これまで電子書籍関連で色々と見てきましたが、ちょっとご親戚ということで、Webを利用したコンテンツビジネスを展開するアルファポリスについて検討してみましょう。
結論から言うと、今すぐに買える銘柄ではありませんが、ウォッチリストには入れても良さそうな感じでした。
電子書籍に興味がある方はこちらをどうぞ。
目次(クリックで飛びます)
アルファポリスのビジネスモデル
事業紹介ページにしっかりくっきり書いてます。
上にある通り、Web上で掲載された無料の人気作品を書籍化するモデルです。Webサイト運営から出版までを扱っており、出版物も漫画、小説、文芸と幅広いです。
また、アルファポリスは差別化のためある程度成人した層をターゲットとしているようですね。SHIROBAKOみたいに社会人モノの需要がこれから増えそうな気がしていますし、レーベルカラーになればよい感じです(ついでに単価も上げることに成功しているのですね。これは素晴らしい)。
Web発コンテンツの勢いがすごい
得意分野で恐縮ですが、昨今のサブカルで言うと、人気作はWeb発のものかオリジナルに偏っています。
こちらではランキング1,2,4位を取っていますね。集計方法で色々結果が変わってくるものですが、どこを見てもランキング上位独占状態。今期のアニメでも評判がいいのは間違いなくこのすば。
編集側からしてもこのモデルは都合が良いのです。自分達が面白いというだけでなく、Web上の無数の読者が高い評価を既に下しているわけですから、一定以上の需要が見込めるのです(リスクの低減)。もちろんWeb版からの固定ファンの存在も大きいです。
アルファポリスの人気作品
ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
主人公が三十歳すぎていたり、政治的なテーマが出てきたりと、明らかに対象年齢が高く設定されています。自衛官が異世界に踏み込み、現代の先進技術で戦う物語。著者は自衛官経験者とのことです。累計380万部突破の大ヒット作。
レイン
ラブコメ多めのファンタジーもの。こちらも100万部超えだそうです。
この他にもアルファポリスのHPを見ていると、10~30万部のヒット作をポンポン飛ばしている印象があります(読んでいないので詳しく紹介出来ませんが、月が導く異世界道中、異世界転生騒動記などなど……)。
将来性
コンテンツ自体は新しいものが生み出されるたびに市場が広がりますが、気にしないといけないのは、無料が主流の中でコンテンツビジネスが成立するかということと、パイの奪い合いにならないかということ。
前者について、インターネットが生み出した無料ビジネスについてはこちらが詳しいのですが、今後主流になっていくであろうビジネスモデルは、コンテンツは無料として、その中でも気に入った少数から課金して成り立つモデルにすべきとしています(フリーミアム)。
ちなみにフリーでは以下4つの戦略を説明しています。
- 直接的内部相互補助:抱き合わせ商法などで、無料と有料を組み合わせる。
- 三者間市場:広告による収益。
- フリーミアム:上の話。
- 非貨幣市場:たぶん最近一番活発かもしれない。贈与経済などの互いの信用を元にした取引(物々交換)みたいな原初的経済に戻るかもしれない的なことがよく言われていますが、Webによって誰もが情報発信可能な時代では個人の信用に価値を見出すのは自然なことだと思います。
回り道しましたが、アルファポリスの戦略はまさにこのフリーミアムですね。コンテンツは基本的に無料になりますが、それでも一部のユーザからお金を落としてもらえればビジネスが成り立つわけです。実際それで収益が上がっているのですから、当面は問題ないでしょう。
継続性
パイの奪い合いについて考えます。
このモデルは真似されやすいか?
その視点で見ると、立ち上げに対する参入障壁は特になく、競争激化は予想されます。
独自性についても、アルファポリス独自のものというのは難しく、強いて言えば集まってきたコンテンツそのものが独自性です。
しかしながら、私はアルファポリスの立ち位置は安定的と見ています。確かに参入障壁は特にないのですが、たくさんの「読者」と「コンテンツ」を一から集めるのは非常に厳しいからです。読者がいなければ作者も来ませんし、コンテンツが少なければ当然読者もやって来ません。その意味で、アルファポリスの価値は電網浮遊都市アルファポリスというコミュニティそのものなのです。
よって、モデルはそうそう真似出来ないという結論です。
アルファポリスの立ち位置は?
Web小説系では似たようなところがいくつかあります。それらと比較するとどうなのでしょうか。以下のサイト様を参考にさせていただきました。
- 小説家になろう:言わずと知れた最大手。圧倒的な読者とコンテンツを有する「なろう」に飲み込まれることが最大の懸念点。(全部のWeb小説に言えることかもしれませんが)こちらは完全に異世界チーレムに偏っており、ランキングの変更等で差別化は不可能ではないはず。あるいはコミックで差別化ということも考えられます。そして彼らの収益源は書籍化ではなく広告収入です。
- カクヨム:最近出てきた角川グループ主体のサービス。これからなのでなんとも言えないですが、なろうの競合として重要なのはこちらじゃないかなと思います。
- ハーメルン:二次創作可という点で異色。ただ二次創作では売り物に出来ませんので、ちょっと競合とは違うかも。
- エブリスタ:ケータイ小説投稿サイト時代からのサイトで、書籍化実績は圧倒的(王様ゲームなど)。
あるいはコミックならこんなところが強いです。
- マンガボックスインディーズ:読者数圧倒的。DeNA運営ですね。
- ニコニコ静画:ニコニコ動画が有名ですが、静画のほうも。「だがしかし」とかも読めるんだとか。
- 少年ジャンプルーキー:ジャンプの漫画投稿サイトで、プロ目指して短編完結の作品が多く載せられています。
いずれにしてもアルファポリスは有名どころと比較すると小さめな印象はあります。より大きなところに人が流れないか、若干の心配はあります。
縮退抵抗
有望なコンテンツが出てこない可能性
これは気にしないでいいと思っています。無数にある作品から有望な作品がWeb読者を通じて選別されている構造が優秀なためです。
というのも、例えば100作品の中のひとつと、1万作品の中のひとつではヒット作の発生確率が段違いになります。大数の法則で当然良いものは母数が多い方から出てきますし、逆にこれだけ作品数があればひとつふたつヒット作になるでしょう。ところで私の作品を採用するというのどうでしょうか。
懸念としては上に挙げた競合との競争に向けられそうです。
不景気で娯楽費が削られる
不景気になると自然と財布の紐を締めることになります。日用品などは不景気だろうと簡単に削れないのですが、娯楽・レジャー・交際費は節約する項目の筆頭です。これは娯楽産業の宿命なのでどうしようもないです。
スマホゲーム普及による隙間時間の奪い合い
前に記事にしました。
ただ、上にも少し書きましたが、アルファポリスのターゲット層は比較的高めの20~40代なので、少し違う結果になるかもしれないと思っています(電車内ではおっさんがスマホゲームやっているのもよく見かけますが)。
Amazonを利用して著者が直接出版
Amazonを利用して個人での出版が簡単な時代ですので、場合によっては大きな競合になり得ます。著者としてはそのほうが印税高いですからね。
とはいえ、レーベルの信用や広報が得られない、編集の校正もないというデメリットも無視できないレベルですので、出版社の役割がそのまま消えるわけではないでしょう。
各種経営指標
売上高、営業利益共に伸びています。売上高営業利益率は30%程度と、結構いい数字です。Web系はみんな利益率が高いですが。
また、最新15年度3Qの有価証券報告書を読むとこんな感じです。
- 業績は緩やかに改善している。
- 編集部員強化によるWeb書籍化の加速を進めた。
- 主力商品「ゲート」のメディアミックス展開を拡大中。また、「ゲート」最新話更新日は一日に4.5万人が閲覧。
- 四半期あたり出版点数は299点(前年同期比47点増)、新規Web連載漫画本数は25点(同7点増)、及びWebコンテンツ登録数は8,742点(同5,716点増)と右肩上がりに推移。特に漫画が業績を引っ張っている。
- ※取次会社の栗田出版販売株式会社が6月に倒産し、影響を受けていたようです。
- ビジネス分野への拡大に取り組み、一定の成果。
うん、ゲートが終わったらどうするんだろう? という疑問が。早く第二の柱を立てて欲しいところです。
アルファポリスの株価爆発成長モデル
起爆剤はどこにあるのでしょうか。
言うまでもなく、メガヒットコンテンツの登場
コンテンツ産業にはよくあることですが、一つのヒット作が会社そのものを変えてしまいます(ゲームで言えばパズドラのガンホーとかね)。
メガヒット作は書籍の売上のみならず、メディアミックス展開によってグッズ収入なども期待が持てます。実際アルファポリスはゲートの収益が非常に大きいですしね。
読んでいてこれ絶対面白いと思ったら株買えばいいんですから、ある意味分かりやすい。
なおゲートのアニメ化(一期)の告知は調べたら14年12月でしたが、株価は反応しませんでした。
スマホゲームとは違って、大きく当てようとしてスタートするのではなく少しずつ人気が出て育っていくものなので、株価への影響は測りにくいかもしれませんね。
その他の妄想……
なんか最新技術とかと組み合わせてみるw
グーグル自動翻訳が完成したら
今は日本語で書いて日本人向けにしか売っていないコンテンツビジネスですが(お金かけて翻訳すれば別)、誰でも簡単に語学の壁を乗り越えられるようになれば読者はもちろん作者も桁一つ増えると思われます。
人工知能が小説を書く
やめてください。作家が死んじゃうでしょ。
ただまあ、これが実用化すれば小説の幅はぐっと広がりそうではありますね。良くも悪くも。
少しもったいないのは、起爆剤がさほど見当たらないことです。強いて言えば日本の文化発信「クールジャパン」という国策に繋がるとは思うのですが、流石にこじつけが過ぎますかね……。
株価と売買タイミングチェック
以上により、アルファポリスはウォッチ銘柄に入れて良いかなと考えています。ちょっと基盤に弱いところもありますが、頑張って欲しいという思いも込めて。
チャートはこんな感じです(16/3/27現在)。はい、2,000まで落ちたら買いたかったんですが、跳ね上がって行きました……。
買いポイント
やっぱり買いは2,000以下だと思います。見ての通り14/10/30にマザーズ上場したばかりで、好景気の時期しかチャートは反映されていません。市況全体が悪化することを考えると、一回1,564の最安値を割ってからでもいいかもしれません。下げた時に仕込んで上がったら売る、が王道ですよ。
事実このチャートでは2,000はかなり固い足場になっているように見えるので、ここを割っていくようなら市況あるいは業績悪化している可能性もあり、機械的に買うわけにもいきません。1,500以下で買うならむしろ1,000まで待つくらいでいいかも。
ということで、2,000に近づいたらもう一度戦略考えます。
売りポイント
ルール通りですね。3,000あたりで決済、1,500以下(購入時チャート見て判断)で損切りだと思います。もちろん業績や優位性が継続していることが前提となります。
優待もあるよ。
ちなみに、毎年3月31日に100株以上持っていると、好きな本2冊もらえるらしいです。一冊当たり単価が高いので、たぶん1,500~2,000円くらいでしょうか。
ということで、当面はウォッチリストに入れて監視しておきます。
評価:★★★☆☆
今回はここまでです。ありがとうございました。