今更ながらのネタです。
前にやったセミナーでまとめた内容ですが、今まで一度も記事にしてなかったので、この機会に記事化します。
フィリップ・モリスの詳しい分析記事はこちらからどうぞ。
目次(クリックで飛びます)
シーゲル銘柄として有名なフィリップ・モリス(PM)
フィリップ・モリス(PM)は既に相当有名になっていると思いますが、シーゲル先生の赤本にある通り、市場平均をアウトパフォームした銘柄のひとつです。
非常に簡単に言うと、「市場平均をアウトパフォームする投資法は、永続的なキャッシュを生む企業に対する配当再投資戦略である」ということです。
S&P500が制定された1957年から現在(データ上は2013年)の長期に渡って調査した結果、発見された優位性です。
本が面白いので是非一読を勧めたいのですが、ざっくりまとめ版はこちらで記事にしました。
19.75%の年平均リターンはバフェットに匹敵する
フィリップ・モリスの過去平均リターンは実に19.75%で、これはバフェットの生涯平均リターン20%に近似する成績です。
会社名 | シンボル | 業種 | 主要事業 | リターン(%) |
---|---|---|---|---|
Philip Morris International Inc. | PM | 食品 | タバコ | 19.75 |
Abbott Laboratories | ABT | ヘルスケア | 薬品 | 16.51 |
Bristol-Myers Squibb Co | BMY | ヘルスケア | 薬品 | 16.36 |
Tootsie Roll | TR | 食品 | お菓子 | 16.11 |
Pfizer Inc. | PFE | ヘルスケア | 薬品 | 16.03 |
Coca-Cola Co. | KO | 食品 | コーラ | 16.02 |
Merck | MRK | ヘルスケア | 薬品 | 15.90 |
PepsiCo Inc. | PEP | 食品 | コーラ | 15.54 |
Colgate-Palmolive Company | CL | 生活必需品 | 日用品 | 15.22 |
Crane | CR | 資本財 | 工業 | 15.14 |
H.J. Heinz(Kraft Heinz) | KHC | 食品 | 食品 | 14.78 |
Wrigley(Mars) | -(非上場) | 食品 | お菓子 | 14.65 |
Fortune Brands | FBHS | 一般消費財 | 家具 | 14.65 |
Kroger | KR | 一般消費財 | 小売 | 14.41 |
Schering-Plough(Merck) | MRK | ヘルスケア | 薬品 | 14.36 |
Procter & Gamble Co. | PG | 生活必需品 | 日用品 | 14.26 |
Hershey Foods | HSY | 食品 | チョコレート | 14.22 |
Wyeth | AHP | ヘルスケア | 薬品 | 13.99 |
Royal Dutch Shell plc | RDSB | エネルギー | 石油 | 13.64 |
General Mills | GIS | 食品 | お菓子 | 13.58 |
正直言えば、米国市場平均の10.85%も十分凄まじいですけどね……。
高配当戦略自体がスマートベータ
フィリップ・モリスに限らず、高配当株ほどリターンが高い傾向が明らかになっています。
まあこれはちょっと考えれば当たり前の話だと思います。
配当の源泉は利益ですから、高配当=たくさん利益を稼いでいる会社ということで、全体では上位層に属するでしょう。
で、問題はこの2つをごっちゃにした投資論が案外多いことです。
フィリップ・モリスは成長株だった
期待リターンの実益のギャップ=投資リターン
フィリップ・モリスは配当利回りが高いから高リターン、ではないということです。
利回りが高かったというよりは、むしろ株価が安かったと言ったほうが正しいです。PERは10倍以下だったのですからね。
たばこ市場でもトップではない
S&P500が制定された当時のたばこ市場について見ると、PMは業界トップではありません。
レイノルズ社やAB社、ブラウンアンドウィリアムソンなど、PMは競争にさらされて3~4番手にいました。
しかもアメリカの喫煙者は1963年にピークアウトしています。これ以降は肺がんなどの健康被害についての懸念が増大し、合わせて訴訟リスクが増大していきました。
この訴訟リスク回避のため、米国事業をアルトリア・グループ(MO)にスピンオフしたり、食品事業への多角化を図ったのもこの時期です。
マルボロがトップブランドに成長したのは1970年以降
反対に、PM(MO)のトップブランドであるマルボロは、以下のように1970年以降に急成長しました。
マルボロの成長によって、PMの売上・利益も急成長していきます。
どういうことかというと、
- たばこ市場はオワコン(と思われていた)
- でもフィリップ・モリスはその市場で急成長して莫大な利益を稼いだ
という2つのギャップが、PMの高リターンを生んだということです。
ポイントは配当がどうのこうのではなく、継続した利益(キャッシュ)を稼ぐことが出来るかどうか。
言い換えれば、成熟した市場における成長企業というのがフィリップ・モリスの高リターンを再現出来る銘柄になります。
高配当というだけでは、これだけのリターンは叩き出せないのです(高配当自体の優位性はデータがあるので、それだけでも十分ではありますが)
配当金再投資なしでは市場平均に劣後する
また、配当金を個人消費に使う投資には優位性がありません。
前回の記事で説明しましたが、配当金自体は預金引き出しみたいなもので、それ自体に価値はありませんから。あくまでも利益こそが投資の理由です。
高配当株それ自体のスマートベータに投資するか、永続してキャッシュを稼ぐ企業へ投資するか。
優位性があるのはこういった投資法で、いずれも配当金を再投資しないと意味がない(S&P500に劣後する)ということです。
ここは注意したほうがいいですね。
私含めて高配当株を買っているブロガーの多くはそこそこの資産を持っていて、資産を増やすよりキャッシュインを重視している部分があります。
きちんと配当再投資戦略を続けて、理論通りに資産を増やす運用を貫いているのはバフェット太郎さんくらいかなと思います。
個人ブログの資産運用情報は参考になると思いますが、理論の土台となっている部分は書籍で勉強するようにしましょう。
関連記事です。
調べれば調べるほどたばこ市場ほど強固な参入障壁を持つ市場はないと思わされます。
日本株における過去最高リターンを出した株はなんだろうという話題です。
これもフィリップ・モリスについて書いていますが、全員が現在の知識を持ってタイムリープしたらどうなるだろうという話です。