【仮想通貨】コインチェックを買収したマネックスグループ(MONEX GROUP:8698)をまとめました!

テーマ株

マネックスグループが出来高トップにつけました。中々見ない光景です。

(出典:Yahoo!ファイナンス)

理由はもちろん、国内仮想通貨取引所の最大手であるコインチェックを買収したためです。

参考コインチェック買収完了 完全子会社化 マネックスグループ

さて、この買収ですが私は他人事じゃありません。当ブログにお越しいただく読者のみなさんにとってもそうでしょう。

マネックス証券は米国株の優良証券の一つでして、私も使っています。コインチェックと共倒れになっては困るのです。

今回はマネックスグループの事業を見ながら、このへん(↓)について考えていきたいと思います。

  • 同グループの投資対象としての評価
  • 証券会社としての今後の安全性

金融業界にはフィンテックの波が押し寄せてきていて、ビジネスとしても面白い感じになってきています。

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マネックスグループ(8698)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

マネックスグループは日本有数のオンライン証券会社ですね。ほぼ専業です。

日本のオンライン証券業務を担うマネックス証券と、欧米のオンライン証券業務を担うTradeStationに分かれています。

(出典:マネックスグループ)

直近決算を見ると日本:米国は2:1くらいの割合ですね。

(出典:マネックスグループ)

日本の174万口座に対して海外は9万口座なのに売上変わらないんですね。米国ではTradeStationというシステム開発をしていますので、費用構造は少し異なっています。

(出典:マネックスグループ)

マネックスグループのビジネス状況

マネックス証券のビジネス状況は割と良くないんですよ。大手ネット証券の中でちょっと停滞気味で、17年度は赤字転落してます。

以下は主要ネット証券の口座開設数推移のグラフです。マネックス証券はオンライン証券でシェア3位となっています。

(出典:SBI証券)

ただ、1、2位と溝を開けられています。

黎明期から順調にユーザー数を伸ばしたのはSBI証券と楽天証券で、マネックス証券は少し後を追っている状況。

 

決算を見る限り、マネックス証券の利益は「手数料収入」と「金融収入」に頼った構造です。

(出典:マネックスグループ)

  • 手数料収入:言うまでもなく個人投資家の株式等売買ごとにかかる手数料ですね。
  • 金融収入:有価証券の売却益や貸株等の利ざやによる収益を指しています。

この比率は米国事業でもさほど変わりません。

(出典:マネックスグループ)

ちなみに主要オンライン証券はどこも手数料収入が4~5割を占めます。

競合

ライバルのSBIグループは証券、FX、銀行などあらゆる金融事業を扱い、楽天グループは証券、オンラインショップ、モバイル、クレカなど多種多様な事業を展開しています。

対してマネックスグループはほぼ証券ビジネス一本です。この辺りも反映して、会社規模は大きく差が開いています。

17年度のデータですが、主要オンライン証券の業績比較がありました。

(出典:シェアドリサーチ)

利益率は他社と比べて非常に低いですね……。というか販売管理費用が高すぎなのです。

(出典:シェアドリサーチ)

マネックス証券は手数料がやや高い代わりに、取り扱っている銘柄数の拡大や決済方法の豊富さで勝負してきた会社です。

良く言えばコスト競争をせずにやって来たのですが、証券会社にとっての金の卵であるアクティブデイトレーダーを囲えなかったという意味で出遅れたとも言えます。

(売買回数が多いトレーダーが多いほど、証券会社からすれば収益機会が増えますね)

 

まあ値下げが出来なかったのはマネックスグループの高コスト体質にも問題があるとは思いますが……。

全体的に取引コスト値下げ競争が起こっている現状、競争に勝つビジョンはそう簡単に描けるものではなさそうです。

市場

手数料ビジネスの限界

オンライン証券の黎明期である2002年頃、手数料は0.2%前後だったのです。

(出典:シェアドリサーチ)

それが今や0.095%で高すぎと言われる始末ですから、いかに手数料が下がったか分かると思います。

いかに出来高が増えたと言っても、ほとんどゼロまで手数料を削ってしまっては厳しい。

証券会社がメインに据えているビジネスモデルはいよいよ変革の時期を迎えています。いやあ、手数料以外に差別化要素が少なすぎるのも問題ですね。

私達個人投資家は低い手数料の恩恵を受ける立場ですが、かといって続けられなくなっても困ります。

 

ちなみにインデックスファンドにおいても手数料競争が激化していて、0%に近づく時代です。

インデックスファンド(ETF)は経費率0%まで値下げ出来るのか

将来的には各セクター2~3のファンドのみ生き残り、それ以外は繰上償還されるのではないかと危惧しています。

フィンテックというディスラプター

金融市場は長い規制時代が終わり、激動の時代を迎えています。

他のオールドエコノミーと同じく、IT化の波が押し寄せ市場構造が破壊されようとしているからです。

つまりフィンテック(Fintech)。

フィンテック、ビットコインのまとめ(フィンテック編)
フィンテック(ブロックチェーン、ビットコイン)関連銘柄まとめ 日本株12選+アルファ

 

結局内部の過当競争と外部の新規参入によって市場構造が破壊されようとしており、次のビジネスを模索するしかない状況と言えるでしょう。

各社が目を付けたのは投機で盛り上がる仮想通貨市場でした。

和波的にはビットコインというよりもブロックチェーン技術の応用に期待していますが、ブロックチェーンの応用範囲も金融全域にあると思います。

3分で分かる、ブロックチェーンの応用範囲と、変化する社会

リスク要素≒コインチェック買収

さて、徐々に状況が整理出来てきました。

IRで明示しているように、現業の証券ビジネス以外に軸を作りたいということで意図は明確なのです。

(出典:マネックスグループ)

マネックスグループとしては、新しい金融モデルの中心となるブロックチェーン技術になんとか楔を打ち込みたいと思っているようです。

その中で白羽の矢が立ったのが、不祥事を起こして36億円と”お買い得”なコインチェックでした。

マネックスグループにとってのメリット

まず即物的な利益ですね。

仮想通貨の取引所は法外な手数料(取引高の数%から10%)をふっかけていたので、高収益体質でした。

コインチェックもその例に漏れず、営業利益率は70%近いのではとのこと。

コインチェックの17年12月期の取引高は3兆円程度だったらしく、そのうち数%がそのままコインチェックのポケットに入ったとすれば、年間2000億円を超えた可能性もあるでしょう。ユニコーンですね。

あんな小さな会社でNEMの466億円を補償しちゃうんだから、推して知るべし。

マネックスの発表資料によると、コインチェックの17年3月期の実質的な売上高は9億8000万円。これに対して営業利益は7億1900万円。営業利益率は実に73%に達する。空前の仮想通貨ブームとなった18年3月期の利益は、1000億円程度にまで膨らんだとの見方がある。

参考マネックス、コインチェック買収で抱え込んだ「爆弾」

マネックスグループの収益が思わしくないのは先述の通りですので、高収益モデルを手に入れられる意味は大きいです。

もっとも、これは仮想通貨がブームかつ大手が参入を躊躇っていた、ほんの少し前までの話。

出来高が細った上に大手が続々と参入(しかもコインチェックはみなし業者)した今後、収益率は確実に落ちます。

 

2つ目のメリットはブランド価値。

コインチェックは全盛期で170万口座あったそうです。CMをたくさん打って知名度も抜群でした。

マネックスグループとしても社名はそのまま残す方針とのことで、問題を起こした今もブランド価値を高く評価しているようです。

 

3つ目のメリットは人材。

仮想通貨やブロックチェーン技術に長けたシステム屋を抱えるコインチェックを本体ごと買ってしまおうという意図です。

フィンテックへ本格進出する上で、手っ取り早くお金で時間を買ったというわけですわ。

デメリット

リスクははっきりしていますね。

メリットの裏返しとして、仮想通貨バブルが収束しているためこれまでのような収益力は見込めないという点。

また、NEM流出騒動に関して、コインチェックは今後さらに200億円規模の訴訟騒動が生じる可能性がある点。

セキュリティを強化するために数十億円規模の投資が必要となる点。

 

マネックスグループの松本社長は生粋のトレーダーですから、これらのリスク・リターンを勘定して、今が割安と捉えたから買収を決断したのでしょう。

コインチェック側の思惑

コインチェックは仮想通貨NEMの流出をやらかして、仮想通貨バブルを終わらせた会社です。

まあセキュリティ問題はいずれ発生するのが見えていた問題でしたが。

ともあれ、今のコインチェックは信用力が地に落ちています。みなし業者だし。

稼働口座も全盛期の半分以下になったと言いますし、再起を期すために大手マネックスグループ傘下に入ることは渡りに船だったのではないですかね。

 

ベンチャーは広告宣伝や製品開発に注力する反面、金にならないセキュリティを軽視する傾向が強いです。

逆に信用力が求められる大手企業ではガッチガチにセキュリティを固めるべく投資枠を確保するので、両者が混ざるとちょうどよいバランスになります。

フィンテックの記事でも書きましたが、ユニークなビジネスをもつベンチャーを大手が買収する形で金融のIT化は進みそうです。

フィンテック、ビットコインのまとめ(フィンテック編)

マネックスグループ(8698)の財務分析

PL

(出典:GMOクリック証券)

最新決算で赤字転落と不調ですが、それ以外の年は10%以上を確保してきました。

売上が落ちているのは委託手数料減収が響いているのと、基幹システム移行による費用増加です。

後者は一時的かもしれませんが、前者が継続的な問題であることは見てきた通りですね。

その他のビジネスはまだ収穫期に入っていません。

BS

(出典:GMOクリック証券)

思ったほど負債多くないんですね。金融業は仕組み上自己資本比率が低く出るので安全性を測るのに不向きです。

CF

(出典:GMOクリック証券)

営業キャッシュフローが全く安定しておらず、あまり良くない状態です。営業キャッシュは本業で稼ぐお金のことでしたね。

次の事業軸を作るための投資は、今の本業から生み出されるお金をベースに行えることが理想です。

株主還元指標

直近配当利回り:0.91%

総還元性向100%は頑張っている数字だと思いますが、インカム狙いの水準ではありません。

マネックスグループ(8698)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

マネックスグループ(8698)-Yahoo!ファイナンス

今後の値動き予測

10年チャート

(出典:Yahoo!ファイナンス)

10年間ずっと低迷してきました。リーマンショック前の800円にようやく戻るかというところですが、第一歩となる400円の壁は突破したと見ていいでしょう。

1年チャート

(出典:Yahoo!ファイナンス)

コインチェック買収騒動があってから大きく上振れしています。市場としてはフィンテック市場への進出に好感触で、テーマ株としての魅力も出てきていると思います。

マネックスグループ(8698)の投資戦略

ざっくりまとめ。

  • オンライン証券大手の中でも低収益と高コスト体質に苦しむマネックスグループは、フィンテック市場に活路を見出している。
  • コインチェック買収はその一環と考えられる。
  • コインチェックがあげる利益や人材価値と、訴訟リスクやシステム改修の費用とを勘案して投資するメリットを感じたから買収したはず。
  • 買収のニュースを受けて株価は高騰。出来高はトップに。

回答

見た感じ結構厳しいビジネス状況ですが、松本社長も復帰しましたし、マネックス証券には頑張ってもらいたいんですよねー。

マネックス証券は90日逆指値とかトレーダーのかゆいところに手が届くシステムを作ってくれていますし、TradeStationはインジケータ細かくいじれて使いやすいんですよ。競争という観点でもSBI証券が勝ちすぎてもリスクがありますからね。

和波的には仮想通貨は投機マネーありきのビジネスだと思っているのでそっちは深追いせず、円やドル、株取引のベースにブロックチェーンを使った金融システムを構築してもらいたいです。

 

まあとはいえ、マネックスグループ自体は正直長期保有を推奨出来る銘柄じゃありませんね。

仮想通貨もブロックチェーンも幻滅期ですので、今回のニュースで盛り上がったらしばらく萎むかと。

実利が出るまで待つことはせず、1~3日程度で抜くのがいいかな。そもそも投資してないけど。

会社規模はそれなりに大きいので株価の上昇余地も小さく、取るリスクに割に合わないかなと思いました。


ということで、マネックス証券オススメです。

特に米国株や中国株は他社より圧倒的に多くの株を取り扱っていますので、海外株をやるなら必須と言っていいでしょう。

口座開設がまだというかたは、是非この機会に。


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