【米国株】ホーム・デポ(Home Depot:HD)の銘柄分析

米国株

今回はホーム・デポ(HD)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。あまり聞いたことないかもしれませんね。

ちょっと前に大炎上していたPCデポとは違いますよ(笑)

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ホーム・デポ(HD)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

世界最大の住宅リフォーム/総合インテリア小売チェーンですが、店舗のほとんどが米国にしかないローカル企業です。店舗数は米国に1977店、カナダやメキシコ等の海外店を含めて2278店舗ですが、日本にはないようですね。

ウォルマートと同じく、郊外に大型店舗を設置して人を集めるモデルを採用し、建築資材はもちろんのこと、ガーデニングなどの室内インテリア商品も大量にあります。

インテリア大好きな私としては、一日中楽しめると評判のホーム・デポに一度は行ってみたいものです(DIYは私の技術力で不可能ですが、室内インテリアには惹かれます)。

【ミニチュア】ビリー 手作りドールハウスキットの制作風景 ウエスタンパブ

専門知識を有した従業員

ひたすら最低賃金を追い続けたウォルマートとの最大の違いは(もちろん食品系小売業と専門店の違いはあれど)、従業員教育によって専門知識のある店員が接客対応出来る点です。

【米国株】ウォルマート(Walmart:WMT)の銘柄分析【連続増配】

こうした店員によるアドバイスを受けられることや、定期的にDIY教室の開催がされることが、「店舗に足を運ぶ」理由になると考えられます。価格以外に顧客を引っ張り込む無形資産があるわけです。アマゾンを筆頭にオンライン対抗としてあるべき形ではないでしょうか。

米国は中古物件が盛ん

米国では中古物件を購入し、DIY(Do it yourself)で自宅改装を行うほうが普通のようで(日本のような新築文化ではない)、住宅リフォーム市場は非常に大きいです。ちょっと古い資料ですが、以下の通り、米国戸建て販売のうち70~80%は中古物件が占めています。

これは世界的な傾向で、フランスで65%、イギリスで88%が中古物件です。対して日本の中古物件比率は36%程度なので、日本の新築文化を基準にすると市場規模を計り間違えてしまいます。

(出典:リクルート住まい研究所)

リーマンショックの原因となったサブプライムローン危機は、住宅購入向けのサブプライム(低所得者向け)ローンの不良債権化です。返済能力のない人に多額のローンを貸し付けた上に証券化して破綻リスクを世界中にバラ撒いたため、世界的な経済問題になりました。これ、たぶん低所得者層が買ったけど返済出来なかったのも中古物件なんでしょうね。

米国の消費力の強さを物語る事例でもあり、アメリカンドリームに憧れてやって来た低所得者層の人々に、米国で住宅を持ちたいという強い需要があり、市場を底支えしている要因の一つと思います。

決算書から

さて、話が逸れましたが、決算書を見てみましょう。

全体で見れば売上、グロスマージンとも7%弱の成長です。営業利益は14%成長しました。顧客数は店舗、オンラインともに増加傾向で、合計2.4%増員、客単価も3%増加しています。全指標が増加していて、調子の良さが伺える決算です。

決算としては「Our Customers」にあるように、以下3つの区分を用いて説明しています。実はそれぞれの売上内訳データが見当たらなかったのですが、下で出てくる市場規模から言うと、個人向けと業者向けの比率は2:3くらいなので、それくらいで把握すれば大丈夫でしょうか。

  • Do-It-Yourself (“DIY”) Customers:個人向けのうち、DIY、つまり自分でリフォームを行う人を指します。
  • Do-It-For-Me (“DIFM”) Customers:個人向けのうち、DIFM、つまり自分ではリフォームを行わず、ホーム・デポに依頼する人を指します。
  • Professional Customers:プロ、つまり業者向けの販売ですね。また、インターライン買収によって、MRO(Maintenance, Repair and Operations:オフィス用品等の消耗品調達)市場でも存在感を発揮しています。

圧倒的な規模を活かし、カスタマージャーニーの全てに対して施策を打ち、顧客の囲い込みに成功しています。オンラインへの参入も早く、オンライン売上は年成長20%で急拡大しています。

(出典:ホーム・デポ)

今後さらに店舗とオンラインとの融合を進めるオムニチャネル戦略を推進していく狙いのようです。

私の感想ですが、IKEAのようにARアプリ作ったらどうでしょうかね。DIYメインとはいえ、家具が家のイメージに合っているか、予めアプリで実物がARで置かれた様子を見ることが出来れば面白いんじゃないかと。ARは前に個別記事を書いたのでリンクおいておきます。

AR技術の活用方法を考える(前編) 今、実現できること。

最後に、商品カテゴリーごとの占める割合も記載がありました。室内ガーデニングがトップ、ペンキ、アプライアンス、キッチン&お風呂と続きます。流石に最大手だけあって幅広い品揃えですね。

(出典:ホーム・デポ)

競合

直接の競合はロウズ(LOW)になります。同じく住宅リフォームチェーン店です。そして、実はロウズは50年以上連続増配(53年)で記事にしています。

【配当王】米国株50年以上連続増配銘柄一覧(コメントつき)【Dividend Kings】

ロウズのアニュアルレポートを覗いてみましたが、以下のように会社規模としてはホーム・デポの2/3くらいで、こちらも売上、利益が伸びています。しかしながら、売上の伸びはホーム・デポに劣っています。

参考米ロウズ、ホーム・デポに押され気味-売上高の伸びに市場は失望

さらに、利益率は9%弱と、ホーム・デポの利益率14%とは大きく開きがあるように見えます。小売業なのでコストに占める調達コスト割合が高く、規模の経済に左右される分の差と考えられます。

(出典:ロウズ)

この他に気を配るべきはやっぱりアマゾン(AMZN)でしょう。利益度外視で消費者フレンドリー&拡大路線を貫くアマゾンの戦略は、小売業に大きな影響をもたらします。

【米国株】アマゾン(Amazon:AMZN)の銘柄分析

市場

米国は先進国の中で唯一将来も人口増が見込める国(しかも生産年齢人口も増える!)ということを知っておきましょう。以前記事に書きました。

米国市場に投資すべき3つの理由 日米の株式市場を比較してみる

この記事を要約すると、経済成長の三要素「労働力」「資本投下」「技術進歩」を全て満たす市場である米国に投資しましょうという話です。

人が増えると人が住むための住宅の需要も増えます。米国でメジャーな戸建て販売は中古物件です。そうすると当然リフォームが必要になります。ホーム・デポの出番です。

そして、ホーム・デポの市場シェアは、この図を見ると大体15%くらいのようですね。サービスというのは、家のメンテナンス(家具取り付け等)の出張サービスを指します。

(出典:ホーム・デポ)

また、FXをやる人ならご存知かもしれませんが、住宅に関する指標は毎月発表されています。ホーム・デポは住宅市場動向に大きく左右されますので、特に以下3点は着目しておくと良い先行指標になるかもしれません。

  • 中古住宅販売件数:毎月25日に発表。
  • 米国住宅着工件数:毎月第三週目に発表。その名の通り仕掛り中の住宅数を示します。
  • 建設許可件数:住宅着工件数と同時に発表され、こちらは住宅市場の先行指標と言われています。

(出典:Zai)

(出典:Zai)

このところ中古住宅市場は上昇傾向にあり、ホーム・デポに追い風が続きそうです。

リスク要素

小売の天敵アマゾン

小売業といえばアマゾンですね。ウォルマートの時に最大のリスクとして検討しました。

【米国株】ウォルマート(Walmart:WMT)の銘柄分析【連続増配】

ウォルマートについては、店舗販売がなくなるということはあり得ないけど、パイの食い合いになったら一部の顧客は確実にネットへ流れるから、売上・利益の減少は避けられないと踏んでいます。

ホーム・デポはどうでしょう。ウォルマートのときに色々考えたのは、価格以外に強みがないとアマゾンに勝てないという理屈でした。ホーム・デポはDIYにおいてやや専門店よりの小売業で、従業員教育によって専門知識を有する店員がアドバイスを行う等の付加価値をつけられるので、もう少し状況は異なるかもしれません。

ある程度は手頃さに勝るアマゾンに顧客流出は避けられないと思います。しかし、足元のビジネス状況はアマゾンの影響を感じさせない好調ぶりですし、独自の強みから生き残るのではと思いました。ちなみに、顧客囲い込みという点ではコストコについても同様の印象を持っています。

参考【バロンズ】アマゾンに負けない米ホームセンター大手

シェアリングエコノミー

思いつき。Airbnbやウーバーに代表されるシェアリングエコノミーの騎手が登場し、「モノを持たない社会」が生まれつつあります。少し毛色は違いますが、日本でもミニマリストが流行ったりしていますね。

こうした背景で、自分の家を持たない人も増えて来ると予想されます。借り物の家でリフォームは出来ませんので、ホーム・デポにとっては良くない流れかな……と思ったのですが、DIYは自作して安く済ませようという話ですから、むしろ追い風なのかもしれない気がしてきました。

ちなみにシェアリングエコノミーについて個別記事を書いています。

シェアリングエコノミーは未来の経済社会になるか

3Dプリンター

20~30年後に趣味以外でDIYやるかな? ってアイデアですが、荒唐無稽だからそろそろやめておきます(笑)

3分で分かる、3Dプリンタの未来像

メーカーズ革命が騒がれたのは2012年、GEがいくつかの3Dプリンタメーカー買収していてストラタシスも買収の噂がありますし、そろそろハイプ・サイクルの幻滅期抜けて来ると思っているんですけどね……。普及するとしたら一般消費者向けではなく、業務向けだと思います。

ホーム・デポ(HD)の財務分析

PL

一般消費者の財布事情にも大きく左右され、09年のリーマン・ショック後徐々に回復してきたという感じです。売上、利益、EPSが順調に右肩上がりできれいです。

店舗。オンラインとも成長軌道に乗っている様子が読み取れますね。

小売業として見ると、営業利益率13%は非常に良い数字。ROEが異常な高さですが、自社株買いで株価を支えているからですね。

ROEの式を思い出してもらえればわかりますが、

ROE(Return On Equity:自己資本) = 当期純利益 ÷ 自己資本

あるいは、ROE = EPS ÷ BPS

ですね。要するに、ROEを上げるだけなら借金をして自社株買いを行い、発行済株式数を減らせばいいわけですよ(そしたら自己資本が減りますね)。IBMなんかも同じ理屈でROEが下駄履いています。実力としては12~14%くらいでしょうかね。

チャート型バリュー投資家が見るべき経営指標について

BS

上で見たように利益を使って自社株買いしているので、自己資本比率は下がります。固定、流動比率については特にコメントなしです。店舗を持った小売店なので、土地建物でそれなりに固定資産はありますし、現金商売(米国はクレカ社会ですが)なので流動資産もあります。

CF

大本の営業キャッシュフローが伸びているので、フリーキャッシュフローも安定した上昇傾向にあります。特に支出は増えておらず、投資家還元に回しています。

株主還元指標

配当性向は40%程度ですが、自社株買いが大きいため、総還元性向は200%を超える年もあります。

DPS成長は右肩上がりですが、リーマン・ショック時には配当据え置きにしているので連続増配銘柄からは外れています。競合のロウズは頑張って連続増配しているので、ホーム・デポも後に続いてほしいものです(ということで、以下では連続増配期待の銘柄に挙げています)。

【米国株】将来連続増配がありそうな銘柄12株(コメントつき)

直近配当利回り:1.89%

株価が高騰しており、利回りはそんなに高くありません。

ホーム・デポ(HD)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

ホーム・デポ(HD)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

勢いがすごいですね。リーマンショック後は業績回復に伴って株価も上昇し、最安値から比べるとほぼ10倍になりました(ついでに、リーマンショック前の最高値からも2倍です)。ファンダメンタルズ非常に良いですし、PERも23倍とそこまで上放れしている数値ではありません。

  • 最高値:150.15ドル(現在)
  • 最安値:17.49ドル(09年)

今後の値動き予測

5年チャート

次々と高値更新しているので、ポイントというポイントが見当たりません。70ドルの線はリーマンショック前の高値水準ですが、あっさり突破してしまいました。

右肩上がりのチャートは素晴らしいのですが、リスク管理が必須です。永久投資で将来20~30年継続投資する戦略であれば分散が効きますので、あとはホーム・デポがそれまで生き残ってトップシェアを維持し続けていられるかどうかが焦点になります。

1年チャート

3、4度140ドルの頭を叩いて突破しました。次の壁は150ドルで、大きな節目になるかどうか注目です。

ホーム・デポ(HD)の投資戦略

まとめ。

  • ホーム・デポは世界一の住宅リフォーム小売チェーンで、最近の中古住宅市場の好調もあり増収増益が続いている。
  • オンラインも好調で、オムニチャネル化が進んでいる。
  • アマゾンへの対抗としては、専門知識を有する店員が差別化要素となりそう。現時点ではアマゾンの影響は感じられない。
  • 利益指標やキャッシュフローは非常に良い。
  • チャートとしてはリーマンショック前の最高値の2倍水準まで高騰している。

回答

もし日本に店舗があったら一度行ってみたいものですね。

良い企業であることに間違いないのですが、良い業績もしっかり反映された株高で、利回りも1%台ですし、ちょっと手が出せないです。

レポートでは既存店舗売上高を上げる方針ということで、店舗数増加での売上拡大ではなく、客単価を上げる施策やオンラインで購入した顧客を店舗へ呼び込む導線を作るといった施策がメインとなり、爆発力はないものの手堅い成長が続くと思われます。

正直この株価から見てどこまで落ちたら買えるという設計も難しく、当面様子見です。


前に書いた記事と連動が多い記事になりました。こんな風に上手く組み合わせて、知識を相互活用出来るようにしたいですね。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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