今回はマコーミック(MKC)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。
マコーミックはスパイス世界一の会社ですね。
日本ではエスピー食品が40%、ハウス食品が20%と高シェアを確保していてさほど流通していませんが、世界では圧倒的にマコーミック一強です。
目次(クリックで飛びます)
マコーミック(MKC)の事業内容
ビジネスを3Cで分解してみましょう。
事業内訳
マコーミックの事業は一般消費者向け(Consumer Segment)と事業者向け(Industrial Segment)に分かれています。
売上は消費者向け60%事業者向け40%くらいで、利益は消費者向け75%事業者向け25%でした。
真ん中のやつね。
コンシューマセグメントの詳細はこちら。為替でマイナスですが、「acquisition(獲得=買収)」による増加が大きく、全体ではプラスです。
インダストリアルセグメントの詳細はこちら。こちらも為替が大幅マイナスで、全体としてマイナス成長でした。
どちらも価格転嫁はそこそこ出来るのがトップブランドの強みです。
地域ごとに見ると米国の伸びが大きいようです。地域ごとの利益率が分からなかったのですが、おそらく米国が一番高いのでしょう。
ちなみに、過去3年間の新製品が売上に寄与した割合は9%でした。
マコーミックはイノベーションが出来ているという文脈で説明していましたが、むしろ90%以上は古くからのブランドが選ばれ続けているとも言えます。
スパイス&ハーブ、シーズニングとは
マコーミックが売り物にしているスパイス&ハーブとシーズニングについて確認しときましょう。
両者の定義の違いはこのようになります↓
- スパイス&ハーブ:香辛料。香味料。薬味。
- シーズニング:スパイス&ハーブと調味料をブレンドしたもの。
まあシーズニングはスパイスの一種とも言えますかね。スパイス市場の1/4くらいの規模になるそうです。
さて、スパイスと聞くとカレーのスパイスみたいに刺激物をイメージしがちですが、それだけではありません。ほとんどあらゆる料理に使われているものです。
スパイスは世界中で生産されています。スパイスの多くは熱帯性気候地域で育つものだからです。
日本やヨーロッパではコショーやシナモン、クローブといった有名なシナモンは収穫することが出来ないので、輸入に頼っています。
スパイスの役割は以下の5つです。
- 香り付け、臭み消し:シナモンなどを料理にふりかけて香り付けて風味を増し、食欲促進効果があります。また、コショーは古くから肉の臭い消し&防腐剤として重宝され、持ち運びやすいことから高値で取引されたと言われています。
- 辛味:唐辛子やコショー、わさびなどは辛味をつけてアクセントを生みます。発汗効果もあります。
- 色付け:ターメリックやパプリカなど、料理の彩りを飾ります。
- 砂糖、塩の代わりの味付け:コショーはもちろん、シナモンやジンジャーも。
- 様々な健康作用:防腐抗菌、抗酸化作用や整腸効果、消化吸収補助効果があるといわれています。風邪薬にも使われます。クローブ、ターメリック、ナツメグなど。
後ほど見ますが、健康志向や手軽な味付けとして欧米では順調に市場を拡大していて、これからも有望な市場と考えられています。
優良企業を買収して成長を継続
マコーミックに限らないですが、食品業界はM&Aが活発に行われています。
食品といっても調味料は味以上にブランドが重要な面もあり、自社のポートフォリオ拡充は一から製品開発するよりM&Aのほうが効率的なのです。
現時点だと、買収はマコーミックの売上の1/3を占めるみたいですね。
また、海外売上比率は約1/3程度ですが、これからグローバル展開を強化することを謳っています。成長の原動力はデジタルマーケティングとM&Aです。
例えば12年には、特にこれから伸ばしていきたい中国で高いシェアを持つ、武漢亜太調味食品を買収しました(1.4億ドル)。
17年にはマスタードソース、レッドホットソースで有名な、レキットベンキーザー・グループの食品事業を42億ドルで買収するという大型M&Aも敢行し、シーズニング・調味料分野への進出を強化しています。
競合
スパイス市場においてはライバル不在の圧倒的一強です。
まあ見ての通りです。赤がマコーミックで、水色がマコーミックの次に大きなブランドです。5~6倍くらい差がありまして、ライバルはむしろ価格安で追い上げるプライベートブランドでしょうか。
北米市場はもちろんのこと、イギリス、フランスといった欧州でも高シェアという点が好印象ですね。これだけ高いシェアがあると小売店側もスペースを確保せざるを得ません。
しかも、売上トップ10の食品メーカーと、トップ10うち9のレストランチェーンと提携・販売しているので、まさにどこへ行ってもマコーミックのスパイスや調味料が置いてあるのです。
IRを読むと、ブランドマーケティングに投じる費用を過去5年で35%増加させ、17年以降さらに増やしていくとあります。デジタルマーケティング強化も進み、土台は盤石でしょう。
市場
世界的には成長市場で、2021年までに40.3億ドルまで成長する見込みです。
健康志向でスパイスの健康効果が注目されていますし、食の手軽さ志向で調味料とミックスさせたシーズニング需要が増加していくというのは自然な方向性だと思います。
日本市場について
一方、日本の家庭でスパイスを保有しているのは50%未満で、30%はスパイス自体使ったこともないというデータがあります。
日本では一般的ではないのですが、米国のスーパー小売ではスパイスやシーズニングのコーナーが設けられているそうです(本当?)。実際、一人あたり使用量でも米国とは5倍差、イギリスやフランスとは6~7倍差があります。
そういった要因を反映して、スパイスの市場規模は米国だけで1200億円以上と言われているのに対し、日本はせいぜい100億円程度。
日本のスパイス市場はエスピー食品とハウス食品の独擅場ですが、ことスパイスに限って言えば、日本に市場としての魅力は小さいのかもしれません。
リスク要素
食品セクターの中でもリスクが群を抜いて低い会社だと思っています。
プライベートブランドとの競争
ドイツのアルディを代表として、プライベートブランドが市場でじわりじわりとプレゼンスを高めています。
しかし、以下アマゾンがホールフーズを買収したときの記事で書きましたが、高いブランド力はプライベートブランドに対して強い耐性を有しています。
実際、米国のプライベートブランド比率はまだ20%程度しかありません。
理由の一つとしては、広告マーケティングによってナショナルブランド(メーカー製品)の人気が非常に高いことでしょう。
米国にはそれだけ強力なブランドがあり、多くの消費者がPBをNBより下に見ているという推測が立っています。馴染んでいないんですね。
健康志向、時間がない社会、食生活の重視
上で見た通りですが、この辺りの社会的な変化は全てマコーミックの追い風になっていると思います。
スパイス・ハーブは健康への効果が高く、近年注目度を増してきています。
共働きが増えて料理をする時間がない人が増えた中、味のマンネリを避けておいしい料理を手軽に作るという意味で、スパイスや調味料が果たす役割は大きくなります。
マコーミック(MKC)の財務分析
PL
業績は安定ながらきれいに右肩上がりに推移しています。食品業界は成熟した産業ですから、毎年成果を上げているのは素晴らしいことです。
2009年に少しだけ凹んでいますが、それでもリーマンショック影響は見えないくらい小さいです。
生活必需品において高いブランドと独占力が価格競争を回避し、安定した経営を続けている証左でしょう。
営業利益率も14%前後をキープし、ROEは20%を常に超えている状態です。これほど安定している会社は中々ありません。
グロスマージンも40%を超えています。
BS
やや固定負債が多く、自己資本比率が徐々に下がってはいるものの、普通に安全水準だと思います。
CF
キャッシュフローは伸びているんですね。投資CFは大きくないので、FCFはかなり余裕があります。
総じて、優秀すぎる財務諸表で文句のつけようがありません。
株主還元指標
マコーミックは31年連続増配銘柄でもあります。
株高も反映して利回りで見ると小さめですが、配当性向はまだ50%以下で余力がありますし、マコーミックのブランドはこれからも優位に立ち続けると思われますので、すぐに40年50年と連続増配が伸びることが期待出来ます。
直近配当利回り:1.73%
マコーミック(MKC)の株価、チャート分析
とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。
過去の最高値、最安値
リーマンショック後からずっと右肩上がりです。リーマンショック前まで30ドル以下だったのに、そこから全く止まる気配なく100ドル到達しました。
- 最高値:107.84ドル(2016年7月)
- 最安値(リーマンショック後):28.08ドル(2009年5月)
1つ目のラインがリーマンショック前高値の42ドル付近、2つ目が13~15年の75ドル付近ですね。
100ドルは超えてしまったので、今は抵抗帯も大きな節目はないような状態でしょうか。
今後の値動き予測
5年チャート
長い目で見れば踊り場だったのですが、13~15年途中まで停滞していた75ドルを突破して以降、100ドルまで一直線に進みました。
かなりトレンドラインに忠実に沿って動いていますね。
1年チャート
直近1年はそれほど動きがありません。100ドルを超えて次どこへ行こうかという曖昧な動きが見えます。
マコーミック(MKC)の投資戦略
まとめときます。
- スパイスで世界トップシェアを有していて、第二ブランド以下と圧倒的な差がある。
- 健康志向や食のおいしさと手軽さの両立といった社会変化があり、スパイス市場は成長市場。
- 買収が売上の1/3を占め、グローバル展開や調味料分野への進出を強化している。
- 財務諸表は文句なし。配当余力も十分で、おそらくいずれは50年連続増配銘柄になるのでは。
- 株価は100ドル突破して高値圏でウロウロ、利回りは低くなっている。
回答
素晴らしい事業コアを持っていて、落ちてきたら買いたいなーと思って調べていました。
2位以下がいない独占ビジネスなのですが、一応プライベートブランドとの競合については押さえておきたいところです。
私も多くの日本家庭と同じくスパイスについては特に知らなかったので、これからちょっと意識してみようと思いました。
料理を作る時にスパイスをバランスよく使うコツだそうです↓
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企業名 (リンク先は分析記事) | ティッカー | 業種区分 | 主力事業、ブランド |
---|---|---|---|
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アルファベット/グーグル | GOOGL | IT | 広告(検索)、AI |
アップル | AAPL | IT | iphone |
マイクロソフト | MSFT | IT | OS、Office365 |
フェイスブック | FB | IT | 広告(SNS) |
IBM | IBM | IT | クラウド、AI |
インテル | INTC | IT | 半導体(PC、サーバ) |
クアルコム | QCOM | IT | 半導体(モバイル) |
エヌビディア | NVDA | IT | 半導体(GPU) |
オラクル | ORCL | IT | ソフトウェア(DB) |
オクタ | OKTA | IT | オクタ |
シスコ | CSCO | IT | ネットワーク機器 |
アリババ・グループ | BABA | IT | タオバオ、Tmall、アリペイ |
テンセント | HKG00700 | IT | テンセント |
バイドゥ | BIDU | IT | 百度 |
ビザ | V | 金融 | 決済インフラ |
マスターカード | MA | 金融 | 決済インフラ |
アメリカン・エキスプレス | AXP | 金融 | 決済インフラ |
スタンダード&プアーズ | SPGI | 金融 | 格付け機関 |
ムーディーズ | MCO | 金融 | 格付け機関 |
ブラックロック | BLK | 金融 | 運用会社 |
ウェルズ・ファーゴ | WFC | 金融 | 商業銀行 |
JPモルガン・チェース | JPM | 金融 | 商業銀行、投資銀行 |
シティグループ | C | 金融 | 商業銀行、投資銀行 |
ウエストパック銀行 | WBK | 金融 | オーストラリア銀行 |
バークシャー・ハサウェイ | BRK.B | 金融 | バークシャー |
AT&T | T | 通信 | モバイル通信 |
ベライゾン・コミュニケーションズ | VZ | 通信 | モバイル通信 |
ネットフリックス | NFLX | 通信 | 動画配信サービス |
ウォルト・ディズニー | DIS | 通信 | ディズニー、ESPN |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | JNJ | ヘルスケア | 医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他 |
メドトロニック | MDT | ヘルスケア | 医療機器(ペースメーカー他) |
アボット・ラボラトリーズ | ABT/ABBV | ヘルスケア | 栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他) |
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ | BMY | ヘルスケア | 医薬品(オプジーボ他) |
ファイザー | PFE | ヘルスケア | 医薬品(プレブナー、リリカ他) |
メルク | MRK | ヘルスケア | 医薬品(キイトルーダ他) |
ギリアド・サイエンシズ | GILD | ヘルスケア | 医薬品(ハーボニー他) |
CVS ヘルス | CVS | ヘルスケア | 薬局、PBM |
ユナイテッド・ヘルス | UNH | ヘルスケア | 医療保険、PBM |
P&G | PG | 生活必需品 | ビューティー(パンテーン、SK-II)他 |
ユニリーバ | UL | 生活必需品 | パーソナルケア(Dove、LUX) |
コルゲート・パーモリーブ | CL | 生活必需品 | オーラルケア(歯磨き) |
コカ・コーラ | KO | 生活必需品 | コカ・コーラ |
ペプシコ | PEP | 生活必需品 | ペプシ・コーラ |
ゼネラル・ミルズ | GIS | 生活必需品 | ハーゲンダッツ |
クラフト・ハインツ | KHC | 生活必需品 | チーズ、ケチャップ |
マコーミック | MKC | 生活必需品 | スパイス |
ホーメルフーズ | HRL | 生活必需品 | SPAM |
マクドナルド | MCD | 生活必需品 | マクドナルド |
スターバックス | SBUX | 生活必需品 | スターバックス(スタバ) |
ウォルマート・ストアーズ | WMT | 生活必需品 | 大型店舗小売 |
コストコ・ホールセール | COST | 生活必需品 | 会員制小売 |
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アルトリア・グループ | MO | 生活必需品 | たばこ(マルボロ) |
レイノルズ・アメリカン | RAI/BTI | 生活必需品 | たばこ |
アンハイザー・ブッシュ・インベブ | BUD | 生活必需品 | バドワイザー |
ナイキ | NKE | 生活必需品 | スニーカー(ナイキ・エア) |
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シェブロン | CVX | エネルギー | 石油メジャー |
ロイヤル・ダッチ・シェル | RDS.B | エネルギー | 石油メジャー |
ボーイング | BA | 資本財 | B787ドリームライナー |
ロッキード・マーティン | LMT | 資本財 | ステルス戦闘機F-35 |
ユナイテッド・テクノロジーズ | UTX | 資本財 | 航空機エンジン、エレベーター |
キャタピラー | CAT | 資本財 | 建設機械(油圧ショベル他) |
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