昨年末頃から話題になっていましたが、債券の利回り>S&P500配当利回りの時代に戻りました。
長期債権のみならず、短期債券利回りでもS&P500配当利回りと逆転しています。短期では実に9年ぶりです。
S&P500配当利回り
2年米国債利回り
10年米国債利回り
今それぞれの利回りは以下のようになっています。日本は0.1%の壁が厚いですね(信用の裏返しでもあるのですが)。
- S&P500配当利回り:1.76%
- 米国2年国債利回り:1.96%
- 米国10年国債利回り:2.47%
- 参考)豪州10年国債利回り:2.62%
- 参考)日本3年国債利回り:-0.107%
- 参考)日本10年国債利回り:0.06%
これによって、株価が調整局面に入るかもしれません。なぜなら、株から債券へと移る動機が生まれたからです。
目次(クリックで飛びます)
歴史的にインカムは債券>株
皆さんの感覚としてどうでしょうか。
元本割れリスクのある株式が配当利回りでも債券利回りを超えるのは不思議ではない気もしますが、歴史的にはインカムだと債券>株が普通です。こうですね↓
むしろ近年のインカムでもキャピタルでも株>債券という状態、これだけ長く低金利が続いた時代こそ異常です。
理由はいくつか考えられるでしょう。
- インフレ率の安定化=金利の低下傾向
- リーマンショック後の極端な低金利政策と、それに連動した長期金利の低下傾向
そして、よく見ると配当利回りも下がっています。理由は2点かな。
- 米国株が一貫して上昇し、相対的に利回りが下がった
- そもそも米国ではここ何年も配当性向が低下傾向にある(理由は二重課税されるためで、自社株買いを好む傾向が強いです)
2007年に一瞬上がったのは、好景気だったからか、あるいはレパトリ減税(5.25%)で海外資産を送金した影響でしょうか。
使い道がなかったので3割が特別配当に回されたというデータがあります。以前記事にしました。
この9年、債券の不人気が株高を演出した
S&P500にインカムで負けていた債券は不人気商品でした。
安全資産を求める投資家が向かうのは、ディフェンシブ銘柄やインデックスファンド、あるいはキャッシュのまま保持するという選択肢です。
リーマンショックが落ちついて以降、債券から株へ資産が流れたことで上昇相場を形成したと言えます。
特に12年、16年は一時的に長期国債利回りをS&P500利回りが上回ったため、一層株価が上昇しています。
日本国債なんて預金と変わらないので、積極的にほしいと思う人いないですよね。配当の方が高いからそっちに行く、これは当然の流れです。
再逆転による影響は
ということは、利回りが債券>株に再逆転したことで今後は逆の動きになる可能性があります。
過去を見るとそうとも言えないんですがね。
過去逆転したのは1955~1959年頃ですが、当時横ばいって感じです。結局その後また上昇トレンドになっています。
株の利回りが落ちるということは、株価が上がっているか配当が減っているかどちらかです。ただ、この値動きを見ていると配当が減ったっぽいですね。
しばらくもたついたものの、結局株価は上がっていきました。
長期金利のトレンド転換は30年スパン
同時に、下落を続けてきた長期金利の反転上昇が見られるかもしれません。1980年代から30年以上経過してやっとです。
過去を見ても、長期金利のトレンドは最低30年スパンで考えるべきです。
- 1920~1945:下落
- 1945~1980:上昇
- 1980~2017:下落
- 2017~:???
単純に考えると金利高=株安のサインで、特に金利上昇が大きかった1970~1980年の株価は確かに横ばいです。
一方で、長期金利トレンドの終盤は株価が横ばいになり、トレンド転換すると少しもたつき、しばらくすると株価は再び上昇トレンドを描く傾向が見られます。
結局どちらの材料もあるわけですが、相場の過熱感は感じるので一旦調整が入るのが濃厚ではと見ています。
過去の傾向を踏襲するなら、そこで2~3年調整したあと、再び上昇局面へという予想が立てられます(どこまで行くんだ)。
18年の相場環境を厳しいと見ていても
だとしても債券投資はイマイチ勧められません。
こういう論調多いですよね。債券は満期なら元本保証されているので、2年国債で手堅くインカムを取って、2年後に落ちてきた(であろう)タイミングで改めて株を物色する、みたいな。
そもそもトータルパフォーマンスで株に劣後する
債券投資はそもそも長期リターンで株や不動産に劣後することを忘れてはいけません。
ポートフォリオに債券を入れる人、最近は少ないと思います。私のように安全資産はキャッシュで区別するほうが多いのではと感じますね。
マイルドにしてリスクリターンを最大化したい意図は分かります。でも今って株と債券の連動性上がってるし、債券のリターンは昔ほどないし(これは株も同じですが)、債券は完全な無リスク資産ではないですし。
特に株と債券が正の相関を持つ予測があることは知っておいてください。
ポートフォリオ理論が生まれた1950年代の債券利回りは7%以上、過去130年平均だと3.5%程度ですが、今や0.06%ですからね……。
過去の理論を勉強した後で、現代でも通じる部分通じない部分を整理したほうがよいと思います。
まあそれにしても私は債券嫌いですが。過去記事でもボロクソ笑
類似のPFFにもあまり肯定的なことは書いてませんね。インカムも下がってて、金融危機の値下がりリスクも大きい商品なので気をつけてください。
現金のインカムが欲しいならディフェンシブ銘柄の配当のほうが良いと思いますよ。
ポートフォリオの可変は難しいよ
これから下がるものから資金を引き上げて、これから上がるものに投資することは出来ません。
それが出来るならとっくに億万長者ですからね。プロだろうと誰も出来ません。
これから一時的に株が下がるかもしれない、そう思ったとしても何も考えず買い続けることをオススメします。
あれこれ手を入れたところでパフォーマンスに大差はないでしょうし、何より精神的にも楽です。
私達が考えるべきは、株式投資という明らかに優位性のある資産運用によって、期待通りのリターンを得ようというものです。
そして資産運用のキモは一貫性と継続性です。銀行口座からの引き落としに設定して後は見ないくらいでちょうどいいと思います。