【米国株】メドトロニック(Medtronic:MDT)の銘柄分析

米国株

今回はメドトロニック(MDT)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

あまり馴染みのない会社かもしれませんが、心臓ペースメーカーをはじめとして医療機器のトップシェアをいくつも持っている、ヘルスケアの優良企業です。

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メドトロニック(MDT)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

早速決算書を読みましょう。決算は以下の4分野に分かれています。

(出典:メドトロニック)

  • Cardiac&Vascular Group(CVG):心臓、血管用の医療危機ということで、心臓ペースメーカーなどがここに含まれています。売上高全体でも35%を占めるメドトロニックの主力領域です。
  • Minimally Invasive Therapies Group(MITG):直訳すると低浸襲治療になりますが、手術用の医療機器ですね。全体の33%を占めます。
  • Restorative Therapies Group(RTG):直訳するとリハビリ治療で、脊椎刺激療法などの手術用機器になります。25%となっています。
  • Diabetes Group(DIAB):Diabetesは糖尿病のことですね。これは7%に相当しています。

また、米国内売上が56%、海外が44%と、やや海外比率の高い企業と言えると思います。それにしても、全てのセクター&全ての国で成長ってものすごい話ですね。

M&Aにも積極的で、15年に同じ呼吸器系の医療機器メーカーであるCovidienを買収しています。シナジーがなんとか言っているのはそのためです。

3Qの数字ですが、具体的な数字もあったので載せておきます。

(出典:メドトロニック)

Cardiac&Vascular Group(CVG)

(出典:メドトロニック)

1957年に世界初の対外型ペースメーカーを開発して以来、心臓・血管という循環器領域でマーケットシェア4割近くと、リーダーとして立場を維持し続けています。

Minimally Invasive Therapies Group(MITG)

(出典:メドトロニック)

手術用医療機器も様々ですが、一般的な外科手術器具は大抵取り扱いがあります。手術用縫合糸、電気外科 手術装置などですね。

また、心臓外科手術向けの機器として、人工心肺関連製品やステントグラフトシステム、耳鼻科領域において術中の神経麻痩リスクを軽減するモニタリングシステム等も取り扱いがあります。

低浸襲治療の推進で、早期発見のためのカプセル内視鏡による消化管診断なども商品群にあります。

Restorative Therapies Group(RTG)

(出典:メドトロニック)

椎疾患の治療に用いる脊椎インプラント(金属製のボルトやナット)をイメージすると分かりやすいでしょうか……サッカー選手の怪我として聞いたことのある椎間板ヘルニアなどの治療に使われます。

Diabetes Group(DIAB)

(出典:メドトロニック)

インスリンポンプ(CSII)、持続グルコースモニタ(CGM)。糖尿病で注視が必要な、血糖値変動の監視、管理が可能な医療機器みたいです。

競合

医療機器の競合はジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、ゼネラル・エレクトリック(GE)などですが、医療機器というのは患者の命に直接関わる領域ですので、実際には症状毎にセグメントが細分化され、それぞれの市場でリーダーはかわってきます。

【米国株】ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson:JNJ)の銘柄分析【連続増配】

JNJの記事に載せた医療機器メーカーのランキングを再掲します。

(出典:ビジネス+IT)

メドトロニックの持っている医療機器セグメントでは、大抵がマーケットのトップシェアを握っています。命に関わる機械ですので、安かろう悪かろうなんて論外なわけです。実績と信頼を積み重ねてきたからこその高シェアであり、一朝一夕に崩せるものではありません。

一応、心臓ペースメーカー市場の競合は下記になります。

  • バイオトロニック(ドイツ企業のため米国には非上場?)
  • ボストン・サイエンティフィック(BSX)
  • セイント・ジュード・メディカル(STJ)
  • ソリンSpA(イタリア企業のため米国には非上場?)

市場

全体的な議論は以下のヘルスケア市場(VHT)の概観記事でまとめていますので、御覧ください。高齢化、長寿命化、新興市場の所得増加などによってヘルスケアセクターが今後の主要成長セクターだと書いたつもりです。

【VHT】ヘルスケア関連銘柄【製薬・バイオテクノロジー】

しかも、メドトロニックの主力である慢性疾患は、寿命が伸びるほど長い付き合いになる病です。

医療費は現時点でも世界のGDPの11%を占めていますが、今後さらに増加する傾向にあり、1年に5%以上の上昇が見込まれています。米国では2021年に対GDP比20%になりますので、いい話ではありませんが、市場は巨大で、かつ拡大余地が大きいです。

メドトロニックは数多くの製品群を有しており、個別で見るのは難しいのですが、ペースメーカー市場について言えば、現在市場規模が57億ドル、年平均成長率は13.8%です。シェアとしては米国が40%、欧州が30%を占めています。

また、メドトロニック日本法人のページにも色々と記述があります(当然メドトロニックに有利な内容ばかりになるのですが、そこは許してください笑)。

参考メドトロニック日本法人 21世紀における 意義あるイノベーション

  • 急性疾患に対しての医療システムは整備されてきたが、慢性疾患(生活習慣病:がん、脳卒中、心臓病や糖尿病)の対策は遅れており、死者の8割以上は慢性疾患が占めている。さらに、将来も患者数が増え続けることが見込まれる。
  • メドトロニックは、患者数は年間約100万人とされる心臓病に対して強いシェアを持つ。心臓病は、例えばインドでは2020年までに試飲の40%が心臓病によるものと予測されているくらい患者数が多く、危険性の強い病気である。また、メドトロニックは再入院を防ぐためのケア(心臓モニターなど)にも力を入れている。
  • がんの中では肺がんに注力し、初期段階で発見して治療する低侵襲治療を推進している。
  • メドトロニックは新興国での医療インフラ構築や医療教育も推進している。

見てきて感じたのは、メドトロニックの機器が今後増加する慢性疾患の医療アプローチに欠かせないということです。

主力のペースメーカーは今後も利用者が増えますし、緊急疾患に対しての手術用具も増える一方でしょう。また、疾患のビフォア(早期治療)、アフター(モニター)両面からアプローチが可能で、疾患の完治に最後まで付き合いのある企業となるはずです。疾患を根本原因から解決させるための医療教育や、効率的な運営をするための医療システムといった周辺産業も配備し、広がりのある市場はほとんど押さえていると見ていいのではないでしょうか。

リスク要素

ヘルスケアといっても製薬会社のような新薬開発をやっているところとは違うので、安定した業績が期待できます。また、上で見たようにメドトロニックの持つ市場は(残念ながら)患者の多い病が多く、長らく信用を培ってきたメドトロニックの社会的必要性が消えることはないでしょう。

その意味で、リスクは非常に小さいものと考えています。

技術革新

実績を積み重ねてきたメドトロニックからシェアを奪うとしたら、それこそ新製品ならより多くの命を救うことが出来るというような、圧倒的な技術革新しかないでしょう。

しかし、ハードウェアの技術革新は、ソフトウェアや医薬品のそれよりも緩やかに進みます。それに手術用機器とかはこれ以上変えようがないですしね。

主力の心臓ペースメーカーも、かつては携帯電話の電波が悪影響を与える可能性もありましたが、今は解決していると聞いたことがあります。であれば、需要は病気の完治の方に移りますので、技術革新が生まれて世の中の誰もがペースメーカーを必要としない日が来るまでは、メドトロニックのペースメーカーが世界中に納入されるのでしょう。

トランプリスク

ヘルスケアセクター全般のリスクですが、医療機器は少し攻撃対象からズレているかと思われます。

集団訴訟リスク

人体影響の大きい医薬品は、何か問題があったときのリスクが大きい?

独占禁止法

リスクで探していたら、中国で罰金20億円の判決が出たという記事を見つけました。なんでも医療機器としては初だそうです。

参考【経済】中国:米メドトロニックに罰金20億円、医療機器で初の独禁法違反

記事の内容は……うーん、どうなんでしょうね。

メドトロニック(MDT)の財務分析

PL

売上はやや横ばいから直近一気に増えています。これはM&AによるCovidienの買収が影響したものと思います。

利益率は20%前後、ROEも20%前後と非常に高いです。流石にトップシェアで市場を独占しているだけありますね。

特にROEが少し下がり気味なのは気になりますが、過去数年を見て高水準であり、マーケットシェアもトップを維持し続けていますので、問題ないと思っています。

BS

ヘルスケアセクター全般の話ですが、固定資産は多いです。R&Dや医療機器製造の設備投資が発生しているためです。

それでも、自己資本比率は50%以上を維持していて、安全マージンは非常に大きいです。事業内容を踏まえても、潰れることはないですね。

CF

キャッシュフローはおかしいことになってますね。営業キャッシュがそもそも多い上に、投資が少ないないため、とんでもないキャッシュリッチ企業です。

余ったお金は投資家還元に使っています。

株主還元指標

連続増配は39年です。日本で言えば最長記録ですが、米国企業にはそれより上が数十社あるというのが恐ろしいところ。

米国株25年以上連続増配銘柄・有望15株(コメントつき)

総還元性向は100%ですが、配当性向は30%程度とまだまだ余裕がありますので、連続増配を維持することは可能と見ています。

直近配当利回り:1.90%

利回りはやや低いのですが、DPSも1.1くらいで大きな数字ではないですし、今は株価が非常に高いので、どうしても利回りは落ちてしまいます。

メドトロニック(MDT)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

メドトロニック(MDT)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

15年間くらい、30ドル~60ドルのレンジをウロウロしていました。リーマンショックでレンジをぶった切って落ちた後、12年くらいから上昇をはじめて、今はどんどん最高値を更新している最中となっています。

  • 最高値:89.27ドル(16年7月)
  • 最安値(リーマンショック後):24.06ドル(09年)

本当の下限値はリーマンショック後の最安値24ドルとして、中央値で56.5ドルですか。うーん、しばらくは落ちない気もしますが、前回レンジ下限の60ドルあたりに近づいたら買い場だと思います。利回りが低いので、高値で掴むと中々損益分岐点を切り下げてくれず赤字が膨らむのが見えているので、こういう戦略になりますが……どうでしょう。

今後の値動き予測

5年チャート

直近5年は上昇トレンドです。16年から踊り場が見えてきていて、80ドル前後を頂点に下がる可能性もあります。下がるとしたら60ドル台まで行きそうなので、そうなると買い場です。まあ、パワー溜めて上がっちゃうかな……。

1年チャート

ちょうど今は方向感がないので、70ドルか80ドルにタッチしたら反転するんじゃないでしょうか。

メドトロニック(MDT)の投資戦略

まとめ。

  • 心臓ペースメーカーや手術用医療器具を中心とした世界3位の医療機器メーカーで、多くの製品がトップシェアを握っている。
  • メドトロニックの主力領域である慢性疾患は世界的な人口増加と高齢化によって今後一層患者が増える領域となる。
  • 39年連続増配中だが、キャッシュリッチ企業で、配当性向は30%程度と、配当余力も十二分にある。
  • チャートとしてはかなり高止まりしており、少し下のレンジにあった60ドル近辺が買い場になるか?

回答

事業内容を見ると非常に良い会社で買いたくなるのですが、利回りは他の連続増配銘柄と比較して低めなので配当再投資向きではなく、購入は悩ましいものがあります。

なんにせよ60ドルという株価が大きな目安になるので、ちょっとここからじゃ遠いですね……。


知り合いにペースメーカーを利用している人がいると、メドトロニックという会社に興味が湧いてくるものです。この会社は満足に治療を受けられない人々へ医療プログラムを提供すべく、海外でインフラの整備や治療の教育を行っています。

こうした社会的使命を持った企業こそ、株主として応援していきたい銘柄だと思います。だからお願いだからあとちょっと株価下がってほしい。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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