投資家はプロスペクト理論だけは確実に勉強しておくべきだと常々思っています。
なぜ私達は投資に失敗するのか?
この問いに半分くらい答えてくれる理論です。
今回は基本的な部分を見ていきたいと思います。
追記)本内容をまとめて動画にしました!
目次(クリックで飛びます)
結論
プロスペクト理論は、損失を回避したがる心の動きです。
1万円をもらう喜びよりも、1万円を失う心の痛みのほうが大きい。
保有株が利益を出しているとすぐ利確したくなるのに、損を出していると反転しないかと少し待ってみたくなる。
そういう理論ですね。
ちょっと難しめに書くと、以下の2つの要素で成り立っています。
- 参照点効果:儲けた金額の絶対値ではなく、ある地点からの儲けと損失で評価すること
- 反転効果:儲ける場面では確実な利益を選択し、損する場面では少しでも損を避ける選択をするということ
利益は手堅く守り、損失は博打を
あんまクジの例好きではないんですが、実験結果が出ていることと、一番わかり易いので使いましょう。
例1
1万円を使わないといけないとして、どっちのクジを買いますか。
- 確実に2500を得られるクジ
- 25%の確率で1万円が得られるが、75%の確率で何も得られないクジ
例2
1万円を使わないといけないとして、どっちのクジを買いますか。
- 確実に2500を失うクジ
- 25%の確率で1万円を失うが、75%の確率で何も失わないクジ
例1では上を、例2では下を選んだ人が多かったはずです。
上下とも期待値は同じですよね。
同じであればより確実な結果が得られるほうを重視するべきですから、正しい回答は「両方上」ということになります。
しかしながら、問題の本質は同じにも関わらず、多くの人は答えを変えました。
期待値や金額の大小ではなく、ある地点から儲けるか損をするかどうかで行動を変えるのです。
- 儲けられる時はより確実に利益が得られるほうを選ぶ
- 損をする時はリスクを取ってでも損をしない可能性があるほうを選ぶ
こういうことですね。
同じ1万円はもらうより払うほうが辛い
例3
コインの表裏を当てるゲームをする。外れたら1万円を支払うとして、当てたらいくらもらえれるならゲームに参加するか。
実験だと2万~2.5万円という答えが多かったようです。
半値になるかもしれない投資先だったら、5倍になる可能性がないと割に合わない。そういう考えです。
もちろん合理的に考えれば1万1円もらえるならやりますよね。だってずっとやっていたら大数の法則でプラスになるから。
逆にリスクリワードが「1:2.5」って相当優れたトレードだと思いませんか。
この例から分かるように、同じ金額の利益と損失が心に与える影響は、まったくもって同じではありません。
先ほどの例1,2と合わせて、以下のように非対称な曲線になります。
もう一度言いますが、無意識にこういう心の動きをします。
- 利益が得られそうだと危機回避的な安定志向になり
- 損失が出そうだと危機追求的なリスクテイク志向になる
投資において「損小利大」が出来なくて、いつも「コツコツドカン」をやらかすのは、ある意味当然のことなのです。
相場というのは、普通にやると普通に負けるように出来ている
厳密ではないですが、先ほどまでの話を相場に当てはめるとこんな感じになります。
赤い矢印で買ったとして、
- ①で少しでも利益が出ると、確実に取りたくて慌てて利確してしまう
- ②で利益が減ってくると(参照点が利益の頂点になる)、まだ戻るはずだとしばらく待つ
- ③で買った時より下がってくると、必ず戻るはずだと放置して待つ
普通にやるとこんなトレードになります。
(和波はこの例だとそもそもこの位置で買わないので、どうすれば良いとも言えないのですが……^^;)
トレードに勝つというのは、人間の基本的心理に反しているのです。
普通にやったら普通に負ける、相場はそういう風に出来ています。そしてあなたはおそらく特別な精神構造を持った人間ではありません。
とすると、マインド改革をするか、仕組みで回避する他ありません。後者のほうがより現実的ですね。
対処方針
対処するための方法はこちらの記事に書きました。再掲します。
定期購入
定期的な買い付けルールは株価の高い安いを無視し、余計なバイアスを取っ払って取引が出来るよい手段です。
もちろん投資先がトータル期待値でプラスになる優位性を持っている必要があります。
条件売買
単純にするなら短期MAと長期MAとが交差したから買うみたいなルール。亜種はシストレ。
これも手法の優位性や十分な資金管理の知識があってこそです。
おまけ:従来の理論=期待効用理論との対比
行動経済学は従来の経済学が前提とする合理的経済人に変わって、もっと実際的な人間心理に重点を置いた学問として誕生しました。
この期待効用理論における前提は、
- 人はあらゆる選択肢を知っていて
- その中で一貫して最も期待値の高い選択肢を選び
- 効用を最大化させることを第一に考える
というもの。
一方のプロスペクト理論が対比しているのは、
- 人はあらゆる選択肢を知らなくて
- 利益と損失で選択肢を変え
- 利益局面ではより確実な利益を、損失局面では少しでも損失を回避することを考える
なるべく難しい言葉を避けて説明すると、こんな感じになるでしょうか。
今度はプロスペクト理論が実際のトレードに与える影響をもっと深く見ていきたいと思います。
アンカリング効果について記事にしています。よかったら合わせてどうぞ。
直近では、行動経済学の権威であるセイラー教授がノーベル経済学賞を受賞しています。
セイラー教授の本は難しいですが、オススメです。
動画もぜひ(チャンネル登録もよろしくおねがいします!)
ではでは。