【生活必需品セクター】ユニリーバ(Unilever:UL)の銘柄分析

米国株

今回はユニリーバ(UL)のファンダメンタル、チャート分析をやっていきたいと思います。米国企業ではなく英蘭企業(本社は英仏)ですが、ADRがあるので購入可能です。

ロンドン市場のADRがULで、アムステルダム市場のADRがUNで、株価の値動きは一緒ですが、配当金の源泉徴収について違いがあります。前者は配当金源泉徴収なし、後者は配当金に15%課税なので、二重課税を防ぐべく【UL】一択です。

なお、これは同じく英蘭上場のロイヤル・ダッチ・シェルについても同じことが言えます(RDSBの方を購入するということです)。

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ユニリーバ(UL)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

ネスレ、P&Gと並ぶ日用品セクターの3強と言われます。10億ユーロ以上の売上を誇るメガブランドを13も有しており、毎日25億人の消費者が何かしらユニリーバの商品を使っているという巨大企業です。

日用品企業がウリにするのは消費者体験であり、それがブランド価値となって同社の事業基盤を強固なものにします。そうした強力なブランドが13、小さいものも含めると400あるわけですから、ユニリーバの事業がいかに盤石なものか分かります。

ブランド一覧はHPに載っていました。Dove(ダヴ)やLUX(ラックス)は日本でも馴染み深いと思います。ちなみに私はリプトン中毒なので、毎日紙パック1本分のリプトン紅茶を飲んでます。

(出典:ユニリーバHP)

決算書から

ユニリーバは以下の4セグメントに分かれています。16年度通年ではマイナス成長が目立って不調気味、直近17年1Q決算では全セグメントでプラス成長していますが、相変わらずフードセグメントがやや不調に見えます。

利益率としてはパーソナルケアが最も高く、ユニリーバの中核事業となっています。

(出典:ユニリーバIR)

  • Personal Care:売上高全体の38%、営業利益の48%を占める主力のパーソナルケアは、DoveやLUXをはじめとした化粧品中心になります。後述のダラーシェーブクラブ買収やデオドラントの好調もあり、増収増益を達成しています。ダラーシェーブクラブ買収により、SNS活用のデジタルプラットフォーム(オンラインマーケティング)にも注力するようです。
  • Home Care:全体の19%を占めます。ブランドはDomestos(ドメスト)やCif wipesなどの洗剤・手入れ用商品が中心になります。利益率は低めですが、売上の8割を新興国で上げており、ナンバーワン市場が7か国であります。16年はデジタルマーケティング強化を進めていた年とのことで、次年度以降に効果が出てくるでしょうか。
  • Foods:全体の24%を占めます。食べ物のブランドで、クノールやヘルマンが該当します。減収減益の中で中核事業再編に取り組んでいます。
  • Refreshment:19%を占めています。ブランドで言えばリプトンやベン・アンド・ジェリーズがここに含まれます。主にアイスクリームの利益率が改善されており、売上は減少したものの利益は2桁増となりました。

また、海外売上比率(ヨーロッパ以外という意味)は約7割とグローバルに展開しています。特に新興国への進出が上手くいっており、インドやブラジル、インドネシアでシェアを伸ばしています。

(出典:ユニリーバIR)

選択と集中

P&Gでも同じ話がありましたが、多すぎる事業ポートフォリオの整理に入っています。ユニリーバの動きとしては、利益率の高いパーソナルケア事業へ集中投資を進めています。

パーソナルケア市場補強の代表例として、ダラーシェーブクラブの買収は面白い事例です。この会社はSNSを通じたマーケティングで知名度を上げ、カミソリのサブスクリプション事業をやって急成長していました。

参考髭剃りの風雲児ダラーシェイブクラブは、どうやって市場を転換したか?

こうした会社の買収は、消費財メーカーと言えどもオンラインストアを用意し、顧客接点をデジタル化していこうという機運の一つではないでしょうか。

近年はこうしたM&Aが業界内でも相次いでおり、成熟市場と判断されている業界に新しい変化が生まれようとしています。

参考相次ぐベンチャー買収で、ユニリーバが思い描く未来図:統合の時代を迎えた消費財業界

競合

生活必需品セクター

P&G、ネスレで日用品セクター3強です。P&Gは記事にしました。

【米国株】プロクター・アンド・ギャンブル(P&G:PG)の銘柄分析【連続増配】

P&Gは10も事業カテゴリがあって、大抵で競合していると思われます。あちらはどれもほぼトップシェア&9/10で増収増益達成ですが、人口増によって市場パイも増加していますし、P&Gもユニリーバも多数のメガブランドを有していることが強みですので、個々のブランドごとの比較は意味がないかと思います。

ネスレは缶コーヒーで有名なスイスの企業で、飲食品に強いです。ただ、ADRもないので株を買うことが出来ません。もしどうしてもネスレ株を買いたい人は、米国を除く地域のETFであるVEA、VGKで筆頭銘柄(といっても構成比2%程度ですが……)もあります。

【VEA】【VGK】米国以外の地域に投資するETFまとめ(構成銘柄考察つき)

一言で日用品といえど商品は幅広く、あまり競合していないですがオーラルケア分野ではコルゲート・パーモリーブ(CL)もオススメの投資先です。

【連続増配】コルゲート・パーモリーブ(Colgate-Palmolive:CL)の銘柄分析【米国株】

こうした株をまとめて買いたい人は、米国生活必需品セクターETFのVDC、XLPに米国株分は全て含まれていますので、それを購入するのが一番簡単です。

【VDC】米国生活必需品セクターETF【XLP】比較とか構成銘柄分析とか

それ以外の競合

小売のプライベートブランドや、オンラインを通じて販売する新興ブランドが、長らく安定した成熟市場を形成してきた生活必需品セクターに新しい流れを持ち込んでいます。

市場

全般的な話はVDCという生活必需品セクターETF記事で詳しく書いているので、そちらを読んでもらえると嬉しいです。

【VDC】米国生活必需品セクターETF【XLP】比較とか構成銘柄分析とか

P&Gと同じ図表で、ユニリーバは2位にランクインしています。

(出典:デロイトトーマツ)

消費財全部合計したランキングでも7位というところから、ユニリーバの巨大さが分かります。生活必需品セクター全体ではP&G、ネスレに次ぐ3位です。

(出典:デロイトトーマツ)

リスク要素

P&Gとほとんど変わらない内容です。さらっとまとめると以下のようになります。

生活必需品セクター自体が不況に強く、さらに複数のブランドを持っているユニリーバにリスクはほとんどないと思っています。

  • バッドニュースを避ける:品質管理をしっかりし、消費者イメージを守る必要があります。
  • コモディティ化に抗う:プライベートブランドも登場していますし、低価格化が進む中で消費者独占力を保持し、付加価値&ブランド価値にプレミアムを載せることが出来るかどうかがポイントです。
  • デジタル化に対応する:消費者の接点としてオンライン販売の強化が必要です。
  • 技術革新:成熟市場でも技術革新やビジネスモデルの転換は起こりうるということです(ダラーシェーブクラブ買収は将来の競合を収めた意味も)

食品業界において、プライベートブランドを含む新興ブランドの侵食について、データがありました。既存ブランドがシェアを落としている状況は食品事業の全般的な傾向で、決算を見るとユニリーバも例外ではありません。

(出典: CircleUp)

Jefferiesによれば、食品業界で重要視されているトップ54カテゴリーのうち42カテゴリーについて、過去5年の間に小企業が大企業のマーケットシェアを上回ったことがわかっている。消費財のほぼあらゆる分野で、これまでの業界構造が崩壊しようとしているのだ。

出典:TechCrunch 消費財業界で起きようとしているM&Aの雪崩

クラフト・ハインツによる買収騒動:M&A多発化

別にリスクでもないのですが、17年2月にクラフト・ハインツによるユニリーバ買収提案がありました。ユニリーバ側が断ったためすぐ撤回されましたが、まだ諦めていない的なコメントも出していますので、動向には要注目です。

参考クラフト・ハインツ、ユニリーバへの買収提案を撤回

クラフト・ハインツ(KHC)は今度記事にしますが、現在のバフェットのポートフォリオで最大割合を占める企業です(ちなみにシーゲル銘柄にもランクインされていますし、元々はペプシコのクラフト・フーズだったこともあり、これまでの記事でも名前が出てきています)。

近年同様の大型M&Aというと、アンハイザー・ブッシュ・インベブによるSABミラー買収が思い浮かびますが、両方の買収案件に関わったのが投資会社「3Gキャピタル」だそうです。SABミラーについては、アルトリア・グループ(MO)の記事で見ました。

【シーゲル銘柄】アルトリア・グループ(Altria-Group:MO)の銘柄分析

上ではユニリーバがダラーシェーブクラブを買収した件についてチェックしましたが、M&Aは生活必需品セクターの企業にとってR&D代わりとなっており、今後さらに活発化する見込みです。

以下のグラフのように、広告マーケティングに売上の15%を投じる代わり、R&Dは2%以下にとどまっています。

(出典: CircleUp)

(出典: CircleUp)

M&Aはサンクコストのリスクを外部にヘッジしつつ成長を取り込むことが出来るのですが、もちろん買収にも莫大な資金を投じる必要がありますし、自社内に保有している開発力が腐るリスクも生まれます。

ユニリーバ(UL)の財務分析

PL

高い水準で安定していますね。リーマンショックのような金融危機があってもほとんど影響しないところが生活必需品セクターの魅力です。

選択と集中によるM&A、事業売却で年度ごとの売上は多少左右されています。P&Gと同じですね。

営業利益率や効率性指標もほとんど変化がありません。ROEが非常に高く、営業利益率は米国市場平均並みです。とはいえ、P&Gは利益率20%近くあるので、若干向こう優位でしょうか。

BS

こちらもほぼ変化がありません。13ものメガブランドが分散になって、バランスシート上には表現出来ない安全性がありますので、心配はなにもありません。

CF

途中データが欠けてしまっていますが、キャッシュフローの余剰は素晴らしいの一言です。広告マーケティングへの投資もありますが、高いキャッシュ力の範囲で賄えます。

株主還元指標

モーニングスターのデータに自社株買い項目がなかったため、配当のみ記載しています。利益が横ばいの割にEPS成長しているので、実際には自社株買いも結構やっているはずです(少なくとも、17年4月に50億ユーロの自社株買いを発表しています)。

リーマンショック時にDPSが落ちていますが、これドル建てなのでユーロ単位では16年連続増配(ユーロ通貨流通後)です。配当性向は平均して60%前後とまだ少し余裕があります。

直近配当利回り:2.43%

ユニリーバ(UL)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

ユニリーバ(UL)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

全体的に右肩上がりの傾向で、リーマンショック影響で下落が思ったより大きいものの、その後すぐ復帰し、現在最高値圏に到達しています。PER26倍なので、やや高めの評価がされていると思っています。

  • 最高値:52.02ドル(現在)
  • 最安値(リーマンショック後):16.95ドル(2009年)

リーマンショック前の高値である40ドル近辺がちょうど現在のサポートラインになっていますね。3度折り返して突破したので、次戻るか微妙ですが、このポイントを買いスタートとしても十分かと思います。

今後の値動き予測

5年チャート

46ドルの壁を突破し、50ドルの大台に足をかけています。大きな抵抗帯を突破してしまっていますので、止まらない気がしますが……。

1年チャート

直近1年だけではよく分からないチャートになっていますね。

17年2月に出来高が膨れ上がっていますが、この上昇はクラフト・ハインツによる買収提案をしたタイミングに重なっています。買収にはプレミアムがつくので、買収される側の株価は高騰しやすくなります。

ユニリーバ(UL)の投資戦略

まとめです。

  • ユニリーバは生活必需品セクタートップ3の一角で、パーソナルケアのDoveやLUX、あるいは紅茶のリプトンなど幅広いブランドを有している。中でもビリオンダラー・ブランドが13に登り、事業の安定性は群を抜いている。
  • 海外売上比率が7割近く、新興国への進出を加速させている。
  • 業界全体にM&Aが増加してきており、ユニリーバもダラーシェーブクラブを買収するなど、事業ポートフォリオの整理を進めている。
  • 17年2月にクラフト・ハインツから買収提案があった関係で株価が跳ね上がり、直近チャートは高値圏にある。

回答

素晴らしい企業で買いたい銘柄になりました。

売上、利益率、配当、ブランド価値と全体的に少しずつP&Gに劣る印象がありましたが、米国外の企業ということもあってポートフォリオに加えるとバランス取れていいなと感じます。

リスクリワード考えて、40ドルまで来てから検討としたいですね。それまで他の優良米国株へ投資するか、無理せず現金で持っておく「休むも相場」は大切な考え方だと思います。


ユニリーバのロゴデザイン、私はなんとなく好きなんですがいかがでしょう。アイキャッチ画像でお借りしているので、よければ見てみてください。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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