【米国株】アップル(Apple:AAPL)の銘柄分析

米国株

今回はアップルについて事業、ファンダメンタル分析、チャート分析をやってみましょう。iphoneやipod、ipadやMacbookと革新的な大ヒット商品を次々と生み出してきたアップルは、これからも何を創り出してくれるのかとわくわくさせてくれます。

そういえば、最近バフェットもアップルの株を購入したらしいですね。

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アップル(AAPL)の事業内容

ビジネスを3Cで分解してみましょう。

事業内訳

アップルのマネタイズ戦略は明快にハードウェア一択で、売上の7割近くをiphoneで稼ぐビジネスモデルです。ティム・クックCEO就任時が44%でしたので、割合がどんどん上がっている状況です。

他を見るとMacは一定ユーザからの固い需要があって、ipadというかタブレットは旬の時期を過ぎました。ipodは最早その他の製品扱いでした。まあiphoneがほぼ全てだよっていういつもの決算です(下の表で、Unitsは販売数(千単位)、Revenueが収益です。念のため)。

(出典:Apple IR)

こちらのサイト様に非常に分かりやすいグラフがあったのでお借りします。この記事は15年の記事ではありますが、最近のアップル事情が押さえられますね。

(出典:アプリマーケティング研究所)

「App store(アップルストア)」、「Apple Music(アップルミュージック)」、「iCloud(アイクラウド)」、「Apple pay(アップルペイ)」といった便利なサービスは決算のどこにあるかというと、上の表で「Services」の部分(iphoneの1/10以下!)。Googleならここでマネタイズするのですが、アップルはお金にしません。

アップルはハードからOSからソフトウェア基盤から全て自前で作り上げ、それらをひとまとめのセットで販売します。マネタイズはハードウェアに絞っているんですね。要するに、アップルはアップルという「ブランド」をiphoneに乗せて売っているということです。ブランド戦略なので値下げもなく、競争もない。結果的にスマホから桁違いの利益を上げています(全スマホメーカーの収益の9割弱を占めるデータも)。

ちなみに地域別で見るとアメリカ40%、日本は8%くらいです。ただ日本市場は非常に伸びているのに対して、中国で大幅減という状況。これは後述します。

(出典:Apple IR)

iphoneの状況

(出典:アプリマーケティング研究所)

またお借りしますが、iphoneは最初に販売されてからついに10年を迎えます。そして新製品が販売されるたびに最高販売台数を更新してきました。これは最新のiphone7でも同じ結果でした。

参考iPhone販売台数が過去最高になったAppleの2017年Q1決算は売上記録も更新

まあほんのちょっと前にはこんな記事もあったのですが。スマホ市場がピークに達しているのも事実だと思います。

参考Apple、史上初めてiPhone販売台数が前年割れ ついにピークが訪れた?

結局最高販売台数(7800万台)だったのですが、全体的に同一Qで下がっている傾向が見えます。

(出典:マイナビニュース)

iphoneを発表してからいよいよ10年です。逆に言えば、革新的な製品を投入してきたアップルをして、10年イノベーションが起こされていないのです。コカ・コーラ(最新決算悪かったですが)とかフィリップ・モリスみたいな半永続的に売れ続ける製品分野ではないため、そろそろ変革が必要なのではないでしょうか。

エコシステムの構築

様々なプラットフォームを有するアップルは、iphoneを軸にしたエコシステムを構築することに長けています。

下の図は、マイクロソフト、グーグル、アップルのエコシステムをまとめたものです。アップルならiphone、グーグルなら検索と中心になるデバイスやサービスがあり、そこの周辺を広げる形で双方向の矢印が描かれていることが分かると思います。

このつながりはハロー効果やシナジー効果、あるいはネットワーク効果と呼ばれる相互作用を生み出すのです。多数のサービスプラットフォームを相互的に統合して、大きなエコシステムを構築することはアップルが注力しているポイントです(ハードもOSも全部自社開発しているので、スムーズな連携が出来るわけですね)。

アップルの新規事業を見る

アップルは最新技術を使った製品よりも、ある程度使い慣れた技術をアイデアで光らせるイメージが強い企業です。とはいえiphoneにいつまでも頼り切りではいられませんし、次のビジネスを探っているところを調べましょう。

AI(Siriの強化)、自動運転、若干忘れてきたウェアラブルデバイスなんかも新規事業として進められています。それぞれ記事を書いていますので、リンク貼っておきます。

3分で分かる、自動運転車の未来
VR(バーチャルリアリティ)についてまとめた 市場規模、大手各社の動き
3分で分かる、AI・ディープラーニングの将来性 ロードマップ、市場規模とか

また、こちらのサイト様でアップル、グーグル、フェイスブックの買収企業比較を行っていて、大変参考にさせていただきました。AI関連の事業が多めで、アップルに関しては中国Uberの買収が目に止まりました。

競合

広い意味ではスマホOSや自動運転でグーグル、PCでマイクロソフトなどと競業しており、主力のiphoneは同じメーカーのサムスン、ファーウェイ、ASUSなどと競業しています。

ま、所謂FANGってやつを押さえましょう(個人的にはMも捨てられない)。記事も書いているので合わせてどうぞ。

【米国株】フェイスブック(Facebook:FB)の銘柄分析
【米国株】アマゾン(Amazon:AMZN)の銘柄分析
【米国株】ネットフリックス(Netflix:NFLX)の銘柄分析
【米国株】マイクロソフト(Microsoft:MSFT)の銘柄分析
【米国株】グーグル、アルファベットの銘柄分析(GOOGL、Google、Alphabet)

調べればいくらでも記事が出てきますが、最近はスマホのスペックにも差がなくなってきたと感じます。それでもアップルが高い利益率を維持しているのは、やっぱり「ブランド」を売っているからなんですね。

アップル製品による「ライフスタイル変革」、「新しい体験」に価値を訴えかける戦略で、要するにブランドもののバッグを身につけるのと同じ心理なんですよね。iphoneの外見は真似出来ても、そのブランド価値、エコシステム、顧客体験の提供は真似出来ないのです。

これは次のビジネスにしても同じ展開になるんじゃないでしょうか。バフェットがアップルに消費者独占力を見出したのはこのあたりだと思います。

市場

最近(2016年度)のポイントは、中国株式市場の下落、スマホ市場の飽和、買い換えサイクルの長期化と低価格帯の需要増加、機能面の差別化難化といったところでしょうか。

世界的にはAndroid優勢ですが、日本ではiOSが圧倒的。なんで日本はアップル人気が凄いのか、諸説ありますがソフトバンクがiphone独占販売を武器に急成長した時期と重なるので、彼らのマーケティングが上手だったんだと思います。ちなみにわたしはAndroid(ASUSのZenfone2 laser)です。

日本は支払い能力がまだあるほうなのですが、新興国にアップルの価格設定はかなり割高で、性能面で大差ない中国製台湾製スマホを選択するという流れが一つ。下の表は調査によって変動がありますが、世界的におよそ7~8割がAndroid、2割がiphoneとのことです。

(出典:Statcounte)

「スマホ市場」の飽和については、データで見るとまだ拡大余地があるように思います。ちなみに、携帯の普及率という意味だと日本も100%以上ですが、内訳を見るとスマホは40%程度です。従来のガラケー人気が根強いことが分かります。

(出典:Pew Research Center)

まあ成長率の鈍化は確かに見て取れます。市場規模を超える成長は出来ませんし、ピークを超えればあとはパイの奪い合いになりますので、今までのような成長は難しいだろうというのはその通りでしょうね。

(出典:ガベージニュース)

あとは携帯は買い替え頻度の高いデバイスなので、需要が途切れにくいという考察はあるかもしれません。

リスク要素

iphone偏重

Googleの広告偏重と似た話ですが、収益源が実質一つということが最大のリスクです(エコシステム構築に役立つメリットもありますが)。

近年はプロダクトライフサイクルがどんどん短くなってきており、特に競争の激しい電子デバイスのライフサイクルは10年だと相当長いです(せいぜい数年)。機能面以外のロジックで差別化を図ってきたiphoneも、最新機種の驚き(Wow!)が年々しょぼくなってきているのが気がかりです。

プラットフォーム競争は苦手?

ハードウェアで稼ぐモデルを崩さないアップルは(凄まじい利益率を出しているという成功もあり)プラットフォーム(標準OS)競争は苦手です。かつても出だしで圧倒したMacOSはWindowsに、iOSはAndroidにシェアをどんどん奪われていきました。

アップルは優秀なプラットフォーマーですが、収益軸をハードからサービスに移そうとしたら注意が必要かなと思います。企業文化と異なる戦略は、たとえその戦略に合理性があろうと上手くいかないことが多いのです。

二番手になりつつあるサービスカテゴリを今後どのように運用するでしょうか。

アップル(AAPL)の財務分析

PL

iphoneによって全くの新市場を開拓し、凄まじい勢いで成長を遂げてきました。利益率は30%を超え、ROEのような投資対効果も20%を超えるなど、ここまでの成長には何一つ文句はつきません(最後の売上が落ちてしまっていますが)。

あとIT系の株にしてはPERが15倍程度(現時点)と低いことから割安株と見る人もいます。もちろん市場がアップルの今後の成長について高く評価していないということでもありますが……。

BS

バランスシートにも問題はありません。まずキャッシュが桁違いな上に高い自己資本比率を誇ります。

アップルはIT系メーカーですが所謂ファブレス経営と呼ばれる、部品製造~組み立てを外部委託する形態を取っており、利益率を上げる要因になっています。ちなみに委託先は中国になります(だから中国のシェア減速は痛手)。

加えてアップルはジャスト・イン・タイムの製造管理に優れており、コストカットが上手な企業なのです。

CF

iphoneが軌道に乗ってきた2010年頃からキャッシュフローが一気に開いたところに注目。全米一現金を持っているだけあって、キャッシュフローは超優良です。

で、そのキャッシュをどこに使っているかというと、下で見るように自社株買い戻しによる投資家還元なんですね。だからあんまり投資CFは伸びてないし、まずそもそもアップルは最新技術を追って道を切り開く企業ではないですから。

株主還元指標

配当で還元する企業ではないのですが、キャッシュが有り余るので13年頃から自社株買いを連発して投資家還元を積極的に進めるようになりました(ニュースにもなって、記憶に新しいところでしょう)。総還元性向で言えば100%近い数字が出ています。

総還元性向もグラフあったほうが説明しやすいですね。改良しましょう。

アップル(AAPL)の株価、チャート分析

とりあえずリアルタイムチャートのリンク置いておきます。

アップル(AAPL)-Yahoo!ファイナンス

過去の最高値、最安値

いいチャート。押し目の買い場まで用意してくれて、トントン拍子に上がっていくチャートです。90年代後半~00年代前半、ソニーに買収されるかと噂されていた時代から現在まで、実に233倍!(そーせいグループも確か10年で233倍とかになりましたっけね)

  • 安値:0.57ドル(97年4月)
  • 高値:132.97ドル(15年8月)

アップルは典型的な成長株だったわけですが、近年の投資家還元性向を見るとその時代は終わりつつあると感じます。

今後の値動き予測

5年チャート

94ドルをちょうど中央にして、上半分と下半分で対照的なレンジがあります。

  • 50ドル~94ドル
  • 94ドル~133ドル

この幅の中で5年間動いてきていますので、それぞれの上限下限はかなり強い抵抗帯になっています。次のチャレンジで突破すれば過去最高値で青天井ですが、業績がついてこなさそうなのですぐに落ちてきそうに思います。その後しばらく94ドル~133ドルをうろうろする……かな?

1年チャート

直近チャート見るとなんか抜けそう? 連続陽線+上限張り付き状態のもみ合いで、あと2~3日で決着つきそうです。

アップル(AAPL)の投資戦略

まとめます。

  • アップルの収益は70%がiphoneというハードウェアで稼ぐビジネスモデルで、10年次の事業軸が出てきていない。アップルストアをはじめとするサービスカテゴリは伸びているものの全体の5%程度である。
  • アップルは「デザイン」「顧客体験」「ライフスタイル変革」を売っており、営業利益率30%と非常に高い。
  • 全米一のキャッシュリッチ企業。近年は配当や自社株買い戻しに熱心。
  • チャート的には15年の最高値に近づいており、突破すれば青天井。

回答

アップルの株に何を求めるか、少なくともキャピタルゲイン狙いなら既にアップルはその立場を捨てようとしています。今後もこの成長速度を維持することは不可能です。

インカムゲイン狙いならここよりいい投資先があるだろうということは置いておくとして、こちらは◯をつけてもいいのではないでしょうか。

見てきた通り、アップルは競争と無縁の「ブランド」という無形資産を持つ唯一のIT企業です。そしてスマホ市場は確かに飽和しつつありますが、まだ拡大余地ありますし、当面は生活必需品の地位を奪われることもないでしょう(ITデバイスにしてはライフサイクルが長め?)。

となると、買うならどのくらいの価格にすべきかですが、いくらPER基準で安かろうが史上最高値で買うつもりは毛頭ありません。長期投資対象銘柄の優先順位を踏まえても、無理して飛び込みたい株ではないので、アップルの適正購入価格帯は50~94ドルということにしておきたいですね。今はバブリーなので、94~133ドルのレンジは信頼性が薄いと思うんですよ。


アップル、好きな企業なので長くなってしまいました。

なお、記事内ではAppleではなくアップル表記としていますが、これは出来るだけ読みやすい「かな文字」で書こうという意図ですので、ご了承ください。グーグル、アマゾンも同じです。


これまで調査してきた米国株の個別銘柄記事リストをまとめました! 企業名クリックで各詳細記事に飛ぶことが出来ます。

企業名
(リンク先は分析記事)
ティッカー業種区分主力事業、ブランド
アマゾンAMZNITネット小売、クラウド
アルファベット/グーグルGOOGLIT広告(検索)、AI
アップルAAPLITiphone
マイクロソフトMSFTITOS、Office365
フェイスブックFBIT広告(SNS)
IBMIBMITクラウド、AI
インテルINTCIT半導体(PC、サーバ)
クアルコムQCOMIT半導体(モバイル)
エヌビディアNVDAIT半導体(GPU)
オラクルORCLITソフトウェア(DB)
オクタOKTAITオクタ
シスコCSCOITネットワーク機器
アリババ・グループBABAITタオバオ、Tmall、アリペイ
テンセントHKG00700ITテンセント
バイドゥBIDUIT百度
ビザV金融決済インフラ
マスターカードMA金融決済インフラ
アメリカン・エキスプレスAXP金融決済インフラ
スタンダード&プアーズSPGI金融格付け機関
ムーディーズMCO金融格付け機関
ブラックロックBLK金融運用会社
ウェルズ・ファーゴWFC金融商業銀行
JPモルガン・チェースJPM金融商業銀行、投資銀行
シティグループC金融商業銀行、投資銀行
ウエストパック銀行WBK金融オーストラリア銀行
バークシャー・ハサウェイBRK.B金融バークシャー
AT&T T通信モバイル通信
ベライゾン・コミュニケーションズVZ通信モバイル通信
ネットフリックスNFLX通信動画配信サービス
ウォルト・ディズニーDIS通信ディズニー、ESPN
ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJヘルスケア医薬品(ステラーラ)、バンドエイド他
メドトロニックMDTヘルスケア医療機器(ペースメーカー他)
アボット・ラボラトリーズABT/ABBVヘルスケア栄養補助食品、医薬品(ヒュミラ他)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMYヘルスケア医薬品(オプジーボ他)
ファイザーPFEヘルスケア医薬品(プレブナー、リリカ他)
メルクMRKヘルスケア医薬品(キイトルーダ他)
ギリアド・サイエンシズGILDヘルスケア医薬品(ハーボニー他)
CVS ヘルスCVSヘルスケア薬局、PBM
ユナイテッド・ヘルスUNHヘルスケア医療保険、PBM
P&GPG生活必需品ビューティー(パンテーン、SK-II)他
ユニリーバUL生活必需品パーソナルケア(Dove、LUX)
コルゲート・パーモリーブCL生活必需品オーラルケア(歯磨き)
コカ・コーラKO生活必需品コカ・コーラ
ペプシコPEP生活必需品ペプシ・コーラ
ゼネラル・ミルズGIS生活必需品ハーゲンダッツ
クラフト・ハインツKHC生活必需品チーズ、ケチャップ
マコーミックMKC生活必需品スパイス
ホーメルフーズHRL生活必需品SPAM
マクドナルドMCD生活必需品マクドナルド
スターバックスSBUX生活必需品スターバックス(スタバ)
ウォルマート・ストアーズWMT生活必需品大型店舗小売
コストコ・ホールセールCOST生活必需品会員制小売
ホーム・デポHD生活必需品DIY小売
フィリップ・モリスPM生活必需品たばこ(マルボロ)
アルトリア・グループMO生活必需品たばこ(マルボロ)
レイノルズ・アメリカンRAI/BTI生活必需品たばこ
アンハイザー・ブッシュ・インベブBUD生活必需品バドワイザー
ナイキNKE生活必需品スニーカー(ナイキ・エア)
ギャップGPS生活必需品GAP、オールドネイビー
エクソン・モービルXOMエネルギー石油メジャー
シェブロンCVXエネルギー石油メジャー
ロイヤル・ダッチ・シェルRDS.Bエネルギー石油メジャー
ボーイングBA資本財B787ドリームライナー
ロッキード・マーティンLMT資本財ステルス戦闘機F-35
ユナイテッド・テクノロジーズUTX資本財航空機エンジン、エレベーター
キャタピラーCAT資本財建設機械(油圧ショベル他)
ゼネラル・エレクトリックGE資本財照明、航空機エンジン
テスラTSLA自動車電気自動車(EV)
スリーエムMMM素材ポストイット
デューク・エナジーDUK公共電力、ガス
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