最近の株安でようやく買える水準まで落ちてきた銘柄がちらほらとあります。もう少し下落が続きそうなので、機を見て参入したいですよね。
今回は電子書籍関連株がテーマ株として有力なのか、少し詳しく検討してみました。長くなったので、二回に分けています。
目次(クリックで飛びます)
テーマ株としては盛り上がりが一服した感のある電子書籍の実態
私がこのテーマを選んだ理由はやっぱり自分が小説を書いているからです。電子書籍が盛んにもてはやされたのは、Amazonが日本で「Kindle」を発売した12年頃。それから4年が経って、電車でもタブレットで本を読んでいる人もちらほらと見かけるようになりました。実態としては、今どうなっているのでしょうか。
市場規模はドンドン拡大中!
まずはこれを見てください。
KindleやLINEマンガといった強力なコンテンツ提供事業者に、スマホ・タブレットの普及が加わったここ3~4年で、市場規模は着実に拡大しています。そして、これからも右肩上がりに成長していくと予想されています。
それにしても30%近い伸び率というのはかなりの勢いです。私も今や完全に電子書籍派ですし、周囲を見渡しても利用者は結構多い気がしていたので、感覚は間違っていなかったということですね。
電子書籍のニーズ、消費者動向
以下の情報を見ると、電子書籍のニーズが大きくなっていることが分かります。
- コミックの売上が全体の7~8割を占めており、圧倒的です。スキマ時間にスマホを取り出してさっと読むという使い方になるので、コミックは電子書籍と親和性が高いようです。
- 利用者も徐々に増えていっていることが明らかになっています。これからどんどん増えることと思います。
- 利用者のデバイスはスマホ50%、タブレット35%、パソコン35%、専用端末12%とのことで、ここ数年のスマホ普及が電子書籍市場拡大に大きく貢献したことは間違いありません。
- Amazonや楽天をはじめとして、電子書籍ストアは数多くあり、4割のユーザが複数のストアを利用しているようです。
海外の電子書籍事情
ここでは電子書籍先進国として有名な、米国の事例を見てみます。結局Amazonの動向次第な感じはありますが、日本とは商習慣の違いが大きいです。アメリカの出版ビジネスモデルは以下のとおり、「注文買切制」で出版社と書店が直接取引します。
米国では、出版業界全体に対する電子書籍の占める割合は10%~20%と試算されています(ブレ幅が大きいのは、収集データに不備があり正確な統計情報が降りてきていないからです)。
あちらでは成人の半数が電子書籍に対応した端末を所有しているらしいです。また、ジャンルもビジネス書や小説が強い模様で、漫画や雑誌が強い日本とは対照的です。
ここに超詳しく日米の比較がされているので、読んでみてください。
また、米国の事例を調べていると、こんな記事が出てきました。どうも15年は市場拡大がストップした模様です。
興味深い指摘ではありますが、これは今までAmazon側が勝手に安価な値付けをしていたところを、紙の本と同じ値段にする契約が出版社とされたためと考えられているようです。日本ではどうなるのか注目ですね。
出版業界全体で考える、比較する
出版業界全体の市場規模は?
はい、ヤバイですね。出版不況ってやつです。
1996年がピークで、そこから下落の一途。逆に返品率は年々上がってきており、出版社が苦しめられている状況が続いています(詳しくは「再販売価格維持制度」「委託販売制度」でググッてください)。
しかし、これでも電子書籍の出版業界全体に占める割合はわずか「6%程度」だそうです。まだまだいける気がしませんか?
※上の予想数値から、19年の電子書籍市場規模は「20%」超えそうですね。
出版社から見た電子書籍化の流れ
株としての狙い目は電子書籍向けの会社なのですが、結局のところ、大手出版社の本格参入なしに電子書籍化は進展しません。
あまり優れていないと言われる出版業界のビジネスモデル
電子書籍といっても、基本的に紙の商流を引き継いでいます。出版不況のせいもあるのですが、各社とも薄利多売で赤字が目立っています。
下の図を見るとたくさんのプレイヤーがいます。本一冊の値段をこれだけの会社でわけあっているのです。電子書籍によってこのモデルが変わるのでしょうか?
電子書籍と紙の書籍の違いはなにか?
- 電子書籍は印刷不要のため、在庫、返品リスクが減ります。同時に古本や絶版もなくなるため、潜在顧客の取りこぼしが減りますね(あれ、逆に電子書籍が伸びるとBOOK OFFは厳しくなるの?)。
- 文字以外にも音声、動画といったコンテンツの自由度が広がる。ページ数の上限下限も消える。
※実はコスト構造はそれほど変わらない:
著者が直接出版(セルフパブリッシング)出来ることが電子書籍のメリットのため、上の「出版社の取り分30%」が著者に行くことはあります。ただその場合は広告宣伝等はもちろんしてもらえないので、著者から見ると結局取り分が減る可能性が高いです。
また、印税の考え方が印刷部数ベースから実売ベースに変わりますね。
- 著作権の問題:日本では、出版社が著者隣接権を有しておらず著者と交渉が必須となっている模様。
- 値付けの問題:元々は安さが売りの電子書籍ですが、今のところ紙と同じくらいの値段になっています。※無料との格闘として後編に載せました。
出版社の傾向
出版社も試行錯誤してサービスを発信して、徐々に電子書籍化の流れに乗ってきていますが、まだ手探り感もあります。現状まだ紙媒体のほうが出版社にとっては良いみたいです。
また、以下の様なリスクも懸念しているようです。
- 過去の商習慣から脱却するリスク:それはそうですよね。
- 参入障壁がないリスク:上と関連して、電子書籍は手軽で各社差別化が難しく、出版社の競争が激化します。
- 価格のリスク:出版社を介さずセルフパブリッシングなんてされると当然お金は入りません。安売りしてしまうと収益を圧迫します。
- Amazonに頼りきりになってしまうリスク:パワーが出版社からAmazonに移るリスク。
その他参考にしたサイト
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1048_03_01.pdf
中編書きました。
後編も完成です。