IT系技術の基礎となる一つに、ネットワークがあります。すでに4G・LTEが整備され動画等の大容量通信に対応出来るようになっていますが、今後はIoT等により一層爆発的なデータ量の増加が見込まれます。
そうした時に、今の4Gではトラフィックに耐えられないということで、新たなネットワーク5G構想が立ち上がっているのです。
ま、これもテーマ株として考えると弱いので、他のテーマの前提としてどう進展しているのか知っておく意味で記事にします。
追記:後編書きました。
目次(クリックで飛びます)
5Gとはなにか
第5世代移動通信(言い方が他にもいくつかある)と呼ばれる、4G、
特徴は以下の3点になります。
大量接続・大容量通信:M2Mが通信の主役
データトラフィックが増大中であることを、以下の記事で見ました。既にインターネットへの接続デバイス数は世界人口を上回っており、ビッグデータの流行りによって、今後データ通信量は指数関数的に増加します。
5Gのサービスとしての主眼は、スマートフォン(移動端末)の通信ではなく、IoT(M2M)によるデータトラフィック増です。現在の100倍のマシン接続台数、1,000倍とも言われるトラフィック増に向けた情報通信基盤という特徴があります。
ちなみにトラフィック密度も1平方キロメートルに100万個以上を想定し、密集した地帯でも問題なく通信出来る環境を要件としているようです。
高速通信:ピークで10Gbps
ピークデータレートで10Gbps~50Gbps、平均レートでも100Mbps~1Gbpsという速度が要求水準です。現在の4GLTEがピークで100Mbpsなので、現行の100倍という速度になります。
低遅延:1ミリ秒の低遅延
現行LTEの10分の1以下の低遅延が要求水準です。
低遅延とはどういうことかと言えば、限りなくリアルタイムということですね。特に自動運転の分野等では、コンマ数ミリ秒の情報ロスが生死を分けるようになります。通信インフラが社会基盤としてミッションクリティカルな役割を果たせば果たすほど、シビアな信頼性が求められるようになっていきます。
まとめると……
5Gが目指すビジョンは以下の図のようになります。
あまり触れられていませんが、ネットワーク可用性がほぼ100%、ネットワーク・サービスエリアもほぼ100%と、今まで以上に「いつでもどこでも接続出来る」環境になることは言うまでもありません。
5Gネットワーク実現のロードマップ
1G~4G
ちょっと過去から振り返ってみましょう。
さっくり言うと……
- 1Gでははじめての通信システム(アナログ)で、携帯電話普及に大きく貢献しました。
- 2Gになるとデジタル方式の通信システムに変わり、メール、インターネットにも対応するように。
- 3Gでは国際ローミングによる標準化、携帯電話における各種サービスの通信が大容量化。
- 4Gではスマホの通信サービスに耐えるべく、より大容量化・高速化された通信規格
5Gの時代へ
そして5GではIoT、M2Mの時代と。図で見ると以下の通り。
日本は2017年からサービス開発に乗り出し、2020年の商用化を目指します。
ちなみに、世界最速はスウェーデンのEricsson(エリクソン)が2018年からサービス開始見込み。
鍵は東京オリンピック
国は2020年までの実現を目指したロードマップを策定しており、これは東京オリンピックという一大イベントを成功させるべく必須条件なのだと思われます。
総務省主導の元で「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF)が発足(14年)、国際的な標準化の取り組みと合わせて数々の技術的課題の解決に向けて対応を進めているとのことです。
日本は災害の多い国だから、通信インフラの重要性が他よりも高いはず
災害時にも安定した通信環境があることの重要性は、日本人なら誰でも知っているはず。東京オリンピック需要によって老朽化した首都圏のインフラをリプレイスする構想の中には、確実に通信インフラも含まれます。
5Gは国策的で優先順位も高いという認識で間違いないでしょう。
IoT、自動運転等の今後のIT主力分野の前提、セキュリティも重要
通信インフラの整備は今後のIT発展の前提条件です。テーマ株の関連ということで目が離せないですね。ビッグデータが流行れば流行るほどセキュリティ関連株の業績が上がりそうなので、個人的にはそっちに注目したいです。
5Gの課題と所感
課題も山積みですが、ここでは技術的な課題というよりも普及に向けた課題を取り扱います。
技術的な課題と取り組みについて知りたい方は、以下のレポートをご参照ください(私は途中で諦め)。
世界的な標準化が進んでいない
ITU-Rで19年までに国際標準を決めるらしいのですが、現段階では色々な組織や規格があって、それぞれ要件やロードマップが微妙に異なる感じで、まとまりがない印象を受けています。
ビジネスとしてどうなんだろう
先述の通り、個人消費者に対する利便性向上は4Gでおおよそ達せられたと言っていいと思います(3G→4Gで速度がブロードバンド並に進化)。ほとんどストレスもなくスマホで動画を見ることの出来る時代です。もちろんより早くなればそれに越したことはないのですが、ユーザの利便性向上度合いは逓減していくかと。ま、5GはIoT主眼だからそれも仕方ないことなんですけどね。
とすると、多額の投資をしてまで5Gに移行するかという疑問があります(国策ですから国が主導すれば動くでしょうが)。
ビッグデータでも同じことを書いたのですが、通信するデータ自体に価値が認められなければ、「一体データ通信自体に誰がお金を払うのか?」という問題にぶち当たるわけです。
サービス提供事業者から利用料を取るモデルなのかなあ。ユーザに価格転嫁するのも限界がありそうですよね。ユーザ側の便益は少なく、費用は上がるんですから。
ビッグデータビジネスって、見方を変えれば私達消費者がお金を払ってデバイス=通信インフラを用意するから成り立っているとも言えるわけで……。
インフラ事業のビジネスモデルも転換期に入るのかもしれませんね。
関連銘柄は後編で。
他のIT系テーマについて以下でまとめております。よろしければ合わせてお読みいただけるとうれしいです。