今回はパワーシェアーズ 100 トラスト・シリーズ1(PowerShares)、通称: QQQについて考察します。
QQQはNASDAQ100種に投資出来るETFで、テクノロジー系の銘柄が約7割を占めています。
NASDAQは設立経緯から、どちらかと言うと新興企業が多く上場している市場であり、有名どころではGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)は全てNASDAQ上場企業です。
将来性豊かなIT関連銘柄と言っても、個別銘柄で購入すると当たり外れがあり、成績が安定しません。
そこでQQQを活用することによって、IT企業の動きを網羅的に押さえつつ高いリターンを期待することが出来ます。
IT企業の多くは配当を出さず、従ってQQQの利回りも年1%以下の水準です。一方で価格はリーマンショック下限からほぼ10倍近く上昇しており、キャピタルゲインを狙えるETFと言えるでしょう。
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目次(クリックで飛びます)
パワーシェアーズ QQQの基本情報
詳細は以下のHPをご参照ください。
- ティッカー:QQQ
- ベンチマーク:ナスダック 100指数
- 基準価格:256.81ドル
- 信託報酬:0.20%
- 設定日: 1999/03/10
- ETF純資産総額:116,041百万(米ドル)
- 月間出来高: 92,872万株
- 構成株式銘柄数:100銘柄
- 直近利回り:0.65%程度
組み入れ銘柄上位は以下の通り(クリックでリンク先に飛びます)。
FAAMG5社で45%近くを占めており、これにインテル、エヌビディアとIT大手が続いています。NASDAQ市場は宝の山。
構成銘柄上位 | ティッカー | 比率(%) |
---|---|---|
Apple | AAPL | 12.03 |
Microsoft | MSFT | 11.74 |
Amazon | AMZN | 10.47 |
Facebook'A' | FB | 4.15 |
Alphabet'A' | GOOG | 3.71 |
Alphabet'C' | GOOGL | 3.62 |
Intel | INTC | 2.46 |
NVIDIA | NVDA | 2.27 |
Adobe Systems | ADBE | 2.04 |
Paypal | PYPL | 1.99 |
SPYに次ぐクラスの人気を誇り、出来高が凄まじい水準になっていますね。
ほとんどが将来有望な成長企業のため、事業投資やM&Aによって事業を拡大し、収益を上げて株価を上昇させています。
マイクロソフトやインテルなど、業界トップが安定した大手は余ったキャッシュを配当に回していますが、ほとんどは無配当のため、トータルの利回りは1%を切っています。
QQQのIT比率は約68%
QQQのIT銘柄比率は68%程度になります。
IT銘柄にはこの他にエヌビディア(NVDA)、ペイパル(PYPL)、クアルコム(QCOM)や中国の JD.COM(京東商城)も入っています(そのため、構成国は若干中国を含みます)
3位のConsumer Discretionary(一般消費財)が17.11%なのはアマゾンがここに入っているからです。その他、ケーブルテレビ大手のコムキャストなども含みます。
4位がヘルスケアで7.25%です。アムジェンやセルジーン(CELG)、ギリアド・サイエンシズ(GILD)、バイオジェン(BIIB)などを含みます。
他にもペプシコ、スターバックス、クラフトハインツなど知っている銘柄が数多くあります。
また、QQQは非金融企業を対象としており、同じく成長株に分類されるような金融銘柄はこの中に含まれません。
QQQの売買戦略(S&P500等との比較)
QQQはキャピタルゲインを狙って売買するものです。その前提で見てみましょう。
S&P500や日経平均との比較
青がQQQ、赤がS&P500、緑が日経平均。2000年を基準にするとQQQが圧勝です。
S&P500や日経平均と比較して圧倒的な成長速度を誇っています。
リーマンショック以降はさらにQQQが強いです。というか最近のITセクターが強すぎるというべきでしょうか。
配当利回りは倍違いますが、これだけ収益力の差があると、流石にトータルリターンでQQQに軍配が上がります。
気になるのは、ITセクターは不景気での落ち込みが激しいのかどうか。その点を拡大しましょうか。2007年~2011年までで比較しましょう↓
意外かもしれませんが、下落耐性はQQQとS&P500でほぼ変わらず。
確かに-40%近く急激な落ち込みがあるのですが、幅で見ればS&P500と大差なく、そこからの復帰速度は一番早いです。
ちなみに、不況に強いと言われる生活必需品セクターとして、VDCを足すとこうなります↓
紅色がVDCです(紫はHDVだったんですが気にしないで)。
流石の不況耐性ですね。ITセクターと比較するとリーマンショックですら-15%と軽微な影響しか受けていません。
もしVDCに興味を持たれた方はこちらからどうぞ。
QQQ vs VTI/VOO
VTIは米国市場3600銘柄に投資出来るETFで、VOOはS&P500に投資できるETFです。多くの人が資産形成の第一歩として保有するものだと思います。
さて、ここ10年のリターンではQQQに軍配が上がったのですが、どちらが優れているのでしょうか。
以下の違いを見ていきましょう。
- 構成銘柄、セクター
- コスト
- キャピタルゲイン、インカムゲイン
構成銘柄、セクター
QQQ構成銘柄上位であるGAFAMはもちろん、ほとんどの銘柄が含まれています。以下はVTIの例。
構成銘柄 | 比率(%) |
---|---|
Microsoft Corp. | 3.8 |
Apple Inc. | 3.7 |
Alphabet Inc. | 2.5 |
Amazon.com Inc. | 2.4 |
1.6 | |
Berkshire Hathaway Inc. | 1.4 |
JPMorgan Chase & Co. | 1.3 |
Johnson & Johnson | 1.2 |
Visa | 1.0 |
Proctor&Gamble | 1.0 |
セクターのトップはITですが、全体の2割にとどまります。7割がITセクターであるQQQと最も違いが出ている部分です。
構成セクター | 比率 |
---|---|
テクノロジー | 21.8 |
金融 | 19.4 |
消費者サービス | 13.3 |
資本財 | 13.2 |
ヘルスケア | 13.0 |
消費財 | 9.7 |
石油・ガス | 4.1 |
公益 | 3.2 |
素材 | 2.2 |
通信サービス | 1.9 |
S&P500の中で、GAFAMの時価総額は全体の20%を占めています。これはS&P500下位350銘柄と同等になりますし、なんと東証一部上場企業の合計時価総額を上回ります。
参考GAFA+Microsoftの時価総額、東証1部超え 560兆円に
しかしQQQのGAFAM構成比率はさらに多い45%です、株価影響はより大きくなるので、そこを重視するかどうかで変わってきます。
コスト
信託報酬はQQQが高いです。
- QQQ:0.2%
- VTI/VOO:0.03%
キャピタルゲイン、インカムゲイン
キャピタルゲインはQQQに軍配が上がりましたが、インカムゲインはS&P500のほうが高くなります。
- QQQ利回り:0.65%
- VTI利回り:1.70%
- VOO利回り:1.92%
これは日経平均もほぼ同様ですが、歴史的に2%前後の利回りをキープしています。
まあ結局のところ、利益を直接還元しているか、事業に投資して会社を大きくして還元しているかの違いです。
インカムゲインを含めた安定感を求めるならS&P500、キャピタルゲインを狙っていける爆発力を求めるならQQQが良いと思います。
今後もQQQはアウトパフォームするだろうか?
それでも今ならどっち、という疑問がありますね。
過去15年でQQQはS&P500をアウトパフォームしてきました。
これをもってQQQを選ぶのも私は良い戦略だと考えます。過去データに基づく、優位性のある投資論だからです。
ただ、私は王道のS&P500をメインとして、QQQはサテライト的に買う運用としています。
QQQ、GAFAMは割高かどうか
PERで見る
PERは以下の通り。
PER20倍というのは、その会社を買ったとして20年で投資資金を回収出来ることと同義です。これで見ると割高に思います。
- ナスダック全体:24.62
- S&P500:20.3
- アマゾン:145
- グーグル:31
- マイクロソフト:35
- アップル:29
- フェイスブック:28
- ネットフリックス:72
PERは以下の記事で説明しましたが、過去100年の平均PERは15倍前後、ここ20年は17~18倍くらいで推移しています。
株価成長率>EPS成長率という状態が続くので、今後は18~20倍くらいになると思っています。
今の株高は収益を伴った上昇なので、かつてのITバブルと同じではありません。
ITバブル崩壊直前のPERは、市場平均30倍近い水準でした(ちなみに、日本のバブル崩壊直前はPER60倍超えてました)
とはいえ、やはりPERとしては割高ではあるでしょう。
一応、PERは株価と予想EPSという不確定な変数2つで算出するので、個人的には割高感を示す指標として使うのは好きではなかったりします。
来期予想利益を永続するという仮定で算出した数字なので、単純に「PER20倍は割高!」とすると、成長市場のIT企業を過小評価することになります。
アマゾンのPERが145倍なのは、将来利益が上がることを織り込んでいるからですよね。
平均を上回るPERはM&A実務なら「のれん」と理解すれば良いでしょう。個人投資家に当てはめるとリスク・プレミアムであり、自分の評価とマーケットの評価の乖離こそ利益の源泉です。
チャートで見る
ということで、チャートで見てみましょう。
はい、チャートでは高値圏にあることは間違いないです。一見すると、ここから上がるのは難しいようにも思えます。
しかし、それこそGAFAMの株価は、既に高値圏だった18年以降で2倍3倍に上がりました。アマゾンもついに3000ドルまで行ったか……という感じ。
米国株は基本的にトレンドフォローで株価が上がっていくので、強い株はより多くの資金が集まってどんどん上がっていきます。
もちろん異次元の金融緩和であふれたマネーが向かっている背景もありますが、投資家の期待も非常に高いのです。
実際にITセクターの時価総額は10年で10倍になりました。であれば、今後も上がったり下がったりしながら、30年スパンで見れば、今の株価も割安と言える日が来るだろうということ。
アウトパフォームする手法は変化する
しかし、QQQはキャピタルゲインを狙うETFなので、今より株価が上がらないとリターンが増えません。
そして、高い業績=高いリターンではないことも知っておくべきでしょう。
最近は大型株のグロース投資が優位ですが、過去にはバリュー投資が優位だった時期もあります。比率はほぼ半々です。
また、シーゲル先生の株式投資第4版によれば、低PER投資は高PER投資より優位性があります。
- 最も低いPERグループ:年率14.3%
- 最も高いPERグループ:年率8.9%
同じく、高配当株は低配当株より優位性があります。
GAFAMのプレゼンスは今後も高いと思いますが、それがイコール投資リターンが最大化されるわけではありません。
現在もITセクターへの投資は過熱感が強く、コロナ影響が業績に出てくる下期以降、市場の調整がいつ来るとも分からず、大統領選挙のあとも危険です。
「右肩上がりだからいつ買っても利益になる」、というのはもっともですが、QQQはITセクターに偏っているだけ、シナリオが変わる可能性は考慮すべきでしょう。
ポートフォリオのバランス
そういう意味で、今後どのセクターがアウトパフォームしても一定割合のリターンを見込めるS&P500やVTIは、堅実な選択肢だと思います。
ポートフォリオ全体のバランスもよいです。
ITセクターは成長著しく、好調時のパフォーマンスは圧倒的です。反面、偏ったセクターへの集中投資は暴落時のダメージも大きくなります。
このあたりを踏まえて私は当面VTIをメイン、サテライトとしてQQQにも一部投資を続けるつもりです。
これでもGAFAMにそれなりの割合を投資できるので、GAFAMが私の想定以上に伸びても満足できる結果が得られます。
余談:GAFAMの今後について
これまでのセクター変遷
以下はS&P500のセクター変遷を示したものです。ITバブルはともかく、年々Technologyが他業界を侵食してきたことが分かると思います。
今や世界経済の成長エンジンはIT業界ということです。
近年は金融におけるフィンテック、自動車における自動運転など、IT技術が既存業界の枠組みを破壊(ディスラプター)しています。
誰が破壊して来たのかと言えば、GAFAMですよね。
GAFAMの強さ
昨今のコロナ影響もIT業界にプラスに働いています。リモートワークやコミュニケーションツールなどITサービスに有利に働いています。
実際、ナスダックは3月のコロナショックから早々に復帰し、最高値更新が続いているのです。
ちなみに本日2020/7/31で今期のGAFAM決算が出揃いましたが、それぞれ予想を上回りました。
さらに、GAFAMにはイノベーションのジレンマもありません。
なぜなら次世代のGAFAMと目されるベンチャー企業を上場前に買収して、イノベーションを持続させているからです。
GAFAMが買収した企業は、ここ30年で750社。様々な新技術を持つITベンチャーばかりです。
- マイクロソフト:LinkedinやGithub
- アマゾン:Wholefoods
- フェイスブック:WhatsApp
- グーグル:Andorid、YouTube
AIスタートアップの買収案件はアップルが最多らしいです。
かつて時価総額世界トップだったGEやエクソンモービルの凋落と同様に、いずれGAFAMも後続に追い落とされる未来があるでしょうか?
GAFAMの今後について、私は特にグーグルとアマゾンについては、成長率はともかく将来もトップに君臨しているんじゃないかなと思います。
既に世界中で生活に不可欠なITインフラとなっているためです。競合も中国のBATくらいしかいないですしね。
指数を買うことの強み
とまあGAFAMに注目するとこういう話になるのですが、今検討しているのはQQQやS&P500という投資先です。
指数へ投資する強みは、たとえGAFAMが潰れても変わりとなる企業が指数に組み込まれて、全体として利益を上げ続け、リターンを得られることにあります。
GAFAMが好調だから指数を牽引していますが、下がったときには別の会社が穴埋めしてくれるでしょう。
オススメの証券会社
米国ETFに興味を持たれたら、早速口座開設をオススメします。ひとまず以下のいずれかの証券会社で海外口座を開いておけば間違いないと思います。
SBI証券
日本一の口座数を持つネット証券で、米国株も多数取り扱っています。米ドル振替のスプレッドが縮小されて最安なこと、サイトが使いやすいことが良い点です。
楽天証券
SBIと並んで楽天も大手ネット証券で、ほぼSBIと互角です。どちらを選ぶかは好みですが、普段楽天ポイントを使う場合は楽天証券の方が色々お得になるのでオススメです。
マネックス証券
米国株の取り扱い銘柄数は日本最多で、他では見ない小さな米国株まで買えたりします。
動画もよろしくです。
当ブログでは他のオススメETFも紹介しています。気になる方は以下の記事からどうぞ。
以下のリンクから直接飛ぶことも可能です。
銘柄名 (リンク先は分析記事) | ティッカー |
---|---|
VTI(米国全株式市場) | VTI |
VYM/HDV/VIG(米国高配当セクター) | VYM/HDV/VIG |
VWO/EEM(新興国セクター) | VWO/EEM |
VDC/XLP(米国生活必需品セクター) | VDC/XLP |
VHT(米国ヘルスケアセクター) | VHT |
VBR/VBK(米国小型株) | VBR/VBK |
VEA/VGK(米国外株式市場:先進国・欧州) | VEA/VGK |
VT/VEU(全世界株式市場) | VT/VEU |
VSS/VXUS(米国外株式市場:小型株) | VSS/VXUS |
日経平均/TOPIX/JPX400 | 1346/1348 |
S&P500/ダウ工業株30種 | VOO/DIA |
パワーシェアーズQQQ | QQQ |
PFF(米国優先株式) | PFF |
1570/1357(日経レバレッジ/ダブルインバース) | 1570/1357 |
GLD/IAU(金) | GLD/IAU |
1699/USO(原油) | 1699/USO |
SLV/DBA/DBC/VDE(その他のコモディティ・エネルギー) | SLV/DBA/DBC/VDE |
REIT(不動産投資信託) | - |
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