アルファ、ベータという指標はご存知でしょうか。
ベータは市場平均に対してリスクリターンを測る指標です。
ベータが大きいほど値動きが大きく、小さいほど値動きが小さい銘柄(ファンド)ということになります。市場平均と同じ値動きであればベータは1になります。
- ベータが1.5:市場平均が1%下落すると銘柄は1.5%下落する【景気敏感株】
- ベータが1.0:市場平均が1%下落すると銘柄も1%下落する【市場平均】
- ベータが0.5:市場平均が1%下落しても銘柄は0.5%しか下落しない【ディフェンシブ銘柄】
- ベータが-1:市場平均が1%下落すると銘柄は1%上昇する【ポートフォリオのリスク分散】
ベータのちゃんとした定義はこんな感じです。
個別証券(あるいはポートフォリオ)の収益が証券市場全体の動きに対してどの程度敏感に反応して変動するかを示す数値で、現代ポートフォリオ理論でよく用いられる。
β=個別証券のリターン÷市場全体のリターン
出典:野村證券 証券用語解説集
アルファというのはこのベータで説明できない超過リターンという意味になります。
具体的には、ベータ値が0.5の銘柄があったとして、市場平均が1%上昇したときに2%上昇したら、1.5%の部分は説明出来ない超過リターンということです。
ファンドやポートフォリオで言えば、銘柄選びや投資タイミングによって超過したリターンの評価ですね。
ま、とりあえず見たいのはベータのほうです。
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個別株のベータを調べてみよう
個別株のベータ値は過去平均で求めており、特に大型株であれば一定水準が決まっています。
いくつか具体的に見てみましょう。過去3年の平均値で算出されています。
- トヨタ自動車:1.19
- NTTドコモ:0.49
- みずほFG:1.51
- 三菱重工業:1.41
- JT:0.73
- マーキュリア:9.71
マイナスのベータ値という銘柄は探しにくいっすね。まあ3年平均で市場の上昇と反対の動きをしているのですから、仕手株がほとんどでしょう。
あるいは米国株の場合、グーグルファイナンスで調べられます。
- AT&T(T):0.49
- フィリップ・モリス(PM):0.93
- ウェルス・ファーゴ(WFC):0.97
- アルファベット(GOOGL):0.96
- アマゾン(AMZN):1.47
- ファイザー(PFE):1.00
- マクドナルド(MCD):0.69
適当に出してみましたが、ちゃんと傾向が出ていますね。グーグルのベータが1を下回っていたのは意外でした。
景気敏感株は1以上、ディフェンシブ銘柄は0.5程度
景気が上向くと業績が良くなり、株価も上昇する銘柄を景気敏感株といいます。
素材系と輸出系製造業に多く、自動車や機械、電気、造船、海運、鉄鋼や非鉄金属といった業界が挙げられます。
景気敏感株は総じてベータ値が高く、多くの場合で1を超えます。
逆に景気が落ち込んでも影響が小さい株をディフェンシブ銘柄といいます。
生活必需品、ヘルスケアセクター、電気ガス通信の社会インフラに多いですね。
ディフェンシブ銘柄は総じてベータ値が低く、基本的に1以下で、0.5前後というケースも結構あります。
小型株&低位株のほうがベータは高くなる
業界上位の安定株に比べて、どうしても小型株、中堅企業のほうが値動きは激しく、ベータも高くなりがちです。
同じく、株価が低いほうがベータ値は高くなりやすいです。
逆説的に、高ベータ銘柄は業績変動も激しいものが多いと言ってもいいかもしれません。
ベータを使った投資戦略
さて、理想を言えば上昇局面ではベータ値の高い銘柄でキャピタルゲイン狙い、下落局面ではノーポジあるいはベータ値の低い銘柄でインカムゲイン狙いになります。
まあそれは難しいので、個別株にあるベータ値ごとに戦略を考えましょう。
- 高ベータ株は売却によるキャピタルゲイン狙いを前提とした投資を行う。
- 低ベータ株はキャピタルゲインを狙わず、長期保有を前提としてインカムゲインで資産形成を行う。
高ベータ、低ベータどちらが優位性があるのか
おそらく長期的には低ベータが優位です。
色々調べたけどちゃんとしたデータはこれくらいしか見つかりませんでした(数値根拠は不明確)。
ただ、感覚的にも低ベータ株のほうが優位であろうことは予想できます。
低ベータ株はインカムゲインを多く吐き出す長期保有向け銘柄が多くなっています。そして長期になればなるほどインカムゲインの重要性は増していきます。
このへんちゃんと説明すると長いので、暇があったら以下の記事を読んで下さい。
ちなみに、低ベータ株にハイレバ突っ込んで大儲けしたのがウォーレン・バフェットだという話もあります。
スマートベータについて
近年スマートベータなるものが人気化しているようです。理由としてはGPIFに採用されたからだとか。
一番有名なスマートベータETFはJPX400です。当ブログの人気記事です。
アクティブとパッシブの中間くらいの立ち位置で、厳密な定義はありません。
ただ、ファンダメンタルズを加味したスマートベータという基準に沿った銘柄で構成される「スマートベータ指数」に連動し、TOPIXを上回る運用成績を上げようというものです。
で、スマートベータが何で決まるのかというと、これは各社バラバラのようです。
売上や利益の大きさを重視、ROE重視、高配当重視などなど、各社のスマートベータ指数はそれぞれ特徴を持っています。
スマートベータの優位性
試算上はTOPIXを上回る運用成績を出しているようです。これはMSCIのスマートベータなんですが、実質的には高配当ETFですね。
長期になるほどインカムゲインが重要性を増していくという話は先ほど述べた通りです。だからこの結果自体は間違いないでしょう。
この他にも、スマートベータは一般的にTOPIXを上回る成績を出していると言います。さっきも出したけど。
ただしこれらがカーブフィッティングされているかどうかはちょっと言い切れません。TOPIXより高い銘柄が集まるようにスマートベータを定義していないか(後付け)という意味です。
20年の長期データとはいえ、過去50年で最も高いリターンを生んだ株が次の50年で同じく最高のリターンを叩き出すとは思えません。
アノマリーは知られたらアノマリーでなくなるというのが相場の本質です。
例えば、4月10日に必ず株価が上がるなら、誰だって4月9日に株を買って4月10日に売り抜けます。そうすると4月10日は売り一色になり、アノマリーは消えてしまいますね。
同様に、スマートベータが知られればスマートベータの優位性は薄れます。バリュー投資とグロース投資の優位性は五分五分で、市況によって優位は変わってきます。
面白い試みだけど
結局のところ、スマートベータはパッシブではないのでアクティブファンドの一種です。
アクティブファンドはコスト分を加味しても2割は市場平均を上回りますが、どのファンドが上回るか分からないので誰も投資を進めません。
同様に、スマートベータも全てが市場平均を上回るとは思いません。つまりどのスマートベータが良いかという選択が発生します。
たぶんですが、難易度が優しい順にこうじゃないかと↓(リターンの大きさという意味ではないですよ)
スマートベータの選択>個別銘柄の選択>>>>勝てるアクティブの選択
スマートベータは選定基準が明確で分かりやすいです。とはいえ慣れた人ならスマートベータ指数上位の株を自分で買えますし、市場平均に近似する成績を求めるなら正直別に市場平均インデックスでも良くね? という感じ。
今のところ中途半端なんだと思います。特にスマートベータは全般的にまだコストが高めなので。
とりあえず、パッシブファンドの代替になりそうなのはJPX400です。「iFree JPX日経400インデックス」は信託報酬も約0.2%と低コストですので、今後も市場平均をアウトパフォームするならTOPIX連動インデックス等との入れ替えも一考の余地があると思います。
そして、当ブログにお越しいただいている皆さんならご存知のように、米国市場に目を向ければスマートベータらしきETFは既にたくさんあります。
高配当ETFと言えばHDVやVYMがありますし、40年以上で比較して配当込み市場平均を上回るリターンを出してきたバークシャー・ハサウェイという会社もありますよね。スマートベータの定義的に前者は含まれると思うんですが、違うのでしょうか。