昨今流行りのレバレッジETFや(ダブル)インバースETF。
その多くは日経平均やTOPIXをベンチマークとしたブル、ベアの指数なのですが、FXではお馴染みのレバレッジ(てこ)の力で、元の指数の二倍動くという点が特徴的です。主に短期投資家に非常に人気が出ています。
今回は、このレバレッジETF、インバースETFを見てみたいと思います。
日経平均、TOPIX、JPX400についての詳細は、以下の前記事をご参照ください。
また、合わせて海外主要指数であるS&P500、ダウ工業株30種平均はこちらになります。ご参考までに。
目次(クリックで飛びます)
レバレッジETF、インバースETF
現在の市場取引高上位を独占しているのは、レバレッジETF、インバースETFです。
代表的なレバレッジETFである、日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(日経レバ:1570)は、15年度の累計売買代金が約40兆円と、2位のトヨタ自動車(16兆円)を圧倒的に引き離してしまっています。
あまりの人気っぷりに昨年10月には日経レバ含めたいくつかのETFが募集を中止する事態にまでなりました。
現在日本株を対象としたレバレッジETF・インバースETFは、日経平均、TOPIX、JPX400をベンチマークとしたものだけです(レバレッジ:2倍、インバース:-1倍、ダブルインバース:-2倍のそれぞれ9銘柄)。
前回記事で日経平均でOKと結論付けましたので、今回は日経レバ(1570)と、日経ダブルインバース(1357)を中心に見ていきましょう。
レバレッジETF、インバースETFの仕組みは?
まずは仕組みを理解しましょう。
ハイリターンだけどリスクも高い!? 今注目の「レバレッジ型ETF」って何?
こちらの記事にあるように、レバレッジETFは前日の基準価格に対する変動率の2倍となるように設定されています。
例えば前日15,000だった日経平均が16,000になったら、1,000÷15,000×100=6.67%の上昇になります。レバレッジETFはその変動率の2倍動きますので、6.67×2=13.34%上昇するわけです。変動額の倍増ではなく、変動率の倍増である点に注意しましょう(ダブルインバースは逆にマイナス2倍します)。
このことから、以下の3つの特徴があります。
- 連続上昇すると、元本が膨らみ、複利効果で価格の2倍以上上昇していく(下落も同じ)
- 上下動するレンジ相場では、価格が下がっていく
- 一旦下落すると元本が小さくなるので、市場が回復してもETFの回復が追いつかない
2、3については以下のイメージです。
実際に、15年度のレバレッジETF騰落率は、日経平均の1.66倍にとどまりました。端的に表現されているので、そのまま引用させていただきます。
また、15年1月以降の全期間では日経平均が8.8%値上がりしたのに対して「日経レバ」は14.6%の上昇、倍率は1.66倍にとどまった。夏場の急落もあったが、長い目で見れば、せっかく上昇相場に乗ることができたのに日経平均の1.66倍しか値上がりしなかったのは腑に落ちないだろう。このようにある程度の期間保有すると2倍にならないのは、「日経レバ」に限った話ではない。レバレッジ型ETFに共通の宿命だ。
もうちょっと短い期間だと、なんと原資である日経平均にレバレッジ、インバースとも負けるという事態まで発生します。
レバレッジETFはあくまでも毎日の日経平均の2倍動くETFであって、長期で持ってもその恩恵を受けることは出来ません。その特徴を理解したトレードが必要です。
レバレッジETF、インバースETFの投資戦略
狙うべきはこの二つです。特徴を理解し、優位性を活かした投資方法を考えましょう。
日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(1570)
その日の騰落率の2倍動くという仕組みですので、持てば持つほど基準から乖離していきます。基本的に下がる速度が上がる速度を上回りますので、中々回復せず、リスクリワードがつり合わない場面が多々出てきます(特徴3)。
つまり、完全な短期投資向けのETFです。デイ~数日内で決済するときに狙うべきですが、そのためには数日のトレンドについてのシナリオと、手仕舞いの判断(利確、損切り)が必要になります。
日経平均レベルであれば大数の法則でチャート分析も意味が出てくるので、FXの記事のようにチャートでルール化しましょう。ニュースの意識は不要ですが、大きなイベントはシナリオを曲げられますので外しましょう。
また、一応ETFなので信託報酬として0.8%かかります。流石に野村さんで高いけど、他のは出来高小さすぎて投資対象にもなりませんので仕方なしです(どうせ数日決済するなら信託報酬より出来高で選びましょう)。また、これまで分配金は出していないようです。
日経平均との比較チャート
もちろん青い方がレバレッジETFです。上昇相場では2倍以上乖離していることが分かると思います。
日経ダブルインバース上場投信(1357)
やっぱり信託報酬は0.8%で、分配金は出していません。
レバレッジETFと同じく、狙いは短期投資で、考え方も単純です。
割高なラインってあるじゃないですか、大体23,000円くらい行ったら割高だなあとか思っていたんですが、ある程度行ったら今持っている銘柄を放出したり、売りでリスクヘッジがしたくなります。その時に活用出来るんですね。
これが信用取引だと売りのリスクは天井知らず(買いには0円という明確なリミットがありますが、売りにはありません)のため、タイミングを見誤ると大変なことになります。信用取引自体も敷居が高いですよね。
ところが、このインバースETFは下落すると儲かる銘柄でありながら、買いで入ることが出来ます(決済日も追証もなく)。投資家としては大変ありがたいリスクヘッジになりますし、反発ラインでちょくちょく入って儲ける戦略が通用します。もちろん、リスクヘッジと言っても、保有株がダラダラと下がってきたらちゃんと利確(損切り)しましょう。
インバースの長期保有は……
こんな風に、基本は短期でやるべきなんですけどね、実際のところインバースの方は割安投資目的で、少し(数か月くらい)だけという条件付きで、長期保有も「なくなはい」と思ってるんですよ。あくまで少しですよ。
当然仕組み的に減価が発生しますし、ベンチマークとも乖離してしまいますが……通常、相場は上がるよりも下がる勢いの方が強く、どんな売りポジションでもそれなり以上に稼ぐことは出来ます(1の複利効果で一気に稼ぎやすい)。
そして何より日経平均が高水準で買えそうな株がない時にインバースETFは割安になるので、資金が浮いたタイミングで収益機会が発生しやすいのです。
戦略としては、日経が割高水準でレンジを下抜けたのを見てインバースETFを買い、レンジが続くなら切るという方針ですね。保有中の数か月は安値更新にチャレンジする様子を見つつ、もし日本経済が回復しそうなら切ります。上昇に耐え続けてもリスクリワードが釣り合いませんし、耐える気なら信用売りでいいです。
まとめると、インバースETFは短期投資としてのリスクヘッジ戦略と、少し長い保有期間で収益機会増加が見込めるのです。
日経平均との比較チャート
青がダブルインバースです。少し非線対称な図形を描いているように見えます。
レバレッジETFを空売りする場合
ところで、このレバレッジETFとインバースETFは全く逆の動きをすると思いますか?
答えはこんな感じです。青がダブルインバース、黄色が日経レバETF。結構動きが異なっているのは、上昇トレンドが続いたからです。
日経レバETFの方が活発で出来高も多く、取引しやすいのが理由ですが、もう一点だけ。
レバレッジETFは性質上レンジで下がる傾向があるという話でした。これを狙って売りで入る人がいるみたいです(インバースETFを買っても、レンジでは儲からない)。
せっかくなので、日経平均も足してみました(紫が日経平均です)。
その他にも
香港ハンセン(2031、2032)や金(2036、2037)、原油(2038、2039)など、ブル、ベアETFが用意されています。買うほどのものとは思いませんが、もしポートフォリオに加えようと思うのであればご検討ください。
当ブログでは他のオススメETFも紹介しています。気になる方は以下の記事からどうぞ。
以下のリンクから直接飛ぶことも可能です。
銘柄名 (リンク先は分析記事) | ティッカー |
---|---|
VTI(米国全株式市場) | VTI |
VYM/HDV/VIG(米国高配当セクター) | VYM/HDV/VIG |
VWO/EEM(新興国セクター) | VWO/EEM |
VDC/XLP(米国生活必需品セクター) | VDC/XLP |
VHT(米国ヘルスケアセクター) | VHT |
VBR/VBK(米国小型株) | VBR/VBK |
VEA/VGK(米国外株式市場:先進国・欧州) | VEA/VGK |
VT/VEU(全世界株式市場) | VT/VEU |
VSS/VXUS(米国外株式市場:小型株) | VSS/VXUS |
日経平均/TOPIX/JPX400 | 1346/1348 |
S&P500/ダウ工業株30種 | VOO/DIA |
パワーシェアーズQQQ | QQQ |
PFF(米国優先株式) | PFF |
1570/1357(日経レバレッジ/ダブルインバース) | 1570/1357 |
GLD/IAU(金) | GLD/IAU |
1699/USO(原油) | 1699/USO |
SLV/DBA/DBC/VDE(その他のコモディティ・エネルギー) | SLV/DBA/DBC/VDE |
REIT(不動産投資信託) | - |
インデックスファンドまとめ | - |