思った以上に長くなりました……。先に前編、中編を読んでみてください。
そしてこの後編では、どんな銘柄が有望そうなのか見ていきます。購入タイミングや個別の成長モデル確認はさらに個々に記事を起こしていきたいと思っています。
電子書籍関連銘柄一覧
度々になりますが、業界図はこちらをご参照。
中編で見たように、電子書籍化というのは製本作業の大半を飛ばしてしまうため、実は直接ビジネスモデルに絡むプレイヤーは少ないのです。
配信サイト運営(ストア系)
真っ先に思いつくのは配信サイトですね。ビジネスの将来性を想像するためには、下のようなことを理解することが重要です。
- それぞれどんな強み特色があるか
- どんなコンテンツを抱えているのか
- どの層をターゲットにしているのか
- 実際の収益はどうか
比較サイト見てみるのも参考になりますね。高単価アフィリエイトをランキング上位表示している可能性もあるので、順位自体はわりとどうでもいいです。
あとですね、買うときは電子書籍事業だけやっている株を買ったほうがいいです。反応が違いますので。例えば紀伊國屋書店は「Kinoppy」で電子書籍の最大手一角ですので電子書籍が伸びると恩恵を受けるのですが、書店の経営はマイナスになって上値が重たくなります。そもそもよく調べないで買う人は一定数いて、「本屋は電子書籍来たらやべーだろ?」くらいの感覚で売りますからね。
Amazon(AMZN)
米国株を買うことは別に難しくないですよ! Amazonが中心なんだから買いましょうよ。見よこの美しいチャート。そういえばVTIの記事に米国が成長する理由は別で書きますって言って書いてない。
Apple(AAPL)
巨匠その二。「iBookstore」の展開。アップルストアで電子書籍産業の基盤が既にあるというところが強い。加えて、スティーブ・ジョブズは教育産業に進出したいと言っていたようです。大学の講義や高い教科書が取り揃えられ、世界中どこでも誰でも学ぶことが出来る基盤「iTunes U」の拡張も期待。ただこの会社の収益は高利益率のiphoneなので、電子書籍銘柄としての爆発力は微妙。
パピレス(3641)
続いて日本。最近各所で絶賛されまくっているせいか、既に高値感の強い大手電子書籍販売サイト。チャートはこちら。仕込みの重要性が理解出来ますね。
「電子書店パピレス」、「Renta!」を展開しています。ブラウザ表示で簡単に読めることと、レンタル形式のため安価なことが特徴です。
イーブックイニシアティブジャパン(3658)
「eBookJapan」はコミックのダウンロード数世界最大の名に恥じない大量ラインナップが特徴(逆に文芸は弱い)。出版社とのコラボ、全書無料の立ち読みサービスなど、独自性を持っているところが強いです。参入も15年前と老舗です。
Kobo(楽天)や大日本印刷(honto)は外しました。多角化しすぎていたり、本業が別にあったりするからです。
取次
取次は賛否両論あるみたいです。
同じ本をそれぞれのストアで電子化するのは大変効率が悪いため、少なくともしばらくの間、取次事業は健在です。ちなみに上で挙げた「Renta!」「eBookJapan」は取次を介していないらしいですが、他は大半が取次会社を使っています。なので、どこからダウンロードしても実は同じデータなんだそうです。
……それはそうと、エ○本の白ベタとかここがやってるんですねw
メディアドゥ(3678)
実は安値で拾えたのですが、先日一部上場のニュースから高騰したため売ってしまいました。大変お世話になりました。詳しくは後日書きたいと思っていますが、業績も良く、安定した銘柄だと思っています。取次大手として知られますが、ITインフラ(電子図書館システム)も強いです。
デジタル化対応
ビューワーソフト、電子書籍変換あるいはITインフラも。数が多いので簡単な紹介に留めておきます。
スターティア(3393)
電子書籍作成ソフトActiBook(アクティブック)や、デジタルカタログサイト構築など。HPの製品情報を見ていたらAR(拡張現実)もやっているんですね。
フォーサイド(2330)
コンテンツ配信事業を軸に多角化。IT領域、決済システムといった様々な事業を手がけています。
ACCESS(4813)
EPUB3対応の電子書籍ソリューション「PUBLUS®」、デジタル版教科書・教材用ソリューション「Lentrance®」
元々携帯事業向けは強かったようですが、スマホ配信が遅れており業績は右肩下がりではあります。
アートスパークホールディングス(3663)
私もお世話になっているセシルスとエイチアイが統合して出来た会社。お絵かきソフトはもちろん、電子書籍閲覧ソフト「BS Reader」も展開中。
インプレス(9479)
出版とITに強い会社背景があり、プリント・オンデマンド流通サービスをamazonと締結しています。
出版社はどうなんでしょう
特に、中心にいる出版社についてですが、彼らの側から見ればビジネスモデルは変化していません。あくまでも良い本を作って売れることで利益を出すモデルで、その売り先が広がってきているというだけです。
電子媒体での接触機会がますます増えている昨今、電子書籍化に対応しなければ顧客を取りこぼします。かといって、対応しただけで爆発的に利益を生む結果にはならないでしょう。電子書籍で日の目を見るということは、大前提としてその本が良質であって、接触機会の増加によって正しいターゲットに認知されたということなのです。
個人作家、漫画家が増える
Web書籍というジャンルも電子書籍の恩恵を受けやすいジャンルだと思っています。無料の投稿小説で見込み客を集めて、評価してもらう。人気が出たら書籍化して、見込み客が買ってくれる。良いビジネスだと思いますよ。今はネットで評判がすぐ分かる時代なので、高評価がついた本はたくさんの人が買ってくれる見通しが立ちます。作者を青田買いする出版社も増えているので、注目してみてもいいかもです。
アルファポリス(9467)
最大手の「小説家になろう」を運営する株式会社ヒナプロジェクトは上場していないのですが、こちらは上場しています。
最近上場した会社が多くてチャートの長さマチマチとなってしまい申し訳ないのですが、こんな感じです。
2,000割ったら買おうと待ってたんですよ。来てくれませんでしたけどね。
ディー・エヌ・エー(2432)
すっかり巨大企業と化してしまいましたが、「マンガボックス インディーズ」を運営しています。
他にも「少年ジャンプルーキー」「ニコニコ漫画」などありますが、Web漫画の投稿サイトはほとんどが大手出版社あるいは小さな出版社で、銘柄としては取り上げられなさそうです。
その他……
取り上げきれないものは、こちらのサイト様がリストを作ってくれているので、調べてみてください。
電子書籍が流行ると喜ぶ業界、企業
媒体(スマホ、タブレット)
と書きましたが、因果関係が逆ですね。正しくはスマホ、タブレット普及で電子書籍業界が喜んでいるという感じです。
電子広告
これまでは本の終わりにちょろっと載せるだけだった広告も様変わりするかもしれません。といっても、最近広告自体が嫌がられてアドブロックされるので、コンテンツ自体を広告化するほうが流行るのかもしれませんね。
※例えば小説で登場人物がみんな日本酒を飲んでいたら、読んだ翌日はついつい日本酒を買いに行ってしまうあれです。
キャラクター産業
現状、電子書籍の売上の8割はコミックが占めていますので、メディアミックス展開、グッズ商売が期待出来ます。海を超えて愛されるキャラクターが生まれれば、一大ビジネスになることでしょう。
今でこそ当たり前の話ですが、このビジネスモデルを開発したのはスターウォーズの監督ジョージルーカスです。通常、映画というものは上映して収益を得るだけのビジネスだったのですが、彼はグッズ商売によって収益発生源を映画上映後に移すことに成功しました。二時間の映画そのものがコマーシャルなんですね。実際、スターウォーズのグッズ収入は映画収入の五倍以上と言われています。
その他
思いつきで書いています。
LINE上場
16年度のIPOテーマにもなりそうなLINEの上場。関連株が高騰することが予想されますが、Web漫画関連で電子書籍銘柄も高騰しそうな感じです。噂が本格化する前にピックアップしておく必要がありそうですね。
医療の電子カルテ
院内の医師同士での情報共有が容易になるなど、メリットの多い電子カルテ。命の安全に関わる事業のため、今後確実に増えていくでしょう。ただでさえ医者は不足していますしね。
大きな問題は病院のセキュリティ不足で、以下の最近の記事ではハッカーが病院の電子カルテ情報を盗んで身代金を要求したという事件が増えていると書いています。
とすると、セキュリティ関連銘柄も……キリがないですね。
自炊派に対するビジネス
紙の本ヘビーユーザーは中々捨てられないのです。かつての私も本棚が全て埋まってしまい、床の上にまで山積みしていました。そんな問題を解決する方法が「自炊」と呼ばれる、紙の本を自分でPDF化して電子書籍にしてしまう方法です。
紙の本を断裁してスキャンしてデータを一つにまとめて……というのは大変面倒臭く(本の数が多いならなおさら)、代行サービスが既に広がっています。その他になにかビジネスはないものか。
ウェブマネー、決済通貨
読みたいときにさっと買って読める(自宅でも通勤電車の中でも!)というのが電子書籍のメリットなので、決済インフラの整備は必須です。
今やクレジット一枚登録しておけばワンタッチでさくっと決済出来るようになっていますが、外国と比べると日本はまだまだ現金が主流の国。成長余地はあるのではと思っています。ビットコインやフィンテックなんてのも流行っていますしね。
これ以上楽に決済出来るようにしてしまうと課金ゲーで破産する人が増えそうですがね。
電子書籍が流行ると泣く業界、企業
現状は紙の本とパイの奪い合いをしているわけですから、流行ると困る企業もたくさんあるわけです。
製紙、製本業界、流通、書店
紙の本を売り出す主要プレイヤーはどこも厳しい。だって彼らを外すことでコストダウン出来ることが電子書籍のメリットの一つなのですから。
それでも彼らのノウハウは全くの新規参入とは比較にならないほど豊富なはずなので、事業をどう変革していくかにかかっています。実際に凸版印刷は「BOOK LIVE!」、角川グループは「BOOK WALKER」とか展開していますしね。
古本、レンタル本
前編でちょっと考察しましたが、中古レンタルは影響大きいです。動画コンテンツもAmazonプライムやNetflixが配信サービスで対応してしまっている状況なので、同じ道を歩むことになるのではと思います。
しかもAmazonが古本の電子書籍サービスをはじめるかもというね。電子書籍化で低価格になっていて、ここからさらに下げるのであれば古本なんていらんのでは、という印象です。
著者側から見ても、古本はいくら売れても直接収入にはなりませんので(読者が増えてバズりやすくなるメリットはあるけど)……厳しい見通しです。
最後に、自分が電子書籍を体験して
電子書籍について長く考察して来ましたが、私は長らく紙の本を愛好していたので、紙の魅力も分かります。小説はやっぱり紙でページをめくる楽しみがありますよね。しかしながら、今は電子書籍なしでは考えられなくなってしまいました。
私は毎日の電車通勤時間にお世話になっています。スマホ(Zenfone)なのでちょっと画面は小さいですが、片手でさくっと読めるので十分です。株情報誌やこのブログのネタになりそうな本、マンガやラノベなどちょくちょく買い置きしており、空き時間にいい勉強や息抜きができていると感じています。
だから絶対もっと流行ると思うのです。こんなに素晴らしいのですから。そうすれば株価だって自ずと上がっていくことでしょう。
今回はここまでです。