電力自由化によるビジネスモデルとリスク、競争のポイント

テーマ株

前回の続きです。

電力自由化で得するまとめ(辛口)

次は投資対象として見てみましょう(企画倒れではないですよ!!)

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……ということで、投資家としての選択

新しい施策には新しいビジネスチャンスあり。

残念なことに電力自由化自体で参入する会社には大した魅力がなさそうでしたが、派生事業はどうなのでしょう。国の電力改革を含めて見てみたいと思います。

  • ICTによる新提案(スマートハウス、スマートメーター……電力の適正管理システム構築)
  • 省エネ等の環境配慮における適切なアドバイザー(大企業向け?)
  • 再生可能エネルギー、蓄電池の新技術
  • デリバティブ取引(価格変動リスク回避需要)

こっちを検討したほうがよさ気。下にビジネスモデル案が出ていたので合わせてご参考に。

電力改革で登場する新ビジネスモデル(1)

電力業界変革に対する戦略ガイド

あとは……新規参入の中では比較的規模の小さい「エネット」か、あるいは過剰反応して下がり過ぎた場合に、電力株を買うか検討するくらいでしょうか(それでも原発再稼動や再生エネルギーといったホットなテーマが絡み合っていますので、電力自由化関連だけでの購入決定は非常に難しいです)。

既存の電力業界について

これまでのビジネスモデル

これまでの電力業界では、発電、送電、小売まで一貫して提供することが当然でした。多額の投資によって発電所を多数設置し、発電コストを下げつつ安定的に電力供給をしていました。

当然ながら大企業大口顧客の収益がメインになります。電力業界はここが特に顕著で、電力総量が決まっているために、「利用すればするほど割引する」ということがありません。これにより、たくさん電力を使う顧客は、比例して収益が上がっていくことになります(逆に使用料の少ない契約者は送電コストも含めると赤字)。

ところがそれぞれのセグメントで新規の参入業者が現れ、はじめて競争が生まれることになります。ぬるま湯に慣れた今の経営層に舵取り出来ますかね。

電力自由化による競争のポイントは?

価格

導入後に上がる可能性も高いことを見ましたが、それでも料金の値下げは第一に期待されるところです。と言っても、特に電力を自前で供給できず既存電力会社からのバックアップを頼りにする新規参入業者は価格競争力がなく、苦しいですね。

発電コストを下げるには、数多くの発電所を持っているか、天然ガスなどによる廉価な新電力を生成出来るかのどちらかです。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは初期投資も少なく、新電力にもってこい。固定価格買取制度もあって利益はある程度見込めるため、参入障壁の低い発電事業になります。

特に、シェールガス革命で安価になった天然ガスがLNGの価格を押し下げれば、今後LNG火力が中心となる可能性があります。他にも太陽光発電がより効率化され、一般家庭の発電効率が電力会社の供給する価格を下回るようになれば、状況は一変します(実際にドイツでは既にこの状況らしい)。

その他の付加価値

ブランドやコストメリットなら既存の電力会社に軍配が上がります。となればなにか他の付加価値を付けて販売するしかありません。今各社が打ち出している料金プランのバリエーションやスマホ等とのセット割は有力な候補ですが結局価格メリットでしかなく、消耗戦です。

投資家はコモディティ化する商品に投資しません。電力を選べるというのは消費者にとっての価値ですが、「どこを」選ぶかという決め手に欠けるように思うのです。

将来的には……

送配電分離も予定されており、発電コストの競争から小売りの付加価値で競争することになるようです。あるいは、ICTと連携し、電力管理システムプラットフォームの開発などの様々な新サービスを提供できる会社が覇者となる可能性を秘めています。

短期的には電力会社への影響は軽微でも、長期的に見るとビジネスモデルの変革を迫られることは間違いありません。

リスクは甘く見積もれない

「未来予測はしない」というのは投資家の鉄則みたいなものですが、見えるポイントは事前に検証しておきたいもの。

価格の不確実性が起こす影響

第一のリスクは電力自由化によって電力価格が不安定になるリスクです。これまでの電力会社は、安定した顧客と安定した価格を理由に、堅調な推移をしてきました。

インフラ事業というビジネスモデルはそもそも、大規模投資をして数十年かけて回収していくものです。高い初期投資や政府の許認可制が参入障壁となって、事実上寡占市場を形成していました。

ところが、ここに市場原理を持ち込むことにより、将来の価格が不明確になります。見通しが立てにくくなった各社は、以前のような大規模投資を行いにくくなります。通信業界でのMVNOのように、大手の設備投資を借りて事業を広げる新規参入業者が増え、投資回収出来ないような価格破壊がおきてしまう可能性もあります。

今はアメリカでのシェールガス革命によって原油価格含め全体的に資源価格が暴落していますが(中東の戦略でもある?)、より環境にやさしいと言われる天然ガスへのシフトが世界的に行われていることもあり、需給に対する価格の反応は読めません。

価格の変動要因は多すぎて分かるわけもないのですが、普通に考えるとこんなところ。

  • 電力需給の増減(景気や天候変動が絡む。現状は盛んに節電が叫ばれているように、ピーク需要に対して供給は不足)
  • 燃料資源価格の増減(各国の政治的思惑や代替エネルギーが絡む)
  • 為替変動(知らん)
  • 原発問題
  • 発電所の増設、機械導入による稼働率向上(電力供給に絡む)
  • 新規参入業者との競争による価格破壊
  • 料金プラン拡大による一人あたり収益の実質低下

参考)液化天然ガス(LNG)の価格推移

天然ガス価格の上昇・下落リスク

価格に大きな影響を与えそうな燃料資源価格を見てみると、全般的に下落している模様。理由はもちろんシェールガス革命による増産。

lng

今までは価格上昇しても中々認可が降りず消費者に転嫁出来なかったため、電力会社は苦しめられてきました。しかし、これからは下がり続けても困ります(上がりすぎても困りますが)。発電所稼働には多額の投資が発生しており、損益分岐点までの利益を生み出せなくなってしまいます。

なおも不透明な原発再稼働問題

これだけ安全面の問題があるにもかかわらず原発再稼動の声が止まないのは、原発が安価な電力供給を可能とする発電方法だからです。

下の方で引用していますが、政府は安全面よりコスト面を取っているみたいです。とはいえ、導入を進めている中国で大きな原発事故が起こったりとかしたら世論がどうなることやら。

再生可能エネルギー(代替エネルギー)の進展、技術の進展

太陽光発電など個人宅で導入する事例は着々と増えています。スマートメーターによって必要電力が見える化すれば電力需要が下がりますし、バイオマスエネルギーや地熱エネルギーの研究も盛んに進められています。また、人々の環境への関心は一層高まっており、どこかで技術のブレイクスルーが発生して「地球にやさしい」エネルギーが現行同等レベルのコストまで下がるなどしたときに、業界図はガラリと変わる可能性は否定出来ません。

  • 各種代替エネルギー(太陽光、バイオマス、地熱、風力、水力)の電力効率向上
  • 高精度のスマートメーター(inスマートハウス)普及
  • EnMS(エネルギーマネジメントシステム):管理システムの普及
  • DR(デマンドレスポンス):電力需給制御で、ピーク時に割高料金にしたり節電にインセンティブを設ける方式。

後半のシステム的な分野では、ICTの力を持たない電力会社は不利です。金融におけるFintechのように、元来の業界プレイヤーではない存在の方が付加価値としては取り付けやすく、価格競争以外で勝負出来る強みがあります。恩恵を受けるのはこっちの会社なのかなと思いました。

今後の電力関連法整備の進展

今回の電力自由化をはじめとして、国は電力の安定供給が可能となるよう改革に取り組みます(前回記載の通り)。

これに脱原発or原発再稼働、世界的な代替エネルギー導入拡大の流れも合わさって、電力関連の法整備に不確実性が存在します。

  • 電力自由化の進展(発送電分離、所有分離)
  • 結局原発はどうするのか
  • 環境保護のためCO2排出規制強化について国際的取り決め

これらがマイナスの影響を与えそうな要因です。

ご参考までに、現在の政府方針は長期需給見通しとして見解が出されている模様。こちらのサイト様記事が大変詳しいのでご参照です。

電力業界激震!?電力自由化のインパクトと予想される未来

  • コスト重視(原発・石炭火力中心、なるべく低コストで産業の競争力を維持)
  • 安全・安心重視(再生可能エネルギー中心、国民感情に配慮して縮・原発)
  • 低炭素重視(原発・再生可能エネルギー中心、国際的な低炭素圧力に対しCO2ミニマム)

なお、取り得る一定の幅の中で、政府方針は“コスト重視”に寄ったものである。

ドイツの事例は参考にすべき

えーでも東電なんてあんだけ事故起こしても潰れてない……と思っていたのですが、やっぱり厳しいんでしょうね。前回見たように、日本と似たドイツの事例では大手企業でも統廃合が進みました。

環境先進国のドイツでは積極的な再生可能エネルギー拡大を進めたこともあって、収益性が悪化しています(発電所への投資が無駄になるので)。

既に電力会社から買うよりも家庭で太陽光発電したほうが安いらしいです(すると、万が一のための蓄電池の需要が増大する、みたいなビジネスチャンスがきっとあります)。

ドイツの事例に倣ったとき、電力会社は潰れはしないかもしれませんが、投資先としてはあり得ないことになります。

 

このまま銘柄紹介に進むつもりでしたが、長くなって力尽きたので今回はここまで。ありがとうございました。

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