3分で分かる、自動運転車の未来

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では引き続き自動運転車について見ていきましょう。前回はこちらからどうぞ。

3分で分かる、自動運転車の現在
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自動運転車の創る未来像

自動運転車は多くの社会問題を一手に解決する技術となりえます。

  • 交通事故による死傷者減少
  • 大都市の渋滞を緩和
  • 物流業務の人手不足解消、長距離移動の運転ストレス軽減
  • 交通の流れを加速化(人・モノの移動が早く効率的に)、コストダウン
  • 高齢化、過疎化する地方を都市部と結びつける
  • クリーンエネルギー、環境汚染への対策

こんな記事も参考になります。

自動運転車が未来の街を良くする7つのこと

生活の変化

イメージからいきましょう。ネットから探してきました。gifで重いので、リンクを貼っておきます。

こ、これは説得力ありすぎるっ。自動運転車で街がどう変わるか描いた風景が必見

※全然関係ないんですけど、自動運転の未来で探してたら面白いgif見つけました。最初のgifです。

●IoT・AI時代には従来の産業構造は意味をなさなくなる

自動運転車によって新しいサービスが色々と出てきます。

物流においては、無人トラックが24時間好きな時間に好きなところで荷物の受け取り・受け渡しが出来るようになるでしょう。

長距離移動用の自動運転車は、より内装が豪華になります。ふかふかのベッド、シャワートイレ、キッチンまで。寝台特急みたいに、車の中で寝て起きたら目的地に着いているなんて未来が実現するかもしれません。

ビッグデータ分析によって、呼んだ人の状況に応じて最適な車体がセレクトされます。お年寄りには乗りやすいデザインの車が、ファミリー向けには大きめの車が、緊急時にはスピードの出る車が出迎えます。

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(出典:FutureNYC)

両手の空いた移動時間で、人々は車に取り付けられたモニターでテレビやインターネットを見たり、読書をしたり、メールをしたり、仕事をしたりして自由に過ごすことが出来ます。

道路の変化

事故を起こさない自動運転車によって、道路から標識や自動車専用道路が消えていくでしょう。

人々は自動車を保有せず、必要に応じてタクシーのように自動運転車を呼び、好きなところに向かいます。

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(出典:gizmodo)

自動運転車は電気の力で日中に街中を走り続けていますが、AIで混雑するルートを回避するので渋滞は発生しないので、スムーズに目的地に到着します。

いつでも呼べるので、街には駐車場もなくなります。これまで自動車が必要としていた広大なスペースが消えることで、空いたスペースにより広い歩行者道を作ったり、安全な子供の遊び場が出来たり、緑が植えられたりして住みよい街づくりがデザインされることでしょう。

他業界への影響

ITが金融業界に入ってフィンテック革命を起こしているように、自動車にもITが入ることで既存業界に大きな変動があるでしょう

  • 保険業界:一番被害大きそうな保険業界。自動車保険と自賠責保険は、損害保険会社にとって売上全体の6割を占める主力商品です。まあでも自賠責保険がダメになったら自動車のサイバー被害対策保険みたいなのが出てきて延命しそうな気もします。日本人は保険大好きだから。
  • タクシー業界:人件費7割のタクシー業界が自動運転車を導入しないわけがないですね。運転手の失業はありそうですが、業界として見ても、ただでさえUberのサービスに押される中、安全性や安心感というポイントでも負けるのは痛いです。観光案内等の付加価値が出せればいいのですが。
  • 運送業界:運送も自動運転車によって無人化、効率化されます。雇用問題はもちろんですが、自動車メーカーやAmazonのような小売業界が直接運送サービスに進出すると厳しいかもしれません。
  • 運転免許センター:運転しないんだから要らないですよね。
  • 自動車メーカー:米国で言えば、向こう25年間で自動車販売が40%減少すると予想されています。カーシェアリングもハード売りのビジネスモデルに逆風ですので、サービス業にモデルチェンジするか、ブランドとして付加価値を上げるかの2方向かなと。
  • 自動車ディーラー:もっと危険なのはこっちか。まあITって技術自体が仲介者を省くシステムなので仕方ないですね。
  • 駐車場:不動産の活用手段のひとつですが、上で見たように駐車場が街から消えます。

※タクシー代わりにする経済効果について以下参考。

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(出典:ボストン・コンサルティング・グループ)

とりあえず無人トラックの隊列走行が早期実現しそうなので、この中だと運送業が怪しいのかもしれません。

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(出典:ITS Japan)

自動運転車の課題、リスク

自動運転車の普及は間違いなく進んでいくでしょう。ビジネスインパクトも大きく、温室効果ガス削減、なにより早期死亡原因として高い順位に位置する交通事故を技術によって克服出来るのですから。

しかしその課題としてあるものは技術的な問題ではないようです。

自動運転車、普及の課題は技術ではない?

つまり、もしもし事故が起きたら誰が責任を取るのかという法的問題と、自動運転車に乗って死んだら仕方ないと割り切れるかという心理的問題があります。

※技術的な問題で気になるのはセキュリティですね……。あとはビッグデータ全般で語られるプライバシー保護の問題くらいでしょう。

3分で分かる、セキュリティビジネスのトレンドと方向性

法的問題

ジュネーブ道路交通条約で定義されている「常時人間の運転が必要」という文言については修正されるとして、ここでの議題は事故を起こした際の責任の所在ですね。運転者が取るのか、自動運転車(メーカーやソフトウェア)が取るのか。

以下の記事が参考になります。

完全自動運転自動車の事故と法的責任について

まあフェーズごとの話はさておき、完全自動運転車が実現した際にどうするのか、自動運転車の普及を妨げず、被害者が十分に保証されるよう法整備を進めないといけませんよね

なお、日本損害保険協会による、法的責任の定義は以下になります。

  • レベル3まで:現行法(自動車損害賠償保障法(自賠法)および民法)に基づく考え方が適用可能と考えられる。
  • レベル4:国際的な議論の動向、社会受容性等を踏まえ、自動車に関連する法令等を見直したうえで、損害賠償責任のあり方を検討する必要がある。

心理的問題

心理的問題については、実際のところ、数字で言えば自動運転車は既に人の手による運転より安全性が上です。

しかし、前回記事で航空機と自動車を対比して見たように、人が運転しているという分かりやすさが安全であるという思い込みが入ります。

アメリカ自動車協会(AAA)が行った調査で、80%は自動運転車を信じていないと答えたそうです(特に年配の方がその傾向が強い)。この前提があるために、ひとつの事故が過大に報道されネガティブに受け止められるわけです(そしてこういうときこそ株の仕込み時になると)。

トロッコの問題

「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という倫理学の思考実験。

所謂答えのない問いで、自動運転車が10人を轢いてしまうか、搭乗者が死ぬかのどちらかを選択しなければならない場面でどちらを選ぶかという問題です。

※原題はトロッコを運転中に、このままトロッコを進めると作業員5人が、5人を助けようと舵を切ると1人の別の作業員が死んでしまう状況で、そのまま進むか、それとも左に舵を切るかどっちか選べという話だったはずです。うろ覚えですみませぬ。

こうした倫理的な問いにAIが答えを出せるのかという話です。

マイケル・サンデルの本「これからの「正義」の話をしよう」とかで紹介されていますので、詳しく知りたい方はどうぞ。

自動運転車の市場規模、ロードマップ

自動運転車市場における動向示唆。

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(出典:ボストン・コンサルティング・グループ)

米国の調査ですが、米国人には購入意欲が強いようです。理由としては「安全性向上」「保険料削減」「移動中の作業」が大きくなっています。

市場規模

高齢者が増えてくること、東京オリンピックがあることを踏まえると、日本における自動運転車の需要は非常に大きいものになると考えられます。

また、今のミレニアル世代と呼ばれる若手は基本的にモノを所有する欲が少なく、シェアしていく世代です。これも好きな時に利用出来る自動運転車と相性がいいのではないかと思います。

ボスコンの試算によると、自動運転車の市場規模は2035年には9.2兆円になるそうです(このレポート、かなり分かりやすいです)。ちなみに自動運転機能の追加に120万円くらいだとか(本体足して300万くらい?)。

10年後の2025年の自動運転車普及率を約13%、自動車の基本価格を除いた市場規模を約420億ドル(約5兆円)と予測している。さらに2035年には完全自動運転車が増加して、普及率は25%に、市場規模は約770億ドル(約9.2兆円)に達すると見ている。

そして普及率は市場投入後10年で、自動運転車は新車販売市場の7-13%を占める見込み。また、2035年の完全自動運転車の販売台数は1,200万台と想定されています。

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(出典:ボストン・コンサルティング・グループ)

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(出典:ボストン・コンサルティング・グループ)

しかし日本における自動車産業は現状、出荷額50兆円の一大産業ですからね。もちろん産業構造が変わることで負の影響もあるわけです。

なにせ下手をすると下の図にある産業が消えてしまうわけですから。

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(出典:経済産業省)

ロードマップ

最初、国の目標。

官民 ITS 構想・ロードマップ 2016

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(出典:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)

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(出典:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)

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(出典:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)

普及までのより詳しいロードマップを見ていきましょう。

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(出典:EYアドバイザリー)

自動運転車の登場によって、自動車産業のプレイヤー構造も大きく変化が発生します。

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(出典:日経BP未来研究所)

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(出典:日経TRENDY)

前回記事でも一回引用した図ですが、各国ごとに普及シナリオは異なります。

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(出典:ADL)

また、自動運転車の重要技術8分野(地図、通信、社会受容性、人間工学、機能安全、セキュリティ、認識技術、判断技術)それぞれのロードマップもありました(8ページになるのでURLを貼っておきます)。

重要8分野の工程表

自動運転の技術として部分的な自動化はこの5年でどんどん浸透します。

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(出典:日経TRENDY)

自動運転車の主要企業動向

日本の自動車メーカー各社は、「2020年までに高速道路での自動走行車の実用化」等を発表。また、ベンチャー企業でも、限定地域での積極的な取り組みの動きがあります。

米国はGoogleにおける無人運転サービスに向けた公道実証や、テスラのオートパイロットの導入など、IT系・新興系企業が積極的に取り組みを進めています。

欧州系の自動車企業は、高度な自動運転技術の実用化に向けて積極的に取り組んでおり、加えてEU・国の支援を受けて、都市型無人運転サービスを目指す新興企業も多い模様です。

Google

目標は完全自動運転車の完成。そのため、目下車載Androidプラットホーム「Android Auto」を開発しています。

言うまでもなくこのジャンルの先鞭をつけた企業で、2012年に初めて公道で自動車運転の路上テストを実施しました。それ以降、トヨタのプリウスやアウディのTT等とも連携し、現在まで圧倒的な量の走行テストが行われています。

※ちなみに、2015年5月時点での事故件数(従来型も含む)はわずか11件と発表しています。

地図もあるしOSもあるしで開発環境としては最高だと思います。

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画像を見ての通り、ステアリングもハンドルやペダルもない新しいデザインの車を開発しています。ただ、前回記事でも見ましたが、Googleは車載OSプラットフォームのみを提供し、車自体の製造は自動車メーカーに委託するのではと考えられます。

やっぱり彼らのビジネスモデルって自動運転車自体にあるのではなく、その周辺含めたエコシステムを構築することにあります。

しかも自動運転によって両手が空いたところで提供出来る各種サービスはGoogleの広告や定額配信のビジネスモデルとも相性がよく、収益機会も増加すると思われます。

参考記事:グーグルの自動運転車とAndroid Autoそして車載OSへの野望

Apple

まだ計画に未知数なところはあるものの、スマホのiOSとの親和性を考えると自動運転車のトッププレイヤーのひとつになることは確実でしょう。

最近「CarPlay」という車のディスプレイにアプリ表示する機能を提供しはじめています。OSを握るというのはそれだけ強いということです。

Uber

2015年2月、自動運転と地図作成についてカーネギーメロン大学との連携を発表。16年には公道での走行テストを実施しており、順調に進展していると言えそうです。

Uberはシェアリングエコノミー企業としてプラットフォームを提供するビジネスモデル自体は自動運転車とアンマッチですが、今後直接自動運転車を購入し、世界で走らせるビジネスモデルに変革するものかもしれません。

テスラ・モーターズ

最も歴史の浅い自動車メーカーながら、かなり早い段階から自動運転車に取り組んできたリーダー企業。既に市場投入を進めており、競合よりも優位な立ち位置にあります。流石イーロン・マスク。

2015年10月、「モデルS」で、ソフトウェアがバージョン7.0にアップデートされ、ドライバーアシスタント機能の「オートパイロット(自動運転)」を使用可能になりました。

トヨタ

これまで割りと動きが鈍かったのですが、最近目覚ましい勢いで自動運転に傾倒。今では自動運転に関する特許を競合他社の2倍以上にあたる1,400も所有。

2020年頃の実用化をめざした自動運転実験車を公開して、自動車専用道路での合流、車線維持、レーンチェンジ、分流を自動運転することが出来ます。

ただし、完全なロボットカーではなく安全運転の補助という方向性で捉えているようです(大丈夫か……)。

日産

ハイウェイから一般道までの自動運転が可能な実験車両での公道テストを開始。

2016年末までには混雑した高速道路上での安全な自動運転を可能にする技術「パイロット・ドライブ1.0」を世界に先駆けて日本市場に導入する見込みです。

2018年には、高速道路での車線変更を行う、複数レーンでの自動運転技術の実用化を目指し、2020年までには、交差点を含む一般道での自動運転技術の導入を計画しています。

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ロボット・タクシー(ZMP、DeNA)

国家戦略特区のプロジェクトとして、2015年度から自動運転の実証試験を開始。神奈川県湘南地域に加え、仙台市などの協力のもと、レベル4のサービス実証実験の環境整備を進めるとのこと。

3D地図でも活躍が期待されるZMP、いつ上場するんでしょうか。

GM

2015年10月、高速道路で自動運転ができる機能(自動追従)を搭載した「キャデラック」を2017年に米国と中国で発売することを発表。また、市街地を想定した自動運転の実証実験を強化しています。

ダイムラー、フォルクスワーゲン、BMW(欧州)

積極的な欧州自動車メーカーは、EUの制度面でのバックアップもあって、以下のように多くの動きが見られています。

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(出典:IT総合戦略室)

フォルクスワーゲンは競合に先駆けて自動運転車の開発をスタートさせましたが、諸々あって難航し、中々生産に移せないでいます。

独アウディは中国・上海で、市街地と高速道路での走行試験を実施しました。

国の方針(おさらい)

今、国を挙げて取り組みを進めているところです。

官民 ITS 構想・ロードマップ 2016

安倍晋三首相 東京五輪までに「自動運転車」普及 科学技術のフォーラムで

世界各国の動向

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(出典:IT総合戦略室)


他のIT系テーマについて以下でまとめております。よろしければ合わせてお読みいただけるとうれしいです。

3分で分かる、IT系テーマの全体像まとめ キーワード、俯瞰図、ロードマップ等
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