「言う」「聞く」という言葉、またはそれに準ずる表現は小説において再頻出です(ざっくり250ページの文庫本で100~150回くらい?)。それは以下の様な目的があるからと思っています。
- 誰が誰に向かって話したのか明らかにする。
- どのような言い方だったのか、字面だけでは読み取れない部分を補足する。
- 会話文が連続しないようにしてリズムを変える。
基本的にどんな小説も登場人物同士の会話がないと成り立ちません。しかしながら、文字だけで表現する小説において会話文だけを続けてしまうと、誰と誰の発言なのか分からなくなる(1)ニュアンスが曖昧になる(2)という問題が出てきます。
かといって、毎度ナビゲーションに地の文を出すと、「言う」「聞く」という言葉が頻発することになります。読んでいてリズムが悪くなります(3)。
これらの問題については、言い換え表現で解決します。知らないと使うことも出来ないので、まずはなにも考えず丸暗記ですよ。以下に私なりの表現をまとめてみました。
※私自身が勉強中の身の上で小説の書き方講座などはじめるつもりは毛頭なく、ただ自分が気をつけるだけで向上しそうなポイントとして書き出しています。
目次(クリックで飛びます)
類語(言い換え)で表現する
いい例にはなりませんが、会話は太郎→花子に向かって、「それはそうだ」といった場面にしました(ゴミみたいな例ですが、適当なものが思いつかなかったから仕方ありません)。会話文の字面も若干変えていますが、どれも微妙にニュアンスが異なります。
- 太郎は花子に、「それはそうだ」と言った。
- 太郎の発言は肯定と読み取れる。
- 「それはそうだ!」太郎は絶叫した。
- 「それはそうだな」太郎は吠えた。
- 太郎は「それはそうだ」と笑った。
- 「それはそうだ」即答だった。
- 「それはそうだが……」太郎は呻くような声を発した。
- 太郎は、「それはそうだ」と吐き捨てた。
- 「それはそうだろ」と、太郎はきつく言い放った。
- 「それはそうだ」太郎は繰り返した。「……それは、そうだ」
- 「それはそうさな」太郎は冗談交じりの言い回しをしてみせた。
- その他……言い表す、論じる、告げる、声を漏らす、大声を上げる、口にする、陳述する、おっしゃる、のたまう、騒ぎ立てる、泣き喚く、怒鳴る、咆哮する、どよめく、囃し立てる、がなり立てる……会話内容によっては質問する、問いかける、投げかける、頼む、願う等も。
「言う」の言い換えだけだと意外と数が少ないことに気がつくと思います。ポイントは「言う」そのものの言い換え+喜怒哀楽で、幅広い表現が生まれます。類語辞典をたくさん引いて一つずつ覚えていきたいですね!
視点を変えて表現する
上では太郎視点で描写していますが、花子が「聞いた」という表現でもいいはずです。
- 「それはそうだな」答えが返ってきた。
- 「それはそうだが……」奥歯に物が挟まったような声を聞き取った。
- 短い一言に、努めて感情を消そうとしている様子を花子は嗅ぎとった。
- 聞きたくない言葉が花子の耳に入ってきた。「それはそう」
- その他……傾聴する、承る……
比喩、描写で表現する
比喩や描写も重要なリズムの取り方。ここでのポイントは喜怒哀楽・会話内容の置き換えですね。別記事でそれぞれの感情描写のまとめ書きますので、ここではいくつか思いついたのだけ(センスないけど仕方ない)。
- 「それはそうだろうな」太郎は苦虫を噛み潰したような表情で答えた。
- 「それはそうだ」と、太郎は天を仰いだ。
- 俯いたまま、「それはそうだな」とぼやいた。
- 空気が振動し、太郎の声が花子に届く。
- 太郎は飛んできたボールを投げ返した。「それもそうか」
- 太郎は無言のまま歩き出した。その背中は「それはそうだ」とメッセージを発していた。
ちなみにですが、多用すると文章が長くなって読みにくいので(Web小説向けの場合は致命的なので特に注意!)、ここぞという場面に絞って使うようにしたいですね。
その他の表現
その他、表現に幅を持たせる方法を思いついた順に箇条書き。
- あえて省いて会話文を続ける(連続三回くらいならOK?)
- 主語を省く。上では全部太郎は~みたいな形式にしましたが、リズムよく、適宜省くことも忘れないよう。
- 強烈なキャラクター性で表現。会話内容だけでどのキャラが喋っているのか分かるならそれに越したことはないですよね。
- 一人称変化で表現。「俺」「オレ」「おれ」「僕」「ぼく」「私」「わたし」「あたし」などなど。少なくとも一人称はひらがなカタカナ漢字駆使して全員別にしています。
- 語尾変化で表現。丁寧口調から男っぽい言葉選びまで。ラノベならふざけた語尾でキャラ付けもあり「~にゃ(猫)」「~だけど(リアルにはいない)」。
- 間を空ける。
- 地の文のツッコミ(一人称向け)。
- 会話文の前に置く、後に置く。普段無意識にやっていますが、よく考えると会話文の前に「これから言うよ」と描写するのと、会話文の後に「こう言ったよ」と描写するのとではリズムが変わりますね。
「それもそうだ」をゲシュタルト崩壊する勢いで使いました。なんか他になかったのか。