【米国株】オラクル(Oracle:ORCL)の銘柄分析

米国株

今回はオラクル(Oracle:ORCL)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

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オラクル(ORCL)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

ソフトウェア事業者としてはマイクロソフトに次いで世界二位……のはず。

一般の人はオラクルと聞いたらJavaを思い浮かべるんでしょうか? 私は仕事柄オラクルはOracle Database(オラクルDB)のイメージですね。データベース管理ソフトでは圧倒的な世界シェアを持っていて、どのシステムでも必要とされているものです。

システムを超簡単に言うと、下のイメージになります。システムは通常、Webサーバ、APサーバ、DBサーバの3層構成とされていて、赤枠で囲ったDBサーバがデータ管理をするサーバになります。そしてDBサーバにはほぼオラクルの製品が使われているということになります。

各会社ごとに会計経理系の社内システムや顧客管理、料金計算といった業務システムがありますので、DBソフトを持っていることがどれだけの収益を叩き出すか分かりますでしょうか。他にもERPパッケージや各種ミドルウェアをラインナップに加えており、多くの製品が高シェアを誇ります。

(出典:日経SYSTEMS)

まあやっぱりパッケージ売りが最強ですよね。一度作ったら本製品のアップデートだけしていればジャブジャブお金が入ってくるんですから。これと対照的に日本は情報システム部門の立場が弱く(特にお偉いさんはシステムをコストセンターと思っている節があります)、今の業務のほうにシステムを合わせようとするので、カスタマイズが度々発生し、パッケージ・汎用ソリューションとして展開出来ない個社オーダメイドビジネスになっています。

そもそも未だ途上国水準の人月商売(笑)ですから仕方ないですね。なんにせよ稼げない上に技術ノウハウも貯まらない日本のIT企業へ投資することはオススメしません。顧客も含めて契約軽視の文化まで根付いているので、リスクは青天井です。

決算書から

まあ愚痴はさておき、オラクルの決算書を見てみましょう。決算の項目読み方含めてですね。

(出典:Oracle IR)

  • Cloud(SaaS/PaaS/IaaS):全体の売上に占める割合自体は5%程度ですが、オラクルの今後の注力分野です。「Oracle Cloud at Customer」などの好調に牽引され、前年同期比の2倍近くに拡大。
  • New software licenses:新規ライセンスはオラクルDBをはじめとした既存のライセンスビジネスで、オラクルの主軸事業ですが、見ての通り少し落ちてきています。
  • Software licenses updates:オラクルのライセンス体系はサブスクリプションモデル(利用期間で課金)ではなく普通の販売モデルで、利益の源泉であるサポート契約も必須ではありません(サブスクリプションモデルの強みは、製品とサポートを一つにして提供することで利益率が上がるという点もあります)。ただ、販売済みのライセンスをアップデートする際にはサポート契約が必要ですので、こちらのほうが収益が大きく、堅調に増加となっています。
  • Hardware:サン・マイクロシステムズの買収によってサーバ、ストレージといったハードウェアビジネスも有しており、OSもSolarisがありますので、総合IT企業と冠しているわけですね。どこもそうですが、クラウド化によってハードウェアビジネスは前年比10%近く下降気味です。

オラクルのクラウド事業進出

オラクルの標的はアマゾンAWSです。著名なCTOラリー・エリソンは17年度の重点目標として、オラクルのクラウドを競合の2倍ペースで増加させること、オラクルの高性能データセンターの「第2世代」を活用してのクラウド成長戦略です。

参考ラリー・エリソン:2017年度のオラクルの重点目標は2つ

既に自社の領域がクラウドに侵食されているので、対応は至上命題です。また、上にちょろっと書きましたが、クラウドサービスモデルとしてサポートと一体で販売することにより、現在50%程度と言われるサポート契約率を改善し、利益向上が期待出来るのです。

ハードウェア事業を持っている企業がクラウドビジネスへ進んだ例というとIBMを思い出しますね。

【米国株】アイ・ビー・エム(IBM)の銘柄分析【高配当銘柄】

あちらはかつてのサーバ事業を切り売りして上手く移行している最中ですが、オラクルが同じ道を進めるか、進んでシェアを取れるかという問題はあります。

競合

総合IT企業

ハードからソフトまで、総合IT企業として見ればオラクルの競合はIBMやHPになります。少し古いですが、3社の収益構造を比較した資料があったのでお借りします。

(出典:DIAMOND IT&ビジネス)

見て分かるのは、オラクルがソフトウェアに偏っていることと、その収益力の高さです。

ソフトウェア企業としては多数の製品と競合していますが、ドイツSAP社あたりになるでしょうか。DBについて言えば、最近はオープンソースのPostgreSQLなんかも名前をよく聞きますね。

クラウド

DBであれば敵なしですが、今後を考えた時にクラウド領域は競争が激化しています。言うまでもなくアマゾンのAWS、二番手グループとしてマイクロソフトAzureやIBM、もう大半の競合は個別記事調査済みなので、合わせてご参照ください。

【米国株】アマゾン(Amazon:AMZN)の銘柄分析
【米国株】マイクロソフト(Microsoft:MSFT)の銘柄分析
【米国株】アイ・ビー・エム(IBM)の銘柄分析【高配当銘柄】

やや出遅れたオラクルがこれらの企業に勝る部分は、やっぱりハードからソフトまで信頼性の高い製品群を有していることでしょう。性能差ではAWSを圧倒しています。

「Oracle Cloudでは1時間で終わる作業が、AWSでは24時間かかる。これは、AWSでは24時間分の費用がかかることになり、コストの上昇にもつながる」

出典:ラリー・エリソン Oracle OpenWorld 2016基調講演レポート(http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/1021128.html)

また、高いと言われるオラクル製品を月額モデルでスタートアップ企業などが使いやすくなることも需要拡大に追い風となります。

ただ、他社がビッグデータ・AIビジネスの土台としてクラウドを捉えているのと対照的に、オラクルはクラウドで利益を稼ぐためにクラウドを売っているという印象があります。

市場

オラクルのソフトウェア市場と言っても幅広いのですが、とりあえず国内ですがDB市場のデータを載せておきます。まだ年7.5%の成長市場ですね。

(出典:ITR)

また、クラウド市場については以前記事を書いていますので、こちらをご参照。

3分で分かる、クラウドサービス(後編) 今後の展望、市場規模、AWS

リスク要素

オープン化とクラウド化のダブルパンチ

クラウド化は見てきた通りですが、オープン化も結構響いていると思います。DBで言えばPostgreSQLです。無償という強みもそうなのですが、オープン化のほうが多様化する用途への最適化にも優れているんですよね。

前に半導体記事を見た時にビジネスモデルとしてIDM(垂直統合型)と水平統合型があるという話をしました。下リンクはインテル記事です。

【米国株】インテル(intel:INTC)の銘柄分析

今システム構築も複数の企業がそれぞれ製品を持ち寄って作るもので、一社内で全てを完結させるクローズドなモデルがいつまで続けられるかという心配はあります。今もR&Dに収益の13%を注ぎ込んでいますが、プラットフォーム戦略の時代で、既存のミドルウェアをどう扱うかは注目だと思います。

CTOラリー・エリソンはいつまで現役か

アマゾンのジェフ・ベゾスにも同じことを書きましたが、オラクルのラリー・エリソンも一代でオラクルをここまで育ててきた名経営者です。

14年には既にCEOは後継者に渡して自身はCTO(最高技術責任者)になったわけですが、この変化がもたらす影響は数値に出てこないリスクになりそうです。

オラクルマスターもいつかは

オラクル自体とはあまり関係ない話ですが、難関資格と言われるオラクルマスターも、オラクルがシェアを落としてしまったら意味のないものに。恐ろしいですね。IT業界の技術陳腐化は本当に早いです。

ま、オラクルマスターまで取れるような人は超人レベルのスペシャリストなので、新しいソフトに脳の情報更新すればいいだけなんでしょうけど。

オラクル(ORCL)の財務分析

PL

事業としてはもう頭打ちで、ただ高い利益率を維持しています。独占力があるというのはこういうことですね。利益率、効率性どれを取っても突出した数字です。

BS

独占企業であり、バランスシートは健全そのものです。上で見たように毎年12~13%程度のR&D支出があります。

CF

異常なキャッシュフローですね。お金余りまくっています。

ところどころ投資CFが膨らんでいるのは、09年のサン・マイクロシステムズ買収、16年のNetSuite買収といったM&Aがあった時になります。

株主還元指標

配当は低いよなあと思ったんですが、自社株買いが非常に多いんですね。大体配当:自社株買いの割合が1:5くらいです。

そりゃあマイクロソフトみたいにキャッシュリッチなITですから、還元もしますよね。

直近利回り:1.3%くらい

オラクル(ORCL)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

オラクル(ORCL)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

ちょうどバブル時代の最高値ラインまで迫ってきている現状。15年にわずかに上抜きましたが、ヒゲつけて反発しました。今回は2回目の挑戦になりますね。

  • 最高値:46.7ドル(15年1月)
  • 最安値:2.94ドル(98年)

安値ははるか昔の水準なので、下限を取るならリーマン後の最低ライン13.8ドルでいいですね。

今後の値動き予測

5年チャート

見た感じ分かる通り、線が引きやすく結構目安のラインがはっきりしている印象です。大事そうな株価を書き出しておきます(たぶんこの近辺で出来高が大きくなります)。

  • 45ドル(最高値:上限)
  • 42ドル(ブレイクポイント)
  • 38ドル(落ちたときの下限1)
  • 30ドル(落ちたときの下限2)
  • トレンドラインの延長線に追従した数字

1年チャート

むー。直近で価格が飛んだんですね。

オラクル(ORCL)の投資戦略

まとめましょう。

  • オラクルDBをはじめとして、多くのトップシェア製品を有するソフトウェア中心の総合IT企業。
  • 近年は既存事業がクラウドの影響で減少傾向にあり、オラクルはクラウド事業への進出を急いでいる。
  • 非常に高い利益率を誇り、キャッシュリッチ。自社株買いによる還元に積極的で、総還元性向は100%近くになっている。
  • バブル期の最高値圏にあり、超えるかどうか注目。

回答

潰れることはないにせよ、主力事業に結構不安要素が詰まっている印象でした。とはいえ高収益が多少落ちても全然余裕なので、総還元性向もこの水準を維持するかなと思います。

あとは余剰資金の使い道、自社株買いはバフェット的にはありですが、もう少し配当還元にも回してほしいものです。

値上がり益狙いにならざるを得ない企業は必然的に購入ポイントが収益率に直結しますので、この株価では当面手出し出来ません。


序盤にどうでもいい話が入って長くなりました(笑)


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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