やべーついにきた。やっぱトランプはやる男だったわ。
法案は米国の企業の国際競争力を高める狙いから、法人税率を現行の35%から21%に引き下げる。トランプ氏は式典で、「企業は出ていかず(米国に)とどまる」と指摘。法案通過に尽力した上下両院の共和党執行部をねぎらった。
最も大きいのはやはり法人税の超大幅減税ですが、所得税についても中間層で年に2,000ドル(約22万円)の減税になるようですね。
10年間で約1.5兆ドル(約170兆円)もの減税が経済や株価へ与える影響は、計り知れないものになるでしょう。
ちなみに今これですからね、世界主要国で法人に対する課税が最も重い国はアメリカでした↓
法定実効税率は法人税の他に法人住民税、法人事業税を含めた総合的な税率を計算したものです。
また後で出ますが、税率の低いアイルランドには米国IT企業子会社がたくさんあります。
目次(クリックで飛びます)
減税効果のおさらい
一般的に、所得税や法人税の減税がどう経済に影響を与えるかおさらいしてみます。
読むのめんどくさかったら飛ばしてください。
企業の利益が増える
これまでの米国では当期利益の35%が国に持って行かれていたわけですが、これから21%になります。利益が増えるということです。
そして企業としては自由に使えるお金が増えることになります。お金は何かしらに使いますので、新たな事業への投資や投資家への配当還元が期待されますね。
今後米国株の分析をするにあたって、税引き後利益は大きく改善したように見えるはずです。そこは注意しないといけませんね。当ブログで見ているのは基本的に営業利益ベースなので問題ありません。
アップル、グーグルなど実態は海外子会社で節税中
といっても、実は米国企業の多くは満額の税金を納めていません。タックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる他国に利益を集めることで、合法的に税金支払いから逃れていました。
例えばアップルはアイルランド子会社に利益を移転することで、実質的な法人税支払いは15%程度とも言われています(アイルランドの法人税が12.5%だから)。キャッシュリッチな同社の現金の7割は今もアイルランドにあります。
グーグルもやっぱりアイルランドに特許知財を集約して節税を図っていますし、大なり小なり税金逃れはやってますね。
可処分所得が増える
法人税減税と合わせて所得税減税も実施されます。
これによって個人の手元に残るお金(可処分所得)も実質的に増えますから、消費活動も活発化することが予想されます。
GDPの7割を個人消費が占める米国で、個人にお金が回れば景気も良くなりそうに見えます。
ところが過去の実績から判断すると、減税による景気刺激効果にはクエスチョンマークがつくんだってさ。
減税でよる景気刺激効果は案外小さいらしい
1%の減税による設備投資へのフィードバック効果は0.1%くらいでしょうか。
同様の計測で、税収に反映されるのは減税額の10%程度だそうです。
法人税下げても給料を通じて個人に還元されないと意味がないので、個人の所得税を引き下げるほうが効果は大きいんですね。
将来の増税はあるか
減税効果について経済理論もあるのですが、私自身ちゃんと解釈しきれていないのでやめておきます。
消費行動に影響しているのは、将来の収入(安定した雇用や再増税など)を個人個人がどう考えるかだと思うんですよね。
消費関数モデルはフリードマンの恒常所得仮説やモディリアーニのライフサイクル仮説にもとづき、生涯期待所得を各年で割り振って使っていくと言われています。
経済学のモデルに登場する合理的経済人は、この消費関数モデルを元に毎年の消費を決定しますが、減税を財源とした国債発行があった場合、将来返還される分の財源を賄うために相続税などの他の税が上がると予想し、減税によって生まれた利益に手をつけません(生涯のトータルリターン予想を変えないということ)。
が、人はそんなに賢くないので、減税されたからって増えたお金を全部使うわけではないし、かといって不確定の将来のために全部貯金するわけじゃない。その曖昧な部分が景気刺激効果の差になっているように感じます。
各国が海外資本を呼び込むために減税路線を競っているので、全体的には課税が小さくなる方向で間違いないでしょう。
しかし、恒久対応とするのは難しいと思います。税収が著しく落ちたらどこかで再増税があるのではないでしょうか。これはトランプ政権後の問題なので、あと3~7年は心配要らなさそうです。
公約のインフラ投資
トランプの公約の一つが大規模な国内インフラ投資でした。その原資は税収や国債発行による調達です。歳出削減もありますが、オバマケアはとりあえず延命になってますし、歳入増のアテがあんまり見当たりません。
なので、減税してしまって手元のお金が減ったら困ると思います。そうすると日本がよくやるように国債を発行してお金を調達するしかないのですが、大規模な財政出動を好景気にやる必要があるかどうか。
GDPも物価も上昇しているので、目標としている2%程度の物価上昇があれば36年で実質負担が半減しますが……将来の負担が増えるのでどうでしょうね。
まあ今回は米国のGDP成長率が3%と好調の中で行われるもので、減収に対してある程度はカバー出来る算段がある思われますが。
また、日本はデフレ下で借金が雪だるま式に増えていますが、その半面日本国債の95%は国内で消化されているのでデフォルトリスクは低いと言われています。
法人税のパラドックス
多くのケースでは法人税を下げても法人税収は変わらずに推移します。これを法人税のパラドックスと言います。
景気が良くなって課税所得(税収ベースとなる利益)が増えるのはもちろんですが、それはさっき見た10%程度しか効果がありません。大抵の場合は同時に課税対象の拡大を行っています。今回だとレパトリ減税なのかしら。
真ん中にある法人成りというのは、法人税が安くなったため個人事業主が法人になることを指しています。
為替は上がる(米ドル高)
好景気で米国への投資が活発化すれば一層米ドルは上がるでしょう。インフラ投資や下に見るレパトリ減税も米ドル高要因になります。
これは雇用を米国に集中させたいトランプの思惑に反する部分です。自国通貨高は輸出に不利なので、せっかく国内に拠点を戻しても価格競争力に劣ることになります。
というかトランプの施策って基本的にドル高に向かっているので、それを言っても仕方ないか。
レパトリ減税
レパトリ減税というキーワードを頭に留めておきましょう。当初10%想定でしたが、他の減税による減収もあり、最終的には15.5%となったようです。
参考米企業は「悲鳴」、レパトリ税率が予想上回る-共和党税制改革案
レパトリ減税というのは、米国企業が海外に留保している利益を米国内に還流(レパトリエーション=レパトリ)する場合に税率優遇するというものです。
米国の現行法は米国内のみならず海外での利益に対しても法人税35%を課していて、ただし課税タイミングはお金を米国に戻した時になります。
なので、米国外には課税対象となったまま先延ばしにされた利益がたくさんあるんですね。具体的には2.6兆ドルも。法人税減税によるマイナス分を十分補填出来るレベルですね。
ともかく企業からすれば、今がチャンスと思って米国内にお金を戻すことが予想されます。同時に巨額のドルの実需が生まれ、ドル高になるという仕組みです。
それと、突然戻したお金を全て使い切れるわけがないので、配当や自社株買いに充てられるケースが多いのではと言われていますね。日本企業なら内部留保(再投資すらしないでキャッシュのまま保持)一択ですが、米国は株主が許さないでしょう。
参考として、2004年のブッシュ政権下でも5.25%にするというレパトリ減税が実施され、その際には3000億ドルが米国に還り、ドルは13%高になったそうです。お金の使い道も配当が大きかったようですね。
トランプはこの法案自体の変更も考えているみたいですね。他の主要国のように海外利益に対して原則非課税という変更をした場合、継続してお金が米国に流れることが期待されます。
減税政策で18年の株価はどう動くか?
理論はこのくらいで良いですかね。当ブログとしては株価の変動を考えてみたいところです。
米国株そろそろキツそう……でも
米国株は17年に大きく伸びていて、現在PER20倍以上とかなり高値まで来ています。正直2018年にはやや悲観的です。
それに米国に資金還元されると同時にFOMCが利上げしそうなので、上値を押さえられる形でコントロールすると思います。
加えて減税による景気刺激効果も限定的ですので、株価に大きなインパクトを与えないのではと予想します。つまり元々の想定通りやや悲観くらいに見ています。
まあ来年も買うんですけどね。
多少なりとも安く買おうとはしますが、米国は結局トータルリターンでプラスになることが期待できるのでね。タイミング測るのはもっとジャンキーな株に限ります。私はそういう財布の分け方をしています。
ちなみに日本株が好調を維持出来るかはもっと微妙です。国がETF買ってるうちはいいんですけど、いつまで続くか分からず。
日本も減税政策を打ち出すのでしょうか。どっちでもいいですが消費税上げるのはやめてほしいものです。
少なくとも臨時配当が増えると思う
とはいえ、上で見たように配当金は増えると思います。最近米国企業では配当の二重課税を嫌って自社株買いの方が優勢ですが、今の株価が高いので自社株買いは積極的に推進しないと予想。
なので配当還元が多いと思います。これは嬉しい。
まあ上でぐだぐだ考えた通り、
いつまで減税が続くか?
というのがキーかなあ。
就任後これまで公約を実行出来てないと言われていたトランプがちゃんと実行力を示せたということで、転換点になるかもしれません。
2020年の選挙頃には減税によって市中にお金が回って高支持率ということまで計算しているのだとしたら、トランプ政権続きそう^^