【高配当銘柄】AT&T(T)の事業、ファンダメンタル分析【米国株】

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AT&T(T)のファンダメンタル、チャート分析です。

連続増配33年、利回り5%という銘柄ですので、短期的なキャピタルゲイン狙いというよりも、長期的な配当再投資によるベース資産増狙いに絞って戦略を考えて行きたいと思います。

ベライゾンの記事も書いていますので、合わせて読んでいただけると嬉しいです。

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AT&T(T)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。ベルが興した企業であるとか、そこら辺の生い立ちは検索したら色々出てくるので省略。

事業内訳

最新の決算資料から情報を引っ張ってみましょう。上が四半期、下が年間です。

(出典:AT&T決算)

(出典:AT&T決算)

ざっくり法人向け事業が5割、エンタメ事業が3割、個人向け事業が2割ですね。世界最大級の総合通信企業ですが、内訳を見ると意外にもエンタメ事業が大きな割合を占めています。

ついでにインフラ事業ということで、ほとんど国内事業のみという点(Internationalの収益は誤差レベル)も注目。米国人口は3億人で、生産年齢人口も全人口も上昇を続けている唯一の先進国ですが、それでも人口増は鈍化(おまけにトランプで移民制限の可能性あり)、限られたパイを奪い合う構造になります(以前米国人口について記事を書いています)。

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日本に置き換えればNTTとKDDI、ソフトバンクの3社で国内市場を奪い合って(温く横並びによろしくやって)いるのと全く同じ環境で、米国通信インフラ事業も長年の停滞があります。持続的成長を求められるAT&Tの経営戦略上、柱としているのがエンタメ事業への進出です。

エンタメ事業へ

15年にはNFL放映権を持つ衛星テレビ大手のディレクTVを5兆円で、つい最近ではCNN、ワーナー・ブラザース(ハリーポッターやバットマンなどの制作)、CATV2位のタイム・ワーナーケーブル等を傘下に持つタイム・ワーナーを8.8兆円で買収することで合意しています(後者はトランプが反対していることもポイントです)。今までコンテンツの配信側だった通信事業者が、コンテンツの制作者へと進出しているわけです。

ビジネスモデルの軸にコンテンツ販売や広告収益をプロットしようという狙いですね。動画コンテンツは通信事業と親和性が高く、優良コンテンツは自社契約の囲い込みにもなりますので。逆にタイム・ワーナーとしても米国のCATV事業はNetflixやAmazonの台頭で縮退に追いやられている状況なので、渡りに船なんじゃないかなと。

とはいえ、タイム・ワーナーの買収金額8.8兆円を投資回収するのに純利益で単純に割ると20年以上かかるらしいです。回線を必要とするCATVに対してそのままだとオンラインでコンテンツ提供出来るNetflixやAmazonに喰われますので、スマホ基盤をシナジーとして活かして、回線を引かなくてもコンテンツを提供出来る仕組みは作るでしょう(実際、ネット放送に傾倒しています)。

そういえば、CATV買収はJ:COMをおさめたKDDIと状況が似ていますね。ちょうど日本にもNetflixやAmazonプライムサービスが上陸しましたし。

競合

通信事業者として直接の競合はベライゾン(VZ)、Tモバイル(TMUS)、スプリントを買収したソフトバンク(9984)です。加入者順位では以下のようになっています。

ベライゾン、AT&Tの2強で、ここ2社で7割近くのシェアを握っています(余談ですが、ベライゾンも元はAT&Tの子会社が集まったもの)。あとはソフトバンクの孫さんが合併しようとして失敗したTモバイルが絶好調で、スプリントを抜いて3位になりました。通信ケーブルや基地局といった設備投資が大きな業界なので、数多くのプレイヤーがひしめき合う構造にはなり得ません。

(出典:BI Intelligence)

そして、日本の3キャリアを見ていると麻痺しますが、米国のキャリア競争は非常に激しい。横並びの施策は打たず、必ず他社より一歩抜きん出る施策を打っている……らしいです(→参考)。過当競争で利益が削れ、近年のトラフィック量の増加に伴うコストを消費者に転嫁出来ない状況です。

上述のことから、通信事業としては停滞感が強い各社は新しい方向性を模索しています。全体的にネット放送に傾倒しているのは同じですが、ビジネスモデルはそれぞれ特色が出てきています。

競合3社の戦略

ベライゾンは別途記事にしようと思っていますが、方向性としてはデジタル広告収入を狙っており、インターネットサービスのAOL(44億ドル)、ヤフーのインターネット部門(48億ドル)を買収して、この業界で3位に躍り出ました。デジタル広告ビジネスというとGoogleとFacebookが圧倒的な1、2位になっている領域なので、1億人の契約者を強みに割って入ることが出来るか注目です。

Tモバイルは斬新なキャンペーンを打ち出すことでAT&Tを上回る加入者純増状態で、着実に2強のシェアを奪っています。また、CATV最大手Comcastによって買収されるのではという噂もありました。

スプリントは長らく停滞していましたが、トランプが大統領になったことで風向きが変わる可能性があります(米国で5万人の雇用を作ると言ったから歓迎されそう)。

5GやIoT(M2M)についてはまだ手探り状態ですが、以前記事にした通り、90%→95%にするようなサービスに対して誰がお金を払うのか? というマネタイズの問題がついてまわります。

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※5Gのサービスとしての主眼は、スマートフォン(移動端末)の通信ではなく、IoT(M2M)によるデータトラフィック増です。

来るべきIoTビジネスの中心になれるかどうかも注視が必要です。

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市場

停滞しています。もうスマホ所持者は100%を超えており、ネットワーク普及率やエリアカバー率も90%超え、米国内に新しいパイはありません。それでいて国内インフラ事業なので、他産業のように成長を海外に求めることも出来ません。

(出典:ITU)

ちなみに、世界最大の加入者を持つ通信事業者はチャイナ・モバイルで、6億人の加入者がいます。すごいですね。

日本の通信事業概況も参考ページがあったので置いておきます→参考

今後進出しようとしている放送事業についても、NetflixやAmazonといったオンライン配信が勢力をましており、かつてのテレビ中心の生活モデルは訴求出来なくなってきています。スマホの登場によるコンテンツ視聴方法の多様化、メディアの多様化による視聴機会の増加、検索・マッチングシステムのパーソナライズ化が進む昨今に合ったビジネスモデル構築が必要です。

余談ですが、面白いデータがありました。通信事業者の加入者内訳表なのですが、増加率一位は「車(Connected Car)」なんだそうです。スマホじゃない。さすが車社会って感じですね。

(出典:DRIフォーラム)

通信事業者の加入者純増は、人ではなく車、IoTによって成立していたということです。車の通信サービスは、例えばGoogleマップの表示等、車にWifiを取り付けて提供するサービスで、AT&Tとインターネットアクセスを契約した自動車は全体の6割にも登る模様→参考

リスク要素

通信事業は意外と先が見えない(潰れはしないとしても)

莫大な設備投資がそのまま参入障壁になって、安定したビジネスを展開出来るインフラ企業の中では、案外投資サイクルの短いものが通信事業だと思います。

日本にしたって、今でこそ3社で安定していますが、わりと激動の歴史ですよ。

(出典:電気通信事業分野における市場の動向 総務省)

まあ通信インフラ抱えて潰れたら困るなんて話じゃないので潰れませんが、万が一減配になったらこの株にどんな魅力があるんだって話です。

急激な変化というより徐々に悪くなるものだと思いますので(日本みたいな二年縛りちっくなものがあって、市況の悪化から経営への影響は遅れて生じる)、退避シナリオは外部市況も含めて検討すべきですね。

トランプリスク

トランプはタイム・ワーナーの買収に反対しています。ついでにスプリントを後押しするような動きがあると、ただでさえ顧客を奪われているAT&Tには逆風かも。

動画サイトはYoutube、Netflix、Amazon……

今後は動画がトラフィックの90%を占めるという予測(でしたっけ?)もあるくらい、動画コンテンツは各社が力を入れて取り組んでいる部分です。

ビジネスで使い勝手の良いYotube、オリジナルコンテンツ制作のために突出した投資を進めるNetflixなど、ネットワーク効果の出る領域のため、自社サービスを利用してもらえる戦略が必要です(その点で、後発組でノウハウに乏しいAT&Tは不利なはず)。

AT&T(T)の財務分析

PL

売上横ばいが見て取れますが、利益やEPSは非常に不安定です。設備投資が非常に大きいため販売管理費が高く、ブレがち。

営業利益率は高めの水準を叩き出しており、インフラ事業らしい高収益モデルが見て取れますが、投資対効果の指標となるROAやROEは低めに出ています。現状維持のための固定設備投資が響いていますね。

BS

現状維持のための設備投資が膨大で、固定資産が非常に大きくなっています。流動資産1割に対して固定9割ですからね。

負債も同じで、長期負債が大きな割合を占めていて、自己資本比率も30%程度と低めです。

CF

安定して横ばいの動きですが、営業CFの6割くらいを常に投資CFが食っていて、FCFは良くなりません。この数字にはタイム・ワーナーの投資額8.8兆円は含まれていないので、次年度はキャッシュが悪化して見えるのかな?

その他の指標

AT&Tといえば高配当銘柄ですよね。利回りはだいた4~5%です。設備投資も大きく安全性指標は良くないとはいえ、それが参入障壁となって外部市況が急激に変化しにくく、先が見通しやすいために安定して配当が出せるのです。

以下を見ての通り、投資家還元は熱心すぎるほど熱心にやっており、配当性向は年によっては100%を超えています(利益より大きい金額を配当として出しているということです)。成熟市場は配当還元で投資家を呼ぶしかないので、タイム・ワーナーを買収しようが何をしようがこの高配当を維持するでしょう。

連続増配銘柄ですので、DPSも一貫して上昇しています(上昇幅は小さいですが)。

総括すると、不安定な財務諸表で、指標もとりわけ良い数字を叩き出しているわけではないのが実情です。

AT&T(T)のチャート分析

リアルタイムチャートのリンク置いておきます。

AT&T(T)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

過去20年、全然値動きがありません! ずーっと狭いレンジにいたので買い場も簡単だったんですけど、最近ちまちまと上がりだしました。

最高値は60ドルですが、ちょっと遠いので直近の大きな抵抗帯である42ドルを上限、20ドルを下限にしたいと思います。

今後の値動き予測

5年チャート

31.5ドル、39ドル、43ドルあたりに抵抗帯があり、非常に固いレンジを形成していました。39ドルの上限に引っ付いたまま次の足で上抜く動き、これスキャだと大体固いブレイクになります(急にボラティリティが大きくなって躊躇なく飛びます)。

なにせ5年かけて作った抵抗を抜いたので、今度はそのポイントがサポートになって、下限が高くなります。

1年チャート

この1年は落ち着いたチャートではなく、線が引けません。

が、20年チャートで見れば分かるように、前回(00年台)の上昇頂点のポイントが43ドル近辺にあり、そこが強い抵抗を作っていたと。

これも相当固いので一発目のチャレンジだったらまず反発しますね。2回目もたぶん反発するので、これからもう一度40ドル割るまで落ちそうかな。何にせよ、今はリスクリワード最悪のポイントなので絶対買いません(抜けたら利益になるとか以前にキャピタルゲイン狙うなら他に行くべき)。

AT&T(T)の投資戦略

結構長くなりましたので、まとめましょう。

  • 通信事業は成熟しきった市場で、AT&Tは次の成長軸としてメディアをターゲットにしてM&Aを進めている。
  • 新規事業は、先駆者の壁が高いように見える
  • 固定設備投資が大きく、常にCFを圧迫している
  • 配当を除く経営指標はあまり良くない
  • 寡占市場かつ生活に欠かせないインフラということで、とりあえずしばらくは安定だと思う(新しい通信デバイスとして車が出てきている)
  • 急激な変化というより徐々に悪くなるので、退避シナリオは外部市況も含めて検討すべき
  • チャートでは前回高値を試している最中なので、今買うのはリスクリワードが最悪のポイント
  • チャートの直近下限31.5ドル、前回安値20ドルはともに固いポイント

回答

少なくとも向こう5年はキャッシュ吐いてくれますし、今保有している分を売るつもりはありませんが、このタイミングで新たに買う必要はないですね(今でも利回り4%超えというのが恐ろしいw)。

35ドルくらいに落ちてきて、配当水準がこのままだったら徐々に徐々に買い増しします、たぶん。


ベライゾンの記事も書いていますので、合わせて読んでいただけると嬉しいです。

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ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications:VZ)のファンダメンタル、チャート分析です。 前回AT...
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コメント

  1. 通りすがり より:

    はじめまして!
    いつも楽しみに見ています!
    リクエストなのですが、個人的にスリーエムを保有しており、そちらの企業分析を見てみたいです。
    これからも記事を楽しみにしています!

    • wanami より:

      コメントありがとうございます~!

      スリーエムいいですね!
      勉強しながらのつたない内容ですが、近々記事書いてみます!

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