次回作はミステリーにしようと思って色々と参考文献を読み漁っていました。これをやるとハマって執筆に支障をきたすのが困りものです。
そこで注目したのが、「日常の謎」系ミステリー――――人が死なないほんわかした空気にピリリとスパイスの効いた独特の謎が面白い、最近流行りのミステリージャンル。
下のような感じで、日常のちょっとした「不思議」にフォーカスしてミステリする話が多く、ホワイダニットが主流です。
「若竹七海がアルバイトをしていた池袋の書店で、毎週土曜日になると50円玉20枚を握りしめた男が現われて、千円札への両替だけ済ませるといそいそと帰っていった」(いわゆる「逆両替」)という実話で、この人物の行動の意図を勝手に説明してみよう、というアンソロジーが2度も編まれた。
鮮やかな謎解きというよりは、奇妙な行動に実はこんな意味があったんだ、という驚きと、それが分かったことで「その人はどうしてそんな行動をとったのか」という疑問が晴れて、感動するような作りになっているものが多い印象です。
あとは何より雰囲気がいいです。下で書いた感想読み返すとそればっかり言ってるくらいです。きっと相性がいいのでしょうね。
例によってなるべくネタバレはないように書きますので、興味を持っていただけたなら、ぜひ読んでみてください!
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古典部シリーズ(氷菓)
京都アニメーション「氷菓」でお馴染み、古典部シリーズ。この手のジャンルで真っ先に挙がるだけあって、とても面白い。学園モノとミステリーを上手くマッチさせているのがいい雰囲気です。
「このミステリーがすごい!」で二年連続三冠獲得の米澤穂信先生が書いた本ということで実力はお墨付き。続き待ってますよ!!
「わたし、気になります! 気になるんです、なるったらなるんです!」
好奇心旺盛なヒロイン千反田えるたそがこれ言ったら物語が動きます。ヒット作には作中に決め台詞があるものですが、この作品で言えば、「わたし、気になります!」
この作品一番の魅力はヒロインですよ。アニメ版より恋愛方面は淡白ですが、ウィットに富んだ言葉選びが素敵で、小説には小説の良さがあります。
意外性と逆転、謎解きも素晴らしい
ネタバレになるのであまり詳しくは書けないのですが、本丸のミステリーも素晴らしい出来です。丁寧な伏線回収、意外性ある展開、巧みな心情描写、なにより舞台設定がうますぎですね。「愚者のエンドロール」は未完結の作品のラストを推理するというお話ですが、この一文だけで絶対面白いって分かってしまう。
緩やかな雰囲気と、どこか懐かしい空気
この文化部独特の空気がたまらなくいいのです。そんな私にとって一番好きな話は「クドリャフカの順番」。学園祭を舞台にした本作は、連続盗難事件というワクワク感マックスの謎設定が高ポイント。それ以上にどこか昔の名残のある学園祭の描写が、自分の高校時代を思い出させるのですよ。
この下校風景とかね。さっきから推しまくってますが、それだけこの作品大好きなんです。
追記:調べてたら16年11月に新刊が出るとか!! 待ちわびていたぞ!!
〈古典部〉シリーズの新刊を、今年の11月に出させていただく予定になっています。題名は未定で、「連邦は晴れているか」「鏡には映らない」ほか既発表の短篇・中篇も収録されます。
— 米澤穂信 (@honobu_yonezawa) 2016年5月14日
ビブリア古書堂の事件手帖
有名すぎる一作。所謂コージーミステリーの火付け役。古書を通じてその人柄まで見抜いてしまう超人栞子さんが、古書にまつわる事件やお話を紐解いていくストーリー。
古書という題材はいいですね。なんとなく高尚な感じがします。俗な話をすれば本の物語ですから、本屋さんには好かれて宣伝されやすいんじゃないかとも思いました。二重で上手い。
現在6巻まで刊行されています。
古書が読みたくなる本
「落穂拾ひ」「クラクラ日記」「晩年」……この本ではたくさんの古書が登場します。中々とっつきにくい古書ですが、栞子さんの流暢な語り口を聞くと手にとってみたくなるんですよね。これ、かなりすごいことです。私なんかではあの小難しい世界をここまで分かりやすく面白く書けません。
実際、物語に登場した古書はAmazonでもたいそう売れたとのことです。
しっとり、という表現がしっくりくる雰囲気
登場人物が25歳前後という大人であることや、ヒロイン含めて落ち着いた雰囲気の人物が多いことで、氷菓と比較すると「しっとり」とした印象があります。縁側に腰掛けて本のページをゆっくりめくるような、そんな感じ。意味不明っすね。
そんな世界観に色をつけているのは古書にまつわる深い知識と、とても丁寧な描写です。頭の中でイメージを膨らませやすく、大人気の理由も推して知るべしですね。
コージーミステリーが続々と……
同じジャンルの本がいくつも出ていますが、こちらもオススメです。
ハルチカシリーズ
最近アニメ化。アニメはどうも詳しくないのですが、本作も日常の謎系の筆頭です。
今調べてみたら実写化もするみたいですね。おめでとうございます。
軽めの展開とシリアス、きれいにまとまる最後
基本的に各章で完結しており、読みやすい文体も相まってさらっと読み進められます。読みにくくて堅苦しいミステリーが多い中でこれは異質。学園モノで人が死なないという特性が存分に活かされているので、ミステリーが苦手な人も読みやすいと思います。それでいて、重要なシーンではしっかりとシリアスします。
謎解きは博識の主人公に任せるしかないのですが、最後の種明かしの展開がとても上手いと思いました。オチの付け方がきれい。
そして、本作では吹奏楽のパートや恋愛パートが混じっており、謎解き以外にもたくさんのみどころがあります。おすすめ。
僕が七不思議になったわけ
日常の謎というと外れるかもしれません。電撃大賞の新人さんなのですが、おもしろかったので合わせてご紹介。一巻完結。
あんまり詳しく言えませんが、読後感がとても良いです。
今回はここまでです。どれも面白いのでぜひ一度読んでみてくださいヽ(´▽`)ノ