今日のお題はタイトルの通り、東証一部昇格期待がある銘柄を先回りして投資するための予備知識整理です。
v-com2さんがこの手法で有名ですが、私の理想的なスタンスと近くて、とても参考になります。本を出版されていて、これがまた様々な事例を元にした解説が非常に分かりやすいのでオススメです。
株というのは業績が良ければ上がるというわけではありません。あくまでも需給変動ですので、何らかの理由で人気化する=カタリストが必要になってきます。一部昇格はその一つです。
とはいえ、昇格期待だけだとカタリストとして弱い上にハズレを掴みやすいです。大抵は売上、利益が順調に伸びて人気も高まってきている株なので、安い内に仕込むのは簡単ではありません。
あくまでもイベント投資法の一つ、買い材料の一つとして私は活用しています。
直近昇格見込みのものを買うというよりも、持っている(狙っている)銘柄がたまたま昇格候補銘柄でもあるというのが理想です。
東証一部に昇格した時のチャート
日本取引所グループには市場変更銘柄として、東証一部昇格した銘柄が年ごとに一覧化されています。
参考市場変更銘柄一覧
東証一部に昇格が決定すると、株価が跳ね上がります。適当に直近のやつでいくつか見てみましょう。
メディアスホールディングス(17/2/28昇格発表、3/21日昇格)
東邦アセチレン(17/5/25昇格発表、6/1日昇格)
持ってて一部昇格で売ったのだとメディアドゥとか(16/2/16昇格発表、2/23日昇格)。
そのまま上がりっぱなしケースが多いですが、今の好市況を反映しているだけの可能性もありますので、第三の因子には注意しましょう。昇格して上がったあとリバウンドすることも多く、昇格タイミングというのは利確目安のひとつでもあります。
ちなみに、企業側で事前に一部昇格をコミットするのは全体で3割以下程度しかないそうです。ということで、昇格に向けたサインを目ざとく見つけることが必要になります。
企業側から見た一部昇格のメリット
一部昇格すれば資金調達が容易になります。より多くの投資家から資金を集めることが出来ますし、各種指標に採用されてインデックスファンドが株を買うので流動性が安定します。また、信用も上がって銀行借り入れ金利も下がります。
デメリットは特にないと思います。上場までの審査が厳しい(費用がかかる)くらいでしょうか。
東証一部への昇格条件
日本取引所グループ(東証)のHPに要件が記載されているので確認しましょう。
適格要件という定性的な要件もあります。
では、この中で重要なものを見ていきましょう。
株主数
株主数2,200人という制限が最も重要です。なぜなら達成するのが難しいから。
株主数というのは誰でも調べることが出来ます。有価証券報告書には必ず記載がありますし、網羅的に調べるなら四季報が便利です。
四季報CD-ROM版であれば株主数でスクリーニングをかけることも出来ます。
3パターン
株主を増やす方法としてどういったものが考えられるでしょうか。
1つは優待や配当の新設になります。機関投資家は優待なんて不要ですので、個人投資家向けの株主還元になります。100株持っていることを条件として優待を出すようにしたら、色んな個人投資家が買ってくれて、株主数が増えるはずです。
というか、魅力的な優待はそれだけで株価を釣り上げます。コロワイドみたいに高額優待で株価を維持する企業もありますしね。
優待そのもののメリットについてはまた別で見たいと思いますが、もし2000人くらいで優待をスタートしていたらチャンスかと思います。
2つめ株式分割です。浮動株を増やす意味もありますが、そもそも株式分割は株価を下げて買いやすくするために行うものです。
日本の株式市場は100株や1000株といった最低単元が設定されているため、最低でも数十万のまとまった資金が必要というケースが多いです。例としてはあれですが、任天堂へ投資するならミニ株を除くと360万円用意しないとならず、ハードルが高くなります。これが10万円以下であれば敷居が低いので、多くの投資家に買ってもらえるというわけです。
3つめが立会外分売などの株の売り出しです。こちらも浮動株を増やすことで個人投資家の保有割合を広げることが出来ます。
もしこれらの施策を取らないとなると、中々難しいです。地道に業績を上げるのは時間がかかりすぎますし、ビッグニュースではイナゴ投資家が流入するだけで定着せずすぐに引けてしまいます。
ウォッチリストに入れてニュースを定期的にチェックする、決算発表はしっかり見ることが大切ですね。
時価総額
一部への昇格条件として、時価総額40億円以上が必要です。
時価総額=株価×株式数
ですので、時価総額を上げるためには2つのパラメータを上げるための施策になります。株価は操作出来ませんが、株式数についてはやっぱり優待や株式分割ですね。
あと株式数を増やす方法としては増資があります。しかし、これは一株当たり利益(EPS)が希薄化されるため、既存株主に嫌がられる手段です。そして多くの場合で株価が下がります(増資で集めた資金を上手く使えばもちろんリバウンドしますが、発表段階でその見極めが必要になります)。
東証二部から探す
一部上場の王道ルートは、(JASDAQ→)東証ニ部→東証一部となります。まれに名証から入ってきたり、IPOから東証二部に来る飛び級がいますが。
マザーズは直接一部に向かいますので、二部を経由しての昇格は期待薄です。本ではマザーズ株は推奨されていませんでしたが、テーマ株が多く眠っているので昇格期待投資とは別でも利用したいものです。
ちなみに米国株の場合
一応二匹目のドジョウを狙って(笑)調べたので、載せておきましょう。結論を言うと投資出来なさそうです。
米国株についてはニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック証券取引所(NASDAQ)の2強ですね。あとはETFに強いNYSE Arca(NYSE アーカ取引所)くらいまで押さえれば大丈夫。
そして、NYSEとNASDAQの間に上下関係はなく、IPO時にどちらへ上場するか選択するものです。それぞれ以下のように特徴があります。
- NYSEはビッグボードと呼ばれる、世界最大の取引所です。歴史が古く、長く続く大企業3000社弱が上場しています(うち、海外企業は500社くらい)。NYSE上場審査は世界一厳しいと言われ、ここに上場していることは大きなステータスになります。日本企業ではトヨタやソニーが上場しています。また、値付けはオークション方式で市場参加者の需給によって価格が変動します。
- NASDAQは時価総額世界二位の取引所。1971年に電子株式市場として取引所が開設されたため、比較的新しい企業=ITやバイオ系が多く上場しています。アップル、グーグル、マイクロソフトといった新興IT企業の他、日本の任天堂も上場しています。また、値付けはマーケットメイク方式で、複数の証券会社によって売値買値が提示され、その中で選択出来るものです。
ただ、最近は両社で奪い合いが活発化しており、上場後に取引所を移る場合があります。11年のデータですが、NYSE→NASDAQが時価総額800億ドル、逆が300億ドル動いたらしいです(13年にNASDAQはシステムトラブルを起こしているので現在はどうか分かりません)。
昇格投資というお題目に沿うならNASDAQっぽいですね。NASDAQにはGS/GM/CMの3種類の市場があります。左に行くほど優良で大きな会社になります。
ただ、日本の証券口座から投資出来る銘柄はNYSE/NASDAQの主要2500銘柄程度に絞られていて、CM市場に投資するのはたぶん無理です。
世界の取引所は統廃合フェーズにあり、将来的には4~5取引所に集約されるのではとも言われています(独禁法でどうなるか分かりませんが)。日本でも東証と大証が合併しました。
株式を上場するというのは資金調達が目的ですから、市場集約して流通額を増やすことで取引所の人気が上がり、それがより多くの有望企業を引っ張ってくることに繋がります。取引所も私企業ですので、利益が出せない事業は出来ません。
どこかの金融機関に所属するアナリストが書いた本よりも、結果を出している個人投資家の本のほうが実践する上で役立つ情報は多いと思います。
私もいつか出版したいと思っていますし、もっと多くの個人投資家の本を読みたいです!