【シーゲル銘柄】アルトリア・グループ(Altria-Group:MO)の銘柄分析

米国株

今回はアルトリア・グループ(MO)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。

シーゲル銘柄でもお馴染み、長期投資における最優良銘柄筆頭ですね。フィリップ・モリス(PM)は米国外売上のみスピンオフしたものですが、こちらは別で記事にしています。合わせて見ていただけるとより理解が深まると思います。

【シーゲル銘柄】フィリップ・モリス(Philip Moris:PM)の銘柄分析
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アルトリア・グループ(MO)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

タバコビジネスやブランドなどは元が同じフィリップ・モリスの記事に書いているので、そちらでご確認ください。

アルトリア・グループは、米国内のタバコ事業の他にワインやビール会社も傘下に持っているグループですので、タバコ一辺倒のフィリップ・モリスとは少しだけポートフォリオが異なります。

グループ構成

売上構成比率的には、90%以上がタバコの売上ですので、アルトリア・グループの投資を検討するに当たっては、とりあえずタバコ事業を押さえておけば良いということになります。

Smokelessとは無煙タバコのことで、iQOSなんかはここに含まれている(はず)。

(出典:アルトリア・グループ)

Smokeable Productsは以下の通り、フィリップ・モリスUSAを中心としたタバコのセグメントです。

(出典:アルトリア・グループ)

Smokelessセグメントは以下の通り、US Smokelessタバコという会社を持っています。

(出典:アルトリア・グループ)

将来的には市場拡大が見込まれる加熱式タバコ(無煙タバコ)や電子タバコへ移行を進める見込みで、重要なセグメントになってくるはずです。

無煙タバコのiQOSの他、傘下のUSTが開発したコペンハーゲン(Copenhagen)とスコール(Skoal)、葉たばこのないバーブ(Verve)などの紙巻きタバコ以外の市場でもほぼトップシェアを握っています。

残るWineやOtherとして、ワインはサン・ミッシェル・ワイン・エステーツ、ビールシェア世界1位のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(SABミラーが買収されたため)が上がっています。

(出典:アルトリア・グループ)

以前は食品事業としてクラフト・フーズを持っていましたが、スピンオフして会計上からは消えました。余談ですが、クラフト・フーズ(現クラフトハインツ)は、バフェットのバークシャーのポートフォリオで最大保有割合になっています。

M&Aの歴史

アルトリア・グループは、安定したタバコ事業で生み出した多額のキャッシュを次の事業へと回すことで成長してきました。投入先は主に食品産業で、かなりアクロバティックなM&Aを実現させて来ました。

一方で、スピンオフした事業も多く、スピンオフする度に時価総額が膨れ上がります。これは、今まで米国のタバコ訴訟リスクで過小評価されていたものが切り離されたことで、評価の見直しがされたと理解出来ます。

  • ともに食品大手のゼネラルフーズ、クラフト、ナビスコを買収し、その後クラフト・フーズ統合、2007年にはクラフト・フーズをスピンオフしています。
  • 2008年にはフィリップ・モリスの海外部門をフィリップ・モリス・インターナショナルとしてスピンオフしました。売上としてはこれらで半減していますが、利益率等に特に問題はありません。
  • 2008年に無煙タバコ大手USTを買収しています。こちらは米国シェア50%を超える企業だったため、アルトリア・グループの無煙タバコ優位に繋がっています。
  • ビール大手ミラービール(その後世界2位のSABミラー傘下に)も買収で実現しています。ちなみに、ビール世界首位のアンハイザー・ブッシュ・インベブがそのSABミラーを昨年10月に買収したことで、世界シェア3割でダントツトップになりました。直近の莫大な純利益はその際の株式売却益になります。

競合

米国内の競合はレイノルズ・アメリカン(RAI)です。マルボロのシェアだけで40%、レイノルズ・アメリカンのシェアが33%なので、ほとんどこの2社で寡占市場を形成しています。

というのも、元々3位にロリラードという会社があったのですが、15年にレイノルズ・アメリカンによって買収されてしまったんですね(この際、レイノルズ・アメリカンは4ブランドを売却しました)。

(出典:Wall Street Journal)

上の図は13年の拾い物のためロリラードが残っていますが、タバコ市場はほぼマルボロと理解すれば十分なんじゃないかと思います。今はもう少し無煙タバコや電子タバコのシェアが上がっていますが、まだ全体では微々たるものです。

最新決算プレゼンにアルトリア・グループから見た競合他社の動きがあったので載せておきます(内容的にはこれまで書いたものと同様です)。

(出典:アルトリア・グループ)

市場

米国の状況は上の競合他社状況で見た通り、アルトリア・グループとレイノルズ・アメリカンの2社寡占市場です。

全体像として、米国タバコ市場は、売上本数は減少傾向にあります。特に従来の紙巻きタバコに取って代わる形で、無煙タバコや電子タバコといったより健康リスクの小さいタバコが好まれる傾向にあるようです。

(出典:SBI証券)

参考加熱式たばこはたばこ業界のゲームチェンジャー!?

ちなみに、マルボロのシェアは44%になっていました。圧倒的なブランド価値を有しています。

(出典:アルトリア・グループ)

リスク要素

フィリップ・モリスとほとんど同じです。

【シーゲル銘柄】フィリップ・モリス(Philip Moris:PM)の銘柄分析

タバコとは一般的にイメージも悪く、リスクはたくさんあります。ただ、そうしたイメージから来る低い期待収益&株価の低迷と、それに反して高い利益を出し続けてきたという実態収益のギャップから、アルトリア・グループは過去50年で最大の投資収益を生み出してきたのです。

フィリップ・モリスと異なる点を中心に列挙します。

フィリップ・モリスとの再統合について

ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)によるレイノルズ・アメリカンの買収合併が成立すると世界シェアで劣勢に立たされるため、再統合の可能性があるかもしれないらしい。

BATはイギリスのシェアが8割を超えてしまうので、このままだと独禁法引っかかるということで、買収成立まで課題が色々とありそうですけれども。

訴訟リスク

訴訟については既に1997年の損害賠償で概ね合意済みのため、小さいと思われます。実際、タバコの箱を見ればこれでもかというくらいラベルに警告の文言が印字されていますよね。これでタバコを吸うことのリスクはちゃんと表示していますので、法律の厳しい米国にあってもそう簡単に訴え出るスキは見当たらなさそうです。

逆に、長年訴訟と戦ってきた会社なので、むしろ法務部門がこうした事態に慣れているのは強みになるんじゃないかと思います。

なお、米国外の訴訟リスクについてはアルトリア・グループとフィリップ・モリスで分離したことで消しています(これがスピンオフした理由の一つ)。だってこれまで米国の喫煙者が起こした訴訟は7500件もあったらしいですからね。アルトリア・グループとしては米国の訴訟リスクを請け負う形となっていますが、大きな訴訟は和解で終えているので大丈夫かと思っています。

アルトリア・グループ(MO)の財務分析

PL

事業としては横ばい成長ですが、利益率はこの場面でもなお改善し、上昇傾向にあります。直近の当期純利益が大きくなっているのはSABミラー買収に関連した為替ヘッジ取引で特別収益が発生したためですね。これです。

(出典:アルトリア・グループ)

2007年から2008年にかけて半減しているのは、クラフト・フーズ(現クラフトハインツ:KHC)とフィリップ・モリス(PM)のスピンオフが同年に実施されたためです。

今回は特別収益もあって異常なROEになっていますが、フィリップ・モリス同様に通常から借金による株主還元で株価を維持しており、ROEは底上げされています。とはいえ、それらの影響を取り除いても非常に高い水準にあると思われます。

また、グラフでは隠れちゃってますが営業利益率も4割近くと常軌を逸した数値を叩き出しており、収益力の高さが伺えます。

BS

フィリップ・モリスと違って債務超過とまではいきませんが、自己資本比率はかなり低めに出ています。じゃあ危険なのかというとそうではなく、ROEが上がったのと同じ理屈で、借入金で自社株買いをしているため相当低く出ているというだけですね。

自社株買いは投資家還元の現れですが、ロジックとして常にタバコ業界が過小評価されてきたため、安い株価で買いやすかったこともあります。

アルトリア・グループの事業継続性=ビジネス基盤の強さは上で見てきた通りですので、機械的な採点で切り捨てるのはあまりにも勿体無いです。こうした銘柄は、安全性指標がなぜ低いかという原因を調査した上で、ビジネスモデル等から今後のシナリオを考え、判断したいところです。

CF

なんという投資の少なさww

製造コストやR&DもiQOSの開発くらいで、ほとんど固定費用はありません。タバコ業界のビジネス柄、広告宣伝もなくマーケティングも不要です。FCFは上下動がありますが、余裕あるプラス水準をキープしており、問題はないです。

キャッシュの流れで言えば、安定したタバコ産業で稼いだキャッシュを食品部門に投入して事業拡大しているという構図になります。

株主還元指標

47年連続増配で、ほぼ100%の総還元性向で投資家還元意欲の強い企業です。

米国株25年以上連続増配銘柄・有望15株(コメントつき)

配当性向がほぼ8割を超えているのでそんなに余裕はないのですが、そもそもアルトリア・グループの決算書でも目標配当性向を80%にしているので、問題ないでしょう。売上の急激な先細りも心配ないので当面は維持されるかと見ています。

直近配当利回り:3.2%

アルトリア・グループ(MO)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

アルトリア・グループ(MO)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

なんでしょうこれはww

  • 最高値:76.54ドル(現在)
  • 最安値(リーマンショック後):14.42ドル(09年)

縮尺おかしくなっていますが、一応リーマンショックで25→14ドルと約半分にはなっています。次もしリセッション来て35ドル、確かにそのラインに下限線引けなくもなさそうですが、安定高配当のディフェンシブ銘柄なので買い支えが発生してそこまで落ちることはなさそうに思えます。

今後の値動き予測

5年チャート

よく見てみるとめちゃくちゃキレイで分かりやすいチャートです。トレンドラインは平行線、かつ前回高値を超えた部分がちゃんと次のサポートラインになっているという意味です。

これは次も70ドル前後が買い場じゃないですか。引きつけるなら62ドルあたりですが、そこまで来るとトリプルトップ形成で反落するチャートの形になっていそうで、まだ待てるとか言ってそうな気がします。ドルコスト&永久保有前提ならもう買ってもいいのかもしれないくらいです(私はどうしても高値掴みに抵抗があるので、ちょっと待ちますが……)。

1年チャート

同じ話です。レンジの上限下限が非常にはっきりしているので、次も似たような動きをするでしょう。なぜなら今までそうした動きをしていることで、市場参加者にコンセンサスが取れているからです(こうした法則を利益にしようという動きがヒゲを刈るようにチャートに現れますので、少しのダマシはあるはずですが)。

アルトリア・グループ(MO)の投資戦略

まとめましょう。

  • アルトリア・グループは米国タバコ市場、フィリップ・モリス(PM)は海外タバコ市場を担当している。米国市場はレイノルズ・アメリカンと2社でほぼ寡占状態にある。
  • アルトリア・グループはタバコ事業が9割以上を占めており、中でもマルボロブランドはマーケットシェア44%に達している。
  • タバコ事業の安定したキャッシュを積極的に投資家還元しており、47年連続増配中。
  • チャートの形が非常にキレイで、次のチャンスは70ドル付近かと思われ、わりと近く。

回答

フィリップ・モリス同様、すぐにでも購入したい銘柄で、要監視ですね。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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