最近またエネルギー関連株が下落傾向にあります。
主な理由としてはWTI原油先物価格の下落です。
石油メジャーは川上比率が高いため、原油価格が下落するとどうしても収益が悪化し、株価も下がります。
背景には主要産油国(主にサウジアラビア)の原油生産量増加があります。供給が増えると需給バランスから価格が落ちるということですね。
余計な政治的影響さえなければ、原油価格はほぼ需要供給モデルの理論に従って値付けされます。
そしてチャートを見れば分かりますが、WTIの値動きは暴れ馬です。
10月初旬高値から1か月で30%以上の下落ですから、日経平均で言えば年末に15,000円くらいまで落ちているような衝撃です。
よく原油の相場価格を知る指標として使われるWTI原油先物ですが、供給元はほぼテキサス州とニューメキシコ州で産出される原油になります。
つまりWTI原油先物がすべての原油市場動向を反映しているわけではありませんが、それでも多くの人が参考にしているから指標として成り立っているということですね。
チャートの移動平均線で株価が反発するのと同じような理屈です。
目次(クリックで飛びます)
エネルギーセクターへの投資判断
エネルギーセクターは自身の利益成長が低いながらも高い投資リターンを叩き出してきた分野です。
エネルギーセクターは以下2点からリスクを過大視されやすいためですね。
- 政治的影響の大きさ
- 代替エネルギーの台頭
結果として企業価値も過小評価され、実収益とのギャップが高リターンにつながった、と解釈するのが妥当でしょう。
石油ビジネスの3つの勢力
- OPEC:4割くらい
- 石油メジャー:1割くらい
- シェールガス:不明
石油は戦争を引き起こしてきた元凶なので、各国の政治的影響を受けやすいです。
世界の石油の4割を生み出すOPEC構成国は政情不安の中東なので、しばしば実体経済を無視して問題が発生します。
最近の中東問題
もともと中東問題と言えば、パレスチナ問題とエネルギー(核兵器と石油)でした。
後者について根幹はずっと変わらず、そもそも中東情勢とはサウジアラビアとイランの覇権争いです。
元々両国はイスラームにおける多数派であるスンニ派と、少数派であるシーア派という軸において対立関係にありました。
スンニ派を代表するのがサウジアラビア、シーア派を代表するのがイランですね。サウジの背後に米国、イランの背後にロシアがいます。シリア内戦の対立が顕著です。
この根幹に最近の動向としては以下の3点が重要です。IS国の建国も世界的な問題ですが、掃討作戦が進んでおり、ここからは除きます。
- アラブの春:格差拡大や政権の腐敗を打倒する動きが中東各国で広まり、チュニジア、エジプト、リビアで現行体制が崩壊。
- シリア内戦の継続(2011年~):アラブの春からはじまった内戦で、実態はサウジとイランの代理戦争。
- カタールがサウジ派閥から断交(2017年):カタールはスンニ派ですがイランとも友好的な立場にありましたが、それを問題視したサウジ含む周辺国によって断交。カタールは独裁者エルドアン大統領のトルコと急接近。カタールは世界最大の液化天然ガス(LNG)生産国。
このあたりは複雑なので、文章だと非常にまとめにくいですね……^^;
価格操作について知っておくと良いこと
石油メジャーの影響力は小さい
我々が投資出来るのは主に石油メジャーですが、かつてと違って原油価格に対する影響力はありません。
保有油田における埋蔵量は、OPEC70%:石油メジャー3%と更に圧倒的な差があるため、価格決定権はOPECにあることを覚えておきましょう。
14年にもOPEC(主にサウジアラビア)の意図的な需給操作によって、原油価格は1年で100ドル→40ドルに暴落しました。
例えばエクソン・モービルは川下産業を3割近く保有し、原油価格の下落に対するリスクヘッジを取っています。
OPECにとっての脅威
OPECにとっての死活問題はシェールガスと代替エネルギーです。
産油国からすれば原油価格が高いほうが当然高収益ですが、あえて供給量を上げて価格を下げさせる。そうすることで競合のビジネスを潰し、スイッチングコストを上げて、将来まで石油依存を続けさせるということですね。
実際、14年の原油暴落は多くのシェールガス企業を廃業に追いやりました。シェールガスのほうが原油より損益分岐点が高いためです。
トランプによる原油価格低減圧力
トランプ大統領は自国産業を潤滑にするため、原油価格が低いほうが良いと考えています。任期中は上値が抑えられる展開が続くかもしれません。
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日本で石油関連株はメジャーではありませんが、海外株では優良銘柄がいくつもあります。詳しく書いたのでどうぞ。