プロスペクト理論で分かる、心理メカニズムが投資判断に与える影響

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前回に引き続き、投資家の必須科目:プロスペクト理論について記事にします。

前回の記事からどうぞ。

【投資家の必須科目】プロスペクト理論だけは勉強しておこう!
投資家はプロスペクト理論だけは確実に勉強しておくべきだと常々思っています。 なぜ私達は投資に失敗するのか? この問いに半分くらい...

今回はプロスペクト理論が実際の投資にどのような影響を与えているか見ていきたいと思います。

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損小利大の逆を行く

プロスペクト理論で明らかになったのは、

  • 儲けられる時はより確実に利益が得られるほうを選ぶ
  • 損をする時はリスクを取ってでも損をしない可能性があるほうを選ぶ

ということでした。

精神的に楽な投資をしようと思うと、利益が出たらすぐ利確し、損失が出たら長々粘ることになります。

損が出ても耐えていれば相場は大抵戻るものですが、いつか戻らない時がやって来ます。

そこで今までかき集めてきた利益を一発で失う、典型的なコツコツドカンをやらかしてしまうでしょう。

言ってしまえば、「損大利小」というトレードですね。

損失回避が戦略の一貫性をなくす

損失の可能性が目前に来ると、どうにかして回避しようと無理をします。

すると投資戦略が歪められ、期待したような結果は得られません。

投資というのは一回ごとに勝負しているのではなく、トータルでどうなるかの勝負です。

優位性のある投資戦略を立てて、それを一貫させること。これが大切なことです。

言い訳を作る

自分で立てた投資戦略が守れなかったとき、自分自身に腹が立つはずです。

落ちてきたら買おうと思っている株が中々落ちてこないので、つい高値掴みするとか。

大損してつい熱くなって、取り返すために残りのお金を全部ナンピン買いにつぎ込むとか。

分かっててもやってしまうことがあります。認知的不協和ってやつですね。

認知的不協和を解消するために、正当化や後知恵バイアスがかかります。

「慌てて売らなければ良かっただけ。方向性や買ったタイミングは良かったし、予想は合っていた」みたいな。

これだけはやめましょうね。

自分の判断に責任を持って、例外を作らないようにしましょう。

現状維持を優先する

今の時点を基準にして利益と損失を考え、同程度なら損失回避を優先するというのがプロスペクト理論でした。

ということは、リスクと同程度のリターンでは現状維持を選びます。

実験ではリスクリワードは1:2.5で釣り合っていたので、大抵の人にとっては「何もしない」を選ぶことになります。1:2.5というレートは中々ありません。

保有しているものの価値を高く見積もる

人は自らが所有しているものに対して、市場平均よりも高い価値をつける傾向にあります。

パフォーマンスの悪い保有株を切って新しい株を買う、というのは口で言うほど簡単ではありません。

現状維持を優先させるバイアスに加えて、自分が選んで買った株の将来性を過大評価するというバイアスがかかるためです。

あるいは、保有していなくてもバイアスにかかる可能性があります。

自分が「この株いい! 買いたい!」と思って情報を調べると、きっと肯定的な情報しか出てこないはず。

カエサル曰く、人は見えるものを見ているのではなく、見たいものを見るのです。

対策としては、撤退(損切り)シナリオを考える癖をつけることです。上手く行かなかった場合を考えることが、客観的な判断に大変役立ちます。

選択肢が多いと決められない

これも現状維持バイアスの一種ですね。

お買い物とかでもよくある光景ですが、品揃えが多すぎてどれにするか迷った挙句、結局買わないで帰るみたいな。

決断というのは長引かせるほど難しくなるので、最初が肝心です。

例えば投資先でもTOPIXと日経平均、米国株のVWOとIVVとVTIとDIA、最初の投資先をどれにしようか悩むんじゃないかと思います。

きちんとやるなら過去リターンを出して比べるのですが、実際そこまで大きな差はありません。VTIがいいかなって思うけど。

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個別株のウォッチリストも、すべてに順位をつける必要はないですが、1軍、2軍みたいにある程度分けておきましょう。

確実性を過大評価する

99%の確率で100万円がもらえることと、100%の確率で98万円がもらえることを比較すると、大抵は後者を選びます。

確実性にプレミアムが発生しているんですね。

期待値では前者のほうが高いので、従来の期待効用理論では当然前者を選ぶべきというのは、前回の記事でさんざん見てきたところです。

知っていることを過大評価する

確実性という意味で、知っていることを過大評価する傾向があります。

よくあるポートフォリオで、日本株と海外株の比率を1:1にしようと推奨されたりします。

ただ、日本株のパフォーマンスはこれまでも(そしてこれからも)決して高くなく、やや国内比重が重たい気がしますね。

人によりますが、特に理由なく1:1にしているなら、それはただ国内株をよく知っているから優先しているというだけのことです。

低すぎる確率を過大評価する

また、逆に低すぎる確率を過大評価する傾向もあります。

宝くじに当たる確率が50%→51%になることと、0%→1%になることを比べると、後者のほうが凄いことだと錯覚しませんか。

もちろん、上昇率1%はどちらも変わりません。

近い事象を過大評価する

確実性は時間軸の近い/遠いにも影響を与えます。もちろん近いほうが確実性が高くなりますね。

今すぐ1万円をもらうか、1か月後に1.1万円をもらうかだと、多くの人は今すぐもらおうとします。

が、上2つのあわせ技で、時間軸も低い確率(≒遠すぎる出来事)を過大評価する傾向にあります。

例えば1年後に1万円をもらうか、1年1か月後に1.1万円をもらうかだと、逆に後者を選ぶ人が多くなります。

割引率で考えれば1か月で利回り10%は破格ですから、どちらも後者のほうが合理的ですね。

時間が遠くなるほど、金額が大きくなるほど細かい差を気にしなくなる傾向もあります。

例えばスーパーでは1円を節約するために何店も回るのに、10万円の家電を買う直前に隣町で1%安く売っているという情報を聞いても今から向かおうとは思わないでしょう。

ついでに100万円で株を買うまで10分と調べない人が大半じゃないでしょうか。

時間のかけ方、気の配り方は絶対額の大きなものほど手厚くするというのが正しいやり方です。

ポジションの有無と投資判断

損をしたと感じるのは、保有株が含み損を抱えたときだけではありません。

  • 保有株が含み損を抱える
  • 保有株の含み益が減る:基準点が最大利益に移る
  • 買おうと思っていた株の株価が上がる:機会損失(色々調査に時間をかけたという意味で、サンクコストの意識も)

興味深いのは、これら3つに対するマインドと反応は同じではないということです。

上2つは株を持っているので、放置すると損が広がる可能性があります。しかし、損失回避性によって損失局面ではリスクテイク志向になるため、見ないふりして耐えるんでしたね。

一方、一番下は現時点で保有していません。放置していても実損は出ないわけです。

しかし、結局このケースでは無茶な高値掴みをして実損を生み出すケースがほとんどです。行動するんですよ。

余計な場面ではよく動いて、必要な場面ではまったく動かないという。

基本的に買いより売りのほうが難しいものです。買いは自分のタイミングで待てるのに対して、売りはマーケットの値動きに煽られるからです。

売りが苦手なら、買いポジションを絞るか、売らないで済む戦略(安定のインデックス投信)を取るしかありません。

ちなみに、心理学的にはやらなかった後悔はやった後悔より大きいと言われています。

やらなかった後悔というのは成功した自分をベースに後悔するため、痛みが大きいのです。

ポジポジ病はおさえるべきですが、精神的苦痛を伴うものだと覚悟しましょう。

行動経済学は必須科目

プロスペクト理論を必須科目とした理由が分かってきたでしょうか。

行動経済学は「なぜ勝てないのか?」という問いに半分くらい答えてくれるものだと思っています。

そして、投資において勝ち方は人の数だけ存在し、負け方はパターン化しているものです。

つまり、負けを避けることが半分、勝ちを知ることが半分。

ですが、投資で最も重要なことは生き残ることで、そのためにはまず負けパターンを知るほうが先決です。

ルール その1:絶対に損をするな。

ルール その2:絶対にルール1を忘れるな。

――――ウォーレン・バフェット

私達の心のメカニズムは意味があってこのような構造をしているわけですが、こと投資においては合理的な判断の邪魔になります。意識して避けるしかありません。

この記事がその一助になれば幸いです。

行動経済学のネタは他にもいくつかあります。次回はまた別の問題を取り扱っていこうと思います。


前回の記事リンクを再掲します。本記事と合わせてお読みください。

【投資家の必須科目】プロスペクト理論だけは勉強しておこう!
投資家はプロスペクト理論だけは確実に勉強しておくべきだと常々思っています。 なぜ私達は投資に失敗するのか? この問いに半分くらい...

同じく投資における必須科目の統計学について簡単に書いています。そのうち詳しくまとめたいところです。

投資における統計学
投資の成果を出すために最低限必要なのは、期待値プラスの手法、その手法を活かせるポジションサイジング等の資産管理、その手法及び管理を一貫出来る...

ではでは。

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