PER、PBR、ROA、売上高営業利益率、自己資本比率、EPS、ROIC……指標ってたくさんありますよね。
私はこういうのいちいち全部見る必要ないと思っています。いい会社はどんな指標を見てもいいですし、悪い会社はどんな指標を見たって悪いです。
要するに、我々バリュー投資家は(私がそう名乗っていいのかはともかく)、数字に出て来ない成長ストーリーを買っているので、その目線で指標を補完的に活用してみましょう。ちなみに、決算の中では経営者の声、事業の方向性に対する説明会の内容は結構気にします。
私の投資ルールっぽいものは以下の記事に書きました。成長シナリオ+株価爆発シナリオで探します。
会社が倒産するとは、そもそもどういう時か
私の投資手法って、数年塩漬け覚悟で、安めの株を買って爆発するのを待っている方法です。
そこで一番避けたいのは倒産してゼロになること。
ということは、退場しないためには会社の安全性を見る必要がありますね。
倒産のパターン
注意点として、決して倒産の兆候を読み取ってやろうなんて考えないことです。どうせ読めません。指標や条件を使って機械的にふるい落とせればいいと思います。
ま、上場しているレベルの会社は案外潰れません。過度に悲観的にならないくらいでちょうどいいと思います。
バランスシート(B/S)
会社が成長するためには、お金を借りて投資を行う必要があります。借りてくるお金は2つあり、返済不要の自己資本(株や資本金など)と、返済が必要な他人資本(借金)です。一応、
自己資本 + 他人資本 = 総資本
です。バランスシートから見ると、投資の失敗による資産価値の下落&借金返済が重くなり、やがて借金返済が出来ず倒産します(バランスシート不況)。
損益計算書(P/L)
これはもう本業の赤字が嵩んで債務超過→倒産の王道パターン。売上高が上がっていても固定費や経費が高くて赤字続きだったりすると、やがて資本を食い潰して倒産してしまいます。
東芝の資本欠損は黄色信号ですね。
キャッシュフロー(C/S、C/F)
キャッシュフローはCSでもCFでもどっちでもいいらしい。私はついCFと書いてしまいます。
キャッシュフローは現金の流れなので基本的にはプラスなら問題ないのですが、一時的に支払い時期に現金が枯渇すると、黒字倒産を引き起こすことがあります。
第一に見るべき指標
ということで、見るべき指標が分かりました。
自己資本比率(株主資本比率)
自己資本比率 = 株主資本 ÷ 総資産
有名な安全性を測る指標。
上にも書きましたが、自己資本とは株式などの返済不要な資本のことです。要するに自分のお金だから返せなくて債務超過で倒産ということにはなり得ません。
目安として、40%あるとかなり心強いですね。ただ小さな会社は借金してでも事業拡大しないといけない面もあります(投資余地が大きい)ので、20%くらいでも問題なかったりします。「こういう投資をしているから財務基盤が不安定なんだ」と説明出来るようであれば大丈夫でしょう。
このへんの条件設定、場合分けは数をこなしてルール化していきましょう。
流動比率
流動資産 ÷ 流動負債で算出される、自己資本比率の親戚みたいなもん。債務支払いに直結するのはあくまで流動性(1年以内に現金化)の高い負債のみなので、そこに絞ったものです。
バランスシートを色分けして見るならこの区分けが一番いいと思っています。
その他、固定比率とか当座比率とかありますが、わざわざ全部調べるほどの意味はないので割愛します。
売上、利益の成長率(増収率、増益率)
売上、営業利益、当期純利益の成長率を過去10年くらい見られると良いです。もちろん右肩上がりが望ましく、経営ストーリーと一緒に順調に拡大している会社は有望です。
成長しているということはそれだけ注目度が上がってもおかしくありませんが、売られる時は良い株も売られているはずなので、チャートで安ければ大丈夫です。
売上、利益増加に繋がる指標として、その他には以下の指標も見てみましょう。
売上高営業利益率
営業利益(当期純利益) ÷ 売上高ですね。
それぞれの成長度合いが比例しているか見ておきたいですね。利益率の高い商売をしていれば、15%を越えていきます(IT系だと当たり前の数字です)。
ROA、ROE、ROIC……費用対効果の指標
ROE重視は結構日本でもトレンドとなってきていますが、投資したお金でどれだけ稼ぐことが出来たかという効率性を測る指標は大切だと思っています。
ROA(Return On Assets:総資産利益率):当期純利益 ÷ 総資本
ROE(Return On Equity:自己資本):当期純利益 ÷ 自己資本、あるいはEPS ÷ BPS
ROI≒ROIC(Return On Investment:投下資本利益率):経常利益 ÷ 投下資本
下に行くほど投下した資本を限定していっています。ROEが簡単なのでよく見ますが、借入金でROEが改善する点に注意が必要です。基本的な見方としては、15%以上あると良い経営をしていると思います。
持続可能成長率
派生として、持続可能成長率を見ましょう。
持続可能成長率:ROE × 内部留保
要するにこれは外部から資金調達することなしに、内部の利益を循環させて成長させているかということで、本業の成長率に比例します。当たり前ですが、ROEは内部留保が増えると下がります(投資に回さなくなるということですから、効率が悪くなりますね)。
また、これをEPSやBPSの成長率と比較して、企業の収益に対する本業収益の寄与度を算出することが出来ます。
EPS成長率:持続可能成長率 + 本業外成長率(株式調達や事業再編、M&A)
フリーキャッシュフロー
安全性その3。キャッシュフローのうち、特にフリーキャッシュフロー(営業CFと投資CFの合計)に注目です。ここがプラスで安定的に推移していること、つまり営業利益の範囲内で投資をしていることが健全性を高める上で望ましいです。
ただ小さな会社ほど投資CFが増えますので、フリーキャッシュフローと投資CFを見るようにしましょう。
ついでに出しますが、見ることはほとんどありません。株価 ÷ 1株あたりキャッシュフローで、PERの親戚みたいなものです。
キャッシュフローに裏打ちされた利益を上げているか見ることが出来ます。
株価との関連性
B/Sが株価とどう関連しているかという指標ですね。チャートを見れば大体こと足りますが。
PBR(Price Book-Value Ratio:株価純資産倍率)
株価 ÷1株あたりの純資産(BPS)で計算され、1株あたりの純資産に対して株価が何倍になっているかという点から、株価の割高感を調べる指標です。
通常は1倍を下回ると解散価値が上回ると理解されますが、私は1.3倍程度なら相当安いという判断をしています。
なぜこれを判断としているかというと、シーゲル先生の赤本にもありますが、低PBR投資に優位性があるからなんですね。
低PBRほど期待リターンが大きくなりますが、ここで2点ほど注意が。
実は、PBRはROE×PERでも算出され、PBRとROEは比例関係にあることが分かります。つまりROEを重視するとPBRは高くなってしまいます。私としては、より重要なのは成長性ですので、PBR<<<ROEと考えます。
そして、低PBRだからとなんの成長戦略も見えない企業に投資すると低いラインでヨコヨコし続けることになりますので、安易な投資は禁物です。あくまでも補助指標です。
そして一応、PBRの計算式の元となっているBPSを解説。PBRで見ますので、BPSは基本的には見ていません。
BPSは純資産 ÷ 発行済株式数で示されます。なお、純資産とは自己資本(株主資本)とほぼほぼイコールだと思って大丈夫です。
番外
株主分布(機関投資家比率)
オーナーや機関投資家の保有割合から、浮動株の比率を見たりします。外国人投資家が多い株は既に評価され人気化していることが多く、上がりにくいとか。
会社の施策としても、優待だけではなく、業績で個人投資家の囲い込みをしている企業は好感が持てますね。
出来高
ここに置くのが正しいか分かりませんが、ある程度流動性は確保したいところです。あんまり取引がないと売りたい時に売れないので、倒産したのとほとんど同じような事態になりかねません。
もちろん、人気化した時に出来高が伴っているかを確認することはとても大切ですね。
あんまり見ない指標
念のため解説としてまとめておきます。
PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)
PER = 株価 ÷ 1株あたりの利益(EPS)です。投資額が何年分の利益で回収出来るか見える指標です。あまり見ません。
理由としてはやっぱり目安となる数字の基準がないため、比較や判断がしにくいことです。あと私の好きなテーマ株系の成長株では割高かどうかなど無視されがちです(バイオ系のように赤字だと算出出来ませんしね)。また、ROEで判断すればいいとも思っています。
もしPERを使う場合は、ちゃんと翌年の数字で見ましょう。
PER算出の元となる数字ですね。
税引き後利益 ÷ 発行済株式数で計算出来て、1株あたりの儲けの大きさを示しています。税引後利益だと特別損失などの計上でブレ幅が大きくなりやすく、さっくりと読むことが出来ないのが問題点です。
PSR(Price Sells Ratio:株価売上高倍率)
上のPERだと当期純利益を使うために年度によってブレ幅が大きくなりやすいですが、こちらは売上高を使うのでブレにくい、それだけです。
株価(時価総額) ÷ 売上高です。
配当性向
配当は損益分岐点を下げてくれるのであれば嬉しいですが、永久保有銘柄でない限り主目的になりませんので、あまり見る項目にはなっていません。
配当金 ÷ 当期純利益です。
稼いだ利益を配当金として投資家に還元するか、事業の投資に回す(内部留保)かという比率を現したものになります。25%くらいが平均的と言われていますが、成長企業は投資に回しやすく、配当性向が低く出やすいです。
高いからいいかと言うとそんなことはなく、余裕のないカツカツ経営になりかねません。バフェットのバークシャーは無配当を続けていますしね(配当だと課税されるため、企業内での投資に回し、収益を拡大=株価上昇によって報いたほうが良いという考え)。
1 – 配当性向で内部留保率となります。
配当利回り
1株あたりの配当(DPS) ÷ 株価です。
配当や優待好きは多く、利回りが高いと人気になり、株価の下支えになります。
注意点は利回りが高いと言っても、株価の下落によって高く見えている場合です。配当ぽっちのお金じゃとても足りないほどキャピタルロスを起こしかねません。
1株あたりの配当金の伸びを見ましょう。連続増配は日米株で考察をしていますが、米国の圧勝でした(先に書いた日本株の増配記事から米国株の増配記事に飛べるようにしたほうがいいいですね。ちょくちょく更新かけたいところです)。
DPS:1株あたり配当
配当金 ÷ 発行済株式数ですね。上の算式で出ている通りです。
ファイナンス用語系、理論株価
WACCとかCAMPとかβとかリスクプレミアムとか。ま、理論株価を出したりするのですが、御大層な数式で出てきたものも、投資には役立ちません。
理論株価に大人しく収束してくれるなら苦労しません。
定性的な情報は時に数字より多くを物語る
多くの指標を見てきましたが、私にとっての核はやっぱり定性的なシナリオに依ります。結局はどう事業が広がるか、そして優良株としてどう認知されていくか見込みが立てられるかどうかですね。
それらの補完として、指標を見ておくというのは有効だと思い、取り上げさせていただきました。
16/9/12追記)少し整理したため、もう一つ記事を書きました!