先週はアフターコロナ言ってたら、マーケットを舐めるなと釘を刺すように大暴落を食らったわけですが、私としては下がったら買いの方針に変わりありません。
みなさんの中にも高配当株を漁ろうという人が多いのではないかと思います。
過去のデータ上、利回りが高いほど株価リターンが高くなります。高配当はスマートベータとしても優秀です。
しかし、利回りだけ見て買いに走るのはおすすめしません。
利回りが高いとはつまり株価が下がっているわけですが、株価が下がるにはそれなりに理由があるからです(このグラフにも生存バイアスがかかっていますし)
目次(クリックで飛びます)
高配当株がアウトパフォームする理屈
高配当株が高い投資リターンをもたらす理由は、シーゲル先生の赤本に書いてあります(気づけばAmazonレビューが100件超えてる……!)
市場平均をアウトパフォームする投資法は、永続的なキャッシュを生む企業に対する配当再投資戦略である、という本です。
その投資法の筆頭株が、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)でした。
期待リターンと実益とのギャップ=投資リターン
投資成績を決めるのはバリュエーションです。
成長する株が高いリターンをもたらすわけではなく、期待収益と実収益の差が大きいほど高いリターンをもたらす、ということですね。
成長率の高い株は過大評価され、成長率の低い市場にある増収増益(キャッシュリッチ)企業は過小評価されます。
前者の筆頭がハイテク株で、後者の筆頭がフィリップ・モリス・インターナショナルでした。
高配当銘柄は下落相場でプロテクター(高い利回りで積み増しし、配当によって損益点が切り下がる、株価回復時のリターンが早い)になり、上昇相場ではアクセル(下落相場に配当再投資で積み増ししたことが、上昇相場で実る)になります。
つまり、今回のコロナのように一斉に売られて価格が下がったときに、バリュエーションの差が大きい企業を買い増ししていくと、アフターコロナでリターンが大きくなります。
問題は、現在の不調(下落)がコロナによる一時的な影響なのか、元から危険な業界なのか。その判断です。
一応補足すると、フィリップ・モリスが高いリターンを叩き出したことで、高配当株=高リターンとはなりません。
PERは10倍以下で、株価が過小評価されてきたというのが正しいと思います。その中で業界3~4番手からトップに躍り出たという背景があります。
高利回りだけで飛びついてはいけない
S&P500構成銘柄から配当利回り上位を見ていくと、魔境ぶりがわかるかもしれません。
S&P500に採用される企業は過去4年に渡って財務優良であることが要件付けられています。そのため、どこぞの無名企業はランキングに含まれません。
米大手百貨店メーシーズの利回りは……
例えば配当利回りトップのメーシーズ(M)はなんと利回り26.82%ですが、15年から逆テンバガー達成しています。10分の1ですよ。すごくない?
それもそのはず、メーシーズは米国で有名な百貨店です。
日本の三越伊勢丹なども厳しい経営を強いられていますが、メーシーズも2020年2月時点で125店を閉鎖するなど追い込まれたところにコロナが来てしまいました。コロナで店を開けず売上はほとんどゼロ。
なお米国ではスーパー最大手のシアーズや、百貨店大手JCペニーが既に経営破綻となっています。
百貨店、デパート業界はレッドオーシャンなのです。
利回りに釣られて買ってもすぐ減配が目に見えているので、飛び込んではいけません。コロナで一時的に悪化しているのではなく、元から危ない業界ですからね……。
同じく利回り15.24%のコールズ(KSS)も百貨店です。
衣料品、旅行系が利回り上位に並ぶ
他を眺めていると、衣料品や旅行系が上位に並んでいます。いずれも薄利多売な業界ですが、コロナが落ち着けばまだ可能性はあると思います。
- トリップ・アドバイザー(TRIP):利回り20.86%
- カーニバル(CCL):利回り19.59%
- ギャップ(GPS):利回り13.98%
- エル・ブランズ(LB):利回り12.11%
一方で、コロナによって変わってしまい、戻らない生活様式もあるでしょう。
例えば、(このランキングにはありませんが)日本で言えば現金→電子マネーの置き換えが挙げられます。
あれ、明らかに電子マネーのほうが便利なので、コロナが収束したってもとに戻らないですよね。
現金勢力が抵抗していたところを、たまたまコロナがきっかけになったというだけのことなので。
なお日本の現金比率は20%程度ですが、米国も55%と余地が残されています。最近VISA(V)の分析記事と動画を作ったので、興味湧いたら見てください。
日本株の利回り上位勢の今後は……
日本の高利回り株は今こんな感じ。
JTはいいんだ。JTは最強だからいい(脳死)
目立つのはこの前REIT暴落も記憶に新しい投資法人ですね。分配金を多く出すので利回りは高くなりやすいですが、株安でさらに高い利回りを出しています。
あとは銀行、自動車、商社なんかが上位にずらりと並びますが、これらは景気敏感株なので配当狙いとしてはミスマッチな業界です。
リーマンショックで減配したのは、例えば以下のような株。
- 三井住友銀行:配当25%減
- 日産自動車:配当なし
- 三菱商事:配当33%減
ディフェンシブ銘柄と呼ばれる、生活必需品やヘルスケアセクターの高配当株とは不景気の安定感が異なります。
これらは過去リターンが高かったセクターでもあります。
セクター | 平均リターン(%) |
---|---|
ヘルスケア | 14.19 |
生活必需品 | 13.36 |
情報技術 | 11.39 |
エネルギー | 11.32 |
一般消費財 | 11.09 |
金融 | 10.58 |
資本財 | 10.22 |
電気通信 | 9.63 |
公共事業 | 9.52 |
素材 | 8.18 |
S&P500平均 | 10.85 |
ということで、安易に高利回り株を狙うと痛い目を見るというお話でした。
じゃあ具体的にどんな株がいいんだろうというのは、次の記事と動画で。
関連記事です。
配当金額はリセッションに25~30%ほど落ちます。日本株、米国株とも同様です。心づもりとして覚えておきたいです。
とはいえ、連続増配銘柄はその限りではありません。50年以上増配を続ける「配当王:Dividend Kings」は現在29銘柄あります。
その全銘柄を分析しています。
高配当再投資について知らなかったという人は、是非シーゲル先生の赤本を読んでみてください。
ではでは。