先にこちらの記事からどうぞ。
- 持ち家vs賃貸
- 株vs債券vs不動産vs金(現物)vsFX
- 一括投資vs分散投資
- 長期vs短期
- 個別株vsインデックス
- 日本株vs米国株vs新興国株
- グロース株vsバリュー株
- 高配当vs自社株買い
- 過去のデータvs時代の変化←今回これ
前回と同じく、色々な視点を知ってみてください。
答えのない問題に答えを出すのは、生きていく上で避けて通れない話です。
それでも、その人その人できっと”より優れた”答えはあるのかな、とは思います。
目次(クリックで飛びます)
過去のデータ vs 時代の変化
変化球ですが結構重要な話です。この2択ですね。
- 過去のデータは大いに使って戦略を立てるべき
- 過去はあくまで過去でしかなく、参考にならない
当ブログはかなり過去のデータ寄りでして、特に数十年以上の単位でどうなっていたかという傾向を重視しています(グラフとかうんざりするくらい出してるよねw)。
指針がないよりは何かしらあったほうが絶対に良い、ということです。
優位性も分からない感覚投資法で相場に向かうなんて死ににいくようなものだからね。私はFXもちゃんとバックテストやってましたよ。
時代の転換点
しかしながら、大きな時代の転換点に過去データが参考にならないケースも散見されます。
特に社会変化を伴う転換に際して、過去のデータを安易に引用することは危険です。
例えば第一次産業革命を経て機械生産と標準化された製品の大量生産大量消費社会へと移りました。
S&P500のセクター別時価総額推移ではテクノロジーと金融の進展著しいことが分かります。
物理的な市場拡大が終わったあと、ITと金融という仮想空間の市場を発見したことが資本主義の延命になったという指摘もあります。
また、以下に新規技術の普及速度が上がっているというデータがあります。
普及が早いということは廃れる速度も早く、プロダクトライフサイクルも縮まります。
普及速度の高速化はインフラが不要なプロダクト、サービスが多いという理由も挙げられるでしょう。
昔は1つの事業が100年単位で存続していたので、手に職1つあれば3世代が食っていけた時代でした。
だから職人がいて、彼らの技術を秘匿・継承するためにギルドと徒弟制度が生まれたわけです。
ところが産業革命を経て人手の仕事は機械に取って代わられるようになりました。職人が廃業し、代わりに機械を作ったり動かしたりする仕事が生まれました。
そうした人や仕事も今や人工知能の登場で職を追われている状況ですから、なんとも早いものです。
仕事というのはどうしても生活の中心にあるので、仕事の変化は社会変化に直接結びつきます。
1つの技能は15年と食っていけない時代になりました。
同じ話で、安泰と思われていたプロダクト、サービスに思わぬ競合が参入して市場を荒らしてしまうという危険性が増しています。
100年生き残ってきたことが次の100年も生き残る理由にはなりません。
かといって崩壊を予測することは不可能なので……上手く対処していきましょう。
- 市場平均を購入して参入企業も撤退企業もまとめて資産変動の内数に含めてしまうこと
- 少しでも崩れる心配の小さいワイドモート企業に投資をすること(オールドエコノミーへの侵食は著しいが)
- グローバル経済の主役になれる米国中心に投資をすること
- 撤退シナリオを考えておくこと
- 購入時点で十分な安全域を取ること
日本企業の例ですが、リーマン・ショック時に倒産したのは上場企業の1.7%程度でした。
上場企業というのは日本を代表する大企業ですから、その1.7%が倒産したということがどれだけ大きい数字かということです。
しかし本当のリスクというのはこういった形で曖昧にも予測可能で対処可能なものばかりではないでしょうね。
資本主義が生まれてまだ200年ちょっとしか経っていませんし、これから未知の事態が何回かは起こりそうです。
人間心理に大きな変化はない
プロスペクト理論について記事を書いた時に、普通の人が普通に投資をすると儲けられないように出来ているという話をしました。
株価の価格変動は要するに需給変動で、需給変動を生むのはある価格に対する反応です。反応は「再帰性」を持ち、連鎖してトレンドを作るようになります。
株価の動きはランダムではありません。
考えてみれば不思議なもので、ある同じ価格で買いたいという人と売りたいという人がいるわけです。
どちらも自分が負けようと思って行動していませんから、株価は一本の綱を両側で力いっぱい引き合っているようなものです。
さて、この人の心理構造というのは時代が変わったといってそう変わるものではありませんよね。
いつになっても1万円を失う悲しみは1万円を拾う喜びに勝るのです。
ここらへんをもう少し解釈すると、
- リターンは経済成長率やインフレ率、他資産状況やその他様々な心理状況が絡むので「時と場合による」
- 損をしようとして投資している人はいないので、リスク=ボラティリティは人の反応が最も影響し、人の心理が変わらないということは「過去データをある程度参考に出来る」
のではないかということです。
あくまで個人的な感覚ですが、過去のデータ上はリターンほどリスクはブレていないように見えます。
まあブログではよく株の長期リターンは6.7%とか言ってますけどね。
インパクトあるし、今後もうちょっと落ちるにしてもアンカリング出来る数字だとは思います。
レバレッジがボラティリティを指数関数的に変化させるので、必ずしも過去のリスクと一致するとも言い切れない。かもしれない。
まあでもバーゼル3でレバレッジ比率規制が採択されているので、一時ほど大暴れ出来る環境ではありません。
先ほどの繰り返しになりますが、過去リスクとリターンをそのまま計算に使えるなんてそんな簡単なことではないですからね。
実際には様々なイベントで一時的にボラティリティが上昇し、資産の振れ幅が大きくなる局面は必ずやって来ます。
1年のリターンの半分は6日で決まる、でしたっけ(全然違ったかもw)。数字忘れちゃいましたが、株式市場はべき乗則に支配されていますので、全体の5%にも満たない時間が成績の大半を決めるものです。
ぶっちゃけ日々の資産運用よりもそういうイベントをどう対処するかのほうが重要な気がしています。
100万→50万にするのは-50%でも50万→100万は+100%しないと届きません。逆ならいいですけどね。
基本的にリスク=ボラティリティは避けるほうが資産増加ペースが目論見通りに進むもので、リスク試算に過去データを使えるのではないかと。
時代の変化を過去のデータから捉えられるか
変化の要素を数値化出来れば、どうなったらどうなるという未来方向の変化を過去データから予測出来るのではと思うかもしれませんね。
しかしこれは実質的に不可能です。
無数の現象が互いに影響し合っていて、原因と結果を一意に特定することが難しいためですね。
この辺りの記事にも書きました。
第三の因子をどう評価するのか
時代の背景みたいな第三の因子をどこまでイレギュラーとして扱うかですよね。
よく言われるブラックマンデーのように、まったく理由もなく変動したものもあります。
1980年代はFF金利が18%を超えていた時期でもあり、長らく低金利から回復した今と全く状況が異なることは分かると思います。
為替も1985年のプラザ合意後に大きく円高に動きましたが、これも80~120ドルで推移する現代の為替レートからは考えられない大変動です。
対照実験が出来ないので、こういう状況のどれがどのくらい影響を与えるのか定量的な解析は出来ません。
“1929年とチャートの値動きが酷似している”というだけで同じ値動きをするとは言えないのです。
データをどこまで使うかはやっぱりさじ加減。
まあ取り留めのない思考を発散させましたが、どこかで割り切って信じることも大切です。
投資で思ったリターンを得られない人の多くは、自分の投資論を守れない、一貫性がないことが考えられます。
多すぎる知識は毒にもなるということです。
慎重であることは相場において決して悪いことではありません。
しかし、あれもこれもと情報をかき集めて判断出来ないより、一本筋通った理論を信じたほうがよっぽど良い結果を生むということも頭に入れておきたいものですね。
具体的に言うと、バカになってVT(世界の株)を買ったほうがいいんじゃねってことです。
歴史・過去データについての投資関連書籍
歴史を題材にした経済・投資関連本はあまり多くなく、たぶんほとんど読みました。
以下は読み物としても面白い本を挙げておきます。
予備校講師が書いた本で、非常に分かりやすくまとまっています。大枠で捉えるのに役立つと思います。
戦争やバブルなどのイレギュラーに対して過去の動きがどうだったかという情報が他で見ないものが多く新鮮です。
1970年以降に絞って金融問題を詳しく扱っています。当時の状況を順を追って頭にインプット出来るので、上手く知識の補填をさせていただきました。
長期データならシーゲル先生の本が一番良いと思います。データが大量に載っている書籍は正直海外のほうがずっと豊富ですね。
和波は本のデータがあればそれを利用し、なければインターネットから探します。英語で探すのもようやく慣れてきました。
最早論争でもなんでもない……^^;