前回の続きです。
たまには個別株ごとの紹介じゃなくて、ランキング形式の紹介でも。
近年の米国高配当株は上昇相場の勢いでナスダックのITセクターに、金利の上昇で債券や安全資産に資金を持っていかれて今ひとつ。
とはいえ景気低迷局面で安定したリターンを出せる点は相変わらず魅力です。
過去のデータ上、利回りが高いほど株価リターンが高くなります。高配当はスマートベータとしても優秀です。
とはいえ、闇雲に高利回り株を買うのではなく、コロナ影響で一時的に下がっている株が見極められれば、それに越したことはありません。
S&P500構成銘柄から、高利回りかつビジネスモデル優良企業を抜粋してみましょう。
動画にて、さらに詳しく、分かりやすく解説したので是非見てもらえればと思います!
目次(クリックで飛びます)
アルトリア・グループ(MO):8.55%
シーゲル銘柄でおなじみのたばこ株、アルトリア・グループ。
フィリップ・モリスが過去60年で最大のリターンを叩き出したことから、配当再投資の優位性が世に広まりました。
そのフィリップ・モリスと分社化して米国市場のみ販売している会社がアルトリア・グループで、ブランドとしては同じです。
米国市場においては50%近いシェアを有し(2位レイノルズと寡占市場)、40%を超える利益率を維持します。
米国たばこ市場は1963年をピークに縮退しているため、売上は横ばいです。
次の目玉としている加熱式たばこは19年にやっと米国での販売許可が出たばかりで、電子たばこはベンチャーのJUULに市場を奪われてしまっています。
フィリップ・モリスとの経営再統合の話もあり、株価はあまり上がっていません。
チャートでも思いっきり下落トレンドですが、利回り8%といっても潰れるような事業ではないので、良い水準に思えます。
ウェルズ・ファーゴ(WFC):7.61%
ウェルズ・ファーゴはバフェット銘柄4位として有名です。
銀行株なのでリーマンショックで大幅に下落していますが、他行よりバランスシートはずっと安定的。
西部地域に集中して信用を培ってきたドミナント戦略で、地道なリテールビジネスを開拓してきた経営方針が、ウェルズ・ファーゴの最大の強みです。
それだけに、16年に発覚した不正営業問題は信用を揺るがす大問題でした。2月には制裁で30億ドルの支払い命令が出ています。
またゼロ金利が2022年まで据え置き発表されたことも今後影響するでしょう。金利差が小さくなるので、利幅も取れなくなります。
こういう状況ですが、利回り7.6%で株価もリーマンショック後の水準と安値圏です。
エクソン・モービル(XOM):7.54%
この前分析記事の最新化と、解説動画を公開しました。
コロナ影響で移動の制限が発生したことで、需要が消失。20年4月には原油先物がマイナスになるという史上初の異常事態に立ち会いました。
そのためエネルギー株は全般的に不調の極みです。エクソン・モービルは32年ぶりの4半期赤字を発表し、ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSB)は80年ぶりの減配を発表しました。
エネルギー株は原油価格次第なところがあり、エクソン・モービルはリーマンショック時に売上が半分になっています(-2000億ドル)。
そしてシェールガスの登場と代替エネルギーの進歩で、原油の上値は年々抑えられています。
相対的に原油の地位が下がっているとはいえ、原油需要自体は2030年以降も伸び続けていく予想で、エクソン・モービルが投資強化するシェールは米国の国策事業と化しています。
この水準で拾えるタイミングは中々ないかもしれません。
AT&T(T):6.89%
30ドルから40ドルのレンジを一生ウロウロしている高配当銘柄。
通信事業者としてベライゾンとシェアを二分しています。日本の3キャリアと同じく、社会インフラとして超安定事業ですね。
スマホの飽和によって業界成長は頭打ちのため、コンテンツ産業への進出を狙ってディレクTVやタイム・ワーナーといった大型買収を続けています。
通信セクターの過去リターンは市場平均を下回りますが、ディフェンシブな高利回りセクターとして保有は全然あり。
フィリップ・モリス・インターナショナル(PM):6.57%
アルトリア・グループの焼き直しみたいなコメントになりますが、利益率40%の会社で利回り6.5%は安心感強いです。
たばこ市場は、ファイブフォース分析の全ファクターに○がつく極めて優秀な市場です。
- ブランド価値が確立
- ニコチン自体の依存性=リピーター
- マーケティングNG=他社参入の妨害
- 技術革新余地が少ない=維持投資が少なくて済む(ジュールが出てきたけど)
- これらの結果、40%超の圧倒的な営業利益率
この市場でトップブランド:マルボロを引っさげて世界展開する会社が弱い訳はない。
iQos動向や世の中の健康志向、またたばこがコロナリスク(肺炎)を増大させるなど不確定要素は多いですが、差し引いてもペイできる事業だと思っています。
クラフト・ハインツ(KHC):5.13%
バフェット銘柄&シーゲル銘柄という立ち位置なんですが、株価はずっと低調です。
食品事業を営んでおり、クラフトのチーズドレッシングとハインツのトマトケチャップが有名です。クラフトフーズのグローバル部門はモンデリーズに分割されているので、売上の7割は北米市場になります。
その北米市場がずっと不調で、17年から実にシェア2/3に落ち込んでいます。配当金も削減、ブランド減損で150億ドル減損計上もしました。
と書いていくとかなりよろしくない状態ですが、今は選択と集中の最中なわけで、経営統合とポートフォリオの強化が実を結ぶのはこの3年くらいになると思います。
バフェットが保有する限り底堅いのと、安値で拾う安全マージンを考えるとウォッチリストには入れてもよいかと。
アッヴィ(ABBV):5.12%
ファイザー(PFE)は4.56%
ギリアド・サイエンシズ(GILD)やモデルナ(MRNA)など新型コロナ関連株と比べると勢いはありませんが、それだけに高利回り株として上位にランクインしています。
アッヴィはもともとアボット・ラボラトリーズ(ABT)から13年に分社化したのですが、そのABTは何気にシーゲル銘柄2位だったりします。フィリップ・モリスは有名でも、こちらは知らない人も多いのでは。
それまで最大の稼ぎ頭だった抗リウマチ薬のヒュミラが特許切れになったのですが、バイオシミラーはかんたんに作れないので今も売上高は落ちていません。
※と言いつつ、徐々にバイオシミラーに侵食されていて、欧州売上は1割程度下がっています。
というか、ヒュミラは私が確認する限り、2012年以降の統計でずっと医薬品売上高世界一を取り続けています。
コロナでも株価落ちてないんですが、利回りが基準の5%超えていて、かつ圧倒的世界首位製品をコアに持っている点で評価出来ると思います。
サザン(SO):4.56%
デューク・エナジー(DUK)は4.34%
電力系事業は安定ビジネスで、高配当高利回り株が多くなります。サザンも連続増配は20年ありませんが、一方で70年減配はしていません。
電力各社の違いは主力エリアがどこかということで、サザンはジョージア、フロリダなど4州で展開しています。規模としては全米2位(900万世帯)なので、かなり大きめ。
でもちょっと利回り控えめかな。株価がかなり堅調で安定していますよね。
個別株に投資するからには、利回りは5%を超えていてほしいと思っています。でないと高配当ETF(VYM/HDV/SPYD)より選ぶ理由が少なくなるからです。
その他、見ていて気になった銘柄
おすすめ枠ではなく、おもしろ枠。今こんな利回りあるのか~という株を紹介。
デルタ航空(DAL):6.98%
バフェット株ということで人気の同社でしたが、当のバフェットが全部売却しちゃったので株価大暴落。ちなみにサウスウエスト航空も売却しました。
航空業はコロナで一番被害大きい業界ですので、この利回りも風前の灯火か……。
ボーイング(BA):5.33%
小型機「737MAX」の停止に加えタイミング悪くコロナが重なり、資金繰り悪化。22年ぶりの最終赤字と債務超過になりました。
株価も1か月で半分以下になる事態で、利回りが5%を超えています。
米国国防の観点からも潰せない企業筆頭ですが、行き過ぎた株主還元の批判も大きく、利回りにつられても維持されるかはかなり怪しいところ。
フォード・モーター(F):11.17%
ゼネラル・モーターズ(GM)も上位常連。今こんなところにあるのか、とただそれだけです。
ということで、優良高利回り株の紹介でした。
今はオールドエコノミーが多くなってしまいがちですが、成熟市場はインカムで還元するという米国の株主還元意欲の高さが伺えます。
日本の上位高利回り銘柄一覧も今度やりましょう。
関連記事です。
今回、バフェット銘柄&シーゲル銘柄が多かったですね。それぞれの代表的な本の解説記事はこちら。
個別株もたくさん紹介しました。米国株の記事一覧はこちらでまとめています。今後も定期的に更新していくので、よかったら参考にしてください。
動画にて、さらに詳しく、分かりやすく解説したので是非見てもらえればと思います!
ではでは。