【米国株】キャタピラー(Caterpillar:CAT)の銘柄分析

米国株

今回はキャタピラー(CAT)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。最近、あまり元気がありません。

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キャタピラー(CAT)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

日本のコマツと競争している建設機械のみならず、エネルギーや輸送部門も巨大で、重機メーカーとして世界トップを誇ります。しかし、現在では各部門とも非常に業績が悪く、マイナス成長になっています。

非常に細かく事業状況を提示してくれるのは良いのですが、ほぼ全領域に渡ってマイナス成長はつらいですね。

(出典:キャタピラー アニュアルレポート)

  • Construction Industries(建設産業):全体の43%を占める、キャタピラーの主力事業です。ミニショベル、ローダー、トラクターをはじめとして、一般的にイメージされる工事現場で使う機械を製造しています。中国市場の停滞で悪影響を受けているようですが、それでも唯一プラス成長している市場がアジアパシフィック。
  • Resource Industries(資源産業):全体の16%を占めており、鉱山の採掘機、例えば油圧ショベル、ブルドーザなんかがここに含まれます。コモディティ価格が全般的に下落していた中で、投資が落ち込んだようです。
  • Energy & Transportation(エネルギー&輸送):全体の40%を占めている部門で、エネルギー産業向けのガスタービン発電機、鉄道事業向けのディーゼルエンジン等を製造しています。キャタピラーの売上トップ部門でしたが、ここ2年の原油市場下落ですっかり投資が冷え込み、大幅に業績が落ち込んでいますが、一方でエネルギー価格下落によって北米の鉄道関連事業は需要を起こし、一定の成果を上げているようです。
  • Financial Products Segment:それなりに大きな数字になっていますが、これはキャタピラーファイナンシャルによる保険業務です。

ちなみに、海外売上比率は54%となっていました。流石に圧倒的なシェアを握っているだけあって、世界市場を席巻しています。

さて、3部門それぞれの内訳があったので見ておきましょう。

Construction Industries(建設産業)の内訳グラフは以下になります。北米が約半分あるんですね。競争が激化して価格の下落も厳しいと書いてあります。

(出典:キャタピラー アニュアルレポート)

Resource Industries(資源産業)は以下です。売上全体に占める割合は16%とはいえ、2016年は赤字と大幅に足を引っ張っています。

(出典:キャタピラー アニュアルレポート)

Energy & Transportation(エネルギー&輸送部門)がこれです。

資源安で石油メジャーの売上が半減しているのは、エクソン・モービルシェブロンロイヤル・ダッチ・シェルで見た通りです。彼らに設備投資をする余裕がない以上、キャタピラーの製品も売れることはありません。

(出典:キャタピラー アニュアルレポート)

そして、こうした売上減少の内訳を以下のように図示しています。為替影響や会計上の問題などではなく、純粋に販売台数が減少しているということです。本業が上手く行っていないというのは黄色信号です。

(出典:キャタピラー アニュアルレポート)

利益についても同じで、販売台数の減少影響が一番大きいです。

(出典:キャタピラー アニュアルレポート)

競合

建設機械はコマツと2強です。北米市場ではキャタピラーが圧倒的な地位を確保している一方で、アジアではコマツが優位を保っています。

見ていると、コマツも減収減益ですね。フライングしてコマツのPLを見てしまうと、売上は1.8兆円とキャタピラーの約半分です(キャタピラーの建設事業との比較だったら同じくらいかもしれませんが)。

しかしながら、コマツは営業利益率10%を確保している点が優秀です。珍しいことに、利益指標で日本企業が先を行っているわけですね。通常最も利益率の高くなる北米市場はキャタピラーが押さえているのに、よく利益を残せるものです。

(出典:GMOクリック証券)

キャタピラーの他事業では、エネルギー産業向けのガスタービンは、ゼネラル・エレクトリック(GE)、シーメンスが競合でしょうか。日本だと三菱重工、川崎重工、東芝もやってそうな気がします。

市場

市場について、キャタピラーのIRでは以下のようにあります。

適当にまとめるとこういうことです。

  • 人口は2050年までに97億人になって、都心人口は全体の66%(つまりビル需要=ビルシステムの市場拡大)
  • 世界で3.3兆ドルのインフラ投資が必要(同上)
  • 中国で60の新空港→輸送市場の拡大余地大
  • エネルギー消費量は現在より48%アップ→エネルギー採掘のための機械も売れる
  • 舗装に1ドルかけると、5.2ドルの経済効果がある→(たぶん)途上国でこれから案件が増える
  • 建設市場は2025年までに15兆ドル拡大、しかもそのうち63%は新興国(2020年で)

いずれもきちんと統計に基づくデータですので、新興国市場で特にチャンスがあるということは分かります。

他のグラフを探しても、どれも拡大傾向は見て取れます。あとはキャタピラーのシェアが維持出来れば、需給に多少の変動があっても、長期的に見れば続伸するはずです。

建設。

建設機械の世界需要は、2009-2014年期の水準から減速するものの、今後3.8%の年間成長率を維持しながら2019年には2180億ドル規模に拡大する見込み。アジア太平洋地域、中南米、中東・アフリカなど開発途上国を多く抱える地域では、とりわけ継続中のインフラ開発計画による支出から、軒並みこの世界平均値を上回る成長が期待されます。たとえば2014-2019年の期間中における建設機械需要の3分の2余りは中国によるもの。一方、世界不況からの回復を契機に買い替えが急伸した北米や欧州市場では、2014年以降の販売が減速する見通しです。

出典:Global Information, Inc.

エネルギーはこんな感じ。

(出典:製造産業局)

また、直近のニュースでは中国市場で底打ちしたとする指標も出てきており、そろそろV字回復するかもしれません。

参考建機、世界市場で“春の兆し” 日本勢は耐え抜いた底力を発揮するか

リスク要素

景気敏感株

キャタピラーも資本財で景気敏感株に部類され、好景気で業績が良くなり、不景気では悪化します。また、資本財というのは競争が激しいために利益率はそこまで高くなく、市場平均をアンダーパフォームするリスクもあります。

この点についてはUTCで詳しく解説していますので、下のリンクからどうぞ。

【米国株】ユナイテッド・テクノロジーズ(United Technologies:UTX)の銘柄分析

IT化の波

コマツはIT化した建設機械や農機で有名なので、ご存知の方も多いかもしれません。どちらかと言うと技術革新に乏しい業界だったところに、ITと組み合わせた製品が登場してきています。

例えば部品故障をモニタリングで事前検知し、然るべきタイミングで交換する(=アフターサービスを充実化させ、顧客をロックインする)とか、建設技術の経験値をデータ化することで人手不足をカバーするとか。

(出典:国土交通省)

こうしたIT化は業界の成長余地であり、競争の激化を促すものです。

新興国市場での出遅れ

新興国へ進出するも日韓勢力に押されたことや、新興国景気の減速もあり、上手くいっていません。また、CEOのオーバーヘルマン氏はこうした業績低迷を受けて退任となりました。

参考米キャタピラーCEOが16年末に退任 業績低迷の引責か

後任はアンプレビー氏とのことで、どう立て直すか手腕に注目です。

キャタピラー(CAT)の財務分析

PL

市場2位のコマツと比較して、売上高は倍ですが利益率は半分以下です。ここ数年は売上減少にも悩まされ、それ以上に低い利益率がキャタピラーの低迷ぶりを示しています。

リストラや事業再編も並行して進めていると書いてあるので、次の回復相場で効果が見られるのではと期待します。

これだけ市場を支配していながらも、利益率は一桁しかありません。

BS

バランスシートは可もなく不可もなしです。自己資本比率は20%を下回り、やや安全性は低めでしょうか。R&Dは売上高の5%前後になります。

CF

思った以上にキャッシュに余裕がありません。営業キャッシュフローは常に安定したプラスなのですが、設備投資費用が大きく、FCFに余剰がない状態が続いています。不景気で落ち込んだ時のキャッシュには不安があります。

株主還元指標

前に22年連続増配でスクリーニングしていました。

米国株10年以上連続増配銘柄 有望15株(コメントつき)

直近が赤字なので、指標はとんでもない数値を出していますが、そこを除いて見ると、配当性向は40%程度と高くはない傾向が掴めます。キャッシュのほうが心配だったりしますが、増配余地は十分にあります。

直近配当利回り:3.09%

株価も低迷しており、利回りでは3%を超えます。今の米国株の中では珍しい水準です。

キャタピラー(CAT)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

キャタピラー(CAT)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

停滞感の見えるチャートです。リーマンショックから復帰してきた際の高値を未だ超えられないあたり、あまり評価はされていないように見えます(業績のピークと一致してはいますが)。

  • 最高値:116.95ドル(2012年)
  • 最安値(リーマンショック後):21.71ドル(2009年)

逆に現在値は業績下落の割には落ちていないようにも見えます。何年も減収減益なら、普通はもっと落ちているはず……。

今後の値動き予測

5年チャート

5年間に絞ってもヨコヨコチャートで変わりありません。ホルダーにとってこういう株は辛いものです。

1年チャート

ここ1年は少し上向きでした。

キャタピラー(CAT)の投資戦略

まとめます。

  • キャタピラーは建設機械の世界トップシェアを誇る企業で、油圧ショベル、ローダー、トラクターといった工事現場で使われる機械を多数揃えている。
  • しかしながら、近年はずっと減収減益に悩まされており、ここ数年は利益率も1桁に落ちてきている(ライバルのコマツも減収減益だが利益率は2桁)。
  • その割にチャートは落ちておらず、そこそこ高い水準で推移している。

回答

業績が悪化しているのは事実ですが、それは永続的なものか、それとも一時的なものかの見極めが必要になります。

外部市況が悪いことはもちろん第一の理由になります。これまで主力だったエネルギー産業向けの機械がさっぱりで、建設機械も中国市場が停滞。大型機械なので、顧客業界の投資が冷え込むと自社ではどうしようもありません。もし外部市況が問題であれば、そろそろ市場が回復するに合わせて、キャタピラーもV字回復すると思います。

しかし、それだけで全て説明出来るわけではありません。シェアの推移は調べても出て来ないのですが、アジア市場では遅れをとっているようですし、競争激化で価格下落が進んでいることもマイナス材料です。

世界中に営業所を持つ建設機械メーカーはキャタピラーとコマツしかありませんので、盤石な事業体制が崩れることは考えられないとはいえ、停滞が続くと投資先としての魅力が薄れることも否めません。

どちらにしても、そうしたリスクを負う割には妙に株価が高いですし、他より優先して今買いたい銘柄にはならない印象でした。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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