【米国株】ユナイテッド・ヘルス(United Health:UNH)の銘柄分析

米国株

今回はユナイテッド・ヘルス(UNH)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

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ユナイテッド・ヘルス(UNH)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

米国最大の医療保険+米国三位のPBMという固有のポートフォリオを有しています。保険会社から見て、保険金の支払いは出来る限り安くしたいのですから、医薬品を下げることは自社の利益に繋がりますね。

ということで、決算書上も下記の2つの区分に分かれています。Optumは子会社です。

(出典:ユナイテッド・ヘルスIR)

  • UnitedHealthcare:保健事業ですね。ユナイテッドヘルスの主力事業で、全体の8割近くを占めています。市場トップシェアだけあって、国内外、個人法人、メディケイド全てのラインナップを揃えています。ユナイテッド・ヘルスの保険加入者は1億人を超えており、これは米国人口の1/3に相当するレベルです。
  • Optum:こちらが3割近くですね(重複削除があるので、少しブレますが)。PBM事業、IT活用によるデータ分析事業、顧客の健康管理サービス等の事業が含まれます。

なお、PBM(Pharmacy Benefit Manager)は和訳すれば薬剤給付管理で、第三者機関が処方箋の管理を行うことです。また、PBMは膨大な処方情報を元に製薬会社と薬価交渉を行い、薬局へ安価な医薬品を納入する卸売事業と見ることも出来ます。

詳細はPBM2位のCVSヘルスで説明したので、ご参照ください。ちなみに業界トップはエクスプレス・スクリプツ(ESRX)ですが、PBM事業だけでは儲からないと分かったのでこちらは投資対象とはしない予定です。

【米国株】CVSヘルス(CVS Health:CVS)の銘柄分析

UnitedHealthcare

UnitedHealthcareはさらに4つのセグメントに分けられます。どの分野の保険なのかということで、難しい話ではありません。グローバルを除く全セグメントで加入者が増加しており、絶好調の状況が見受けられます。

(出典:ユナイテッド・ヘルスIR)

  • UnitedHealthcare Employer&Individual:法人、個人向けの保険サービス。3000万人以上が利用する、最も一般的な医療保険になります(元々米国では会社を通じて医療保険に加入することが一般的です)。
  • UnitedHealthcare Medicare& Retirement:50歳以上の高齢者向けの保険サービス。拡大市場であり、介護支援やサプリメント提供等もラインナップにあるようです。
  • UnitedHealthcare Community&State:メディケイド(低所得者向けの公的医療制度)です。身体に障害がある人もメディケイドに含まれますので、ニーズが多様化します。こうした領域をカバー出来るのは大手だからこそでしょう。
  • UnitedHealthcare Global:海外売上比率は3%と、グローバルではほとんど存在感がありませんが、なんだからブラジルには根を張っているみたい。12年にブラジル最大の医療保険会社であるアミル・パルティシパソスを買収し、海外進出に成功しています。

さて、ここで問題なのですが、このユナイテッド・ヘルスの扱う保険は「医療保険」なんですが……中身は結構細かく分かれているようです。

参考少しだけわかる米国の医療保険制度

医療保険って、高額医療費制度がある日本では生命保険や損害保険より優先度低くてあんまり必要ないので、ついつい同じ風に考えてしまいますが、米国だと保険適用外の医療サービスには法外な金額がかかりますので、医療保険はあったほうが良いのでしょう。

日本は本当に保険至上主義なのですが、国民性なのでしょうか。多くの人にとって人生で2番目に高い支出項目ですので、米国人は可能な限り支払わずに済む方法を模索しようとします。

Optum

Optumはさらに3つのセグメントに分けられます。先程の再掲です。

(出典:ユナイテッド・ヘルスIR)

営業マージンに特徴があるので一緒に載せます。保健事業は規模の割にマージン薄く、Optumの方で利益を稼いでいる構図になります。

(出典:ユナイテッド・ヘルスIR)

  • OptumHealth:オプティム銀行の金融業務、健康管理サービス等いくつかあるようです。
  • OptumInsight:ITによるデータ分析、ヘルスケア管理ソフトウェアの提供をしています。下で見るようにこれだけ利益率20%と、圧倒的に高くなっています。
  • OptumRx:これがPBM事業です。CVSヘルスでもそうでしたが、ただでさえ薄いマージンをさらに削っていく仕事なので、売上規模は大きいのですが、利益率が低くなっています。15年にPBM業界4位のCatamaranを買収し、シェアは約20%と3位の地位を盤石にしました(これで市場は3社でシェア70%と、寡占が決定的になっています)。

保健事業とは逆に、M&Aでの補強も多いようです。利益率の高いOptumInsightを拡大していけるといい感じですね。

PBMはCVSヘルスでも利益率が非常に低かったですね。安く提供することが価値ですので、キャリアに対する格安SIMみたいなもので、大きなマージンを稼げるモデルではないことが分かります。

競合

医療保険では米国最大手で、市場としては少数寡占体制になっています。ユナイテッド・ヘルスにアンセム、エトナ、ヒューマナ、シグナを加えた5社が、医療保険業界のビッグ5らしいです。その中でユナイテッド・ヘルスのシェアは見つからないのですが、保健事業で1億件を超えたとあるので3割~4割くらいでしょうか。2位のアンセムでも4000万件以下ですので、圧倒的な差があります。

15年にエトナがヒューマナを、アンセムがシグナをそれぞれ買収しようとしましたが、反トラスト法の判決でどちらも断念しています。ただでさえ高騰しがちな医療保険市場が競争すらなくなったら大変なことになりそうですね。

もう一つの柱であるPBM事業では、エクスプレス・スクリプツ(ESRX)、CVSヘルス(CVS)がライバルになります。3社で7割のシェアを握っており、これ以上の統合はこちらも独禁法に引っかかるので打ち止めかと思われます。

【米国株】CVSヘルス(CVS Health:CVS)の銘柄分析

市場

12年なのでちょっと古い資料なんですが、とても参考になるデータがありました。

(出典:みずほ銀行)

この資料なんですが、読んでいると面白いですね。医師は病院と雇用関係になく、施設利用契約を介して繋がっているとのことで、医療と経営が完全に独立しているようです(それぞれが患者に手術料金と入院代を請求する)。

また、大和総研の資料では、米国での総医療費の増加傾向を示すグラフや、保険未加入者の状況(オバマケアで強制加入された影響調査)グラフもありました。これを見る限り、米国の医療保険市場の拡大は間違いないでしょうね。

(出典:大和総研)

オバマケア適用後の保険未加入者推移を見ると、以下のように急激に減少しています。これがユナイテッド・ヘルスの急拡大の源泉です。

(出典:大和総研)

あと、関係ないんですが、調べてたら米国の生命保険市場が出てきました。Metlifeってところがトップシェアなんですが、それでも11%しかありません。なんでも、州ごとにそれぞれの保険会社が監督しているという事情があるみたいで、会社数が895社にも登ります(日本は43社らしい)。

リスク要素

オバマケア廃止

さて、すっかりオバマケアがリスクだと思っていたのですが、どうやら既に撤退表明しているようですね。そりゃ赤字になりますしね。これなら将来の影響は小さいかもしれません。

参考アングル:オバマケアに暗雲、ユナイテッドヘルスが撤退表明

ユナイテッドヘルスもかつては他の保険会社同様に、オバマケアで加入者は増える恩恵もあったでしょう。

上でも見たように、米国人口の15%がこれまで保険未加入と言われていたようで、人数にすると4000万人程度に相当します。これが国民皆保険制度でが突然新しいお客さんになったわけですから、市場拡大はまったなしでしょう。

逆に今回の撤退表明で、この4000万人という客層がまたどこかに行ってしまうということになります(トランプの廃止リスクは自ら排除しましたが)。ユナイテッド・ヘルスの撤退表明は16年なので、今後の決算ではメディケイドの数字が小さくなると思われます。

オバマケアは既存の保険加入者にとってのサービス改悪

一応、オバマケアがなんでこんなに反対されていたかというと、既に加入している人から見るとよくわかります。

既存加入者は大体は職場で医療保険に加入していますので、今更新しい法律の定めは必要ありません。それどころか、リスクの高い人が加入することで保険の質が落ちて(健康状態が悪くても皆保険なので加入拒否出来ません)、しかも保険料率が上がる(リスクが上がれば一人あたりの負担額も上がります)のですから、反対は仕方なしでしょう。

保険ビジネスは本質的に微妙

保険のビジネスモデルってあんまり儲かる仕組みじゃないんですよね。

保険の仕組みは共同プール制にあるのですが、要するにみんなでちょっとずつお金を出し合ってプール金を作り、出資した人のうち誰かが必要になった時にプール金から支払うことで大勢のリスクを回避しようというものです。病気になる人も統計で確率的に予測が出来ますので、そこから逆算して一人あたりの必要出資額を算出することが出来るわけです。

しかしながら、保険会社から見ると、医療保険の収入源って以下しかないのです(死差は生命保険のビジネスモデルでの言い方なので、別の表現が正しいと思いますが)。

  • 死差:想定していた確率よりも病気になる人が少なければ保険金支払いが少なくて済みます。オバマケアでリスクの高い人が入ってくると、当然ここが上がって収益が落ちます。
  • 利差:プール金は国債などの安全資産で運用しますので、その利回りが良ければ利益が出ます。
  • 費差:保険会社の人件費が保険料の中に含まれています。ユナイテッド・ヘルスは分かりませんが、日本の保険会社だとここが50%にもなると聞いたことがあります。ネット保険と大きな価格差がついているのはここが原因で、ITを介して世界中の人と共同プール制の仕組みを構築出来れば、高い保険は淘汰されると思っています。

根本的な仕組みとして、それほど儲からないことが分かりますでしょうか。上2つは保険会社にはどうしようもない話ですし(加入制限したり、ややこしくして消費者に支払わずに済むような保険を開発するしかない)、最後の費差だって限界があります。加入者が増えれば一人の保険料に付加される保険会社の人件費等は薄くなりますが……。

ユナイテッド・ヘルスはPBMを持っているので、支払い保険金を下げられるという特別な強みがありますが、それだって両方のマージンが既に薄いことを見ると、もう劇的な改善効果は見込めないでしょう。

ユナイテッド・ヘルス(UNH)の財務分析

PL

保険加入者増加やM&Aによる医療サービスビジネスの拡大に伴って、売上成長は見事です。ただ、やっぱり全体での利益率10%以下は低いです。

ROEは17%前後で推移しており、市場平均より高くなっています。

BS

自己資本比率は4割程度をキープしていて、余裕十分です。

CF

キャッシュフローも余剰がたっぷりあり、事業の安全性が伺えます。

なお、徐々に投資が増えていますが、特にOptumセクターのM&Aによる売上増加&シェア拡大につなげているのですから、上手くいっていると言えるのではないでしょうか。余剰資金をどう使うかというのは結局、配当、自社株買い、内部留保(別事業への投資)の3パターンしかなく、成長企業は後者へ、成熟企業は前者へと比重を傾けるのが普通です。

株主還元指標

見ての通り、配当性向は今でも30%程度、長らく10%以下とほとんど配当還元をしてこない企業でした。

それに比べれば自社株買いはやっていますが、総還元性向は平均70%以下とこれまで見てきた米国株と比べるとやや低い印象です。

直近配当利回り:1.39%

利回りも当然高くはありません。株価も高いので低めに出てしまいますけども。

ユナイテッド・ヘルス(UNH)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

ユナイテッド・ヘルス(UNH)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

高いっすねw

まあこの規模の企業で加入者増加していて売上高も二桁成長しているのですから、そりゃあ人気も出ますよね。全く壁らしい壁もないまま上昇しています。止まるとしても200ドルあたりが節目になるかどうかという感じでしょうか。

  • 最高値:176.07ドル(現在)
  • 最安値:14.51ドル(2008年)

この株価で利回り1.53%、自社株買いも考えるとかなりの高還元と言えるかもしれません。

今後の値動き予測

5年チャート

きれいなトレンドラインを描いて上昇中です。

1年チャート

フラクタルのように、どこで切り取っても同じチャートをしていますね。

ユナイテッド・ヘルス(UNH)の投資戦略

結構長くなってしまった。まとめましょう。

  • ユナイテッド・ヘルスは米国医療保険最大手、PBM3位の事業ポートフォリオを有する企業で、保険事業の好調が続いている。
  • 保健事業、PBM事業ともに利益率は5%以下しかなく、Optum傘下のInsight(データ分析、健康管理ソフトウェア)事業は20%以上を叩き出している。
  • オバマケアからの撤退を16年に表明しているため、トランプリスクは限定的かと思われる。
  • 好調を反映して、チャートも右肩上がりのトレンドが継続している状態。

回答

主力事業2つのビジネスモデルがあまり好きになれず、長期保有銘柄としてはあまり向いていないのではと感じました。

最大手なので潰れることはないと思いますし、当面は保険業の必要性も変わりませんが、今の株価だったらドラッグストアを持っているCVSヘルスのほうが好みなので、こちらは見送りです。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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