今回はテスラ(TSLA)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。イーロン・マスクが興した電気自動車(EV)の会社ですね。
昔はテスラ・モーターズという名前でしたが、今はテスラになっています。
動画も作ってみましたよ。
目次(クリックで飛びます)
テスラ(TSLA)の事業内容
ビジネスを3Cで分解してみましょう。
事業内訳
コロナ下での直近決算で四四半期連続黒字を達成し、3月以降で株価が4倍以上に。ついにトヨタを抜いて自動車銘柄で時価総額世界トップになりました。
テスラの2019年の販売台数は約36万7,500台で、トヨタの1074万台とは30倍の差がありますが……。
S&P500の採用も噂されています。
ということで、20年4-6月期決算から情報を抜いてきます。
事業は電気自動車(EV)の製造、販売。
売上は前年同期比マイナスですが、利益は伸びています。グロスマージンは25%と、高級車とはいえ製造業の水準かなと。
その他、リース事業とエネルギー事業もやっていますが、メインのEV事業をしっかり注目しておきましょう。
地域別売上は、米国で126.5億ドル(海外売上比率は約60%)となっていて、それ以外だと中国、オランダ、ノルウェーで売上が大きいです。中国は29.7億ドルまで成長しました。
中国、ノルウェーは世界でも特にEVシェアが高く、そこで人気があるのはいいことですね。
EVはなにがいいのか(EVとは)
従来のガソリン自動車はガソリンをエンジンで燃焼させて動かしますが、電気自動車はバッテリーに電気を充電して、それでモータを動かして走ります。
EVは以下のような点で優れています。
個人
- 電気代がガソリン代よりも安い(維持費の目安は約半分)
- 税金が安い(日本ではエコカー減税、欧州各国などでも税制優遇あり)
- 充電は自宅で出来る(ガソリンスタンドに行かなくていい)
- 移動中も静か
- デザインが良い
社会
- 環境に優しい(排気ガスや二酸化炭素は電気を作る工場以外発生しない)
- 部品が少ない(エンジンの部品は3万点近くあるが、モーターの部品は数十点のみ)
- 上記に関連して、ESG投資で注目
電気自動車は燃費が非常に良いです。だいたい1kmあたり3円以下で動きます(ガソリンだと1km6円くらいになるらしいです)。
反面バッテリーが高いので本体購入価格が高額になりますが、維持費で元が取れるかどうかということになりますね。
テスラの車種について
テスラで販売している電気自動車は以下の種類があります。
電気自動車はモーターで動くのでエンジンが不要で、かなり広々しています。テスラは電気自動車用にデザインを一新しており、見た目にすごくカッコイイですね。人気が出るのも頷けます。
- Road ster(ロードスター):現在は販売終了。2008年にはじめて売り出した電気自動車で、1000万円以上します。性能が非常に高く、1回の充電で1000km走ります。
- Model S(モデルエス):2012年に発売された、テスラの代名詞とも言えるモデル。1000万円程度のセダンタイプ(4ドア車)です。充電に45分要しますが、1回の充電で600km以上走り、電気代も1000円程度。
- Model X(モデルエックス):2015年発売、クロスオーバータイプ。
- Model 3(モデルスリー):2017年発売、低価格(400万円程度)のセダンタイプ。
- Model Y(モデルワイ):2020年夏から生産開始予定
- CYBERTRUCK(サイバートラック):21年生産開始予定、電動ピックアップトラック
テスラは当初、富裕層をターゲットに1000万円モデルを絞って展開しました。エコや新しいものがスキなセレブが乗ることで、よい広告になるからです。
そこから大衆車モデル3を打ち出して、一気に市場を奪おうという戦略がうまく刺さりました。
ちなみに直近2Qの販売実績は82000台くらい。モデルSとモデルXの高価格帯は半減しています。
これでもモデル3の前年比プラスはすごいことで、20年上期のトヨタや日産は新車販売台数が軒並み20%減となっています。
参考新車登録台数、コロナ禍影響大きく19.3%減の139万9694台 2020年上半期
生産基盤が弱い
テスラは部品メーカーとのサプライチェーンを持たないままに参入したため、生産基盤がとにかく弱いです。
19年度の販売台数は36万台、トヨタやフォルクスワーゲンが年間1000万台の販売で競っているところと比較すると、いかに少ないか分かるでしょうか。
しかし人気がないわけじゃないんですね。むしろEVブランドとしては圧倒的で、生産数が追いついていないんです。一時の任天堂Switchみたいなもん。
最近はようやく四半期あたり10万台の生産能力を手に入れていますが、過去には生産遅延も起こっていたため、部品供給網の安定化と生産量拡大は引き続きの課題だと思われます。
(まあ、コロナで自動車&高級品が売れない状況にはなっていますが……)
競合
ガソリン自動車からシェアを奪う
テスラの目標は既存のガソリン自動車からシェアを奪うこと。EV市場はまだ自動車産業の1%程度でしかなく、大きな市場を狙うのが合理的です。
販売台数では1000万台を売るトヨタやフォルクスワーゲンと比べ、1/30にとどまります。
時価総額のランキングではトップになりました。
EV市場の競合
EV市場ではトップを走っています。EV全体で200万台の販売ですが、テスラのモデル3がトップ。
後を追いかけるのが北京汽車(BAIC)で、まあ中国のEV自動車ですね。中国での販売台数はここが一位。
日本は日産のリーフ、トヨタのプリウスプライム(PHV)が上位に入っています。
テスラは重要市場の米国、や欧州最大シェアのノルウェーでシェアを握っています。
余談ですが、ノルウェーはEUに加盟していないながら隠れたエネルギー輸出国です。
原油や天然ガスの埋蔵量はサウジアラビアとほぼ同等でありながら、山岳地帯と降水量の多さから95%が水力発電で賄っていて、電気代がとても安いです。このためEVと相性が良いですし、掘り起こした原油はほとんど輸出に回せるので経済も安定しているのです。
市場
自動車産業は大小様々な部品や関連サービスなど裾野が広く、日本で言えばGDPの1割、雇用者も全体の1割を占めている巨大産業群です。まさに国の産業を牽引すると言っても良いでしょう。
市場規模は自動車産業全体で200兆円、年間販売台数は9000万台とも言われています。トータルでは、世界で約20億台の自家用車とトラックが走っています。
この数値は長らく同じ水準にあります。
この中でぐんぐん伸びているのが電気自動車です。特にシェア3割を誇る中国を中心に急速に販売台数が増え世界で200万台を突破、最近の予測では2023年に700万台となっています。
中国で普及しているのは大気汚染の解決策として国が優先的に導入を推奨しているからです。
同じように環境配慮で欧州での勢いが強く、ノルウェーやオランダでは将来的にガソリン車を禁止する可能性もあるそうです。
リスク要素
全てはイーロン・マスク次第
テスラのトップであるイーロン・マスクは、ペイパルを興し、テスラを立ち上げ、宇宙産業のスペースXでも脚光を浴びる新進気鋭の実業家です。
まだ小さなテスラに異常な高値がついているのも、ほとんどこのイーロン・マスクが何かをやってくれるという期待感から来ているます。
前にちょっとだけ考察してみましたが、やっぱり経営者って二流企業と一流企業に変える最後のスパイスだと思うんですよね。
既存自動車と影響大きいガソリン価格の変動
テスラの主戦場はやはり米国です。こういっちゃなんですが、あまりエコを気にしないイメージがあります。
結局のところ彼らに響くのは、スマートなデザインであったり、ガソリン代よりも電気代が安い=コストメリットのほうだと思います。
石油価格はまだ低迷を続けそうですが、テスラ的にはガソリン代も上昇し続けたほうがメリットが大きいでしょう。
中国市場について
テスラが米国外で2番目に大きな市場としているのが中国です。上海に工場も作っています。
中国ではEVに補助金が出ていた関係で、昨年までは大きく販売台数を伸ばしました。しかし、補助金の終了とコロナ影響で失速する見込みが出ています。
中国で販売されている競合のEVは基本的に10万元(150万円)以下で、テスラはモデル3であっても高級品の分類です。
自動車って将来どうなんだろうね
自動車産業全体として、先進国では市場成長が限界に来ています。
実際、私は車に乗りません。正直ほしいとは思わないです。カーシェアリングが増えていますから、使うにしてもそっちで良いかなと思ってしまいます。
やっぱり最安モデルで1台400万円は、厳しい価格帯ですよね。初乗り700円のタクシー5000回以上乗れちゃうじゃないですか。
まあテスラの主戦場である北米も自動車市場は天井感が強まってきているとはいえ、あちらは日本より遥かに車社会ですから、そこで既存の車メーカーのシェアをひっくり返したら十二分な利益になるでしょう。
自動運転
遠くない将来、自動運転車のプラットフォーム争いがあります。
コネクティッドカーや安全運転技術という方向でも、自動車の進化はまだまだ続きそうです。
テスラ(TSLA)の財務分析
PL
売上が伸びていて、ここ4期は利益も出てくるようになりました。それまでが赤字だったので、グラフは見にくいですが。
とはいえ、テスラはまだ現在の利益ではなく、売上&シェア拡大で評価されるフェーズだと思ったほうが良いです。
BS
あまり参考にならない指標です。この株価なら簡単に資金調達出来ますしね。
CF
キャッシュはないですね(笑)
まあ今はFCFが赤字になっても、生産台数を増やすために投資強化するフェーズです。
株主還元指標
株高で株主に還元すれば良いのですから、配当に回す日は当分来ないでしょう。現状は事業投資で消えます。
直近配当利回り:0.00%
テスラ(TSLA)の株価、チャート分析
とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。
過去の最高値、最安値
- 最高値:1513ドル(20年)
- 最安値:14.98ドル(07年)
上場から100倍以上になりました。いかにテスラの将来性が評価されているかということになりますね。
4年くらい200ドル~290ドルあたりで形成していた踊り場をトランプ相場で突破し、そこからは止まらない感じです。
コロナによる中国市場の懸念もあり一旦下げましたが、直近決算も良かったのですぐ復帰しています。
先程も述べたように、時価総額ではトヨタも上回り世界一となっています。3年前時点でGMやフォードより大きく、全米自動車メーカーで最大になっていましたが……。
今後の値動き予測
5年チャート
節目になりそうなポイントはこのあたりですが、だいたい抜いてしまったので、次の目安がなく予想が立てにくい。
- 1000ドル:キリのいい数字。ちょっとだけ、本当にちょっとだけ反発している
- 1500ドル:あっさり突破
- 自動車メーカー時価総額:時価総額トップになりました
テスラは期待先行で株価がつり上がっているので、思惑・ニュースに過敏に反応して下落します。上限は2000ドル、下限は800ドルあたりになりそうですが、固い水準ではないと思います。
1年チャート
暴れすぎですね……。チャート横の数字がおかしいことになってます。
最近のコロナ情勢でどの株買ってもマイナスみたいな雰囲気が漂っているので、数少ない期待の星としてテスラの株高があるのかなと思います。
テスラ(TSLA)の投資戦略
まとめときましょう。
- 電気自動車(EV)でトップを走るテスラは、特に大衆車モデル3で売上を順調に拡大していて、四期連続黒字を達成。
- 時価総額はトヨタを抜いて全自動車メーカー最大(販売台数はトヨタの1/30)
- EV市場でテスラは首位だが、自動車産業全体で見れば1%程度。EV市場は今後も成長が予測されており、将来性は明るい。2023年には年間700万台の販売予測となっている。
- 株価は暴騰している状態で、予測が難しい。
回答
私は上がっていく株に追いかけていく投資が大の苦手なので、(記事書いておいてなんですが)投資しないと思います。
ただテスラの挑戦は面白い。市場の期待値も分かります。今後EVの拡大傾向は明らかなので、テスラのプレゼンスはさらに上がっていくでしょう。
フェーズ的に売上拡大していく時期なので利益はカツカツでもやむなしですが、グロスマージンは25%程度なので、最終的にそこまで大きな利益率にはならないと思われます。
株価はここからどこまで上がるかですが、流石にイーロン・マスク効果で下駄履いているので、ここから2倍になるより半分になるほうが早いかな。
コロナでどの株も上がらない中、浮いたマネーが集まっている状況に見えます。
動画もよろしくね。
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