今日のテーマは日米企業の倒産リスクについて。経営破綻とも言います。ついでに上場廃止についても取り上げています。
投資家が避けるべきは最大ドローダウンですので、倒産によって株券が紙切れになることは最も避けねばならない事態です。倒産リスクというのは嫌でも考えておかないといけません。
ですが、実際どのくらいの確率でババ引くんでしょうね。
起業を志していた頃に10年99%が廃業するみたいな情報を耳にした記憶がありますが、個人零細企業を除くともっとマシなはず。
ということで、改めて確認していきましょう。
目次(クリックで飛びます)
倒産の定義
まず倒産するとはどういうことか、定義だけ書くとこうなります↓
以下に挙げる6つのケースのいずれかに該当すると認められた場合を「倒産」と定め、これが事実上の倒産の定義となっています。
1 銀行取引停止処分を受ける※
2 内整理する(代表が倒産を認めた時)
3 裁判所に会社更生手続開始を申請する
4 裁判所に民事再生手続開始を申請する
5 裁判所に破産手続開始を申請する
6 裁判所に特別清算開始を申請する
法律用語ではないようで、要は債務が弁済出来ない状態と理解すればOKですかね。倒産の区分けは会社の清算(消滅)か、継続(再建)かで分かれています。
倒産の統計について
いくつかデータ源がありまして、それぞれ興味深いデータが転がっていますので、読み物としてお楽しみください。
総務省統計局から調べてみる
後の解説が色々便利なので、最初に母数を書かせてください。
まず、個人事業を含めた日本の企業数は約400万です(Excelですいません)。
そうそう、企業数は一貫して減少しているんですよ。日本は世界的に見ても起業家精神がないと問題視されていますが、それはまた別で。
ちなみに上場企業数はこのところ増加の一途を辿っています。13年の増加はJASDAQもリサーチ対象になったためだそうです。
で、日本の約400万社のうち、99.7%が中小企業として扱われているようです。大企業はわずか1万程度、中規模含めて56万程度。
小規模事業者の中で法人は42%程度だそうです。個人の56%は悪いけど投資においては対象外なので無視でOKです。
あちこちから資料引っ張って来てるから母数が微妙に違うけど気にしない。
ということで、以下で見ると中小企業の廃業は2年間で48,000件でしたが、このうち個人零細は最低6割含まれていると推測されます。
単純に4割が中小法人の倒産として、10,000件/年くらいですかね。
それなりの規模の大企業、中小企業が56万社なので、年1.7%の倒産率という計算になりました。
上場企業の倒産についてはこの資料から色分けは不可能ですが、参考にはなると思います。
東京商工リサーチから調べてみる
東京商工リサーチには、全国倒産状況が毎月更新されています。なんとも胃の痛くなる話ですが。
参考全国企業倒産状況
17年5月は約800件ということで、やっぱり大体年間1万件くらい倒産しているという計算になります。
母数は負債額1,000万円以上の倒産ということで、個人零細は省かれていると思われます。届け出が出ていない場合も不明でしょう。
余談ですが、日本企業の7割は赤字決算だそうです。赤字で即廃業はあり得ないものの、キャッシュフローまで赤に染まると危険信号ですので、注意が必要でしょうね。
帝国データバンクから調べてみる
少し違う視点から、帝国データバンクには30年の生存率データが載っていました。
帝国データバンクの「COSMOS」のデータで、いくら調べても母数が出て来ないのですが、おそらく個人は省いているはず。
- 1年で97%が生存
- 10年で70%が生存
- 30年で47%が生存
大きめの会社のデータではありますが、一つの会社を追っていくと半分は生き残るようですね。
1年で9割倒産しているというデータもありましたが、おそらく個人零細も含めるともっと小さな数字になるでしょう。
上場企業に絞って調べてみる
最初にこの結論を書けという話ですが、そろそろ上場企業のデータを見ましょう(笑)
さっきフライングで資料出しましたが、上場企業数は3600社程度です。400万社のうち0.09%という狭き門です。ここまで生き残ったらそうそう倒産しないっしょ。
参考2016年度の上場企業倒産の動向調査 2016年度の上場企業倒産、26年ぶりゼロに
え、26年ぶり?
近年は減少傾向にありますが、リーマンショック時の2008年は突出していて、なんと45件も倒産がありました。
安全率は一番悪いところをベースにするので、基準は2008年に置いておくべきです。
45件でも全体の1%なので、よほどヘマしなければ大外れは引かないのですが……無視するには大きな確率だと思います。特に長期なら。
ポジションサイジングによる資金管理で損失影響を資産全体の一部に限定するとか、投資戦略を考えるべきですね。
逆に、短期トレーダーとしては思いの外低くて楽観しました。色々な銘柄を触っていて、全てが0になるか2倍になるか、みたいなトレードにぶち当たる可能性は限りなく低いということです。
米国企業の倒産について
再建手続のことをチャプター・イレブンと言うらしい。
その申請件数データが見つかったのですが、リーマンショックを境にして1万件をまた超えてきていますね。
資産規模1億ドル以上に限っても、2009年には31件の申請があったとのことです。NYSEで3000社弱が上場していますので、割合としては1%に近いのでは。日本とほぼ同じで、それなりの確率だと思います。
上場廃止について
倒産とも関連があるのですが、上場廃止についても軽く触れておきます。上場廃止になるのは主に以下の場合です。
- 買収や合併、株式交換による上場廃止
- 上場基準を満たせない場合
- 倒産
で、下2つの理由で上場廃止になった企業一覧がWikiに載っています。意外と東証一部が多くて驚きですね。
これも一番多そうな2008年で21社あるので、ここを基準に考えたいところです。
ちなみに、上場廃止リスクが高い銘柄は「監理銘柄」に指定されます。東芝でお馴染みですね。
ここから「整理銘柄」に移って、1か月後に上場廃止となります。
上場廃止で株はどうなる?
買収や合併の場合、新規に株式を取得した親会社が現金で交換するケースがほとんどです。上場廃止時に手続きして振り込まれて来るはずです。
上場基準を満たせず上場廃止する場合、別に資産価値がなくなるわけではありません。取引所は単なる仲介所ですので、買いたい相手を自分で見つけられれば手続きをして売却することも可能です。
ただ、とてつもなく面倒というだけで。
確定申告が分離課税選択出来ず、損益通算も不可だそうです。
その不便だけで売りが殺到して資産価値が毀損することは間違いありませんね。集団訴訟も確実に起こるでしょうし、将来再上場するにせよ、もしJALみたいに一回潰したら元の株は価値がなくなるわけですからね。
倒産の場合は言うまでもなく、100%減資で株の価値はなくなります。
倒産リスクが上がっている典型的シグナルとか書こうと思いましたが、疲れたので次に回します。