未来の世界。
完璧にデザインされたスマートハウスは、実は3Dプリンタで作られたものだ。一家に一台ある3Dプリンタは、最新のAIを搭載して人のように会話出来る能力を持ち、センサー(IoT)をつけて情報を収集する万能ロボットである。
もう人類は家事をしない。朝食を作るのはロボットだ。ビッグデータから私の好みに完璧に合った料理を選び、レシピをWebで検索してダウンロードし、3Dプリンタで出力して料理にする。
もう人類は寿命がない。バイオプリンティングで臓器を入れ替えるから、身体が老化することはない。
もう人類は仕事をしない。それはロボットの役割だ。人類は余った時間を使って、自己実現を達成する。
自分の考えたデザインはすぐさま出力され形になる。また、それはインターネットを通じて世界中に公開され、オープンイノベーションが加速していく。
ちなみにロボットが壊れることはない。なぜならAIが故障を予知し、部品を3Dプリンタで作り、予防交換出来るからだ。
以上、3分くらいで考えた3Dプリンタの未来像でした!
……冒頭から何言ってんの? って感じですが(笑)前半に引き続き3Dプリンタについて見ていきたいと思います。前回記事は以下からどうぞ。
3分で分かる、それでも3Dプリンタに期待してしまう理由
現在の3Dプリンタで出来ること
動画で見ると、結構いいものが出来るようになっているんですよね。
試作(モックアップ)
真っ先に思いつくのはこれかな。
少数大量生産向きの3Dプリンタなら、非常に安価にモックアップを制作することが可能です。そうすると完成品のイメージ共有、外見の確認、あるいはプレゼンテーションにも活用出来ます。
複雑な機械部品の構造チェックで、既に現場で役立てられています。
http://matome.naver.jp/odai/
2145552156267154101(動画:工業)
部品
Q:3Dプリンタを買ったら最初に作るものは?
A:3Dプリンタの予備部品
ですね。いつでもどこでも作れるという「適量生産」、誰でも同じものを作ることが出来るという「再現性」を活かした部品ビジネスは将来性も高い分野です。
あとは元々から3Dプリンタが航空宇宙ビジネスでの利用が検討されていたように、遠隔地での製造やパーツ保守に役立てられています(NASAが宇宙に3Dプリンタを持っていったりしました)。
医療
義手義足、医療用のモデルの身体、あるいはバイオプリンティングと呼ばれる領域ですね。
MRI、CTスキャンの発達により、個人個人の人体についての情報は取れるようになっているので、3Dプリンタによってオーダーメイドの医療器具や人体主要機能そのものをを制作することが可能です。
建築・建設模型
完成見本あるいはモックアップとして外見の把握に活用されます。個別のパーツから作って、複雑な構造を確認するためにも使用されたりしています。
下の動画は中国にて、3Dプリンタで造られた家が展示されている様子です。ちょっと怖いw
食べ物
3Dプリンタの素材は金属に限らないため、なんと食べ物をプリントすることも可能。複雑な形をした砂糖菓子とか。
下は3Dプリンタで作った砂糖菓子らしい……複雑な形は思いのままです。
フィギュア、おもちゃ、自作
フィギュア、おもちゃの領域でも。写真を撮って3Dプリンタに出力するサービスもあります。また、3Dプリンタでなければ製造出来ない形状のものもあり、付加価値のある分野だと思います。
下の動画は3Dプリンタを使って自分そっくりのフィギュアを作る様子。
この他にも初音ミクとかポケモンとか、色々なオリジナルフィギュアを制作するサービスがあるようです。
現時点での3Dプリンタのユーザ分野はこんな感じになっていました。模型や試作プロトタイプに使われることが多いためか、電機や自動車、医療機器系の産業を中心に広まっているようです。
(出典:みずほ銀行)
3Dプリンタが創る未来社会
それっぽい動画があったので、置いておきます。
製造工程の流れに沿って言えば、下の図のように3Dプリンタを中心としてものづくりのバリューチェーンに大きな変革が生まれると予想できます(→参考)。
(出典:SIGMAXYZ)
(出典:SIGMAXYZ)
オープンイノベーションやデータフィードバック、パーソナライゼーション等、IT技術の集大成ですよね。
(出典:SIGMAXYZ)
3Dプリンタの市場規模
国内の3Dプリンタ市場は、本体出荷実績が大幅減と苦戦しています。
IDC、2015年の国内3Dプリンタ出荷実績が大幅下落と発表 – 今後プロ向けは成長と予測
日本国内だと、年間出荷台数が8000台を切っているんですね。ちなみに世界では30万台弱。
(出典:IDC)
逆に材料や関連サービスは倍以上の伸長という対象的な状況。
(出典:IDC)
(出典:IDC)
そして全体では2020年までに700億円規模になるとの見込みです。あれ、意外としょぼい?
(出典:IDC)
この記事にも書かれていますが、やっぱり個人向けは限界が見えてしまっている上にわざわざ買ってまでやることが少なく、今の技術では限界があるかなと。逆にハイエンドの領域は順調に高精度化が進んでいて、製造工程に実用レベルまで持ってきており、市場見通しが明るいようです。
……と思っていたのですが、世界では全く違う模様。世界では50万円以下のパーソナル向けプリンタが急進、逆にBtoB向けのハイエンドは急落となっていました。
CONTEXT、2015年の3Dプリンタ世界市場シェアを発表——XYZプリンティングが首位に
そして世界の市場ですが、15年時点での世界3Dプリンタ市場は1.3兆円、そして19年には3.1兆円規模になると見込まれます。
成長率は年平均27%という驚異的な数字です。特に今後は中国を中心に市場を牽引していくと期待されているようです。
世界3Dプリンタ市場は2019年に267億ドル規模へ拡大——IDC予測
ビジネスモデル
ビジネスモデルとしては「3Dプリンタ本体」「材料」「関連サービス」に分かれます。以下の図を見て分かるように、今後はサービスが中心となっていくと思われます。
(出典:シードプランニング)
材料市場は光硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂の伸びが大きいです。材料としては金属、砂、石膏等もありますし、今後は食材も使えるようになるでしょうか。
(出典:シードプランニング)
でも日本ってものが溢れていて整理整頓ネタが人気になる今日このごろ、自作するって環境じゃないんですよね。社会のニーズというと途上国のほうがあるんじゃないかと。
インフラが整っていない国なら3Dプリンタが輸送機代わりになってくれますし、どうせお店で買っても壊れると思えば、ちょっとしたものなら自作したほうがよいと考えるかもしれません。
国内、世界の3Dプリンタ
ハイエンド、家庭用でだいぶ価格差があることがわかります。
(出典:シードプランニング)
とりあえず、手頃価格で私達一般消費者にも手が届きそうなプリンタを探してみました。
- 製品名:da Vinci 1.0(XYZ Printing社)
- 製品名:A6 LT(Makibox社、価格は3万5,800円~)
- 製品名:Buccaneer(Pirate 3D社、価格は5万4,700円~)
実際にいくつかの3Dプリンタを使って比較してみた記事もありました。
【第一回】3Dプリンターの性能をマジ比較!3Dプリンター選手権
日米比較
日米の3Dプリンタに対する期待というか、戦略の違いがはっきり出ているんですよね。
(出典:みずほ銀行)
米国はオバマ政権のもとで製造業の雇用拡大を目指し、製造基盤の国内回帰を狙っています。これは元々米国製造業は脱工業化の考えで海外進出しており、国内に製造基盤がなくなっていることが背景にあります。
3Dプリンタを使うことで、設計と製造を一貫した新しい製造プロセスのルールを作り、米国製造業を復活させたいと考えているようです。こういう大枠を取りに行こうとするところはいかにも米国的。
一方日本はトヨタを見ても、ある程度の海外移転はあったものの、付加価値の高い分野は未だ国内に製造拠点を残しています。このため、日本における3Dプリンタは製造業の補完的な役回りが多いのです。
日本はiPSをはじめとした再生医療について国を挙げて後押ししようとしているので、再生医療と関連深いバイオプリンティングも一緒に支援しませんかね。
ビジネスの進展
先述の通り、本体(ハードウェア、ソフトウェア)もあればサービスもあるので、結構いろんな企業が参入しています。
本体については「3D Systems」と「Stratasys」の2大勢力が長らく市場の大半を占める(現時点でも8割を占める)という寡占市場で、両社ともに利益率が非常に高い水準で推移しています。
(出典:みずほ銀行)
M&Aや研究開発の方向性には違いがあるようです。
- Stratasysはプリンタ本体や材料に注力
- 3D Systemsはサービス事業等の周辺事業にも進出
(出典:みずほ銀行)
ここのところ新興企業のXYZプリンティングやM3Dの躍進が顕著になっていますが、これらは安いパーソナル向けプリンタで市場を伸ばしています。上がメーカ別出荷台数、下が売上のランキングです。
(出典:CONTEXT)
(出典:CONTEXT)
あとは下の記事すごいですね。
業界全体あるいは産業別に影響力の大きな企業10選出してくれています。株を探すならこの中でしょう。
2億人のデータを分析した3Dプリント市場に最も影響を与える企業TOP10
上が産業別、下が3Dプリンタ業界全体に影響力の大きな企業です。AUTODESKは聞きなれないですが、3Dソフトの開発企業です。3Dプリンタ初のOSということで、近年のプラットフォーム獲得競争に則って、単純なプリンタ本体(ハードウェア)ビジネスよりも将来性や影響力が有力だと考えられているみたいです。
日本でも13年にブームになったので、3~5年の研究開発期間を経てそろそろ芽が出てくるのではと期待しています。本テーマに関しては別途株の記事を書く予定ですので、そこで詳細を見ていきたいと思っています。
書きました!
3Dプリンタ関連銘柄まとめ(日本株、米国株11選+アルファ)
他のIT系テーマについて以下でまとめております。よろしければ合わせてお読みいただけるとうれしいです。
3分で分かる、IT系テーマの全体像まとめ キーワード、俯瞰図、ロードマップ等