【連続増配】アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories:ABT)の銘柄分析【米国株】

米国株

今回はアボット・ラボラトリーズ(ABT)、アッヴィ(ABBV)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

アッヴィは13年にアボット・ラボラトリーズの新薬開発部門が分社化して生まれたので、一緒に見ることにしますが、おまけ程度です。

というのも、アボット・ラボラトリーズはシーゲルの高収益銘柄として出てくるので扱いますが、アッヴィは主力医薬品ヒュミラが16年に特許切れになったのであまり購入は検討していない銘柄です。

ヒュミラがどのくらいすごいかというと、全医薬品の中で製品別売上高世界首位です。

(出典:メディサーチ)

そして、そのヒュミラが分社化した際にアッヴィに渡されているのですが、なんとアッヴィの売上高の68%を占めています。バイオシミラー(バイオ医薬品のジェネリック)は低分子医薬品ほど簡単に作れるものではないため、現時点では2020年での売上高予想トップもヒュミラです。

参考2020年売上トップはヒュミラ 米専門誌予測

ただ、ジェネリック医薬品シェアが90%の米国ですので、バイオ医薬品と言えども特許切れになればいずれ安価な代替品に代わられてしまうのではないかと懸念があります。つまり、長期投資ではなくバイオ株としての評価をしたいのです。

逆に、アボット・ラボラトリーズは医療機器、エスタブリッシュ(後発)医薬品、栄養補助食品といった安定事業が残っており、長期投資の対象になるかなと考えています。

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アボット・ラボラトリーズ(ABT)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

決算では以下の4部門に分かれています。昔は内訳の図もあったみたいですが、直近のレポートには見当たらないですね……。

(出典:アボット・ラボラトリーズ)

  • Established Pharmaceutical (エスタブリッシュ医薬品):約21%。後発医薬品、ジェネリック医薬品のことです。市場拡大傾向ですが、キャリアに対しての格安SIMみたいなもので、安いことがセールスポイントのため、低価格の薄利ビジネスに近くなります。
  • Nutrition(栄養補助食品):約38%でアボット・ラボラトリーズの主力事業です。幼児/成人向けサプリメントなどを製造販売しています。
  • Diagnostics(診断薬):約26.5%。血液検査などの診断に関する医薬品、機器類。
  • Medical Device/vascular(医療機器/血管):約15%。血管系の医療機器に強みがあるようです(その他に糖尿病にも)。ペースメーカーなどの医療機器大手セント・ジュード・メディカルを16年に買収したため、一気に拡大しました。メドトロニックでも見ましたが、医療機器(ハードウェア)というのは、高い信頼性を必要とされる事業のため、トップシェアを取ったカテゴリーリーダーが市場を独占し、高い利益率を上げることが出来ます。アボット・ラボラトリーズでも、利益率が一番高くなっていますね。

以下の売上、利益で見ると、vascular(医療機器)が売上高の小ささの割に利益が大きく、逆にEstablished Pharmaceutical (エスタブリッシュ医薬品)は利益率が悪いことが分かると思います。ただ、売上高と利益率が伸びているのも唯一エスタブリッシュ医薬品ですので、徐々に改善されると期待出来ますかね。

ちなみに、これはアニュアルレポートのデータなので、セント・ジュード・メディカル買収の効果は出てきていません。

(出典:アボット・ラボラトリーズ)

いくつもの分野でナンバーワン製品を持っています。

(出典:アボット・ラボラトリーズ)

また、アボット・ラボラトリーズはエスタブリッシュ医薬品を柱にしているため、アジア新興国などの海外へ進出して勝負をかけています。

(出典:アボット・ラボラトリーズ)

米国外収入が70%、うち医療費の伸びがGDPの成長率を上回る国が50%です。中国、インド、日本、ベトナムと上位にアジアの国が目立っていますね。

ちなみに、インドについてはヘルスケア市場トップの地位を獲得しています。

(出典:アボット・ラボラトリーズ)

セント・ジュード・メディカルの買収

自社領域を補完する戦略で、250億ドルでの大型買収を敢行しました。

参考アボット、セント・ジュード・メディカルの買収手続きを完了

セント・ジュード・メディカルは心房細動、心不全、器質的心疾患、慢性痛分野といった高成長市場に強みを持ち、アボットの冠動脈インターベンションや僧帽弁膜症の領域でのリーディングポジションを補完します。

出典:アボット・ラボラトリーズ プレスリリース

確かに、血管系の医療機器に強みを持つアボット・ラボラトリーズと、心臓系の医療機器に強みを持つセント・ジュード・メディカルとが合わさると、心臓部周りの機器を押さえることになります。

あんまり詳しくないので想像で言っていますが、複数の医療機器を繋ぐとしたら同じメーカーのもののほうが良いに決まっていますから、身体の特定部位からその周辺を固めていくというのは相乗効果が大きいんじゃないかと思います。

競合

それぞれのセグメントごとに違うと思いますが、医療機器であればメドトロニックやJNJです。

メドトロニックについては、買収したセント・ジュード・メディカルがペースメーカーで競合していますので、割りと近い相手なんじゃないかと。同記事内で競合として上げたボストン・サイエンティフィックも高いシェアを持つライバルです。

【米国株】メドトロニック(Medtronic:MDT)の銘柄分析

JNJの医療機器は人工関節や手術用機器に強く、少し競合としては領域が異なるかなという印象です。

【米国株】ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson:JNJ)の銘柄分析【連続増配】

栄養補助食品は、ネスレ、ゼネラル・ミルズ、クラフトハインツのような食品メーカーや、むしろ今ジャンクフードを売っているペプシコ(傘下のフリトレー)あたりもこぞって健康志向の商品を開発しており、ライバルが増えています。ネスレを買えないのが痛すぎますね。

【米国株】ゼネラル・ミルズ(General Mills:GIS)の銘柄分析【高配当】
【米国株】ペプシコ(Pepsico:PEP)の銘柄分析【高配当】

後発医薬品といえばファイザー、アラガンですね。ファイザーはアラガン買収に失敗しています。

【米国株】ファイザー(Pfizer:PFE)の銘柄分析【高配当】

診断薬はよく分かりません。ここも一部メドトロニックと被るように見えますが。

市場

アボット・ラボラトリーズの主力製品は、以下のような市場状況を踏まえて拡大することを見込んでいます。

(出典:アボット・ラボラトリーズ)

  • 肥満、糖尿病の増加(4.22億人):フリースタイルリブレは15分おきにグルコース値の自動測定が出来るアボット・ラボラトリーズの製品が拡大(従来のfinger sticksは指先を針で差して刺激する必要があります)。
  • 2050年までに60歳以上の高齢者が22%に:高齢者向けの医療機器が充足
  • 新興国市場がヘルスケアの投資を加速見込み:アボット・ラボラトリーズの海外売上がさらに伸びる見込み!

ヘルスケア市場全般が拡大傾向にあり、アボット・ラボラトリーズは特にインドへの進出が早いことがプラスに働いています。

リスク要素

ドル高

お馴染みです。決算時に時価評価する際、海外資産を米国ドルで評価する=ドル高で海外資産の価値が落ちるわけですから、アジア圏での売上を重視するアボット・ラボラトリーズにとって、決算でのドル高影響が大きくなります。

医療機器の巻き返しはあるか

主力の血管系医療機器は競合に押され気味の状況です。セント・ジュード・メディカルの買収効果で逆転出来るかがポイントになります。

現状シェアを維持することは十分可能だと思うのですが、巻き返しはどうでしょうね。

エスタブリッシュ医薬品市場を取れるか

後発医薬品は先日分析したファイザーをはじめ、多数の競合がひしめいている成長市場です。

アボット・ラボラトリーズ(ABT)の財務分析

アッヴィはバイオなんで財務分析は要らないですよね。

PL

11年に半減してからずっと横ばいで動いています。なんで13年ではなくて11年なのかというと、たぶん会計処理は11年にやったんだと思います。アッヴィの分社化を発表したのが11年だったというデータしか見当たりませんでしたが。

業績はあまり安定していません。途中で分社化したため後半だけ見ると、利益率は標準的、ROEは良くない数字です。

BS

自己資本比率40%で、安全性は中々高い水準と思います。

バランスシートとはある一時の資産項目を内訳にしたものですので、将来性の担保はされておらず、一律に数字を見るわけにもいかないのですが、40%を超えると安心感があると言われます。

CF

分社化した13年を境に営業キャッシュフローが大幅に減っています。投資CFはほぼ一定で、常にプラスのFCFを維持していますが、ヒュミラのキャッシュを稼ぐ力がそれだけ大きかったということですね…………って、あれ?(上と矛盾^^;)

株主還元指標

こちらも分社化で一旦DPS下がっていますが、扱い上は44年連続増配銘柄ということで、投資家還元意欲の強い会社です。

配当性向はおおよそ50%程度の水準で、直近だけ上がっていますが、93年配当を欠かしたことはなく、これからも期待は出来そうです。

直近配当利回り:2.41%

アボット・ラボラトリーズ(ABT)、アッヴィ(ABBV)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。両方見ておきましょう。

アボット・ラボラトリーズ(ABT)-Yahoo!ファイナンス

アッヴィ(ABBV)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

古いチャートがないので、判断材料としては心もとないです。

最高値最安値は見ても仕方ないと思います。36ドル~46ドルあたりで引っかかっているので、下の方で買えば良いかと言うと現時点でPER46倍は結構高めの評価(こういう時に指標は客観性あるデータとして役立ちますね)。もう少し下が適正な印象です。

ちなみにアッヴィはこれ。

なんだか……同じって感じですね(笑)むしろヒュミラが特許切れの割に落ちていないです。まあ織り込み済みなんでしょう。業績に出てきたらインパクトがあるのかもしれませんが。

今後の値動き予測

1年チャート

レンジ上下を行ったり来たりしているチャートです。よっぽどいい決算でもないと、たぶんここで落ちて36ドル目指すんじゃないかと思います。

アッヴィはこっち。

やはり同じ動きですが、指標で見ると高め水準であることが分かります。

アボット・ラボラトリーズ(ABT)の投資戦略

冒頭に書いたように、アッヴィはバイオ株として見て、値上がり益狙いで安いところを拾うのがいいと思います。

アボット・ラボラトリーズは以下のようになります。

  • 13年にアッヴィと分社化し、向こうに主力医薬品ヒュミラは渡している。一方でアボット・ラボラトリーズには医療機器、エスタブリッシュ(後発)医薬品、栄養補助食品といった安定事業を有している。
  • 利益率が高いがメドトロニックなどの競合に押され気味の医療機器部門に、セント・ジュード・メディカルを買収してポートフォリオに加えた。
  • インドでトップシェアを取っており、新興市場への進出が進んでいる点が好材料。
  • チャートはやや高めの位置にあると感じる。

回答

ヘルスケアの連続増配ならJNJ(54年連続増配)、単純に利回りを求めるならファイザー(利回り3.54%)、市場シェアならメドトロニック(ペースメーカー4割)と、ヘルスケアセクターに投資たいなと思ったときに、別の会社のほうが良く映ってしまいます。

とはいえ、小型株効果(というにはアボット・ラボラトリーズはあまりにも巨大ですが)もあるので、現時点でのトップシェア企業が必ずしも株価収益率で上回るわけではありません。

インド市場をはじめとして新興市場の開拓が他より進んでいる点は素晴らしいですし、事業も安定したものが残っているので、ポートフォリオに加えて継続投資すること自体は何の問題もないと考えています。

買い時を絞ると難しいのですが、35ドルのレンジを下に切ってくれないとスタートし辛い印象でした。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
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