今回は信用取引について見てみます。取引自体はしない場合でも、覚えておくと便利なことがいくつかありますので。
信用取引とは
信用取引というのは、証券会社からお金を借りて株を買う、または株券を借りてそれを売るという仕組みのことです。
例えば既に100万円の株を保有していて、さらに別の株が欲しいけどお金がないという場合に、その100万円の株を担保にして融資してもらうことが出来ます。
FXと同じくレバレッジを効かせられるということですね。信用取引では担保となるお金の約3.3倍までのお金を借りることが出来ます。
自己資金より大きなお金で売買出来るということは、収入も損失もそれだけ大きくなるということです。
レバレッジは決して悪いことではない
投資を知らない人はレバレッジについて「借金して投資するから大損する=危険」という誤解をしています。というか無条件に借金=悪という固定観念がある気がします(それを言うなら投資=ギャンブル=悪というしょうもない風潮も……^^;
しかしですね、資金効率を最大化させるレバレッジ取引が悪いわけないじゃないですか。
元手が100万円しかない人より300万円ある人のほうが早く資産が増えるに決まっています。借金は資本主義の成長源泉であって、要は返済利率より資産の成長率が大きければ、まさに「富が富を生む状態」になるのですから。
取引で追証が出るほど大損したならそれはレバレッジをかけたことが原因ではなく、単純に資金管理が出来ていなかっただけの話です。
投資というのは必ず勝てるわけではありません。優位性のない投資がいたずらに資産を減らすだけというのは、別に現物だって同じはずですよね。
出口戦略の明確化やサイジング等のリスク管理をしっかりやった上で、勝てそうな勝負なら資金をつぎ込むのです。自信があるなら勝負する金額は大きいほうがいいです。
金利は高い
一方で、信用取引は長期投資に全く向いていないことも明記しておきます。なぜならお金はタダで借りられるわけではなく、日々金利が取られてしまうからです。
そもそも信用取引は基本的に6か月で清算されます。最近は無期限のものもありますが、支払い金利3%以上になるので、かなり痛いです。
また、信用売であれば逆日歩という費用が発生する可能性もあります。売りだと証券会社から株を借りるのですが、その証券会社にもう株がない場合はまた他から借りてくる必要があります。この調達費用も手数料として負担することになります。
売りポジションが取れる
信用取引の特徴として「カラ売り」があります。これは証券会社から株を借りて売ることで、通常とは逆に下落局面で利益を上げることが可能になります。
売りから入るというのは通常の株取引にはない魅力で、上手くやれば下落局面で利益を生むことが可能です。上手くやればですよ。
両建てについて
売りポジションが取れるということは、両建てが出来るということです。
両建てを簡単に言うと一つの銘柄に対して買いポジションと売りポジションの両方を持つことで、同じ株数であれば値動きが完全に相殺されます。
期待値で考えると常に手数料分だけ損失が発生することになりますので、両建て自体はオススメされないやり方と言われています。
ただ、目先の下落が分かっていて、でもポジションを解消したくない場合に、一時的なヘッジとして有効だったりします。
私も一時FXで両建てを使った手法をやっていましたが、どちらかと言うと心理的な避難先を用意する意味で使っていました。危なくなったら両建てするというより、両建てでポジション取って上手く行きそうなら逆を外すって感じです。入り口を考えなくて良いので楽でした。
あとは昔の金利が高かった頃にほぼノーリスクで稼げる手法として、業者間で設定されるスワップポイント差を活かした売買なんかもやってたことあったような。
ある業者だと豪ドル円の買いで毎日300円、またある業者は豪ドル円の売りで毎日-150円、みたいなのがあったので、両建てで値動きを消してスワポ差分だけ受け取るというやつです。ま、資金効率悪すぎてすぐやめましたがw
この辺の話はまたいつか。
下落は早い
相場の動きとして、上昇は遅く下落は早いという傾向があります。上げ100日、下げ3日なんて格言もあるくらいです。
過去約15年間(1999/2/25~2014/3/24)の日経平均株価の推移を見ると、前営業日に対し上昇した日数は1,880日、下落した日数は1,821日で上昇した日数の方が59日多い。
1999/2/25の日経平均株価は14,470.45円で2014/3/24の株価14,475.30円とほぼ同じ水準であるから、株価が上下に動いた幅はほぼ同じである。
そのため、日数の多い株価上昇の方がゆっくりと動いたことになる。
この傾向は株式市場に限らず、債券市場や為替市場でも同様の傾向が見られた。
理由はいくつかあります。
心理的な面
結局記事を書けていないのですが、行動経済学のプロスペクト理論によれば、損失は利益の2倍痛みを感じるものだそうです。
これが「利小損大」という損小利大の真逆をやってしまう人間心理です。
つまりちょっとでも上がるとビビって利確(だから上昇はゆっくり)、一方で下がり出すとみんなパニックになって損切り(だから下落は一気に)というものです。
それに上昇トレンドというのはポジションを持っていない人が作るものです(だってこれから買うから)。投資に見逃し三振はないのですから買えたり買えなかったりする人がいます。
逆に下降トレンドを作るのは既にポジションを持っていて、しかも大半は損をしている人たちです。放っておくと損が広がるかもしれないので急いで逃げるか、ひたすら耐えるか、全員がどちらか選ぶことになります。
この差が上がるスピードと下がるスピードの差を生んでいます。
ちなみに、耐える場合にも目安ポイント(ここを割ったら諦めるという最終ライン)に逆指値(ストップ)を置くことが多く、そこまで決壊すると雪崩のように売られますね。ポジションを損切りでクローズ(売る)=反対売買が入るわけですから、下落が加速するのです。
ヘッジファンドみたいな大口はしばしば個人投資家のストップを刈る動かし方をするようです。特に上げる前。一回ふるい落として売られすぎ水準まで落とし、改めてポジションを仕込みます。行き過ぎてのリバウンドで上がりだすと同時に利益が膨らんでいくという寸法です。
仕組みの面
投資というのは需給のバランスです。誰かが売ってくれるから買える人がいるわけで、そのバランスが崩れると一方通行に飛んでいくことになります。
持っていれば儲けられる上昇トレンドで株を売ってくれる人というのは、利確する人です。これが調整としてチャートに表現されます。
一方で持っていると損をする下落トレンドで株を買うというのは、逆張りをする人です。こっちは現在ポジションを持っていない人の参入なので、見るからに下降トレンドにある銘柄に突っ込む人はそう多くありません。それよりも逆指値で損切りする人の勢いの方が強く、わずかな買いは焼け石に水です。
加えて、信用買い残が期日に売られると大きなトレンド転換を引き起こすことになります。これについてもう少し見てみましょう。
信用買い残、信用売り残
現物株投資家でも信用買い残、売り残くらいは覚えておいて損はないと思います。株の需給に関わってくるので、状況が掴みやすくなります。
- 信用買い残:信用買いされて、決済はされずに残っている株数
- 信用売り残:信用売りされて、決済はされずに残っている株数
買い残が多いということは、通常期限の6か月後には決済するために反対売買=売りが増えることになります。基本的には買い残が優勢になるものですが、あまりにも大きな買い残は将来の株価下落要因になります。
※信用倍率 = 信用買い残 ÷ 信用売り残:信用取引は通常1倍以上(買い優勢のため)
信用買い残の推移を見ておく
信用買い残の推移に注目しましょう。
6か月後に反対売買するということで、そのポジション整理がどのくらい進んだのかということが分かるようになります。買い残が減少しているということは、上昇するための足かせが取れたということです。
もちろん様々な情報を含めて株価は日々変動していますので、なにが理由で動いたとは言えません。しかし、少なくとも信用取引が将来の需給に直接影響を与えているメカニズムに間違いはありません。
まあちょっとした安心感にはなるかもしれませんね。
なお、売り残については上で見たような目先の損失回避目的が多く、現物買いのポジションも同時に保有しているケースが少なくありません。この場合、期限になったらその現物株を渡して決済することで買い戻しをしないという方法があります。
つまり実需に影響しないということで、売り残は意識する必要性は薄いかもしれません。
FXではギリギリまでレバかけて回してます。