今回はゼネラル・エレクトリック(GE)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。
元々は電球を発明したエジソンの企業で、20世紀最高の経営者と名高いジャック・ウェルチに率いられ華々しい20世紀を送りました(選択と集中ですね)。
ダウ工業株30種平均の算出当時からずっと構成銘柄に残り続けている、世界的なコングロマリットです。
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ゼネラル・エレクトリック(GE)の事業内容
ビジネスを3Cで分解してみましょう。
事業内訳
事業の幅が広すぎるので、超ざっくりまとめます。というか、GEのビジネスを追っかけてると経営の教科書になっちゃうんですよねw
詳しくはIR情報をご参照ください。アニュアルレポートには各セクターごとにグラフつきで詳しいハイライトが載っています。
下の図で、左が地域売上内訳、右がセグメント別売上です。海外売上比率は57%で、米国に依存していません。せめて色分けを分かりやすくしてほしかった……w

(出典:ゼネラル・エレクトリック アニュアルレポート)
事業セグメントはもう少し細かく見ましょう。これ全部ナンバーワンorナンバーツーって凄すぎですよね。

(出典:ゼネラル・エレクトリック アニュアルレポート)
- Power:発電事業は全体の22%を占める主力事業です。デジタル発電、ガスタービス発電などに加え、15年には火力発電で有名なフランスのアストルム(Alstom)のエネルギー部門を買収しています。増収増益で、調子は悪くありません。マージンも18%あります。
- Renewable Energy:再生可能エネルギーですね。風力、太陽光発電等の製品を有しています。ここも規模としては小さいですが、増収増益(営業利益率はわずか6%)。
- Oil & Gas:ガスタービン、圧縮機等のエネルギー事業向け機器は世界有数です。事業ハイライトにはオペレーションのデジタルサービスの発表もありました。さらに世界3位のエネルギーハードメーカーであるベーカーヒューズと事業統合に合意したため、成長戦略は順調に行っています(16年度決算には未反映)。ここ3年減収減益で足を引っ張っています。
- Aviation:航空機エンジンやコンポーネントで、21%を占めています。航空システムとしてソフトウェア領域にも進出しています。エンジン事業はGEの得意な領域で、増収増益が続いていますし、利益率も23%と高いです。
- Healthcare:医療機器(MRIやモニター)、デジタルヘルスケアソリューションを有しています。部門別では3番手に大きく、業績は横ばいですが、利益率は17%あります。
- Transportation:輸送部門はディーゼルエンジンやモーターの他、ソフト管理システムも開発しています。全体的な規模は小さいく、業績も横ばいですが、利益率は23%あります。
- Energy Connections & Lighting:エジソンの生んだ会社だけあって、世界最大手の照明事業を保有しています。それでも、GEの規模だと全体のわずか12%しかありませんが。業績は横ばいですが、利益率は2%しかありません。
- Capital:金融事業。かつての稼ぎ頭でしたが、リーマンショック影響も大きく、15年にGEキャピタルを売り払ってしまいました。これで製造業が9割を占めることとなり、見事選択と集中に成功しました。キャピタル部門の業績は横ばいで、利益率はマイナスです。
利益率も上にちょこちょこ書きましたが、決算書を合わせて載せておきます(グラフを引用すると3枚になっちゃうので)。

(出典:ゼネラル・エレクトリック アニュアルレポート)
要するにエネルギー事業が不振で、航空機エンジンなどは好調だということですね。キャタピラーと同じ考察になりますが、原油戻らないとダメですね。向こうの投資が冷え込んでいる状況で、手がありません。

あとは15年の金融事業売却は非常に大きな決断だったので、その影響もありますかね。
選択と集中
ジャック・ウェルチが提唱したGEの経営理念「選択と集中」は、ビジネスマンなら誰でも知っていると思います。GEはその業界で1位か2位以外のビジネスは全て撤退し、トップを取るために投資を集中することを経営戦略としています。
恐ろしいことに、GEのルーツである照明事業すらも例外ではありません。思い切り良すぎないですか。
では次に選択する分野はどこになるでしょうか?
全体的に見ると、よりお金を生みやすい事業へ、つまりハードウェアからサービス・デジタルビジネスへと進出していることが分かります。
ということで、一つはデジタル化によるサービスビジネスモデルの形成ですね。既存のハードビジネスにおいてもIoTが付加され、ソフトウェアで管理されるようなビジネスが増えそうです。3Dプリンタは既に2社(スウェーデンのアーカムとドイツのSLMソリューションズ)買収していますし、今後も小さな有望テーマは買収していく可能性も高いのではと思います。

3Dシステムズ、ストラタシスは買収の噂がありますね。個人的にも、3Dプリンタはそろそろ業務向けが本格化するフェーズだと思っています。


もう一つは業種として継続投資による利益が見込めるインフラビジネス(エネルギー、航空・鉄道の運送系)への進出です。これはベーカーヒューズとの石油事業統合、アストルムのエネルギー部門買収といった動きからも確認出来ます。
競合
事業幅が広すぎるので比較は難しいですね。製造業ならあちこちと競合しているのですが、航空機エンジンではユナイテッド・テクノロジーズ、エネルギー向け機器はキャタピラー、スリーエムでしょうか。



記事にしていませんが、同じコングロマリットだとハネウェル・インターナショナルやエマソン・エレクトリックも該当します(エマソン・エレクトリックは59年連続増配として簡単に紹介だけしていました)。

市場
こちらも調査は難しいですね。資本財全般の評価はキャタピラーやユナイテッド・テクノロジーズの記事に書いたので、そちらでご確認ください。
リスク要素
資本財だいたい一緒のこと書いてます。
資本財の収益率はそれほど高くない
同じこと何度も書いてますが、これ大事なんですよ。経営上手だし生き残りそうな企業だからと長期投資対象にされがちな気がするのですが、それなら市場平均を買えばいいんです。長期投資銘柄としては生活必需品やヘルスケアセクターはおろか、S&P500にも劣るということは知っておくべきです。
伝統的に、航空業界は景気循環するものとされています。つまり、好景気で良く見える株ということです。ところが、シーゲル先生の赤本では、資本財の収益率は10.22%と市場平均を下回っているとの調査結果が書かれています。

ということで、一般論ですが長期投資にはやや不向き、不景気に仕込んで好景気に売ったほうが良い銘柄ということになります。
もちろん、こうした評価が知れ渡って次の50年でアウトパフォームする可能性は否定しません。GEはサービスビジネスへ進出していますし、利益率が上がって投資家還元も増えれば、結果が変わる可能性も十分にあります。ただ、今の時点でそれを判断するのはまだ早いでしょう。ひとまず歴史に倣っておくことは、間違いを減らすことに繋がります。
エネルギー価格
今の不調はエネルギー事業によるものです。原油価格が戻れば機器需要も戻り、業績回復すると見込めますので、むしろ今は底でこれ以上下がらないだろうという意味で、リスクは高くないかもしれません。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の財務分析
PL
売上、利益が右肩下がりで苦戦している様子が伝わってきます。
営業利益率15%近くを維持しているのは立派ですが、かつてほどの効率性は見られません。
BS
安全性はやや低い評価になります。ここ10年で見ても、自己資本比率は20%以下しかありません。
CF
営業キャッシュフローがどんどん落ちてきているのが気になりますね。投資を絞っているにもかかわらず、FCFはマイナスになってしまいました。
株主還元指標
DPS自体は高くないですし、配当性向も概して50%以下でしたが、停滞気味の株価と相まって利回りは高めになります。
直近配当利回り:3.29%
ゼネラル・エレクトリック(GE)の株価、チャート分析
とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。
過去の最高値、最安値
- 最高値:60.75ドル(2000年)
- 最安値:5.73ドル(2009年)
米国株の中では珍しく、リーマンショック前の高値まで戻していません。
今後の値動き予測
5年チャート
ここ5年は停滞しながら何度かの壁を突破してきました。ものすごく近いですが、25ドルと28ドル付近には明確な壁があります。
ちょうど現在のポイントだと、スリートップ気味で落ちそうに見えますが。
1年チャート
28ドルのサポートラインを割ったらたぶん落ちる。
ゼネラル・エレクトリック(GE)の投資戦略
まとめます。
- 航空機エンジン、エネルギー、ヘルスケアなど多数の製品群を持つコングロマリットで、選択と集中によってナンバーワンorナンバーツーのビジネスしか持たないことで知られている。
- エネルギーセクターの不調で全体的に成長率が悪くなっているが、航空機エンジン事業を筆頭に堅調に推移しているビジネスも多く、エネルギーセクターが反転すれば業績復調は十分期待できる。
- 財務3表はあまり良くなく、とくにキャッシュフローが不足気味な状態は気になる。
- チャートとしてはリーマンショック前の高値をまだ抜けていない。
回答
ジャック・ウェルチの理念を受け継いで経営上手な印象は強いですが、投資対象としてはあんまり旨みがない感じです。
ここ最近ずっと業績が悪いのは間違いないですし、既に各市場トップシェアで成長余地も大きくありません(利益率の低いセクターが残っているのも問題)。
株価は右肩上がり基調ですが、既に投資家の期待が大きく乗っていると思います。エネルギーが復調すれば実態も追いつきそうですが、どこまで上がる余地があるか疑問です。
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