【米国株】ファイザー(Pfizer:PFE)の銘柄分析【高配当】

米国株

今回はファイザー(PFE)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

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ファイザー(PFE)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

スイスのロシュ、ノバルティスと製薬会社の売上高1位を争っている状態です。主力製品の特許切れがあると一気にランクを落とし、M&Aで上昇します。

製薬会社のビジネスモデル

ファイザーは一般消費者向け製品を持つJNJなどと異なり、医薬品売上が大部分を占める製薬会社です(というか、ファイザーはJNJに一般用医薬品部門を売却しました)。

そして、製薬会社のビジネスモデルはパイプライン拡充し、悪く言えばあとは数撃ちゃ当たるのビジネスです。そもそも認可が下りるのが1/10、売れるものなんてさらにそのうち1/10以下です。数百数千の失敗の上にブロックバスター(年間売上高が10億円を超える医薬品)が生まれ、これまでの多くの投資をペイします。

そして、金のたまごのパイプラインは、自社の研究開発によるものと、M&Aで有望なベンチャー企業を買収することで拡充されます。自社開発であれば総コストは平均して25億ドルらしく、残念な話ですが、後者のM&Aのほうがよっぽど効率良く成果の出てしまいます。大手各社はこぞって買収競争に明け暮れています。

(出典:ベイン・アンド・カンパニー)

しかしながら、臨床試験(製品化前)段階からの買収となるため、一般的なM&Aに比べて成功率は大きく劣っており、バイオテクノロジー関連の成功率は46%だそうです。

また、多様な医薬品市場において、各カテゴリーごとのリーダー戦略が有効です。ファイザーはトップ10製品のうち8製品がトップシェアを握っています。

トップシェアを握るカテゴリーに集中投資し、外からM&Aで補充して足場を固めた企業が、下の図で右側の高収益企業となります。

(出典:ベイン・アンド・カンパニー)

参考製薬業界における勝者のビジネスモデル(下)

ファイザーの現状

決算上はInnovative Health(IH)とEssential Health(EH)の2事業部です。大体6:4くらいの比率でしょうか。

(出典:ファイザー)

イノベーティブはリリカやイブランス等に代表されるバイオ系の高分子医薬品、エッセンシャルが無菌注射とバイオシミラーでリーダーを地位を確立しています。

16年度はホスピーラ買収で売上増となり、製薬業界の世界一を奪取しました。これまで業績を支えてきた高脂血症薬「リピトール」、高血圧症治療薬「ノルバスク」などの特許切れで数年間息切れ状態でしたが、ここにきて新薬が好調です。

乳がん治療薬「イブランス」、神経因性疼痛治療薬「リリカ」が前年比で二桁%増加となっており、他にも抗リウマチ薬の「エンブレル」や、抗がん薬「スーテント」、ワクチン「プレベナー」など新薬が軌道に乗って利益も倍増の見込みです。当面は特許切れを心配しなくて良いので、経営基盤や配当継続の観点でも一安心でしょうか。

(ファイザーのIR情報をGoogle先生で日本語訳しましたw)

(出典:ファイザー)

リリカやイブランスが上位に来ていますね。より細かく見るなら、以下のアニュアルレポート26ページから載っていました。

参考2016 Financial Report Pfizer

将来性を決めるパイプライン(新薬開発中の医薬品)ですが、ぱっと見で分かる図がないみたいです。

決算では以下のような記述がありました。まあ見てもよく分からないのですが、ファイザーはこれまでM&Aで大きくなってきた企業ですので、社内の新薬開発以外でも優良ベンチャーを引っ張って来るノウハウは相当あるでしょう。

  • イブランス:乳がん、膵臓での試験や研究が進む
  • バイオシミラー:フェーズ3でポジティブな結果
  • ワクチン:フェーズ3開始

また、地域別売上高は米国50%、EU17.6%、新興国20%、日本8%です。USが増えているのはオバマケアで保険適用者が数千万人増えたことが大きな理由です。

(出典:ファイザー)

競合

医薬品市場は症例ごとに細分化されており、各マーケットにリーダーが異なります。なので、全体像としては売上高で見ておけば十分だと思います。

以下の資料が大変見やすいのでお借りします。ファイザーが3年ぶりに首位を確保していますね。

(出典:Answers News)

参考【2016年 製薬会社 世界ランキング】ファイザーが首位奪還、ロシュが2位に ノバルティスは3位に後退

当たり前ですが、より多くの研究開発費をかけた方がブロックバスターを生む確率は高くなります。ファイザーの投資額は4番手に位置づけており、売上高の15%近くを回している計算になります。

個別銘柄分析記事としては、以下の通りです。良ければ合わせて見てやってください。

【米国株】ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson:JNJ)の銘柄分析【連続増配】

まとめて分析した記事もあるので、合わせてどうぞ!

ヘルスケア、バイオ関連銘柄【米国株25社コメントつき】
【日本株】バイオベンチャー(創薬)関連銘柄【小型成長株36社コメントつき】

市場

製薬業界は各医薬品ごとに市場リーダーが存在しますので、全体的な議論は以下のヘルスケア市場(VHT)をご参照。

【VHT】ヘルスケア関連銘柄【製薬・バイオテクノロジー】

先程キャプチャ載せたファイザーの主力製品をざっと見ると、患者数の多い症状に対する医薬品であることが分かります(もちろん、ファイザーは様々な医薬品開発を進めており、患者数の少ない難病治療薬もポートフォリオにたくさんあります)。

  • 肺炎ワクチン「プレブナー」:ワクチンとは感染症の予防接種のこと。特に65歳以上になると風邪をこじらせて肺炎になるケースが後を絶たず、予防接種はますます市場拡大するはずです。
  • 神経因性疼痛治療薬「リリカ」:身体がピリピリ痛むのが疼痛ですが、腰痛や糖尿病神経障害等に伴って発症します。つまりこれも中高年以上の多くがかかる症状で、ニーズは非常に高いです。
  • 関節リウマチ治療剤「エンブレル」:リウマチは30~50歳代の女性に多く発症し、関節痛などを引き起こします。日本にも100万人以上の患者がいるそうなので、メジャーな症状と言えます。
  • 乳がん治療薬「イブランス」:言うまでもなく、女性のがん罹患率1位です。

リスク要素

新薬開発失敗リスク

製薬会社へ投資する上で避けて通れないリスクです。昨年ブルーオーシャンの開拓だと大騒ぎされたBMYと小野薬品工業の「オプジーボ」は臨床第3相試験で優位性を示せず、同試験で成功したメルクの「キートルーダ」が優位に立っています。そんな世界です。

そのニュースが出てからの小野薬品工業なんてこれですよ。ピークから約1/3です。

(出典:Yahoo!ファイナンス)

パテントクリフとジェネリック医薬品

米国において特許の権利存続期間は、出願日から20年と定められています。医薬品も例外ではなく、特許切れになると後発医薬品、所謂ジェネリック医薬品にシェアを奪われ、大幅に利益が落ち込みます。これをパテントクリフと言います。

ちなみに、米国は日本よりも遥かにジェネリック医薬品が浸透しており、シェアは90%を超えます。

ファイザー自身、近年は目立った新薬開発実績を持っておらず、過去の反映を支えてきた高脂血症治療薬「リピトール」、高血圧症治療薬「ノルバスク」といった医薬品が次々と特許切れを迎えるという大きな問題を抱えています。ここに対策はないので、売上高を維持するためには次の医薬品を開発するしかありません。

バイオ医薬品はジェネリック医薬品化が難しい領域となりますので(バイオシミラーはありますが)、ファイザーの戦略は従来の低分子医薬品から高分子医薬品へと移っています。

一方で、製薬業界におけるパテントパワーのトップもファイザーだそうです。コア技術を特許で囲っているということになります。流石に米国は知財に強いですね。

参考【医薬品業界】他社牽制力ランキング2015トップ3はPfizer、Novartis、Roche

武田薬品工業が5位にランクインしていてちょっと嬉しい。

患者数の少ない市場

今後高分子医薬品へと注力を移すのですが、必ずしも市場が広いとは言えません。今までの医療で根治出来ない分野で、狭く深くピンポイントの医薬品を開発する方向になるためです(例えば肺がんと乳がんとでは治療アプローチが異なる場合があり、そうすると市場は小さくなります)。

消費者としては一人でも多くの命を救う新薬を開発してほしいと思っていますが、企業としては採算性がよりシビアになりそうです。

トランプリスク

もういいですかね(笑)ただでさえ既存の医薬品事業が厳しくなる中で、薬価改定までされようものなら泣きっ面に蜂ってやつですよ。

ただトランプはFDAの新薬承認プロセスを高速化しようとしており、プラス材料がないわけでもありません。

ファイザー(PFE)の財務分析

PL

全体的には売上横ばい、利益は年によってまちまちという印象です。10年をピークに売上が落ちているのは、主力医薬品だった高脂血症薬「リピトール」が11年に特許切れを迎えたためです。医薬品はこれが怖いです。

営業利益率は20%台後半で高水準です。ROEは12%前後なので米国株としては可もなく不可もなしですね(これだけキャッシュを稼ぐ企業としては効率悪く感じますが)。

BS

製薬会社なのでR&Dをはじめとして設備投資、固定資産が多いです。自己資本比率は40%前後と高めをキープ、財務上の安全性は確保されているように見えます。

CF

ちょっと予想外だったのがキャッシュフローです。出ていくお金が非常に少ないんですね。R&Dに8500億円使ってて、パイプラインの買収競争もあるはずなんですが……フリーキャッシュフローは非常に高くなっています。

株主還元指標

高利回りと言われることの多い製薬会社だけあって、ファイザーも高い株価に反して利回りは高めです。ただ配当性向は70%を超えてきていて、少し余裕のない状態。

連続増配はリーマンショックで途切れておりますが、またDPSは一定の成長率で刻んでいっていますので、配当はまだ期待出来るでしょう。

直近配当利回り:3.54%

ファイザー(PFE)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

ファイザー(PFE)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

分かるような分からないようなラインを引きました。リーマンショックを境にして左右反転させたような値動きをしています。

ともにリーマンショック後の最高値、最安値を見ると、絶対値では思ったほど大きく動いていない印象です。

  • 最高値:37.39ドル(16年)
  • 最安値:11.62ドル(09年)

今後の値動き予測

5年チャート

狭めのレンジで上限下限を取るなら、28~37ドルの位置です。過去5年間はこの狭い区間を行き来していました。

リーマンショック後として見れば順調に上昇しているのですが、ファイザーの建て直しはこれからなので、リーマン前の47ドルまで上がる可能性は十分あります。とすると平均の30ドル近辺は十分釣り合うということになります。

それにしても、売上が落ちてきた11年から上がっているのも不思議ですね(理由探しをしても仕方ないですけども)。

1年チャート

なんだか形としては34ドルをサポートに3ボトムで上がりそうなんですが、ヒゲつけてまた30ドルにタッチしてくれると非常にありがたいですね。

結構ずっとウロウロしているので、36~37ドルに向かってもまた反転してチャンスはあるように見えます。

ファイザー(PFE)の投資戦略

まとめましょう。

  • ファイザーは2011年移行、主力製品の相次ぐ特許切れ(パテントクリフ)に苦しんできたが、直近ではM&Aによる売上増で製薬業界首位を奪還した。
  • また、新薬リリカやイブランスが好調で、収益を押し上げている。これらは患者数も多く、今後ファイザーの事業の柱になりそう。
  • 利回り3.5%は高騰気味の米国株の中でも高めの水準で、魅力的。
  • チャートとしては30ドル程度でもリスクリワード釣り合うのでは。

回答

ファイザーに限らず、製薬会社は事業の中身が理解しにくいです。また、専門家である彼らをしてM&A成功率が40%ということが、新薬開発の将来性を予測することがいかに難しいかを物語っています。

さて、ファイザーは新薬の好調を受けて、一時の不況を脱した感があります。元々財務安全性は高く、これだけたくさんのポートフォリオとパイプラインがあれば事業継続性のリスクもほとんどない銘柄です。配当利回りが非常に良く、十分手を出せる水準だと思いました。

ヘルスケアセクターというのは成熟した市場のディフェンシブ銘柄でありながら成長セクターでもあるという美味しい市場です。シーゲル先生によると過去50年の年平均利回りは、S&P500を3%以上上回る14.19%を達成しており、長期投資の主力に置きたいセクターです。

JNJと比較すると、あちらが既に高騰していることもあり、利回りで1%近い差が出ています。ファイザーは十分選択肢になりそうですので、ウォッチ継続して検討したいと思います。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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