バークシャー・ハサウェイが純損失254億ドルを計上し、過去最悪の決算となりました。
アップル(AAPL)の伸び悩みも痛いですが、やはり主力銘柄であるクラフト・ハインツ(KHC)の業績不振及び減損を端にした暴落が大きいです。
バークシャー・ハサウェイの分析記事はこちらからどうぞ。
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バフェットは株を手放すつもりないと発言しているが……
バフェットはクラフト・ハインツのM&Aを強力に推し進めてきた判断に、いくつか誤りがあったことを認めました。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏(88)は25日、食品大手クラフト・ハインツ(KHC.O)の統合に「払い過ぎた」との認識を示した。同時に保有株を手放すつもりはないとも強調した。
クラフト・ハインツの株価は見ての通り。
クラフト・ハインツはクラフトフーズとハインツが合併して出来た会社です。
クラフトフーズのチーズ「クラフト チーズドレッシング」、ハインツのトマトケチャップ「HEINZ TOMATO KETCHUP」が特に有名です。
で、「クラフト」「オスカー・マイヤー」などのいくつかのブランドについて、のれん代の減損が発生しました。額にして154億ドル(バークシャーも30億ドルの減損)という巨額の減損です。
それでもバフェットは同社の株を処分しないことを発表しています。
バフェットは同社の26.7%出資している大株主ですから、簡単には引けませんよね。自分の売りで下落が加速しますし、大量のバフェットフォロワーも売り追従するでしょう。
複合要因として市場の影響も大きかったです。今回の決算は10-12月期の話で、米国株市場は最悪な状態でした。
今後も売らないのであれば、クラフト・ハインツについて少し考察が必要になります。
デジタル時代に消費者の行動が変わる瞬間
そもそも、クラフト・ハインツはこのところ業績がよくありません。キャッシュが枯渇気味なので、事業売却などで工面することになるでしょうか。
また、クラフト・ハインツが消費者マインドを捉えられていないという指摘に対して、バフェットはむしろアマゾン、ウォルマート、コストコのような小売の存在を脅威として挙げています。
これは以下2つポイントがあると思っています。
- プライベートブランドの脅威
- 顧客接点を持たないリスク(ビッグデータ活用に逆行)
ナショナル・ブランドよりプライベートブランド
米国は世界と比較してもナショナル・ブランド(NB)が強い国です。14年時点なのでちょっと古いですが、プライベートブランド(PB)は20%しかありませんでした。
逆にドイツ発のアルディは店舗内のほぼ全て(95%)がPB商品で占められています。
ところが全般的にプライベートブランドのほうが成長率が上がってきています。プライベートブランドじゃなくて、最近はプライベートラベルって言うんでしょうか……。
これまで景気が悪化すると伸びてきたPBですが、景気が回復するとブランド品が再び取って代わりました。今度はそうならないかもしれない、という懸念があるわけです。
なぜなら、長らくPBは価格だけがメリットみたいなイメージがありましたが、今はオーガニック、プレミアム、グルテンフリーなどのPBも伸びているのです。無名なだけで質は変わらず、価格は安いとなれば選ぶ人は増えるでしょう。
IT’S TIME TO GET SERIOUS ABOUT PRIVATE LABEL & PRICING
また、若い人は特定のブランドに忠実ではない傾向があります。
ミレニアル世代の次のGeneration Z(Z世代)は一層合理的な人が多い世代になりますから、ブランド価値より価格、拍車がかかるのではないかと。
NBのノウハウは製造ノウハウ
NBのほうが製造業者にノウハウもあって強いだろうと思われるかもしれませんが、例えばセブンのPB商品を作っているのは山崎製パンみたいな普段NBを製造している企業です。
NBが得られるノウハウというのはあくまで製造におけるノウハウで、販売・物流ノウハウ、もっと大切な顧客データを彼らは限定的にしか手に入れられません。
小売窓口がなくなったら(ショーウィンドウに並べられなくなったら)、PBの下請けとして生き延びるしかなくなるかもしれない、ということです。
クラフト・ハインツのPB耐性
さて問題はPBを跳ね除けられるだけのブランド価値がクラフト・ハインツにあるかどうかですが、クラフト・ハインツのPB耐性は主力製品なら低くないと思います。
例えばケチャップは北米が主戦場ですが、米国含めグローバル7国でトップシェアです。
クラフト・ハインツの不調はトップシェアを取れない中途半端な製品が足を引っ張った格好なので、事業売却など整理を進めていくことと思います。
最適化の極地へ
顧客接点は実店舗またはeコマースになります。後者の勢いが非常に強いことはみなさんご存知の通りですね。
私は最近、アマゾンやグーグルなどのIT企業によって人々の生活様式がどう変わっていくのかに注目しています。
よく考えると何気なく使っているサービスにも、まだまだ無駄が多いことに気づきます。
例えば検索エンジン。
今のグーグルは検索キーワードを使ってユーザーの求める回答が載っているであろうサイトリンクをを1ページ10程度提示してくれます。だから私達ブロガーはSEOなんてものを考えてタイトルやキーワードを気にするのですが……。
そうするとユーザーは上から順番にリンクを開いてページを確認していきます。1つめ、2つめになければ3つめ、4つめ……知りたいことが分かるまでページを開いて読む必要があります。
ところで、当たり前ですがユーザーはサイトの無意味な文章を読みたいわけではなく、問題を解決するために検索をしています。
常に1つめのサイトに答えを用意出来るなら、選択肢は必要ありません。
そうした分野では、圧倒的なナンバーワンとその他大勢に分かれることになります。
食べ物に一つの解はない
ところが、食べ物というのはこの考え方に当てはめることは出来ないと思っています。
例えば米が食べたいと検索するとき、ユーザーの中にはあきたこまちが好きな人もいれば、こしひかりが好きな人もいるからです。
これは食事という行為がなにかの問題を解決するためではなく、人生を豊かにするためだからではないでしょうか。
好きな食べ物、好きなスポーツ、面白いと感じる本、漫画、映画……みんな違います。
今のAIは同じ属性でグルーピングして、その中で人気の商品をレコメンドすることは可能です。しかし、レコメンドされる商品がどの属性でも同じになることはないでしょう。
こうしたところに何かヒントがあるのでは……ということを考えたり考えなかったりします。
ではでは。