必読本の再読シリーズ、今回はナシーム・ニコラス・タレブの本です。要約すると「予測なんて出来ない」という主張を繰り返しているだけの本で、さらに言えばこの人の本はいくつかありますが、言っていることは常にこれです。今回はブラック・スワン(黒い白鳥)を選びましたが、単にタイトルがかっこいいからというだけです。
ただ投資において誰もがかかってしまう落とし穴を、色々な事例をもとに分かりやすく記されていて、私は非常に好きな本です。
一冊で良ければこちらもおすすめです。
目次(クリックで飛びます)
ブラック・スワンのいる世界
ブラック・スワンとは
- 人々は白鳥は全て白いものと信じて疑わなかったが、オーストラリア大陸が発見され、はじめて黒い白鳥の存在を知った。この例は人間が学ぶことに出来る知識や経験がいかに限られているか分かった。
- この黒い白鳥(ブラック・スワン)問題には3つの特徴がある。過去に照らして起こり得ない事象であること、大きな衝撃であること、私達人間はそれが起こった後でしばしば説明づけを行い、あたかもそれが予測可能だったと思い込んでしまうことだ。
- 語られる「リスク」は、大抵ブラック・スワンを除いた「リスク」でしかない。しかし、ブラック・スワンは予測出来ないからこそ大きな衝撃を与えるのだ。
- わかったという幻想:世界は思っている以上に複雑でランダムなのに、人は全てを理解したと思い込む。
- 後付の解釈:振り返ってみた歴史の解釈は、いつも歪んでいる。
- 身近なこと、実際の出来事を過大評価する:想像以上に視野が狭い。
- 上の三つの間違いがあるから、何度でもブラック・スワンに翻弄される。
月並みの国と果ての国
- ベル状カーブの正規分布に従い、外れ値を無視出来る月並みの国では、特定の事象が与える影響はたかが知れている。例えば平均体重のようなデータ。
- 不確実性が高く、べき乗則に従い、格差の大きい果ての国では、特定の事象が全体に与える影響が極めて大きくなる。例えば平均所得のようなデータ。
- ブラック・スワンが生まれるのは果ての国だけ。ここではあるデータから全容を予測することはできなくなる。
- 果ての国は勝者総取り方式で、負け犬がたくさんいる。
問題点
- ブラック・スワンがいるという証拠なんてない。だけどそれは、いない証拠があることとイコールではない。これが典型的な追認の誤りである。
- 私達は一般化したがるし、パターンを見つけたがる。しかし人間の視野は狭く、帰納法的に見つけたデータ群は、ブラック・スワンがいないことの証拠にならない。
- 帰納法的な解釈の根拠になるデータは、簡単に歪められる。人は自分の支える情報を信じやすくなるからだ。
- 因果関係の矢印があると、わかりやすくなる。分かった気になると、大抵間違える。でたらめに並べた数字にパターンを見つけると、そのパターンは知識になってしまう。
- 統計の声は響かない、身の回りの出来事は響くから過大評価する。スターリン曰く、「人が一人死ねば悲劇だが、百万人死ねば統計にすぎない」
- 今まで上手くいったことが、これからも上手くいくという結論にはならない。知らず知らずのうちにリスクを取っていることを学ぶこと。
- 私達は起こったことに敬意を払い、起こるかもしれなかったことは放っておかれる。
- ブラック・スワンに振り回された後、「あれは異常な出来事だ」と処理する、「ほとんど正しかった」と言い訳する。
100年に1度の危機? 毎年のようにやって来ているじゃないか! そんなエッセイです。
去年だってイギリスがEUを抜けるわ、トランプが勝つわ、予想外の出来事がたくさんありましたよ。予測できないインパクトがあったのだから、株価が大きく動くのも当然そのタイミング。今ニュースを見れば誰もが「いくつものサインがあった」とか「可能性があることは分かっていた」とか言いだして、まるで予想できたことのように歴史を消化しています。でも、そのバイアスが次のブラック・スワンに翻弄される理由なのです。
一冊で良ければこちらもおすすめです。