの水準です。

(出典:ボーイング アニュアルレポート)

大型ジャンボジェットから小型機へ

下の図にある事業ハイライトの中で目を引くのは、2番目の民間航空機の受注数増加でしょうか。内訳では5の「Single-Aisle aircraft:単通路型航空機」、つまり小型の旅客機のシェアがダントツです。逆に大型ジェット機はほとんど市場がなくなっています。

(出典:ボーイング アニュアルレポート)

昔は大型ジェット機でたくさんの人を乗せて大都市同士を行き来する、ハブ&スポーク方式で運営していました。それが現在では、乗る時間や場所の融通がきく直行便が急増しました(サウスウエスト航空のビジネスモデルはMBAの本でよく見ますね:ちなみにサウスウエスト航空の機体は全てボーイング737)。

直行便は本数を増やす必要があって、かつ一回あたりの乗客人数も多くないために、より小型の機体がトレンドになっています(小型機のほうが航続時間も長いです)。ただ100席以下のリージョナルジェットと呼ばれる小型機では、カナダのボンバルディア社がトップです。

ちなみに、私は宇宙産業でも同じことが起こると思っていて、イーロン・マスクのスペースXが仕掛ける価格破壊と相まって、不可避のトレンドになると思われます。

3分で分かる、宇宙ビジネスの現状と未来

民需と官需

民需の代表となる民間航空機と、官需の代表となる軍用機や軍用衛星が両立しているボーイングは、比率を知っておくと事業内容が理解しやすいかも。

ただ、米国政府との契約が23%(米国国防総省、NASAなど)以外の記述は見当たりませんでした。Commercial Airplanesは民間なので、残りがほぼ官需として最大で32%となります。なんにせよ、米国政府の動向がボーイングにとっては重要です。

海外売上比率

海外売上比率は約6割ですね。中国、中東、アジアの比率が高い印象です(レポートの103ページにやっと見つけました^^;)。

(出典:ボーイング アニュアルレポート)

海外売上についてはちょっと注意が必要かと思っています。この中の一部ですが、軍事産業は政治的な色合いが強いからです。

防衛力の要となる戦闘機やミサイルを自国技術で賄えず、ボーイング依存の状況では、何があろうと米国に逆らうことは出来ません。石油の中東依存がリスクとして顕在化しているのと同じことです。米国との関係が悪化すると、ボーイングの受注競争に影響してくるはずです。

実際、エアバス社が立ち上がった背景には、ヨーロッパの軍事を米国に握られたくないというEUの思惑があります。なので、赤字続きの中でも優先的に受注させることで国策として育ててきました。

ボーイングは今後の成長をアジア圏に見ていますが、中国は独自に航空機を作ろうとしていますし、楽観出来ない気はします(中国の売上は減少傾向にあります)。15年に中国初の国産ジェット機が就航しました。

参考中国初の国産旅客機が就航へ、海外からは無駄遣いと批判も

競合

VSエアバス

エアバスは仏独西の企業連合。

現在、航空機市場はエアバスとほぼニ分しており、欧州の航空機産業を支配されたくないEUの思惑もあって、エアバスと熾烈な競争を繰り広げています。

13年のデータですが、徐々にエアバスの地位が上がってきているのが分かります。グラフは相対なので100%になっていますが、航空機産業のうち、2社が占める割合としては70%程度です。

(出典:CAPA)

注意したいのは、LCCや買い替え需要もあって市場のパイ自体は増加していますが、航空機の需要は今後小型機(リージョナルジェット)に偏るということ。

参考ボーイング、2035年までの20年間に世界の旅客機の数は2倍になると予測

(出典:トラベルWatch)

リージョナルジェットのトップシェアはボンバルディア社のCRJですし、日本のMRJ(三菱リージョナルジェット)も参入しています。もう一つ言うと、19席以下をビジネスジェットと呼び、こちらもボンバルディア社がトップです。

宇宙産業

宇宙産業においては、イーロン・マスクのスペースXが急成長しています。先日は再利用可能なロケット「ファルコン9」の打ち上げ成功し、コスト競争で不利に立たされています。

宇宙ビジネスは向こう2~3年でテーマ株になるはず
3分で分かる、宇宙ビジネスの現状と未来

ロケット開発には数年単位の時間がかかりますので、ボーイングがスペースX対抗の新型を投入出来るのは2020年以降らしく、独占体制は崩れてしまいます。以下の記事が大変参考になりました。

参考ボーイングの凋落の背景

市場

大体上で書いた通りです。米国政府の軍事費推移を載せておきます。オバマ政権では他国と正反対に、ひたすら削っていました。

(出典:防衛白書)

リスク要素

資本財の収益率はそれほど高くない

伝統的に、航空業界は景気循環するものとされています。つまり、好景気で良く見える株ということです。

ところが、シーゲル先生の赤本では、資本財の収益率は10.22%と市場平均を下回っているとの調査結果が書かれています。

ジェレミー・シーゲル「株式投資の未来」を読む
セクター平均リターン(%)
ヘルスケア14.19
生活必需品13.36
情報技術11.39
エネルギー11.32
一般消費財11.09
金融10.58
資本財10.22
電気通信9.63
公共事業9.52
素材8.18
S&P500平均10.85

ということで、一般論ですが長期投資にはやや不向き、不景気に仕込んで好景気に売ったほうが良い銘柄ということになります。

競争激化&小型化の逆風

問題は事業内訳で7割を占める航空機事業が営業利益率5%の薄利ビジネスになっているということです。少しのブレで赤字になりかねない脆さがあります。

しかも今後増加するリージョナルジェット、ビジネスジェットも、中大型機を得意としてきたボーイングには向かい風です。

政治的な問題

上述した通りです。今後主力としていくつもりのアジア圏においても、中国ロシアが米国対抗で自国の航空機メーカーを育てようという機運があるので、ローリスクではありません。

また、テロや疫病、政府間関係等の様々な要素で縮退する可能性があり、政治的安定が非常に重要な事業です。

アウトソーシングによる品質低下

航空機は自動車よりさらに多くの部品を必要とします。エアバスとの熾烈な価格競争のため、ボーイングは設計製造の多くを国内外にアウトソーシングしています(設計もですよ!)。

価格競争力は高まったかもしれませんが、緻密な設計製造が要求される航空機事業において品質低下は避けられない事態で、納期遅延も頻発しています。

ボーイングの優位性は技術優位によるものですので、品質低下は競争力を下げ、長期的に見ればライバルとなる他国の航空機産業を育ててしまっているのではと思われます。

輸送手段の代替

人の移動が益々増えてマーケットが拡大している点は前述の通りですが、将来的に航空機以外の輸送手段に取って代わられるリスクはあるでしょうか。

航空機は小回りが効かないもののスピードで勝るものはなく、当面航空機に変わる輸送手段はないように感じます。

あるいは、宇宙産業が進歩すればロケットが輸送手段として最速になるかもしれません。ただそれはボーイングにとって事業内訳が変わるだけでしかありませんので、問題ないのではと思います。

ボーイング(BA)の財務分析

PL

景気循環株なので、売上高はリーマンショック影響で下落して、ここ最近は上昇しています。最初は国内主義のトランプになってどうなるかと思いましたが、対外強硬姿勢でむしろ軍事産業に追い風が来そうです。

そして利益率は5%程度と非常に低いですね。儲からない産業であることが分かります。

ROEは異常な数字になっていますが、バランスシート上で自己資本がほぼゼロなのでなし得るものです。

BS

自己資本がほとんどありません。年によってはマイナスを記録したこともあり、バランスシートは不健全な状態と言えるでしょう。

フィリップ・モリスも同じようなバランスシートでしたが、あちらは安定した事業収入をベースにした投資家還元ですので、ライバルと価格競争中のボーイングとはちょっと質が異なっています(こちらはこちらで、政治的な理由で潰れない安全マージンがあるのですが)。

ちなみに、アニュアルレポート上で研究開発費(R&D)は16年度だけで46億ドルでした。この中に入札に向けて費やした諸費用が含まれるようで、これだけでも3.1億ドルあります。

CF

業績拡大と共にキャッシュフローは安定してきましたが、リーマンショック時にはFCFもマイナスに陥っていることから、そこまで安全性が高くないことも分かります。

※自己資本のマイナスが、投資家還元のために生まれたものではないということも分かりますね。

株主還元指標

事業に余裕が出てきたのでしょうか、ここ3年間で急激に増配をしています。それでも過去平均配当性向は40%ですので、あまり配当に熱心な企業でもありません。株価の上昇をもって投資家に報いる企業です。

直近配当利回り:2.36%

ボーイング(BA)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

ボーイング(BA)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

いくつか意識されていそうな価格帯に線を引きました。サポートはリーマンショック前最高値の100ドル(16年に一度反発してそこまで落ちています)、次が150~160ドル近辺でしょうか。

  • 最高値:184.48ドル(現在)
  • 最安値:24.73ドル(2003年)

リーマンショック頃に業績悪化し、株価も大幅下落しました。当ブログの分析銘柄はディフェンシブ銘柄が多く、リーマンショック影響が小さかったのですが、ボーイングは過去の上昇を全て吐き出す勢いで下落しました。

リーマン前の25ドル近辺はすっかり遠のいてしまい、当分落ちて来ないように見えますが、またいずれリセッションがあった時には、同じように今の上昇分を吐き出してしまうのではないかと危惧します。

今後の値動き予測

5年チャート

75~100ドルのレンジと、100ドル~150ドルのレンジがあります。16年後半から突破してしまいましたので、今度は150~200ドルでしょうか。

トランプが軍事産業をどのように運営していくのか未知数の部分もありますが、今の流れが続くうちはボーイングの株価も上がりそうです。

1年チャート

大きな抵抗帯を破ると一気に上昇してトレンドが形成されます。チャートは値動きと反応を表現するものですので、株でもFXでも短期でも長期でも同じです。

約3年かけて作っていた抵抗帯なので、突破したら止まりません。

ボーイング(BA)の投資戦略

まとめます。

  • 宇宙航空産業で世界一を誇る企業で、7割を占める民間航空機の他、軍事、宇宙防衛産業を事業ポートフォリオとして有している。
  • エアバスとの熾烈な競争で航空機の利益率は5%に落ち込んでいる上、市場トレンドは小型機に移っており、大型機を得意としてきたボーイングには痛手となりそう。
  • 米国政府への納入が23%を占めており、政治動向に注意が必要。
  • 景気循環株であり、リーマンショック後の回復基調にともなって売上が上昇し、株価も上昇している。

回答

トップシェアの企業で、米国内での競争もありませんが、なんだか日本の家電メーカーみたいに色々もったいない企業ですね……。魅力的な事業と技術を持っているのに、組織が肥大化しすぎて上手く回っていないというか。

キャピタルゲイン狙いならこの水準での購入はあり得ないので、とりあえず置いておきます。


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企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
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